その刹那に愛を──   作:星乃 望夢

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第十三話

 

永遠を願ったところで、それは無情に時を刻み続けるこの世界からすれば、ほんの一瞬の刹那に過ぎない。

 

屋上でのお弁当を食べ終え、他愛のない話に花を咲かせていると、午後の授業を知らせる予鈴が鳴り響き、その温かくて楽しい時間はあっけなく終わりを告げた。

 

「それじゃあ、またね暁美くん!」と元気に手を振って屋上から去って行くさやかちゃん。その後ろを「し、失礼しますっ」とペコリと頭を下げてついて行くまどか。

 

そして最後に、扉へ向かう直前でこちらを一瞬だけ振り向き、何か言いたげに微かに瞳を揺らしたほむらちゃんを見送った。

 

午後の授業が終わるまで、俺はまた一人きりの暇人になってしまった。

 

とはいえ、さっきキュゥべえを完膚なきまでにおちょくって黙らせた手前、わざわざまたアイツを呼び出してあれこれと煽るのも、今はどうも食指が動かない。

 

屋上の重いドアを開け、階段を下りて三階へ。

 

適当に誰もいない校舎をフラフラと歩いていると、見滝原中学の部室棟の一角に辿り着いた。

 

本来なら放課後になってから生徒たちの活気で賑わうはずのその場所。しかし今は授業中の静寂に包まれており、そこから不釣り合いな音が漏れ聞こえてきたのだ。

 

カチャリ、と。

 

上品な陶器が触れ合う、微かな音。

 

気まぐれに近づくと、扉がまるで内側にいる主の意志に呼応する魔法のように、スッと静かに開いた。

 

そこには、窓から差し込む黄金色の傾きかけた日差しを浴びながら、一人優雅にティーカップを掲げる巴マミの姿があった。

 

「……授業中に校内をうろつくなんて、随分と豪胆なのね。それとも、私の『孤独』の香りにでも誘われたのかしら?」

 

カップから口を離し、ふわりと微笑むマミさん。

 

彼女は言葉とは裏腹に、目の前の空いている椅子を、魔法の黄色いリボンを使ってスッと引いてみせた。

 

「座りなさい」という、見滝原の平和を守るベテラン魔法少女にして女王のような優雅さと――それでいて、どこか見えない「誰かに側にいてほしい」という甘えを含んだ、不器用な誘い。

 

「マミさんも、人のことは言えないでしょ」

 

俺は、授業をサボってこんなところで優雅にティータイムを満喫している彼女を呆れたように指摘しながらも、少しだけ口角を上げて、素直にその椅子へと腰を下ろした。

 

琥珀色の紅茶から立ち昇る、ベルガモットの華やかでどこか冷ややかな香りが、西日の差し込む部室に静かに広がった。

 

マミさんは自分のカップを見つめたまま、微かに震える指先でその縁をなぞる。彼女の横顔を縁取る黄金色の夕光は、あまりにも美しく、そして危うい。

 

「……不思議な人ね、まどか君。暁美さんと同じ……いえ、それ以上に、あなたからは『終わりのない時間』の気配がするわ」

 

彼女の視線が、カップの底に沈んだ茶葉から、俺の瞳へとゆっくりと移る。その紫の双眸に映る俺は、果たして彼女にどう見えているのだろうか。

 

「まるで、この世界の全てを既に知っていて、その上で、ただの『見学生』として楽しんでいるような……。ねえ。あなたから見て、この街はどう映る? ……戦い続ける私や、迷い続けるあの子たちは、あなたの目にどう見えているのかしら」

 

それは、助けを求める悲鳴だった。

 

完璧な「正義の味方」という、独りではあまりにも重すぎる仮面。その下に隠された一人の少女の、孤独な魂の震え。

 

