アクア『領域展開』 作:初心者
二〇〇八年四月
五条悟、夏油傑、家入硝子は最上級生である四年生に、七海建人、灰原雄は三年生に進級し、伊地知潔高が二年生に。
星野アクア、星野ルビー、伏黒津美紀、枷場菜々子、美々子の姉妹、そして天与呪縛による地獄から解放された与幸吉が小学校一年生に、伏黒恵が幼稚園の年長に進級した
ちなみに一人幼稚園に取り残されたと感じた恵は登園初日から珍しく大泣きし、自分だけ幼稚園に行きたくないと駄々をこね、周りを困らせていた。
最終的には甚爾に首根っこを掴まれて力づくで幼稚園へ向かうことになった彼の姿は、後々までその場に居合わせた全員から「あの時の恵は可愛かった」と弄り倒される
枷場姉妹と与幸吉の扱いは高専庇護下の呪術師見習い扱いであり、身元保証人は枷場姉妹が伏黒甚爾と京香、与幸吉が雨宮吾郎ということになっている。
菜々子は檻を破壊し、自分達を解放した七海に、美々子は反転術式で治療し続け、夜通し看病していた灰原にそれぞれ懐いている。
七海、灰原も境遇を知っていて、自分達の判断で保護した経緯があり、親心のような責任感を抱いていた。
保護された直後、七海、灰原以外には一切懐くことは無かった枷場姉妹だったが、ルビーがお姉さん扱いして欲しいからと積極的に関わり、現在は良好な仲を築いている。
ちなみに、あまり一緒に幼稚園に通ったりせずにいるアクアと、恩人である七海や灰原を顎で使う。と思われている吾郎、甚爾、五条には未だに心を許していない。
与幸吉はリハビリ期間中に九十九、夜蛾、天元の弟子として呪術師の修行を並行して行なっており、既に三級術師と遜色無いレベルに仕上がっていた。
─────
四年生に上がり、高専最上級生になった家入硝子は受験勉強に励んでいた。このままでも、反転術式をアウトプット出来る保健医として高専に残ることはもちろんできる。
だが、反転術式だけでは吾郎の劣化コピー状態であることに悩んでいた家入は、吾郎や夜蛾、九十九、果ては天元にまで相談を持ちかけた結果。
医学部に入り、法医学を学ぶことを決意した。
というのも吾郎の医学知識及び術式は、死体の解析、特に呪力が無く、術師では無い一般人の死体の解析には不向きだったからである。(これについては天元も同じ)
そんな吾郎の苦手な分野を補うことに活路を見出した家入は現在、アクアから医学部受験のための授業を薨星宮で受けていた。
───あらためて考えると頭おかしくなりそうな状況だよねコレ。小学校上がりたての子供に大学受験の勉強を教わるとかさ……。
なお、この状況は必然である。
アクアの記憶は吾郎から引き継いでいるため、医学部合格経験の知識を持っている。
しかも、高専か高専の出張所扱いの苺プロのあるビルから通える医学部のある大学に吾郎の母校『東京医薬大学』があるため、試験対策もある程度出来るという事情もあった。
ならば吾郎に直接教わるのはどうかというとそれは極めて難しい。
というのも現在保健医として高専で働いていることに加えて、来年恵が小学校に上がり、ある程度自由時間が取れるようになる京香が看護師として復帰するため、彼女が所属予定である高専付属の診療所を本格稼働するための準備に追われている。
更に呪霊に対する予防療法とアクア、吾郎の領域『陰陽施寮』の強化案である日本各地の病院からの呪力集積が幸吉の力を借りた結果、実現可能な段階に達しており、天元や九十九と結界術の強化や領域の維持について試行錯誤を繰り返しており、とてもではないが勉強を見て欲しいと頼めるような状態にはなかった。
アクアと吾郎以外には医学部受験クラスの勉強など教えられるものはおらず、結果、小学一年生に家庭教師をしてもらっている高専四年生というシュールな状況が生まれてしまった
