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街の修理屋の奥、煤けた作業場に場違いな青白い光が満ちていた。
老職人は、オーンスタインが差し出した「楔石の大破片」を覗き込み、手にした槌を床に落とした。
「……騎士さん、あんた。こいつが何だか分かってて持ち込んだのか?」
「……楔石だ。武具を研ぎ澄まし、限界を超えるための糧となる」
「石、だと? 冗談じゃねえ」
職人は震える指先で、熱を帯びた結晶の表面をなぞった。
「こいつは石じゃねえ。伝説にある『神の火を閉じ込めた雫』……生きた魔力の塊だ。俺の火床(ひどこ)じゃあ、こいつを溶かすどころか、近づけただけで炉が爆ぜちまうぞ」
オーンスタインは無言で、背負っていた『竜狩りの槍』を台に置いた。
楔石が近くにあることで、槍はパチパチと共鳴するように、鈍い雷の音を立てている。
だが、その光はどこか頼りない。異世界の理に晒され続け、神代の鉄がこの世界の「脆さ」に少しずつ侵食されているのだ。
「……私の槍は、この世界の火では癒えぬ。この石の力を還すための『器』が必要だ」
「なら、行く場所は一つしかねえな」
職人は顔を上げ、北の雪山、その麓を指差した。
「かつてドワーフの巨匠たちが、地底の溶岩をそのまま引き込んで使っていたという『生きた溶岩の炉』だ。今はもう見捨てられた廃墟だが、あそこの熱なら、あるいは……」
「……その廃墟、今は小鬼(ゴブリン)の『工房』だ」
背後の扉が開き、鉄兜の男――ゴブリンスレイヤーが入ってきた。
その手には、炭鉱で拾ってきたと思わしき、小鬼たちの「新しすぎる」武器が握られていた。
「北の雪山。ドワーフの遺跡跡に、大規模な巣がある。奴らはそこにある熱を利用して、粗悪な鉄を叩いている」
ゴブリンスレイヤーは、手にした剣をオーンスタインに見せた。
「……ただの鉄じゃない。質は悪いが、折れにくい。……奴らが『火』の扱いを覚え始めている」
オーンスタインの獅子兜が、僅かに低くなった。
小鬼のような矮小な種族が、神代の火の残滓に触れ、あまつさえそれを利用して武装を強化している。
それは、騎士にとって、そしてこの世界の住人にとっても看過できぬ冒涜であり、脅威であった。
「私の槍を直すのが先か、あやつらの工房を潰すのが先か……」
「……同じことだ」
ゴブリンスレイヤーは淡々と言った。
「小鬼を殺す。ついでに、お前の槍も直せばいい」
オーンスタインは、台の上の楔石を再び掴み取った。
石は、まるで故郷を呼ぶかのように、北の空に向かって脈動を強めている。
彼が打つのではない。槍を、石を、そして失われゆく神代の火を、あるべき場所へ連れて行くだけだ。
それが、この地に残された「最後の四騎士」としての、戦いの一環であった。
「……よかろう、狩人よ。雪山の案内、貴公に任せる」
「……ああ。防寒の準備をしろ。死ぬぞ」
二人の冒険者は、凍てつく北の空を見上げた。
一人は、己の魂とも呼べる槍を修復するために。
一人は、火を手に入れ、調子に乗り始めた害獣を根絶するために。
黄金と灰色の影が、再び街の門を潜り抜けた。
その内白霊とかも出すかどうか
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出せ
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出すな
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闇霊なら許す
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白も闇も出せ