黄泉帰り少女は生きるために呪いを祓う。   作:ねお猫

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主人公、死す。

 

 

 

見上げればどんよりとした曇り空。

 

ようやく学校が終わって気楽になれる帰り道、私は最悪の気分になっていた。

 

最近ずっと晴れていたのに、今日に限ってこんな天気なんて。

 

「早く家帰りたい…」

 

学校から家までの最短ルートの途中にある、公園を通り過ぎようとした。

 

仲良くはしゃいでいるちびっ子たちの声にひどくイライラする。

 

歩いていたら突然、身体に鋭い痛みが走った。

少し視線を下げると、服に赤が滲んでいた。

 

「…えっ?」

 

体が傾き、視界が暗転した。

 

あ、もしかして私死んだ?

 

 

 


 

「五条さん、緊急の任務です。ここから10分ほどの場所にある〇〇町の公園で、1級相当の呪霊が発見されました」

 

「えぇ〜、めんどくさ〜い」

 

「そんなことを言われましても…」

 

「あっ、そうだ!悠仁たちが行ってきなよ!いい訓練になるよ〜」

 

「ちょっ、待ってください!一級相当ですよ!?流石に俺たちだけじゃ厳しいです!」

 

「そーだよ、五条先生が行けばいいじゃん」

 

「えぇー…じゃあ、僕が一応帳の中に入って、君達の戦闘を眺める。で、皆がピンチになったら助けてあげる。これならどう?」

 

「まぁ…それなら行かないことはないですけど…」

 

「早く行こうぜ!伏黒、釘崎!」

 

「ふっふっふ、この私がパパッと祓ってあげるわ!」

 

「なんでそんなノリノリなんだよ…」

 

「じゃ、伊地知連れてって〜」

 

「は、はい。こちらです」

 


 

「では、帳を下ろします。ご武運を。闇より出でて闇より黒くその穢れを禊ぎ祓え」

 

公園を覆うように帳が下ろされ、あたりが暗くなった。

 

「じゃ、僕はこのあたりにいるね〜。ガンバッ!」

 

 

「おい、伏黒、釘崎!あそこ!」

 

虎杖が指を刺した先には、奇妙な形をした、醜悪な呪霊がいた。

 

「なにあの見た目、きっも!」

 

群青色の巨大なスライムのようで、見るだけでネチョネチョしているのがわかる。

そして体のあちこちから、巨大な腕や先の尖った触手のようなものが出てきている。

 

「よっしゃ、行くぞ!」

 

「ッ、待てっ、虎杖!」

 

伏黒が何かに気づき、駆け出そうとしていた虎杖を止めた。

 

「なんだよ伏黒、早く祓っちまおうぜ?」

 

「おい、あの呪霊の右側の後ろの方を見ろ!」

 

そこには、ランドセルを背負った少女が倒れていた。

 

「あの子の救出が最優先だ。虎杖と釘崎は呪霊を引きつけろ!その間に俺があの子を安全な場所へ持ってく!」

 

「了解!あの子の救出頼んだぞ伏黒!」

 

「応!」

 

虎杖と釘崎が走り出す。

 

「おいこらスライム野郎!ぶっ飛ばしてやるから着いてこい!」

 

虎杖が大声で呪霊を煽り、倒れた少女がいる方の反対の方向へ全力で走る。

呪霊は体を引き摺るようにして虎杖のあとをついて行く。

 

伏黒は少女の方へと走っていく。

 

「おい!大丈夫か!」

伏黒が呼びかけるが、少女は返事をしない。

あわてて脈をとる。

 

すでに少女の脈はなかった。

 

少女の上半身にある、大きな傷からは血が滲んでおり、服はすでに傷口のあたりは真っ赤だ。

 

(クソッ、また…!また、津美紀みたいな罪の無い善人が、こうやって…!!)

 

(どうすればいい?心肺蘇生をしてみるか?いや、体温が下がりすぎている、死んでから結構たつだろう。となると、蘇生は諦めるしかないか。これ以上被害を出さないように、はやく呪霊を祓わなければ…)

 

伏黒は少女の元を離れ、呪霊を引きつけている虎杖の元へと行く。

 

「おっ、伏黒!…あの子は?」

 

「…スマン。無理だった」

 

「…別に、伏黒のせいじゃないだろ、悪いのはあのクソ呪霊だ!祓ってやろうぜ!」

 

「…応!」

 

 


私は、雲の上を歩いていた。

 

…冗談じゃないよ!?極めて真面目に現状を説明してるよ!?

 

視界が暗転したあと、気づいたら雲の上で寝ていた。

 

どうすれば良いのかわからないから、とりあえず歩いてここを探索してみようという考えて、今に至る。まぁ、歩き始めて10分ぐらいしか経ってないけど。

 

けど、歩いても歩いても景色は一向に変わらない。

 

多分、私はあの時に死んじゃったんだよね。なら此処は、あの世なのかもしれないな、って最初は考えてた。

 

けど、結構歩いたはずなのに三途の川は見当たらないし、それどころか雲の上だし、なにかおかしなことになっちゃったんじゃ…

って、思うようになってきた。

 

だって、明らかにおかしいでしょ。死んだら何も無い雲の上に行く…なーんて聞いたことないよ。

 

で、こうなっちゃった理由を考えると、一つだけ思いついた。

私が死ぬ時、なぜか上半身に大きな傷ができてたんだよね。ナイフとかでザクッてやられた記憶もないし、何か摩訶不思議な出来事が起きちゃったとしか思えない。

 

だから、この摩訶不思議出来事に巻き込まれたのがこうなっちゃった理由なんじゃないかなーって。

 

まぁ、もしこの考察が正解でもどうにもならないんだけどね。

 

 

 

あっ、なんかある。

あれは…天使の像?

