【速報】俺氏モブつきんちゅになる 作:月面の蟹
紅閻魔ちゃんと一夏の思い出とクソデカ料理を作ったり、パンプキンしばきまわしたり、石ころどころか軽自動車すら押し返せず跳ね飛ばされたり、ツリーガードに1時間どつきまわされたあとサブ垢初狩りおじさんにボコボコにされたり、戦闘機に乗ってツダケンの亡霊に取り憑かれたりしてたらこんなに時間がたってました。
光陰矢の如し、なんて言うけれど、時の流れは本当に早かった。
まあ
あれから多くの事があった。
というか、ひとまず
なーにあんな色々な知識を与えてくれちゃったのかなぁ!
まあこれはもう済んだことだから、許す、ちゃんと対策も残してくれてたから。
そうやって色々な知識を授けて、いつの間にやら私達が何も教えなくても自分達で考えて新たな発明をするようになった人類は、時折助言を求められることもあったし、天気だったり災害だったりを予報して手助けすることはあったけど、少しずつ私達の手を離れて自分の足で歩き始めた。
そうなると、俄然時の流れは速くなった。
時が進むに連れて、人々が暮らす土地が広くなっていき、多くの集落や国ができていく。
私と犬DOGEはそんな色々な土地を巡って人々の暮らしを見てきた。
その中で、私達は多くの変わりゆく価値観に触れた。
協力し合う人々も見たし、他者を蹴落とそうとする人々も見た。
人に施す聖人がいれば、人から奪う悪人もいた。
面白い人、好きになった人がいた。
怖い人、苦手な人がいた。
私を慕ってくれる人も居たし、私を恐れる人もいた。
中には私に恋をした人もいた。
人間外見より中身が大事、なんて言うけど、ウミウシ状態の私を好きになるなんて、すごく物好きだよね。
一人として全く同じ人間は居なかった。
そんな多くの価値観に触れて、私自身も少しずつ変わっていった。
だけど私が好きになった人、私が苦手だった人、どちらも同じことがあった。
私にとってはほんの一瞬に感じるほどの短い時間で、居なくなってしまう。
そうして目の前で誰かがたった一度の一生を終える度に、私は
勿論、
当時はまだ何も手出しは出来なかったけれど、そこに居るのを確認できれば少しは安心できた。
そして、その度に私は
懐かしい気持ちに浸るとともに、私はとあることに気付いた。
私はもう、昔の記録を見ないとあの頃の事を思い出せなくなっていた。
愕然とした。
あんなに楽しかったはずなのに。
彩葉に会うために頑張って来たはずなのに。
私の中ではもうあの頃の記憶は薄靄に包まれて、朧げになっている、彩葉と
気がつくと、”私”はもうあのキラキラと輝いていた”かぐや”ではなくなっていたみたい……
……でも、それは諦める理由にはならない。
もうあの景色ははっきりと思い出せなくても、『Reply』ははっきりと思い出せる、あの歌を聴いて私は彩葉に会うために地球へと帰ってきたのだから。
それに巻き込んでしまった
私は必ず現代まで生き延びて、二人と再会するんだ。
そう誓えば、私はまだ頑張れる。
更に時が経ち、現実世界はすっかり摩天楼が建ち並ぶ現代になっていた。
いや〜、途中は本当に心配したよ。
あと数十年もすればもうそろそろ彩葉も産まれる頃かなぁ〜なんて思ってたら、大戦でそこら中焼け野原、これ本当に間に合う?マジもうすぐだよ?ってなったな〜。
でも人間はたくましいもので、更地になった市街地もあっという間に整備されて、すぐに町並みが整っていった。
戦後すぐにオリンピックもやって、万博もやって、人間ってほんとすごいよね。
そして、その過程でインターネットと言うものが生まれた。
これで今まで『もと光る竹』の中から犬DOGEの視点で外の世界を見て、犬DOGEを通してしか他人とコミュニケーションが取れなかった私だけれど、『もと光る竹』をサーバーにして直接インターネットと接続すれば、私一人でも他者と繋がることができるようになった。
そもそも、久しく人間とコミュニケーションを取っていなかったのもあって、ネットは滅茶苦茶楽しかった。
今まではちょっとした事を調べるのにも、犬DOGEじゃ図書館の本すらまともに動かせないから、他人がたまたま読んでる本とか新聞からじゃないと情報を得られなかった。
もしくは、その時代の友達に調べてきてもらうかとかもできたけど、時代が進むに連れて、犬DOGEの存在が公になるのは危なくなっていったから、友達を作るのも一苦労だったんだよね。
そういう意味では、『もと光る竹』をネットに接続するのも、その維持をするのも大変だった……
お金自体はネットにつながってさえしまえば、きちんと合法で稼げるし増やせるんだけど、信頼できる人手を得るのは本当に苦労したよ。
インターネットに繋がってから私がまずした事はヤチヨを探すことだった。
そのためにヤチヨの名前を使ってホームページを作ってみたり、ネット掲示板で探したりしてみたんだよね。
その過程で8000年の叡智を持つこの私に、無謀にもレスバを挑んでくる愚か者も居たっけ。
ただ、結局ヤチヨは見つからなかったんだけどね。
今にして思えば当たり前のこと、だってヤチヨは私だったんだから。
つまりヤチヨの奴、数百歳サバを読んでやがったな?