俺は、彼女が差し出した温かな紅茶を一口啜り、ゆっくりと喉を鳴らした。そして、目の前の美しい「戦乙女」に対し、彼女たちがまだ知らない……いや、彼女たちの倍は生きてきた擦れた『大人』としての視点で答えることにした。

 

「そうだねぇ」

 

俺は背もたれに深く身を預け、窓の外に広がる、偽りの平穏に満ちた見滝原の街を見つめた。

 

「まだまだみんな子供で……。一寸先も見えない暗闇の中で、それでも何かを掴もうとして必死に手を伸ばしている。その、あまりにも不器用で、全力な暗中模索加減が……俺には、酷く羨ましくて、眩しく思えるよ」

 

マミさんが、ハッとしたように目を見開いた。

 

「戦うことも、誰かを守ろうとすることも……そして、誰かに恋をすることも。全部が全力で、命がけだ。もちろん、それは、孤独に街を守り続けてきた君だって同じだよ、マミさん」

 

俺はカップをソーサーに置き、彼女の目を真っ直ぐに見据えた。

 

「……そうした、愚かで、美しくて、救いようのないほど輝かしい様子を、なんて言うか。君は知ってるかな?」

 

マミさんは、答えることができなかった。ただ、息を呑み、俺の次の言葉を待っている。

 

「青い春――『青春』という、人生の一時にしか体験することができない、幻影みたいな日々のことだよ」

 

俺は、彼女の壊れそうな心を包み込むように、静かに続けた。

 

「結果なんて見えていなくていい。正解なんてわからなくていいんだ。ただ、誰かのために泣いて、自分のために足掻く。その残酷なまでの『生』の輝きこそが、宇宙の冷たい法則さえも無視した、君たちだけの唯一の特権なんだよ」

 

マミさんの瞳から、一筋の雫が零れ落ち、紅茶の表面に小さな波紋を作った。

 

彼女が欲しかったのは、賞賛でも、正義の肯定でもなかった。ただ、一人の「少女」として、その足掻きを認め、肯定してくれる言葉だったのだ。

 

「……青春、なんて。魔法少女に、そんな言葉……似合わないわ」

 

彼女は自嘲気味に笑いながら、けれどその雫を拭おうとはしなかった。

 

俺は悪戯っぽく片目を瞑り、甘いアールグレイの香りが漂う空間で、さらに言葉を重ねた。

 

「その権利は自由で、誰にでも平等だよ」

 

涙ぐんでいたマミさんが、不思議そうにコトリと小首を傾げる。それを見て、俺は少しだけ意地悪な笑みを浮かべた。

 

「けれども、もし君が『恋の春風』をご所望なら……ウチの妹が、最大のライバルとして立ち塞がるだろうね」

 

「えっ……? 妹さんって、暁美さんのこと? でも、あなたたち双子じゃ……」

 

ポカンと目を白黒させるマミさん。そりゃそうだ、はたから見れば俺たちはただの双子の兄妹なのだから。だが、俺は構わず肩をすくめてみせた。

 

「彼女と俺は、もう『魂の伴侶』と言っても過言じゃないからね」

 

インキュベーターの因果の糸すらねじ伏せる、途方もない愛と執着。あのクーデレ魔人の重すぎる想念と文字通り魂レベルで混ざり合っている俺としては、これは紛れもない事実だった。

 

「……けれども」

 

俺はテーブルに身を乗り出し、真っ赤になりかけている見滝原の先輩魔法少女の顔を真っ直ぐに覗き込む。

 

「君みたいな魅力的な女の子に口説かれるのも、男冥利に尽きるよ、巴マミさん?」

 

からかうような、けれど確かな称賛を含んだ俺の甘い言葉に、マミさんの顔が今度こそボンッと音を立てて林檎のように赤く染まった。

 

「なっ……ななな、何を言っているのよ、まどか君! こ、恋だとか口説くだとか、そんな……っ! あ、あなたたち、兄妹でそういう関係なの!?」

 

