アクア『領域展開』 作:初心者
「二種類……。リョースケ以外の、別の何かがいたっていうことか?それも呪霊か?」
「さて、そこまでは判らなかったそうだ。天元様はいかがでしょうか?」
《判らないな。残穢が残ったということで呪力痕は分かるのだが、菅野良介以外は感知したことが無いものだ。それよりもしばらくは警戒すべきは星野アイだろう》
「ええ、まあ今の所は大丈夫だとは思います。天元様に作って頂いた札と夏油さんから譲ってもらった呪霊で護衛していますので」
呪霊操術を持っていたと発覚して以降、苺プロの建物と星野家、斎藤家、伏黒家の人間には天元の札入りの御守りと二級以上の呪霊を護衛につけていたアクア達。
特にアイは撮影で遠出することもあり、重点的に守りを固めていた。
実際に心霊スポット近くで撮影していた時は二級呪霊に襲われかけたことがある(憑けていた二級呪霊三体のうち一体相討った)ため、現在では一級呪霊と二級呪霊二体を護衛に付け、場所によっては甚爾や稀に九十九が現場に前乗りし、事前に呪霊を祓うということまでするほどの徹底ぶりであった。
更に苺プロの入っている建物は元々高専絡みのものであるため、一部の空き部屋は、高専の出張室のようになっており、高専生徒が都内任務のため外泊する際に利用されている。
七海や灰原は枷場姉妹の様子を見に行くついでに泊まったり、五条や夏油、家入もたまに入り浸っているため、高専の次に対呪霊対策のぶ厚い場所になっていたりする。
「と言っても必要か?アクアの母親、常時反転術式で正のエネルギー垂れ流してるだろ」
「ああ、うん、まあね……」
「アレは驚いたよな……」
アクアと吾郎が揃って呆れ声で同意する。
呪霊を感知出来ない『縛り』持ちではあるのだが、呪力を練ることは出来るアイ。
一度限りの『術式』も使用した現在、余った呪力量はかなりの量であり、一日中微弱な反転術式をまわし続けるのに不足は無いくらいであった
「なんでも最初に領域で治した時に身体に反転術式を強制発動させてたみたいなんだが、その感覚を忘れられなかったらしくて、思い出している内にいつの間にか習得してたみたいだ……」
「本人曰く、自分の中の『愛』を自覚した時の感覚を忘れないようにしている。らしい」
「お前の母親何なんだ?」
「千年に一度のアイドル」
アクアが堂々と言ってのける
「……」
───いや、今の活躍見れば間違っちゃいねぇとは思うが、アイドルって何だっけ?
「しかもそれが良いように働いているようでね。元々人の名前と顔が一致しない自閉スペクトラム症の気があったんだがそれが改善してるみたいなんだ」
「アイは対人スキルを克服しつつ、今まで培ったイメージも利用してるみたいで業界好感度も視聴者好感度も跳ね上がってる。役者としても天性の才能があるから無双モードに入ってるよ」
「あっ、そう」
───マザコン……。と言っていいのかコレ?
同じ建物に住んでいて、アイに関する近況を京香と津美紀からも聞いている甚爾は吾郎とアクアのアイトークに辟易としていた
《そういえば九十九由基の研究は進んでいるのか?》
天元が話題の矛先を最近来ていない九十九に向ける
───ナイス天元
甚爾は内心でアイの話題を逸らした天元に賛辞を送った
「前と変わらず甚爾の身体は俺達の術式じゃ、解析出来ないんですよ」
「一般的な解析は出来ますけど、呪術的な解析は無理ですね。五条君にも協力して貰いましたが、変わらずです」
吾郎とアクアが甚爾の『天与呪縛』を領域を使い何度か解析しようとトライしていた。それこそ五条に依頼し、『六眼』すらも検査に利用したが。結局解析は不可能だったことを伝える。
「その結果には流石に九十九さんも悄気てましたからね」
《ふむ……。では以前から案が出ていた。君達の領域の強化計画はどうだ?》
「全国の病院に溜まる呪力を僕等の領域に集めて、領域を常時展開するアレですか……」
九十九が甚爾の解析が出来ないと知ったあと、他に手段は無いかと、秘蔵のノートを開示し、皆で意見を出し合った。
その中に天元の結界を利用し、日本全国に無秩序に溜まる呪力を集め、消費することで呪霊発生を抑制出来ないか。という全人類術師化、全人類呪力脱却という原因療法とは異なるアプローチ。『予防療法』と言える案。それが天元の結界を利用した呪力の秩序化である。
無秩序に垂れ流してることで、呪霊が発生するのなら、流れをコントロールする。
発想としては治水に近い。要はダムのように呪力の集積所をを作り、そこに呪力を集めて消費してしまおうという計画である。