まあそれは置いといて、自分がヤチヨだと気付いてからヤチヨはツクヨミを作り始めた。
あれもこれもとこだわっていたら、ちょーっと時間ギリギリになっちゃったけど、なんとか間に合ってよかったよ。
もうほとんど覚えてはいないけれど、それでもヤチヨが作ったからにはこれであっている……ハズ!
そんなこんなで、ヤチヨは無事仮想空間ツクヨミの歌姫となったのでした。
ヤチヨになってからは楽しいけれどドキドキの毎日だった。
彩葉は本当にツクヨミに来てくれるだろうか、ヤチヨはちゃんと彩葉を魅了できるだろうか、と。
結論を言えばうまく行った、彩葉はちゃんとツクヨミを訪れてくれて、ヤチヨのお悩み相談にもよく相談を持ってきてくれるし、ライブの抽選も毎度申し込んでくれている。
本当は毎回当ててあげたいけど、それは露骨すぎるから我慢しなきゃね。
そして、運命の日は訪れた。
ヤチヨCUP開催の準備が整って、その告知をする日、ヤチヨはかぐやを見つけた。
うわぁ懐かしいなぁ、金髪のギャルかぐや姫だ。
ヤチヨの知る通り、彩葉と一緒に来てくれたんだね。
それからは毎日彩葉とかぐやの様子をFUSHIに名を改めた犬DOGEや、分身を使って眺めたりしていた。
そうしていると、今度はヤチヨにとっては嬉しい来客、
来て数日でかぐやを見つけたのに、報告もしないでツクヨミ観光をして回ってたし、ヤチヨのライブにも申し込んでくれていた。
だから折角だし握手券付きのミニライブにご招待したんだけど、なんとビックリ!
まあそれは置いといて、つまり
最初は一言くらい言ってくれても良くない?とは思ったけれど、結局ヤチヨも
これは仕返しだとか、意地悪ではなくて、少なくとも月において歴史や時間というのは確定されたもので、未来の人間が何をやっても覆すことは出来ないとされている。
でも、それを証明する方法は存在しない、あくまでも私達がそう思い込んでいるだけで、本当は未来も過去も絶えず変わり続けていて、私達にはそれを観測できないだけなのかもしれない。
ヤチヨの余計な一言のせいで、未来ないし過去のかぐやと
それからは……とても忙しいけれど楽しくて、でも懐かしくて、苦しくて、泣きそうになる時間がとてつもない早さで流れていった。
かぐやと
彩葉は大丈夫かな……ここしばらくログインもしてないし、少し心配。
私の知る通りだったら『Reply』を作曲してくれたから大丈夫なはずなんだけど……
もうここから先は、かぐやの知らない時間。
こんな事なら、ネタバレなんか気にしないで地球の様子を見とけばよかったなぁ……時間軸的には後悔のほうが先に立っちゃった、とほほ。
ひとまず私の知る範囲をやり遂げたからか、気が抜けてぼーっとしちゃってたみたいで、彩葉からの相談お便り(彩葉だけヤチヨ直通)を受け取りそこねちゃったみたい。
送ろうとしてた内容を改めて読むと、彩葉はヤチヨがかぐやだったって事に気付いた……とまでは言わないけど、もしかしたらとは思い始めたみたい。
嬉しいなぁ……もうすっかり別人なのに、気付いてもらえるなんて……
「FUSHI、彩葉を迎えに行ってもらえる?」
『わかった、行ってくる!』
彩葉は……かぐやじゃないヤチヨの事を受け入れてくれるかな?
