みんなを守ると誓ったから...!〜導く者の決意〜   作:隼桜

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3話 芋女に救済

カイルはアニとの食事を終えると訓練所のグラウンドへ足を向けた。その手には水が入った袋とパンがひとつ握られている。

 

食事する前と違い、もう当たりは薄暗くなりはじめていた。

 

そんなグラウンドに一人走り続ける影があった。

そう、言わずもがなサシャである。

足はもつれそうになっており、汗はダラダラ、今にもぶっ倒れそうといった様子である。

ザッ...ザ...ッ...

ザッ... ...バタン!

 

 

あ、今倒れた

 

 

限界まで走り続けた少女はうつ伏せに倒れ、もはや死んでいるようにしか見えない。

 

カイルはサシャにそっと近づいた。

すると、サシャは急に

 

すんすん

 

と匂いを嗅ぎ始めた。

何かを探知したらしい。

次の瞬間

 

バッ!

 

目にも止まらぬ早さで一直線に

カイルの手元に持っているものに飛んでそれを口に咥えた。

 

カイル「うぉ!」

 

先程までぶっ倒れていたのが信じられない速さで飛んできたサシャにカイルは少し驚いたように声をあげる。

 

サシャ(これは!?)「パァン!!」

 

カイル「ごめん、俺の残りだけど、良かったら食べてよ。あ、喉詰まらせないでね?」

 

カイルは水を差し出す

サシャはカイルの顔をまじまじと見つめる。

 

サシャ(え!?...神様?)*サシャにはカイルに後光が指しているように見えています*

 

サシャはカイルの手をガッと掴む。

 

サシャ「神様ですか!?あなたが!」

 

カイル「...うん、違うよ〜?」

 

サシャ「では、女神様?」

 

カイル「まず性別考えようか?」

 

サシャ「でも!こんなものくださるなんて!神様以外有り得ません!」

 

サシャの目は生気を取り戻したようにランランと輝きを放っている。

 

カイル「いいから食べな、お腹すいてるでしょ?」

 

カイルはサシャに食べるように促す。

 

サシャ「はい!」バク!もぐもぐ!

 

カイルの言葉にサシャは元気に食べ出す。

だがすぐに、「ん!?ごほ!ごほ!」と喉に詰まらせる。

その様子にカイルは「さっき詰まらせるなって言ったばっかでしょ」とすぐに水を差し出して飲ませ背中をさする。しばらくして落ち着いたようで、サシャはゆっくりとパンを食べ進めた。

 

サシャ 「ご馳走様でした!ありがとうございます!このご恩は一生忘れません!えーと...?」

 

お礼を言おうとしたサシャが困った顔をして斜め上を見る。

カイルは何に困っているか察したように返す。

 

カイル「あ、まだ名乗ってなかったね。俺はカイル...カイル•フューラー、よろしくねサシャ。」

 

カイルはサシャに向けて微笑む。

 

サシャ「私の名前はもう知ってるんですね。でも改めて私はサシャ•・ブラウスです!よろしくお願いしますカイル!」

 

2人は改めて自己紹介をする。

 

???「あ!もう先越されちゃってたみたい!」

 

突然声がして、2人は声がした方をみる。

 

???「水とパン持ってきたけど少し遅かったみたい...」

 

そこには綺麗な金髪を肩口ほどに整えてる小柄で美麗な少女がいた。

 

カイル「ん?君は?」

 

カイルはその少女に訪ねる。

 

???「私はクリスタ、クリスタ•レンズって言うの、よろしくね、ふたりとも!」

 

クリスタと答えた少女は2人に挨拶をする。

2人は口々に「よろしく(お願いします)」と返し、クリスタにも自己紹介をした。

 

クリスタ「でも、まさか先越されてるとは思わなかったな」

 

カイル「あぁー、まあ、さすがに飯抜きは可哀想だし、ちゃんと一生懸命走ってるからパンぐらいはねって思ってね。」

 

全く飾る気もないようにカイルは言う。

 

サシャ「そうです!カイルはまさしく!命の恩人です!」

 

サシャは元気に答える。

今にもしっぽが見えてきそうなぐらいキラキラした目でカイルを見る。

 

クリスタ「それはよかったね、じゃあこのパンは要らな────」「いいえ!いただきます!」

 

サシャは光の速さでクリスタのもっているパンを奪い取る。次はバクバクと食べ進め。あっという間にパンはサシャの胃袋に消滅した。

 

 

サシャ「.....ごっくん!ご馳走様でした!...でも...もう限界...です...」ドサッ!