完全にキャパオーバーを起こし、涙も引っ込んでわたわたと両手を振るマミさん。

 

先ほどまでの孤独で優雅な『先輩魔法少女』の面影はどこへやら。そこには、ちょっと背伸びをした、からかわれるのに慣れていない年相応の可愛らしい中学生の姿があった。

 

「あはは、冗談だよ。でも、そのくらい元気な顔の方が君には似合ってる」

 

俺が声を上げて笑うと、マミさんは「……もうっ、本当にずるい人なんだから」と、真っ赤な顔のままプイッと拗ねたようにそっぽを向いてしまった。だが、その横顔に、もう孤独の影は微塵も残っていなかった。

 

先ほどまで真っ赤になってわたわたと慌てていたはずのマミさんは、ふと意を決したように顔を上げると、今度はどこか悪戯っぽい、年上の女性のような艶やかな笑みを浮かべた。

 

「……。でも、私だってただで引き下がるほどヤワじゃないわよ?」

 

紅茶の甘い香りが漂う中で放たれたそれは、見滝原をたった一人で守り抜いてきたベテラン魔法少女からの、まさかの宣戦布告。

 

完全に不意を突かれた形になったが、からかっておいてここで気圧されるような真似は、魔人の名折れというものだ。俺は手元のティーカップを静かにソーサーへと戻し、ゆったりと足を組んで彼女の挑戦的な瞳を真っ直ぐに見つめ返した。

 

「お相手仕りましょう。フロイライン?」

 

わざと芝居がかった恭しい口調で、少しだけイタズラっぽく微笑みかける。

 

黄金色の西日が差し込む、午後の静かな部室棟。

 

そこはただの中学校の一室であるはずなのに、何故だか二人きりの閉ざされた空間には、中学生らしからぬ、どこか甘く淫靡な駆け引きの熱がじわじわと満ち始めようとしていた。

 

ふわりと、華やかな香りが揺れた。

 

目の前の席から立ち上がったマミさんは、音もなく俺の背後へと回り込む。

 

そして、俺の肩に白く細い手をそっと置くと、ふわりと身を屈めて、柔らかな頬を寄せてきた。

 

耳元を掠める、甘くて少しだけ挑発的な吐息。

 

「……妹さんから、奪っちゃおうかしら」

 

普通の年頃の男子なら一発で陥落しかねない、破壊力抜群の囁きだ。見滝原のベテラン魔法少女は、どうやら本当にただで引き下がるつもりはないらしい。

 

だが、伊達にあのクーデレ魔人の重すぎる愛を魂レベルで受け止めていない俺は、そんなことでは動じない。

 

「出来るものならば……ね」

 

俺は一歩も引くことなく、背後の彼女へとゆっくり首を巡らせた。

 

鼻先が触れ合いそうなほどの至近距離。

 

黄金色の西日を反射してきらきらと輝く金糸の髪と、少しだけ熱を帯びた瞳が、至近距離で俺の視線を真っ直ぐに射抜いていた。

 

互いの吐息が混ざり合うような距離で、言葉のない火花が散る。

 

孤独な正義の味方という重圧から解放された彼女が、ほんの少しだけ背伸びをして仕掛けてきた、危うくて甘い駆け引き。俺もまた、その視線から逃げることなく、不敵な笑みを浮かべたまま彼女を見つめ返していた。

 

少しだけ首を伸ばし、顎を上げる。

 

互いの距離は既にゼロに等しかった。だから、ほんの僅かな動作だけで、二人の唇は吸い寄せられるように重なり合った。

 

「……っ」

 

マミさんの肩が、微かにビクッと震えるのが伝わってくる。

 

強気な宣戦布告をしておきながら、まさか本当に唇を奪われるとは思っていなかったのだろう。見開かれた瞳が、至近距離で揺れている。

 

よく、初めてのキスはレモンの味がするなんていう、甘酸っぱくてロマンチックな俗説があるけれど。

 

