竜狩りと辺境の街   作:もいもい130

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第10話

雷を纏った渾身の刺突が黒騎士の胸板を穿ち、炭鉱の闇を白銀の閃光が切り裂いた。

 

衝撃で黒騎士の巨躯が数メートル後退し、背後の岩壁を砕く。だが、黒騎士は声を上げることなく、火花を散らす鎧の隙間から、なおも不気味なソウルの残火を燃え上がらせた。

 

「……流石だな。一度の死では、その執念までは消えぬか」

 

オーンスタインは、両手で保持した十字槍の柄をさらに強く握り込んだ。

 

槍の穂先からは、パチパチと黄金の雷が絶え間なく溢れ出している。

 

全盛期の、雲を裂くほどの勢いはない。

だが、その光は煤けた炭鉱の奥底で、神代の騎士としての誇りを示すかのように熱く脈打っていた。

 

黒騎士が大剣を杖のように突いて立ち上がる。

兜の奥にある虚無がオーンスタインを捉え、大剣が再び上段へと振り上げられた。

すべてを断ち切らんとする、最後の一振りの予兆。

 

「――ならば、正面から応えよう」

 

オーンスタインは重心を深く落とし、槍を正面に据えた。

 

「――おおおぉぉぉっ!!」

 

「突撃」。

 

それは竜狩りの槍の真髄であり、騎士が戦場を支配するための苛烈な直進。

 

黒騎士の大剣が振り下ろされるより速く、オーンスタインは雷の軌跡となって地を蹴った。

全身の体重と、爆ぜる雷の推進力を一点に集中させた黄金の弾丸。

 

ドォォォォォン!!

 

十字槍の穂先が、今度は黒騎士の腹部を深く貫いた。

凄まじい衝撃波が炭鉱内に吹き荒れ、銀等級の冒険者たちが腕で顔を覆う。

 

オーンスタインは止まらない。貫いたまま、黒騎士を岩壁へと力任せに押し込み、その十字の横枝が鎧の深部を捉えて固定した。

 

至近距離。互いの兜が触れ合うほどの距離で、オーンスタインは槍の十字部分に右手を添えた。

掌には、今日、最も強く、最も重い黄金の雷光が凝縮されている。

 

「……眠れ、同胞よ」

 

「――雷の杭」

 

掌から解き放たれた至近距離の杭が、槍を媒介にして黒騎士の体内へと奔った。

 

バチバチという激しい放電音が反響し、黒騎士の鎧の内側から赤黒い煙と黄金の光が混ざり合って噴き出す。

黒騎士の腕が一度だけ、オーンスタインの肩を強く掴んだ。

 

だが、それは攻撃ではなく、かつての主の騎士へと向けた、長い旅の終わりを告げるような、微かな「礼」のようにも見えた。

 

やがて雷光が収まると、黒騎士の巨躯は砂が崩れるように力を失い、その場に跪いた。

 

煤けた鎧が虚空に溶け、残されたのは、かつて黒騎士が手にしていた、折れた大剣の破片一つだけだった。

 

「……終わった、のか……?」

 

銀等級の戦士が、震える声で呟く。

 

「……ああ。この地の小鬼が触れてよい影ではなかった」

 

オーンスタインは静かに槍を引き抜き、布で再び丁寧に包み込んだ。

 

炭鉱の奥に、束の間の静寂が戻る。

 

数日後。

街へと帰還したオーンスタインを待っていたのは、以前とは比べものにならないほどの静止と、畏怖の視線だった。

 

銀等級の冒険者たちがギルドへ報告した「黒騎士」との死闘の内容は、瞬く間に街中に広まった。魔法回数という理を無視し、未知の雷を振るい、神代の怪異を退けた黄金の騎士。

 

ギルドのカウンターで、受付嬢はかつてないほど緊張した面持ちで、新しい札を差し出した。

 

「……オーンスタイン様。貴方の功績、および同行した銀等級の方々の証言に基づき、ギルドは貴方の『鋼鉄等級』への昇級を、異例の速さで決定いたしました。……いえ、それだけではありません」

 

彼女は、銀色の縁取りがなされた特別な推薦状を添えた。

 

「今後、一定期間の活動実績を重ねることで、正式に『銀等級』への昇格試験を免除する、という内定も出ております。……貴方はもはや、辺境の一冒険者ではありません」

 

オーンスタインは、新しい札を無造作に懐へ収めた。

地位も、名声も、彼にとっては意味を持たない。

 

だが、この世界で「生きる場所」を得たことは確かだった。

ギルドの片隅では、あの教え子の少年たちが、眩しそうに彼を見つめていた。

 

そしてそのさらに奥。鉄兜を被った「小鬼を殺す男」が、いつも通り無言で掲示板を見つめていた。

 

オーンスタインは獅子兜を被り、ギルドの扉へと歩き出す。

この脆弱な理の地で、彼の槍はまだ、折れることを知らない。

 

火を継ぐ者も、神々もいないこの地で、黄金の騎士は新たな「騎士道」を刻み始めようとしていた。

その内白霊とかも出すかどうか

  • 出せ
  • 出すな
  • 闇霊なら許す
  • 白も闇も出せ
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