「んなラノベみたいな…」〜マネやるつもりが演者になりました(By the way バ美肉)〜   作:リッスンブラック

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とある先駆者様の作品に触発されて書き始めました。

ゆくゆくはめちゃくちゃ特殊タグ使いまくった作風にしていきたい所存です。


01:人生二週目という名の前置き

初めはハー〇ルン、次に読〇う、そしてカ〇ヨム。

 

この3つの小説投稿サイトにアップされた、無数の名作達。

 

在野の天才が手がけたそれらをきっかけにして、VTuberという存在に興味を持った。

 

あくまで興味を持っただけで、実際に配信を見に行ったりはしなかったが。

 

強いて言っても、おすすめに出て来た切り抜きで笑うくらい。

 

にわかを名乗ることすらおこがましい。

 

とてつもなく緩い関わりしかないもんだから、現実のVTuberに特定の推しが生まれるなんてこともなく――そもそも見た目しか知らないライバーが多すぎた――頭に浮かぶのはネット小説の中のキャラばかりだった。

 

元々文字を読むのが好きな俺だ。

 

小説で時間を潰す生活が性に合っていたし、物語ゆえのご都合展開の方が読んでいて楽しくも思っていた。

 

見なきゃ死ぬってことでもないんだし、無理して見る必要もないからな。

 

社会人とは苦労の連続。1の楽しみを前に、9の苦難が襲いかかってくるようなもの。

 

小説という娯楽は、そんな苦しい日々を生きる原動力として、俺の中で大きな意味を持っていた。

 

現実は小説のように都合よく物事が進まない。はっきり言って厳しい世界だ。

 

VTuberの配信は、見ていて楽しそうで惹かれはするものの、「長そうだ」という一つ偏見がどうにも拭えなかった。

 

当時の俺は、マイペースに楽しみたいという感情がしばし強かったのだ。

 

そういう意味でも、小説という存在は、俺の欲求を満たす最適のスパイスだった。

 

当然、色々なジャンルを読み込んだ。

 

長々語ってはみたが、別にVTuberという1ジャンルにばかり傾倒していたわけでもないのだ。

 

たまたまその時、VTuberというジャンルがマイブームであった。本当に、ただそれだけ。

 

けど、後になってから思ったよ。

 

この時、VTuberがマイブームであってよかったな、と。

 

とある日のことだ。

 

その日の俺は、久々の定時上がりにテンションも上がり、チューハイ片手にささやかな晩酌を楽しんでいた。

 

多分気分が乗ってたんだろうな。

 

普段なら3サイトのいずれかを開くところで、何を思ったか配信に凸ったのだ。

 

ご丁寧に「初見です」とコメントまで入れる始末。

 

その配信の主は、事務所に所属して配信を行う、いわゆる企業勢に分類されるVTuber。

 

同接数が示す通り、コメントの数は膨大で、大半は目に入らず、入っても敢えてスルーを決め込むような内容のものばかり。

 

『初見さんですね!〇〇さん、歓迎しますよ!』

 

「!?」

 

だから正直…驚いた。

 

コメントが読まれるなんて欠片も想像してなかったし。

 

ぶっちゃけ飲み口から顔にぶっかけるレベルで仰天した。

 

:おっ初見様大歓迎だぜ

:いらっしゃい…ヒッヒッヒ…!

:末永いお付き合いお願いしますねぇ

 

「!?」

 

オマケにコメント欄のノリもいいもんだから2度仰天した。

 

小説だと割とよくある描写とはいえ、まさか現実で同じことが起きるとは…

 

これはもしや、ここから関係が深まるVTuberとリスナーのラブコメ展開か?

 

酔った頭が有り得ない上に気持ち悪すぎる思考を浮かべる。

 

今思い出してもキモいな…おぇぇっ

 

『初見さんも来てくださりましたし、もうひと踏ん張り、頑張ります!』

 

:頑張れ!

:もうここまで来たらクリアしてくれ!

:空ちゃんがんばれ!

:本当にもうひと踏ん張りだからな!

 

とにかく、この配信がきっかけとなり、本格的にVTuberに意識を向けるようになった。

 

とはいえ、すぐさま劇的に変わる訳でもない。

 

最初はふと気が向いたら見る程度だった。

 

『からしも入れてみたんですけど、どうにも臭いが気になって…』

 

:納豆は好き嫌いはっきりわかれるからな

:空ちゃんはだめなタイプだったか

:俺も混ぜすぎは苦手

:付属のタレが美味しいんですよね

 

成長を続けた彼女の登録者数は右肩上がりで、コメントが読まれる確率は格段に低くなっていた。

 

それが鼻についたかと言われれば、案外気にならなかったが答えだが。

 

無理にコメントに拘る必要なんかない。

 

なにせ、雑談も実況も、普通に面白い。

 

ライバーとリスナーの距離は、遠すぎず、近すぎずの程々の距離感。

 

俺のような視聴者からすれば、とても居心地のいい配信だった。

 

配信やアーカイブの視聴回数が重なる毎に、俺の心は、少しずつながらも確実に惹かれていった。

 

その証拠に、ある程度の時間が過ぎる頃には、わざわざ通知設定をオンにしてまで、定期的に見に行くようになっていたのだから。

 

『いやぁぁぁぁぁぁ――ッ!?』

 

:うわ!?

