竜狩りと辺境の街   作:もいもい130

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第2話

街を歩くオーンスタインに向けられるのは、称賛でも嘲笑でもなく、ただ「警戒」と「困惑」だった。

 

辺境の街において、正体の知れぬ重装の騎士は不気味な存在でしかない。彼はその視線の中を、ただ淡々と、人の流れが吸い込まれていく大きな石造りの建物へと歩ませた。

ギルドの扉を開けると、喧騒がわずかに密度を下げた。

 

しかし、誰も彼に話しかけようとはしない。冒険者たちは、彼が纏う煤けた黄金鎧の「古さ」と、そこから漂う圧倒的な戦士の気配を敏感に察知し、ただ黙って道をあけた。

 

オーンスタインはカウンターへと進み、獅子兜を脱いで傍らに置いた。

 

赤い髪と、数多の死線を越えてきた武人の素顔。受付嬢は、その眼光に一瞬気圧されながらも、努めて平穏に接した。

 

「……登録を。名はオーンスタイン」

 

「はい。……冒険者登録ですね。こちらへ記入を。……呪文の使用回数については、いかがなさいますか?」

 

「……祈りは捧げぬ。不要だ」

 

オーンスタインのその答えに、近くで装備を改めていた数人の冒険者が、わずかに耳を動かした。呪文なき戦士。それはこの世界では珍しくないが、これほどの武具を携えながら「不要」と言い切る傲慢、あるいは自負。

 

その時、一人の戦士が、彼の背負った布に巻かれた長大な槍を一瞥し、鼻を鳴らして通り過ぎようとした。その際に、不意に肩が触れそうになる。

 

「――っ」

 

戦士は、避ける間もなかった。

オーンスタインは動いていない。ただ、彼が槍を支える右拳に、一瞬だけ黄金の火花が走った。

 

それは目に見える攻撃ではない。だが、極限まで練られた『雷の杭』の予兆が放つ「殺気」と「衝撃」が、不可視の圧力となって戦士の横面を打った。戦士は冷や汗を流し、何が起きたのかも分からぬまま、本能的な恐怖に急かされて足早にその場を離れた。

 

周囲の冒険者たちは、今の刹那に起きた「何か」に戦慄し、さらに距離を置いた。

 

魔法でも奇跡でもない。だが、間違いなく致命的な何かが、その黄金の騎士の内には眠っている。

 

受付嬢は、震える手で白い磁器のプレート――白磁等級のカードを差し出した。

 

「……承知いたしました。では、白磁等級として。……ご武運を」

 

プレートを受け取った彼のすぐ横を、一人の男が通り抜ける。

 

鉄兜に、汚れた革鎧。血と泥、そして小鬼の嫌な臭い。

ゴブリンスレイヤー。

 

二人は目を合わせることも、言葉を交わすこともなかった。

 

ゴブリンスレイヤーはただ無言で掲示板の一枚を剥ぎ取り、その場を去る。オーンスタインもまた、その灰色の背中を一瞥することすらせず、手の中の白いカードをじっと見つめていた。

 

言葉による接触はない。だが、すれ違いざまの空気。

一方は、小鬼の血に塗れた鉄。

 

一方は、雷の残光を秘めた黄金。

その「異質さ」だけが、ギルドの中に重く、冷たい残響を残していた。

その内白霊とかも出すかどうか

  • 出せ
  • 出すな
  • 闇霊なら許す
  • 白も闇も出せ
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