実際に触れ合った、ひどく柔らかくて少しだけ震えている唇からは、そんな味なんて一切しなかった。

 

代わりに鼻腔をくすぐり、微かに滲んだのは――ついさっきまで、この静かな部室で二人で向かい合って飲んでいた紅茶の、華やかで少しだけ渋みのある大人の香りだった。

 

黄金色の西日が差し込む、放課後手前の静寂。

 

時が止まったようなその空間で、俺は目を伏せ、ただ静かに、互いの体温と紅茶の香りを分かち合うその甘い一瞬の刹那を味わっていた。

 

そっと、重なり合っていた唇を離す。

 

微かに触れ合っただけの、ほんの数秒の短い口づけ。けれど、その破壊力は絶大だった。

 

ピンと張り詰めていた強気の糸が切れたように、マミさんの膝からカクンと力が抜ける。

 

彼女はそのまま崩れ落ちそうになるのを誤魔化すように、俺の首筋から肩のあたりにかけて、熱を持った真っ赤な顔をすっぽりと埋めてきた。

 

「……っ、本当に……ずるい、人……」

 

肩越しに聞こえてきたのは、先ほどまでの余裕ぶった艶やかな声とは似ても似つかない、涙声混じりのか細い震え声。

 

至近距離で触れ合う金糸の髪からは、ふわりと甘い女の子らしい香りと、先ほどの紅茶の香りが混ざり合って俺の鼻腔をくすぐった。

 

完全に陥落し、腰を抜かしかけて俺に縋り付く見滝原のベテラン魔法少女。

 

その華奢な背中と腰を、倒れないように片腕でそっと抱きとめて支えながら、俺は意地悪く、けれど最大限の親愛を込めて笑みを深めた。

 

「大人はズルいものなんだよ、マミさん」

 

俺の肩に顔を埋め、小さく肩を震わせている彼女の赤い耳元に顔を寄せ、わざと吐息がかかるほどの距離で、低くそう囁きかける。

 

「ひゃっ……!?」

 

ビクゥッ!とマミさんの身体が大きく跳ね、俺の肩を掴む手にぎゅっと力がこもった。

 

どうやら、背伸びをして仕掛けてきた危うい駆け引きは、圧倒的な大人の余裕(と魔人の図太さ)を持つ俺の完全勝利で幕を閉じたらしい。

 

黄金色の西日が、密室の部室棟に長く甘い影を落とす。

 

俺は、すっかり大人しくなってしまった孤独な正義の味方の温もりを腕の中に感じながら、この心地よい紅茶の香りの余韻をもうしばらく楽しむことにした。

 

腕の中で小さく身を縮めたまま、マミさんは俺の服の裾をぎゅっと、すがるように力強く握りしめた。

 

「……あと少しだけ」

 

耳元で紡がれるのは、震えるような、けれど微かな安堵に満ちたか細い声。

 

「あと少しだけ……このままで、いさせて……」

 

戦いへ赴く前の、ほんの束の間の安心を求めて甘えてくるその声を、突き放す理由なんてどこにもない。

 

俺は愛おしいもの――傷つきながらも気高く咲き続けてきた一輪の花を労わるように、ゆっくりと頷いた。そして、彼女の華奢な背中に回した腕に、もう一度優しく力を込める。

 

これは決して、ただの男女の甘い抱擁なんかじゃない。

 

誰にも頼れず、死の恐怖と隣り合わせの暗闇の中で、それでも見滝原の街をたったひとりで守り続けてきた『正義の味方』。その孤独な魔法少女に与えられるべき、あまりにも遅すぎた正当な報奨(ごほうび)なのだから。

 

「……ああ。君が満足するまで、いつまでだってこうしていよう」

 

窓から差し込む黄金色の西日が、密室に落ちた二人の影を長く、一つに重ねていく。

 

彼女の金糸の髪から漂う甘い香りと、胸越しに伝わってくる穏やかな心音。

 