:今のは我ながら驚いた

:悲鳴たすかる

:知ってても怖い!

:ヒィ!?

 

特にホラゲー実況が好きで、一々のリアクションがデカくて面白いのが好みだった。

 

VTuberという沼に、どんどんと沈み込んで行く様を実感し、我ながらちょっと笑ってしまったこともある。

 

小説投稿サイトでは、元々多ジャンルに手を出していた俺だ。

 

完全にハマってからというもの、当然1人のVTuberだけでは満足できなくなり、様々なライバーの配信を巡りに巡るようになった。

 

一応言っておくが、イベントとかライブとかには行ったことはない。

 

沼にハマりはしたが、俺はあくまでもライト層。

 

例えスパチャを投げていようとも、赤じゃないのでライト層なのだから。

 

日々を過ごしていく毎に、いつの間にやら、毎日の娯楽としての地位を確固たるものにしていたVTuber。

 

ネット小説に対する熱意も負けておらず、VTuberを題材とした小説を書き上げ、ネットの大海へと放流したりもした。

 

なにせ見本がすぐ目の前にあるんだ。インスピレーション湧きまくりである。

 

隙間時間で小説を読み漁り、家で配信に笑ってと、一喜一憂している内に、段々と苦しい毎日が楽しく感じるようになってもいた。

 

心境の変化は行動にも繋がり、美味しい仕事が取れることも多くなってきた。

 

「これからの人生は、薔薇色かもな」

 

希望を見出した矢先に…死んだ。

 

人生二週目だと気付いたのは、ある日唐突のこと。

 

内側からハンマーかなんかで叩かれてんのかよってくらいの激痛が頭を襲った。

 

死ぬほど痛かったし、「ぼく、死ぬの…?」と涙したほどだ。

 

「いやだ!2回も死にたくないよっ!……ん?2回???」

 

幼な子な自我は泣きごとを吐いたが、ふと違和感を抱いてからは早かった。

 

次々と前世の記憶が脳内に溢れ出し、幼児の脳がスポンジの如く次々に吸収。これの繰り返し。

 

整理がついてからの第一声がこちら。

 

「転生ってマジであんのかよ!?」

 

こうして、物語の中にしか存在しないと思われた、第二の人生を歩み出した俺。

 

とりあえず勉強したよね。

 

よく言う「もっと勉強してればよかったって強く思うのは大人になってから」がマジでそれなので、これ幸いと知識を頭にぶち込みまくった。

 

いずれ高音が出せなくなるカラオケ等も、今のうちだと全力で楽しもうとした。が、舌足らずで上手く歌えなかった。

 

早めに体力を付けようとランニングも始めた。

 

副産物として強化された足は速さが増し、まさにその理由でモテた小学校。

 

嬉しさ差し置いて悲しさが込み上げてきた。

 

チヤホヤされてダメージ食らう経験なんてしとうなかった…

 

何するにも負い目が付きまとうもんだから、小中は持ち込んだラノベで静かな時を過ごした。

 

高校に入ってからは、勉強に力を入れ始めた。

 

いくら二週目でもノー勉でやり過ごせるスペックはなかったんや…

 

でも二週目の高校生活マジ楽しすぎたな。毎日が順風満帆すぎたわ。

 

「今日カラオケ行かね?」

 

「いいな!歌おうぜ、思いっきり!」

 

「ふっ、――言ったな?」

 

「あっ、スゥゥ…」

 

「賢祐(けんすけ)クゥゥゥン?ちょォォっとお願いがあるんだけどォ?」

 

「わ、わりぃ!ちょっと今日用事あったわ!」

 

「逃がすかァ!!」

 

「ぎゃぁぁぁぁ――!?」

 

なんてこともあったな。うんうん。

 

我が親友達司(たつじ)よ。

 

俺、常々思ってたんだよ。お前の顔、NTR物の竿役みたいだなって。

 

「何がNTR物の竿役だよ失礼だな」

 

「いや、ぶっちゃけ肌黒くない代わりに髪の毛黒い竿役だろ」

 

「フン!」

 

「いでッ!」

 

前世ではとっくの昔に出せなくなっていた高音を、今世の俺はこの歳でまだ出せる。

 

てか出せるようにした。

 

そのおかげで今でも女性ボーカルの歌も楽々歌えるんだし、過去の俺には感謝しかない。

 

聞いてるか、過去の俺。お前これからめっちゃ報われるから頑張れよ。

 

すんげぇ嬉しい評価もセットでついてくるからな!

 

女の子にしか聞こえないっていうお墨付がな!