アクアと吾郎の領域を出したままにし、病院という呪力の溜まり場から呪力を集め、領域展開を継続し続ける燃料として利用する。
この計画が上手く行けば、一度領域を展開してしまえば、アクアが居なくても吾郎一人で領域を利用し続けることが出来、全国の病院から呪霊が発生しなくなる。
更に呪術高専を学校に見立て、集めた呪力を呪術高専の結界の維持で消費し学校で発生する呪霊も減らすことが出来るかもしれないと期待出来る計画
《実際、日本各地の寺や神社は元々呪力を其処に集めて浄化するために建てられたものもある。土地神や産土神信仰も似たようなものだ。平安京などの都市設計も思想は同じだ。既に機能はしておらんがな》
「風水とか鬼門とか方位とかいったものは元を辿れば無秩序にばら撒かれる呪力をコントロールするためのものだったわけですか」
《昔は龍脈などと呼ばれていたのだ。この薨星宮の巨木はその名残だ。残念ながら、時代の変遷、科学の発展と共に失われた知恵であり秩序だな。現状私の結界は残ったものでなんとかやりくりしている状態だ》
「それを復活させる……か」
《難しいぞ。私の若返りが済めば手伝えることがあるかもしれないがな》
「その時は頼りにさせてもらいます」
《ああ……。ん?》
「どうされました?天元様」
《いや、ひょっとしたらなんとかなるかもしれん人材がいる。九十九由基に連絡して保護した方が良いだろう》
「人材……?保護ですか?」
《うむ、『天与呪縛』により、広域に術式を展開出来る術師の情報を見つけた。名は『
─────
『与幸吉』
『天与呪縛』により、生まれつき右腕と膝から下の肉体が無く、更に腰から下の感覚がない。更に肌は月明かりにも焼かれる程脆く、常に全身の毛穴から針を刺されたように激痛が走る。
その過酷な代償として彼が手に入れたのは、日本全土をカバーするほどの広大な術式範囲と、膨大な呪力出力。
「やあ少年、
九十九由基が彼の前に現れたとき、少年は家族にも見放され、呪霊に狙われ、死を待つだけの生き地獄の中にいた。
だが、アクアと吾郎、そして天元の知識が合わさったとき、少年の地獄に蜘蛛の糸が届く
「君の『天与呪縛』は魂に刻まれている。実のところ魂に痛覚は無い。損傷することや消耗することはあるけどね。魂はそのままに肉体をただの器として再構築する」
治療法は、天元と吾郎の存在をヒントにした魂と肉体の分離と再構築。
魂と肉体の欠損を補うのではなく、一度、魂と肉体のリンクを意図的に切り離し、魂を呪霊操術で契約。魂に刻まれた
それは、魂の形を保ったまま肉体を最適化する『受肉体』あるいは『星漿体』の理論の応用であった。
治療が終わり、数ヶ月の
二〇〇八年三月末。夜に早咲きの桜が舞う季節、そこには、痛みも、焼けるような月光もない。ただ、春の暖かな空気が、彼の頬を撫でた。
後に、与幸吉はこう語る。
「僕は、あの地獄で一生を終えるのだと思っていた。自分の身体で誰かに触れることも、誰かの隣を歩くことも叶わないのだと。……だが、彼らが救い出してくれた。
そのおかげで僕は今自分を、そして自分の
彼の広大な呪力範囲は、そのまま呪力を秩序化する計画の神経網の構築に一役買うことになった。
全国の病院に設置された天元の作った結界術の触媒を通じて、無秩序な呪力をかき集め、それをアクアと吾郎の領域へと供給する中継点の設計を天元と共に手掛け。
傀儡使いとしての才能は、日本全土にある病院に溜まる呪力を収集し消費する『予防療法』のメカニズムを作る『システムエンジニア』としての才能へと昇華されることになる。
呪術廻戦≡の三巻感想
最後まで ふざけやがって あのゴリラ
元祖考察のノイズは伊達じゃないな。と、果たしてアレは実物なのか?
自閉スペクトラム症
二〇世紀後半に提唱されているので二〇〇七年でも通用するはず……多分
天元は自身の身体としてチューニングしましたが、与幸吉は自身の身体と魂を分けてチューニングしています。
VRのアバターを動かしている感覚かな?なので運動音痴気味です
与幸吉に関してはあくまでも術式を参考にしたいだけで縛り付ける意図はありません。
本人が希望すれば魂を治して、ただの人として生きることも可能です。
ただ、給料は良いし、呪霊の厄介さは知っているのでそのまま仕事にすると思います
病院の外観だけ作り、内部で領域を展開する。病院の外観と領域の外殻の隙間を天元が空性結界で埋める
結界術の触媒は病院の認定証のようなものにマークを埋め込んでおく
マークのイメージは地図記号かな
5月5日に吾郎の母校名の『東京医薬大学』追加
感想評価誤字報告ありがとうございます