 

サシャは眠気が限界だったようでその場で倒れてしまった。

 

カイル、クリスタ「サシャ!?」

 

サシャ「Zzz」

 

カイル「寝てるだけっぽいね、さすがに走り疲れてたか」

 

クリスタ「ほんとにずっと走ってたもんね。でも、こんなところで寝てたら風邪を引くし、宿舎まで運ばないと────」

 

クリスタがそう言いかけた時後ろから少し低めの女の声が聞こえた。

 

???「おい、何やってんだお前ら?」

 

その声に2人は声のした方を見ると焦げ茶色の髪をショートヘアにしている女子にしては少し背の高いそばかす少女がこちらを見下ろしていた。

 

クリスタ「えっと、この子は今まで走りっぱなしで...」

 

???「芋女じゃない、お前らだよ。お前ら何やってんだ?特にお前は晩飯のパンを隠してる時からイラついてた...」

 

そばかす少女はクリスタに向けて言い放つ。

 

???「なあ、お前いいいことしようとしてるだろ?」

 

クリスタと表情は焦っていた。

 

???「それは芋女のためにやったのか?お前の得た達成感や高揚感はその労力に見合ったか?」

 

クリスタ「え......」

 

言葉に詰まるクリスタ

 

クリスタ「私は、私が...こうしたかったのは...役に立つ人間だと思われたいから...なのかな...?」

 

???「は!?知るかよ...」

 

「何言ってんだこいつ」と言わんばかりの顔をクリスタに向ける

 

???「んで、そこのお前もだよ、直接芋女に飯やってたのはお前みてぇだけど、お前もそいつと同じ口か?」

 

今度はカイルに矛先が向いた。

 

カイル「ん?俺?俺は特にそんなつもりはないよ?役に立ちたいとか思ってるわけじゃないし。ただ、頑張って走ってるのに飯抜きとかやりすぎだなって思ってね」

 

カイルの言葉に疑わしい目を向ける。

 

カイル「ま、なにより、教官に飯抜きって言われた時のサシャの顔があまりにも可哀想で忘れられなかっただけだけどね?」

 

全く裏の無い瞳と表情で続けた。

その表情に本心でそう言っていると見抜いたようで、毒気を抜かれたように「はぁ」とため息をついた。

 

???(なんだこいつ、まじで言ってやがるのか?変なやつだな...こんなに本心で人助けるやつなんてそうそういねぇよ...)

 

そばかす少女はじっとカイルの顔を見て再びため息をついた。

 

???「は、片や女神気取りと、片やよくわからんバカと...」「おい誰がバカだって?」「いいから、とりあえずこいつをベッドに運ぶぞ」

 

そばかす少女はサシャの肩に腕を回す。

 

???「おい、お前も手伝え、男だろ?」

 

カイルに声をかけ、手伝うように言う。

カイルは立ち上がりそばかす少女と同じように肩を組む。

 

クリスタ「あなたは何で、いいことをするの?」

 

ユミル「こいつに貸し作って恩に着せるためだ...こいつの馬鹿さには期待できる」

 

そう言いって意地の悪い笑みを見せ、サシャを運んでいく。

クリスタはその言葉に納得できたのかは分からないが、一瞬呆けた顔をした後、立ち上がり、水の入った袋を持ってカイル達について行くのだった。

 

???「そういやぁ、まだ名乗ってなかったな、私はユミルだ。」

 

思い出したように前を向いたままクリスタとカイルに名乗る。

 

カイル「ユミルか、よろしくな」クリスタ「よろしくね、ユミル」

 

 

 

──────────

 

そのままサシャをふたりで宿舎の前まで運んだ。

 

クリスタ「ここまで運んでくれてありがとうカイル。ここからは私でも大丈夫だから、また明日からの訓練頑張ろうね!」

 

そうカイルに微笑む

 

カイル「わかった、じゃあ任せるよ。お互い頑張ろう、これから、もちろんユミルも」「わーってるよ」

 

カイルはサシャからゆっくり離れ自分の宿舎に向けて歩き出す。が、少し行ったところで振り返る

 

カイル「あのさ、クリスタ」

 

クリスタ「?」

 

カイル「こんなこと言うのはダメかもなんだけど君のその貼り付けた用な作った笑顔よりもっと心から笑ってるのを見たいなって俺は思うけどな...?まあ、とんだお節介だよね。ごめん、じゃ、また明日」

 

クリスタ「え?ちょっとカイル!」

 

呼び止めるも聞こえていないのかカイルは足早に去っていった。

 

ユミルは興味深げにカイルを見ていた。対照的にクリスタは何を言われたのか理解出来ず固まってしまった。そしてこの時はまだ知らない、

 

あの少年によって心からの笑みを取り戻すことを。

 

 

 

 




現在公開可能な情報

カイルは無自覚で人を救うが、全て本心から守りたいと思っている。それも、あの日の母親の言葉を忘れず貫こうとしていることの一端である。
ちなみに今回クリスタの作り笑いに気づいたのはたまたまである。
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