竜狩りと辺境の街   作:もいもい130

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第12話

 

「……狭い。槍の出番はない」

 

炭鉱の最奥へと続く、人一人がようやく通れるほどの狭い坑道。ゴブリンスレイヤーは、松明の光の下で短剣の調子を確かめながら、淡々と告げた。

 

その背後には、煤けた黄金の甲冑を纏った巨躯。

オーンスタインは、壁に十字槍の穂先を掠らせることなく、音もなく歩を進めていた。

 

「……槍は長い、ここでは不利だ」

 

「貴公の言葉は、かつての戦友も口にしていた。だが、それは『槍の理』を知らぬ者の言葉だ」

 

オーンスタインは動じない。

ゴブリンスレイヤーはそれ以上何も言わず、足元の泥を指でなぞった。

 

「……いる。足跡、六つ。向こうから来る」

 

ゴブリンスレイヤーは即座に壁の凹みに身を潜め、盾を低く構えた。

対して、オーンスタインは退かなかった。

彼は通路の中央で、十字槍の半ばを右手で、石突に近い位置を左手で握り、獲物を極端に「短く」保持した。

 

闇の先から、小鬼(ゴブリン)たちの下卑た笑い声が聞こえてくる。

奴らが曲がり角から姿を現した瞬間、ゴブリンスレイヤーが短剣を投げようとした。だが、それよりも速く、黄金の旋風が狭い空間を支配した。

 

「――退け」

 

オーンスタインは槍を振るわなかった。

最短距離で繰り出される、石突による強打。

先頭の小鬼の顔面が砕け、その勢いのまま、オーンスタインは槍を滑らせて持ち替える。

突き出した穂先が二匹目の喉を正確に射抜き、三匹目が振り下ろした棍棒を、十字の横枝が「受け流し」ながら絡めとる。

 

「……ギギッ!?」

 

武器を封じられた小鬼が驚愕する間もなく、オーンスタインは槍を引き、横枝をフックのように使って敵を壁へと叩きつけた。

「……ほう」

 

ゴブリンスレイヤーの、鉄兜の奥で微かな感心の吐息が漏れた。

槍を「突く棒」ではなく、打撃、受け流し、そして捕縛を同時にこなす「万能の得物」として扱う技術。

この狭隘(きょうあい)な空間において、長大な槍が、まるでオーンスタインの体の一部であるかのように自在に縮んでいる。

 

「……石突と横枝。無駄がないな」

 

「……かつて、竜の懐に飛び込んで戦う際、槍は常に長すぎた。……その『不便』と数千年付き合えば、自ずとこうなる」

 

オーンスタインの言葉には、この世界の冒険者には想像も及ばない、膨大な時間の蓄積があった。

 

二人はさらに奥へと進む。

道中、ゴブリンスレイヤーが仕掛けた罠を確認し、あるいは小鬼が仕掛けた稚拙な落とし穴を回避していく。

 

「……この先だ。昨日、楔石(あの石)が見つかった場所」

 

辿り着いたのは、炭鉱の本来の設計にはない、広大な空洞だった。

そこは、何らかの巨大な力が地下を抉り取ったかのような、異様な円形の広場となっていた。

 

そして、その中央。

数多の小鬼たちが、祈りを捧げるように群がっている場所には、地面から突き出した「巨大な楔石の結晶」が、青白い光を放っていた。

だが、オーンスタインが目を奪われたのは石だけではなかった。

 

その結晶の根元、泥に塗れて半ば埋もれている、見覚えのある「鉄の残骸」。

 

「……あれは」

 

それは、かつてアノール・ロンドの門を守っていた、大鷹の紋章が刻まれた盾の破片。

小鬼たちは、その神代の遺品を、自分たちのボロボロの武器を研ぐための「砥石」代わりに使っていた。

 

オーンスタインの鎧から、パチリ、と黄金の火花が散る。

それは、彼がこの世界に来て初めて見せた、静かな、しかし峻烈な怒りだった。

 

「……狩人よ。あやつらの始末、私に任せてもらえるか」

 

「……逃がさないのなら、好きにしろ」

 

ゴブリンスレイヤーは、短剣を引き抜き、退路を断つ位置へと移動した。

黄金の騎士は、布を完全に解き放ち、両手で十字槍を握り締める。

 

「……神の遺品を、泥の手で汚した罪。……その命で購(あがな)うがいい」

 

暗い空洞に、全盛期には遠く及ばぬまでも、かつての「四騎士」としての威圧感が満ち溢れた。

その内白霊とかも出すかどうか

  • 出せ
  • 出すな
  • 闇霊なら許す
  • 白も闇も出せ
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