いつだったか、時折妙に大人びた目をする男の子の友達がいたことがあった。
普段は明るくて、元気溌剌って感じ。外で大人数で遊ぶのが好きって言っていたけど、私と二人で部屋でトランプをしたり、ゲームをしたりするのも結構楽しんでくれてたりして。
仲良くしていた期間は全然長くなくて、一か月くらいだった気がするけど。
でも君がくれた言葉を、あの時間を忘れることはきっとない。
今思い返せば......君はあのときから手を差し伸べる人じゃなく、自分から立ち上がりたくさせてくれるような、そんな人だった。
***
私は、彼と付き合い始めてから少し変わった気がする。
正確に言えばそういわれることがたまにあるから、それで自覚したんだけど。
担任の先生には少しドライになったと言われた。
一年の時からのクラスメイトには前より付き合いやすくなったと言われた。
リョウは「虹夏が私に愛情を分けてくれなくなった。つらい。」と言っていた。
いまいち要領を得ないようでいて、でもしっくりくるし、なんとなくその自覚もある。
自分が恋人に影響されているらしいことを他人から指摘されることにむずかゆくなる。口角が上がってしまう。
「おい虹夏。なにニヤついてんだ。仕事しろ、仕事。」
「ニヤついてないから!もうっ。」
会話を聞いたリョウがニマニマしながら近寄ってくる。絶対ろくなこと言わない。
「そろそろ来るからでしょ。ヤツが。」
ほら。
とかいってたら、ドアのきしむ音が小さく鳴った。
「おはようございまーす......って何ですかこの空気。なんでこんな注目されんの俺。」
目が合い、肩をすくめる。私を見ても何にも言えることなんかないよ。
なんとも言えない空気の中入り口からの階段を下りてくる中肉中背の男子。タイミングの悪さには昔から定評がある。
一通りお姉ちゃんやPAさんに挨拶して、私とリョウのほうに来る。
「おはよ。虹夏」
「...おはよ。律。」
少し目じりの下がったほほ笑みの中に、私がギリギリ照れないくらいの『好き』が入ってる。それを疑えないような彼の人柄に、少し嫉妬する。
律は会うたびにこの表情と視線をくれる。最初の頃はなかなか目を合わせられず苦労したことを思い出す。
「およよ...私はいつも蚊帳の外...」
「あぁーーそりゃそうだ。なぜならお前は俺の彼女ではない。」
まだ謎のノリを続けるリョウ。しつこいなコイツ。
「ほら律、準備してきなよ!またお姉ちゃん睨んでるよ~?」
「そーする。」
お姉ちゃんのほうへ振り返り、苦笑してからバックヤードへ向かう律。
私の好きな場所。
スターリーの営業が今日も始まる。
高校二年、春。まだ