竜狩りと辺境の街   作:もいもい130

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第9話

炭鉱の最深部。松明の炎が、重く淀んだ空気にじわじわと侵食されていく。

銀等級の戦士が、震える手で壁の爪痕をなぞった。

 

「……小鬼(ゴブリン)じゃねえ。……ましてやオーガの仕業でもねえ。おい、黄金の。あんた、こんな足跡をつける化け物を見たことがあるか?」

 

オーンスタインは答えなかった。

獅子兜の奥で、彼は「音」を聴いていた。岩壁に反響する反響音ではない。……鎧と、武器が擦れる硬質な音。それも、この世界の兵士が纏う粗悪な鉄の音ではなく、もっと密度の高い、古びた金属が軋む音だ。

 

「――止まれ」

 

オーンスタインの声が低く響く。

次の瞬間、前方から吹き抜けてきたのは、氷のように冷たく、焦げ付いた鉄の臭いを帯びた風だった。

 

暗闇の向こうから、一歩、また一歩と、地響きのような足音が近づいてくる。

 

松明の火が届く限界。闇と光の境界線に、「それ」は立っていた。

 

オーンスタインよりもさらに頭一つ分ほど大きく、煤けた漆黒の甲冑を纏った騎士。

 

鎧の各所には、かつて底知れぬ炎に焼かれた痕跡が黒く焦げ付き、角のように反り返った兜の隙間からは、赤黒い残り火のような光が虚空を揺らしていた。その手には、炭鉱の天井に届かんばかりの巨大な『黒騎士の大剣』。

 

「……な、なんだよ、あいつは……」

 

銀等級の戦士が絶句し、後退りした。

目の前にいるのは、彼らがこれまで相手にしてきた「生物」ではない。ただ一つの殺意に従って動く、死に果てた武威の塊だ。

 

黒騎士は、松明の光の中に立つ黄金の甲冑を視認すると、無言のまま、ゆっくりと大剣を正門に構えた。

 

「……貴公も、この地に流れ着いていたか」

 

オーンスタインが槍を構える。その一動作だけで、張り詰めていた空気が物理的な圧力となって周囲を打ち据えた。

黒騎士が予備動作もなく踏み込んだ。

 

巨大な黒鉄の塊が、空気を切り裂く轟音と共に振り下ろされる。

 

石畳が粉砕され、火花が暗闇を黄金に染め上げた。

 

オーンスタインはそれを槍の十字の横枝で絡めとるように受け流すが、その一撃の重さに、黄金の篭手が悲鳴を上げた。

 

片手の刺突だけでは、この鉄塊のような強靭を誇る騎士は止められない。

 

「……下がっていろ。ここからは、この槍の真髄を見せる」

 

オーンスタインは槍を両手で深く握り直した。

腰を低く落とし、全身の重心を後ろに溜める。

 

すると、槍の十字の穂先からパチパチと黄金の火花が溢れ出し、煤けた刀身が雷を纏って輝き始めた。

 

黒騎士が返しの刃で、横薙ぎの一閃。

 

オーンスタインはその強撃を紙一重で見切り、溜め込んだ全ての力を解放した。

 

「――おおぉぉっ!」

 

踏み込みと同時に放たれたのは、雷を纏った渾身の突き出し。

 

ただの刺突ではない。重い槍の質量に、弾けるような雷の推進力を乗せた必殺の一撃。

 

ドォォォォォン!!

 

十字槍の穂先が黒騎士の胸板を正面から捉え、雷光が爆ぜた。

 

さしもの黒騎士も、その一撃の威力には耐えきれず、石畳を削りながら大きく後退する。黒鉄の鎧に深い亀裂が走り、煤けた甲冑が激しく火花を散らした。

その内白霊とかも出すかどうか

  • 出せ
  • 出すな
  • 闇霊なら許す
  • 白も闇も出せ
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