竜狩りと辺境の街   作:もいもい130

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第13話

 

空洞を満たしていた小鬼たちの下卑た嘲笑が、一瞬にして凍りついた。

 

黄金の甲冑が放つ威圧感は、もはや物理的な重圧となって小鬼たちの細い首を絞めつける。

 

「ギギッ……!?」

 

先頭にいた小鬼が怯え、手に持っていた盾の破片――かつて銀騎士が誇り高く掲げた遺品――を泥の中に落とした。

その瞬間、オーンスタインの姿が消えた。

 

「――おおおぉぉぉっ!!」

 

咆哮と共に放たれたのは、一直線の「突進」。

重装鎧を纏っているとは思えぬ加速。

十字槍を水平に構え、雷の火花を散らしながら空洞を横断するその姿は、暗闇を切り裂く黄金の落雷そのものだった。

 

逃げ遅れた小鬼たちが、槍の穂先に貫かれ、あるいは十字の横枝に弾き飛ばされて岩壁に叩きつけられる。一突きの勢いが止まらぬまま、彼は次々と群れを串刺しにし、空洞の端から端までを、わずか数秒で「掃除」して見せた。

 

「……ガァッ! ギ、ギギィ!」

 

生き残った小鬼たちが、恐怖に顔を歪めて退路へと殺到する。だが、そこには既に「鉄兜の死神」が待ち構えていた。

 

ゴブリンスレイヤーは、逃げ出そうとする小鬼の喉元に短剣を突き立て、冷徹に仕留めていく。

 

「……逃がさない。一匹もだ」

 

中央では、オーンスタインが槍を引き抜き、残った小鬼たちを冷たく見下ろしていた。

彼は槍を大きく振るう必要さえなかった。小鬼が錆びた剣を振り下ろすより速く、槍の石突が胸骨を砕き、返す穂先が眉間を貫く。

 

「……あやつらの盾を、泥で汚したか」

 

オーンスタインは、地面に落ちた盾の破片を、左手で静かに拾い上げた。

その指先が金属に触れた瞬間――。

 

――(……火を、守れ……)

 

脳裏に、激しい火花の音と、かつての戦友たちの叫びが響いた。

それは幻聴ではない。

楔石の結晶が近くにあることで、武具に宿っていた「ソウルの残滓」が呼び覚まされたのだ。

 

アノール・ロンドの白い霧の中、果てしなく続く防衛戦。最期まで門を離れなかった名もなき銀騎士の、無念と誇り。

 

「……そうか。貴公も、最後まで騎士であったのだな」

 

オーンスタインは破片を懐に収めると、最後の一匹――隅で震えていた小鬼の首を、見ることなく槍で撥ねた。

静寂が戻った空洞で、ゴブリンスレイヤーは死体の数を確認し、丁寧に止めを刺して回っていた。そして、オーンスタインが回収した「楔石の結晶」と「盾の破片」をじっと見つめる。

 

「……それは、お前の国のものか」

 

「……ああ。この地の理では説明のつかぬ、古い時代の遺物だ」

 

ゴブリンスレイヤーは、血に汚れた自身の短剣を見つめ、それからオーンスタインの十字槍に視線を移した。

 

「……お前の槍。その十字の枝……さっき、小鬼の武器を絡めて、そのまま投げ飛ばしたな」

 

「……それがどうした」

 

「……使える。狭い場所で、相手の武器を奪い、壁に叩きつける。……槍でなくても、フックがあれば代用できるか」

 

ゴブリンスレイヤーの鉄兜が、思考を巡らせるように僅かに傾く。

彼はオーンスタインの「高潔な武技」を、即座に「小鬼を殺すための効率的な手段」として解体し、吸収しようとしていた。

 

オーンスタインは、獅子兜の奥で微かに口角を上げた。

 

「……貴公という男は、どこまでも実利の徒だな。だが、その執念……嫌いではないぞ」

 

二人は、楔石の青い光に照らされながら、無言で空洞を後にした。

オーンスタインの掌にある楔石は、まるで「もっと先がある」と告げるように、北のさらに深い暗闇に向かって脈動していた。

その内白霊とかも出すかどうか

  • 出せ
  • 出すな
  • 闇霊なら許す
  • 白も闇も出せ
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