俺は、彼女がこれまで一人で背負い続けてきた重すぎる見えない鎧が完全に溶け落ちるまで、ただ静かに、その温もりを受け止め続けていた。

 

 

◇◇◇

 

 

放課後の見滝原は、燃えるような夕焼けに包まれていた。

 

ガラス張りのビル群が琥珀色の光を反射し、影を長く路面に引き延ばしている。

 

「ふふっ、ふふふーん……♪」

 

前を歩くマミさんは、鼻歌まじりに軽やかな足取りで進んでいた。その背中からは、隠しきれない喜びがオーラのように溢れ出している。初対面の通行人が見ても、彼女が人生の絶頂にいるかのようなルンルン気分であることは一目瞭然だろう。

 

独りで街を守り続けてきた孤高の戦乙女は、今、その重い鎧を脱ぎ捨てて、ただの恋する少女のような輝きを放っていた。

 

だが、その後ろを歩く俺たちの空気は、それとは対照的にひどく濃密で、張り詰めていた。

 

「…………」

 

ほむらちゃんは一言も発しない。

 

ただ、俺の右手を、指と指を深く絡ませる「恋人繋ぎ」でがっちりと固定していた。

 

その力加減は、まさに万力のようだった。

 

骨が軋むほどではない。決して「痛い」とは感じさせない。だが、その絶妙な加減の中にこそ、彼女の執念が凝縮されていた。絶対に離さない。一秒たりとも、誰にも、たとえ運命にさえも引き離させない。

 

繋がれた掌から、ドロリとした重厚な独占欲が、熱を帯びた魔力のように俺の魂へと流れ込んでくる。

 

(……ごめん。本当に、ごめんって、ほむらちゃん)

 

俺は魂通信で、必死に平謝りを続けた。

 

彼女は俺の魂の『主』だ。あの部室で、俺がマミさんの孤独を癒やすために何を施したか、その唇の感触さえも彼女はリアルタイムで共有していたのだ。

 

『……黙りなさい』

 

脳内に直接響く彼女の声は、氷の楔のように冷たかった。

 

『巴マミを救うための「報奨」……。ええ、理解しているわ。戦術的には正しい判断だったのでしょうね。……でも、私の許可なく他の女に「毒」を分けるなんて……。その報い、どう受けてもらうか、今から楽しみにしておきなさい』

 

握りしめる力が、さらに一段階強まった。

 

俺の指の間を、彼女の細い指が蹂躙するように食い込む。痛くない、けれど魂が直接縛り上げられるような支配感。

 

「あ、あの、二人とも? 夕飯はどうしましょうか。私の家で食べていく? 今日はとっておきの食材を使って、腕によりをかけちゃうわよ!」

 

マミさんがルンルンと振り返る。その聖母のような、あるいは春の陽だまりのような微笑み。

 

その瞬間、俺の横を歩くほむらちゃんの周囲で、物理的に時空が歪むほどの殺気が噴出した。

 

「……いえ。私たちは、二人で済ませるわ。巴マミ、貴方は今日一日で十分すぎるほど『お腹いっぱい』になったはずでしょう?」

 

「え、ええ……。まあ、そうね。……えへへ、そうかもしれないわね」

 

マミさんは少しだけ顔を赤らめ、幸せそうに頬を押さえた。

 

俺はそんな二人の間で、冷や汗が止まらない。

 

(救われたマミさんと、嫉妬で覇道神へと覚醒しかけているほむらちゃん……。これ、どっちのケアを優先すればいいんだ……!)

 

俺の『覇道』は、宇宙を塗り替える前に、この美しき二人の少女の板挟みによって、俺自身の魂を磨り潰してしまいそうだった。

 

夕闇が深まっていく中、俺は自由の利かない右手の熱を感じながら、これから訪れるであろう「お仕置き」の時間に、密かな覚悟を決めるしかなかった。

 

 

 

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