 

文化祭での「DK(ドンキー)バンドかと思ったら、JKボイスが出て来た」という後にも先にもこれっきりな感想にはめっちゃ笑った。

 

マジで腹筋を抑えるのに死力尽くしたわ。

 

高校卒業後は近場の大学へと進学、まずまずの成績を残して新社会人に。

 

選んだのは営業職。

 

前世の事務職とは異なる仕事がしたくて選んでみたのはいいものの、どうにもしっくり来なかった。

 

すぐにやめるにも勇気が足りず、そのままズルズル続けることに。

 

転職もまた同じで、まず転職先がすぐに見つかるのかという不安に駆られる時点で心が折れる。

 

幾度も読んできた物語の主人公たちなら、こういう時は頭を振るって転職を決意したり、一念発起で起業したりもするんだろう。

 

だが、どちらの選択も俺には取れない。

 

前世の苦労が判断を鈍らせる足枷になっていた。

 

結局、書くだけ書いた退職届は引き出しの奥へと仕舞われた。

 

そんなこんなの社会人三年目のとある日、高校時代の親友、達司(たつじ)から電話がかかってきた。

 

「もしもし?」

 

『おう賢祐、元気してるか?』

 

「元気だよ。…体はな」

 

『心はダメだったかー』

 

スマホ越しに聞く達司の声は、高校の頃から変わっていなかった。

 

相変わらずの、よく通る明るい声だ。

 

「つーか、どしたよ?こんな急に」

 

『へっ。聞いて驚けよ?実はな』

 

こういう時だいたいくだらねぇこと言うんだよな。

 

ま、ちょびっとだけ期待してやるか。

 

『俺、起業することにした』

 

前言撤回、全然くだらなくねぇ!?

 

「はっ、おま!?起業するっつったか!?」

 

『おう言った』

 

「…本気なのか?」

 

『冗談でこんなこと言うと思うか?俺が』

 

「思わ、ないな」

 

『ならそういうことだ』

 

マジかよ。達司のやつ、マジで起業する気なのか?

 

一度口に出したら最後まで貫き通すこいつのことだから、本気と書いてマジなんだろうけど。

 

「お前、自分が何しようとしてるかわかってんのか?」

 

『分かってるに決まってるだろ』

 

「本当に?」

 

『簡単なことじゃないのは百も承知だ。その上で決めた』

 

「そう、か」

 

興奮のあまり、無意識に振り上げていた腕を下ろす。

 

もうこうなったら達司は聞かない。忠告したって耳に入れるだけだろう。

 

だったら、俺がすべきことは一つだけ。

 

「頑張れよ。死ぬほど応援してやっから」

 

親友として、達司の背中を押してや『いや、そうじゃなくて』ること……え?

 

『お前も来ないか?』

 

「来ないかって、俺がか?」

 

『お前以外に誰がいるんだよ』

 

「いや、そりゃ…そうだけど」

 

『面白いこと仕事にしたいって言ってたろ?』

 

「それは、確かに言ったな」

 

『俺が立ち上げようとしてる会社なんだけどな、事務所なんだよ』

 

「事務所?なんの」

 

『VTuber』

 

「VTuber!?」

 

ぶ、VTuberって…VTuberだよな!?

 

えっ、本気?ガチかこれ?

 

いやいや、嘘だろこいつ…本当にVTuber事務所立てるつもりでいるのか!?

 

そもそも達司とVTuberが全然繋がらねぇんだけど。どういう経緯だよ。

 

「お前、VTuberのことわかるのかよ」

 

『それ、仮にも事務所立ち上げようとしてるやつに聞くことか?』

 

「…わりぃ、忘れてくれ」

 

まぁそりゃそうか。今のは俺が悪い。

 

『お前、結構最初の方から推してたもんな』

 

「まぁな。今でも配信覗いたりしてるぞ」

 

『そうこなくっちゃな。ここまで言ったらもうわかったろ、お前を誘った理由』

 

「一目瞭然ならぬ、一聴瞭然だよ」

 

理由は理解した。

 

けど、理解と納得はまた別だ。

 

達司には悪いが、俺は臆病者なんだ。

 

だから…『YESかNOで答えろ。今の会社に満足してるか』…は?

 

『賢祐、お前言ってたろ。「働くなら満足できる会社」だって』

 

――お前、今どうなんだよ。正直に答えろ。

 

「…俺は」

 

満足してるか?と聞かれたら、答えは一つ。

 

してる訳がない。

 

むしろずっと辞めたいって思いながら仕事してるっつの。

 

『だったら尚更だ。俺の会社に来いよ』

 

「…声に出てたか?」

 

『バッチリな』

 

安定はしている。だが、それだけだ。

 

今の生活は、俺の求める満足とは程遠い。

 

だが、達司が立ち上げる事務所がそうであるという保証もまた、無い。

 

けど……

 

『背水の陣365日セット、プレゼントしてやれるぜ?』

 

「はっ、なんだよそれ」

 

その一言が決め手だった。

 

「決めたよ。乗った」

 

『そうこなくっちゃな!』

 

せっかくの人生二週目なんだ。

 

楽しまなきゃ損だよな!

 

達司の言葉を後押しに、引き出しから退職届を回収。

 

直前でまた迷いはしたものの、最後はキチンと己の意思で提出。

 

惜しまれながらの、円満退職となった。




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