受け入れてくれると嬉しいなぁ。
「──この一瞬を最高のパーティにしよう──いつも、思い出してた」
ヤチヨが歌う。
「──大切なメロディーは流れてるよ──あなたのハートに──この歌で、生き残れた」
私も歌う。
私が手を上げるのと同時に、ヤチヨも手を上げる。
狐を作って、指先を合わせる。
私とかぐやのサイン、仲良しのやつ。
数千──違う違う、そんなに経ってない、まだちょっと混乱してる。
久々に感じるハンドサイン、でも淀みない動き、私達の絆はどれだけの時が挟まろうとも揺るがなかったのだ。
ヤチヨが私の手を取る。
かぐやと違って、ひんやりとした手……ん?
あれ?なんかおかしくない?
「彩葉の手はあったかいね〜、と言っても、これもコンピュータで再現した偽の体温なんだけど」
「なんで温度が……」
そう、温度だ。
まだツクヨミでは温度の再現はできてないハズなのに……
ヤチヨの記憶を思い返そうかと思ったけど、ちょっと多過ぎる、追体験したとはいえ自分のものではないから、掘り起こすのは苦労しそうだ。
「これはねぇ、かぐやと
……月のテクノロジーってすげぇ……
「本当は、味覚も再現したかったんだけど、そっちはちょーっと難しくて無理でねぇ……また彩葉とパンケーキ、食べたいなぁ……」
ヤチヨの頬を涙が伝う。
どうして
泣かないで欲しい、かぐやにはいつだって太陽のように笑っていて欲しい。
私はどうしたらいい?
どうすれば笑ってくれるだろう?
かぐやが笑ってくれるのなら私は──
その瞬間、私に電撃が走った。
わかった、まだなんだ。
「このお話には、まだ続きがある」
「彩葉?」
「私、やりたいことができた」
かぐやがこうなっちゃった理由はいくつかある、勿論私では取り除けない多くのものを含めて。
「本当のハッピーエンドまで付き合ってよね、かぐや」
「何をするつもりなの?彩葉」
でも、決して取り除くことが出来ないものしかないわけじゃない、私の手でどうにかできなくもないものだってあるはず。
だからまずは──
「かぐやの身体を創る!」
「えぇ!?やっぱり8000年記憶ツアーでおかしくなっちゃったの彩葉!?」
失礼な、おかしくなんてなってない。
既にいくらかの義肢、義体技術は開発されているし、五感の再現だってすでに先駆者がいるのだ、やってやれないことはないはずだ。
ただ、その為には協力者が要る。
私が協力を頼むことができて、なおかつこんなAIライバーに身体を創るなんていう常識外の事に協力してくれて、更に地球の最先端技術についていける凄腕の技術者兼プログラマーが。
「まあ、それはまだまだ時間もかかるし一旦置いといて……ねぇかぐや、
「あれ?
「うん、と言っても見たのは地球に来て以降だから、月でのことは知らないんだ、それに記憶多すぎて正直全然覚えてないよ」
地球なんかぶっちぎりの超技術を持つ月で(かぐやに押し付けられて)プログラマーとしての仕事もしていたかぐやの付き人、
かぐやの記憶を見た限り、まだ
理由は……まあわかる。
もし失敗してしまったら、失敗ではなくても何かのエラーが起こってしまったら、そう思ったら治すことが出来なかったんだと思う。
私だって、地球に来てからのかぐやと
その上かぐやは、私の知らない数十年の思い出もある、だからいきなり
でも、だからと言って
きっと
だからこそ、かぐやには
弱っているところにつけ込むようでちょっと申し訳ないけれど、これもかぐやと
「うーん……話すのはいいんだけど……」
「どうしたの?」
「流石にまる一日以上もヤチヨの話を聞いて、その上8000年の記憶ツアーをしたあとでしょ?今日は帰って寝た方がいいよ」
言われてみたら、確かにそうかも……
やば、意識したらいきなり目眩とか頭痛とかしてきた。
「ほら、辛そうだよ?この部屋から入ればいつでもここに来れるようにしておくから、はい今日は解散解散!」
「確かに……今日はかえって寝るわ……おやすみ、かぐや」
「うん、おやすみ……彩葉!」
次回は(まだ一文字も書いて)ないです。