───五条と夏油は煽りまくりやがるし、ちゃっかり自分達も高専に残りたいからって教員免許取得するための勉強は自分達で進めてたとか……、しかもあんのクズ共勉強はそこそこ出来るのが更にムカつく
「家入さん?休憩しますか?」
「え、いや大丈夫大丈夫」
───小学一年生に気遣われるのは流石に凹む。いや、中身ほぼゴロ先だけどさ
「ゴメンね。アクア君。せっかく小学校に入学したばかりなのに、私の受験勉強に付き合わせちゃって」
「いえ、将来的には僕も医学部入りなおすつもりですし、自分の勉強になりますから。それに、今更小学校通う方が正直キツイんで……」
「あ〜なるほど……」
「だからむしろありがたいんですよ。仕事と称して合法的に学校サボれる現状の方が……」
だから気にしないでください。とアクアは言う。
とはいえ家入にとっての現状は受け入れ難いものであり、五条と夏油への怒りと小学一年生に勉強の面倒を見てもらっている情けなさを糧にしながら家入は受験勉強に勤しんでいた
そんなところに空気を読まない闖入者が二人
「ヤッホー、硝子ぉ〜、アクア〜」
「やぁ、差し入れ持ってきたよ」
「あんたら暇なのか」
「いや、ぶっちゃけお前らへの差し入れはついで、天元様とゴロ先いる?」
「今、あん中」
家入が指を差したのはアクアと吾郎の領域。ということを『六眼』で読み取り
「……ちょっと待て、アレ『陰陽施寮』じゃねえか」
「……アクア君、領域展開してるのに外に出てきてるのはどういうことだい?」
五条と夏油がドン引きしながら疑問を口にする
「俺らの領域って発動する分には二人揃ってないといけないけど発動したあとはどちらか片方が中にいれば良いみたいなんだよ」
「「……」」
アクアがさも当然のことのように語るが
最近やっと領域を形にすることが出来るようになってきた二人にとって、アクアと吾郎のやっていることは常識外れにも程があった
───コイツらのやっていることはもう参考にならねえよ……。自分の領域から外出てくるとか。しかもあれ外から呪力流れ込んでるな。前に聞いた領域強化案か?
───二人がかりで展開するからこんなことが可能になるのか?例えば呪霊に領域を肩代わりさせることが出来れば……いや、吾郎先生を呪霊と見立てれば確かに出来るかもしれないが
「ちなみにだが、展開してからどのくらい時間が経ってるんだい?」
夏油がふと思いついた疑問を口にする
「朝ここに来てすぐ展開したから六時間?」
時計を確認すると現在午後二時半。
「「……」」
「前から計画してた領域強化案を実験中でね。最終的には常時展開しっはなしにする予定。出来れば吾郎も出て来て、領域を病院として自立させられれば良いんだけどね」
「あ~うん」
「そうだね……」
───このクズ二人が何も言えずに顔が引き攣るとかウケる。……いや、ゴロ先とアクア君がやってることと言ってることがそんだけヤバいのか
家入はストレス要因が黙ったことに対してカタルシスを感じるも、それが如何に珍しいことかに思い至り、その表情を引き出した吾郎とアクアに戦慄する。
「そういえば、二人とも天元様と吾郎に何の用?」
アクアが二人が薨星宮に顔を出した理由を聞く
「ああいや、領域展開を習得出来はしたんだがアドバイスが欲しくてな」
「私は領域展開習得に手間取っていてね。天元様に相談出来ればと思っていたのだけど……無理そうだね」
「今は二人とも忙しそうだし……俺が見ますか?」
「「ええ……」」
小学生に上がったばかりのアクアに教わるという硝子と同じ屈辱を味わいたくはない二人は拒否感を示すが
「ん?ああ大丈夫ですよ。領域対策に『彌虚葛籠』っていうシン・陰流『簡易領域』の原型みたいなものを天元様から教わったので、必中必殺の領域内でも生き残ることは出来ますので」
アクアは見当違いな理由で遠慮していると思い、領域は対策済みだから遠慮なくどうぞと伝える
「!?それ、教えてもらえる?」
「いや、五条さんなら見れば出来るようになるでしょ?それにシン・陰流の『簡易領域』覚えているならそっちの方が使いやすいですよ。コレ使いづらいですし、領域対策なら御三家出身なんだし、『落花の情』もあるんでしょう」
「私も教えてほしいな。領域対策はいくらあっても良い」
「夏油さんもですか……。いや夏油さんなら使いやすいか?」
「なんで傑なら使いやすいんだよ?」
「『彌虚葛籠』って手印を結び続けるんで両手が塞がるんですよ」
「あ〜……。確かにそりゃ俺じゃ使いづらいわ。印の省略とか色々やってはいるけど手掌で操るのに慣れすぎてるからな。領域内でそんな余裕は無いか」
「私の場合は、呪霊を操作するのに多少使ったりするけど、事前に出しておいたり、呪力操作で指示を出したりすればいいから悟ほど両手の優先順位は高くないね」
「あのさ五条と夏油。やるならさっさと領域の練習してくれない?」
一人で勉強していた家入が痺れを切らし、苛立ちながら二人に指摘する
「っと、悪い硝子。まず、俺からな!」
「夏油さん、使い捨てていい呪霊ありますか?領域の効果を見るのに使いたいんですが」
「ああ、いいよ」
と夏油は三級四体と四級を六体渡す
これまでの遣り取りで小学生相手に教わるのは……。ということが既に頭から抜けていた五条は他の二人を巻き込まない距離まで離れたあと片手で印を組む
アクアは両手で印を結び『彌虚葛籠』を構える
帝釈天印
『領域展開』
『無量空処』
──────
五条と夏油の領域展開を受けたあとアクアはそれぞれにアドバイスする
「五条さんはほぼ完成してるから、後は何度か使用してみることかな。領域の性質から言っても必中必殺は間違いないし。人間相手なら間違いなく脳死させられる領域だね。呪霊相手も特級でもない限り情報量でパンクするだろうし、特級でも無防備になるだろうからあとは煮るなり焼くなり好きに出来る。ただ、味方がいると使いづらいだろうからそこの対策はいるかな。術式対象を選別出来れば、より使いやすくなると思うけど領域の性質上難しいかもな」
「夏油さんの場合は領域の展開速度を重視するべきかな。いっそ必中だけの領域を展開して、術式は領域が展開し終えたあと使用する二段構えにする形にして、相手を逃がさないことを念頭に置く方が呪霊を捕獲するうえでは良いと思う」
領域展開で呪力を消耗し切った夏油は寝転がりながらアクアの総評を聞いていた
「必中のみの領域?」
「うん、必中必殺の術式は領域展開と同時に術式も纏めて発動状態で放つから一気に呪力を消耗するんだよ。だから領域という結界自体に術式を待機状態で付与して展開する。で、展開し終えた後、術式を発動する。二段構えにすることで展開の負担を緩和することが出来るはずだよ」
アクアのアドバイスを元に二人は領域を更にブラッシュアップしていく
家入はこれを口実に五条と夏油に小学生に教わるとか───と今まで煽られた分をやり返した
家入にやり返された五条と夏油は開き直ってアクアに勉強も教わることにした
アクアの生徒が三人に増え。負担も三倍に増えた。
領域の必中と必中必殺の違い
必中は術式を結界に付与し待機状態で領域を展開する
例:陀艮。展開したあと領域内の対象に術式で攻撃する。タイムラグあり
必中必殺は術式を結界に付与し発動状態で領域を展開する
例:五条、宿儺。展開と同時に領域全体に効果発揮
領域展開の難易度が違うという部分をこう解釈しました
ファンパレだと何ターンか続く領域が必中型で、即効果が出るのが必中必殺
無量空処だと特級以外の呪霊は情報量だけで脳から弾け飛びそう
感想評価誤字報告ありがとうございます