 

 

「んー…天国への入り口かな?」

 

もしそうだとしたら、ようやく何も無い雲の上からおさらばできる。

 

私は正直、まだ生きていたかった。けど、こうなった以上は諦めるしかない。

 

「まだ、ダメだよ」

 

「…え!?なに!?だれ!?」

 

突然後ろから声が聞こえた。慌てて振り向いたけど、誰もいなかった。

 

「まだ、君には生きる権利がある」

 

さっきの声とは別の、囁くような声が、どこからか聞こえる。

 

「…貴方達、どこにいるの?というか、誰?」

 

「…まだ、君が知る必要はないよ」

 

「君はまだ生きてたいんでしょ?」

 

「そりゃまぁ…そうだけど…」

 

「なら、その像に触れてはいけない」

 

「その像に触れれば、君は完全にあの世に行くことになってしまう」

 

「あ、やっぱそうなんだ」

 

ここはまだあの世じゃない。そのことが分かった

 

「じゃあ、どうしたら生き返ることが出来るの?」

 

「…手を出して」

 

虚空に向けて両手を差し出す。と、どこからか透き通った水色の丸い石のようなものが現れた。

 

「それを、強く握って。そうすれば、君は生き返ることができる」

 

「…ありがとう。ねぇ、貴方達は誰なの?」

 

「…フフ、ナイショ。もう、此処にはこないでね。ちゃんと、生きるんだよ」

 

「…うん」

 

私は、石を強く握った。すると石が輝き、不思議な光に包み込まれて、私は意識を手放した。

 

 

 


 

 

伏黒と虎杖は攻撃する隙を狙って、全力で呪霊の前を走っていた。

 

呪霊は走っている虎杖や伏黒のところを尖った触手で狙ったり、巨大な腕で殴ってきたりしている。

 

「虎杖、近接戦に持ち込むぞ!玉犬白!黒!」

 

「おっしゃ!」

 

一方その頃、釘崎は公園の木々に、釘を打ちつけていた。

 

「よし、虎杖ィ、伏黒ォ、こっちに追い込め!!」

 

釘崎は「簪」による攻撃を狙っていた。

 

が、呪霊は釘崎の大声に反応して、その木々の方に巨大な腕での攻撃をかました。

 

「ヴォ、ウェヴォヴォォォー」

 

呪霊は小さなスライムみたいなのをどこからか呼び出した。スライム達は四方八方に動き、何かにぶつかると爆発した。

 

 

「‼︎このミニスライムにぶつかったらやばいぞ!」

 

「分かってるよッ!」

 

ミニスライムが巨大な本体を囲んでしまったため、無闇に本体に近づけない。

しかし、その間にも本体の触手&巨大腕攻撃は止まらない。

 

虎杖らは避けるのに精一杯で、攻撃に転じることができない。

 

「これが一級呪霊…これ特級といっても良いぐらい強い気がする…」

 

釘崎は釘を飛ばし続けているが、ミニスライムに妨害されて本体に当たらない。ミニスライムの数は減るが、 道が開けるほどの数は倒せず、釘が減っていくばかりだ。

 

その様子を見た伏黒が、作戦を思いついた。

 

「虎杖、脱兎で隙を作るからその間に重い一撃をかませ!」

 

「おう!」

 

「…脱兎!」

 

大量のウサギが現れ、本体スライムに跳びついていく。

 

ミニスライムがウサギの妨害をするが、同時にミニスライムの数も減っていく。

 

「今だ虎杖!道がひらけたぞ!」

 

「…ハァッ!!」

 

虎杖が本体のところまで突っ込み勢いよく殴りつける。

 

本体スライムは殴られたところから尖った触手を出してきた。

 

「ッ、危ねぇ!」

 

虎杖はギリギリ避けることができた。そして伏黒がいる方に戻る。

 

「虎杖、殴った感想は?」

 

「柔軟でダメージが入った気がしねぇ」

 

「だよな…、どうすればいいんだ?」

 

そこに、釘崎が走ってくる。

 

「おい、もうすぐ私の釘が尽きるんだが」

 

「え!?もう釘足りないの!?」

 

「どうすればあいつにダメージを与えられるんだ…?」

 

「俺たちの攻撃だと全然火力がたりねぇよな」

 

「「「うーん…」」」

 

悩む3人に襲いかかる巨大な拳。

 

3人は慌てて避けるが、さっきまでいたところには大きなクレーターができていた。

 

「こいつの攻撃喰らったら即死だよな…」

 

その頃五条は、状況を静観していた。

(おそらくあの呪霊は特級レベル…攻撃速度は普通レベルだが、火力は高く、本体も柔軟でダメージが通りにくい。悠仁達とは相性が悪いな。攻撃を避けるのは容易いが、長期戦になるに連れ、こちらが不利になっていく)

 

五条は、もう少し戦わせるか、諦めて自分が参戦して倒すか、悩んでいた。

 

 

そして次の瞬間、世界が白く、青く、光った。

 


 

数秒後、伏黒達の目に映ったのは、雲一つない青空と、薄黄色の斬撃を浴び続けている呪霊だった。

 

「「「は…?」」」

 

「ここはおそらく、領域だよ」

 

いつの間にか3人の背後にいた五条が言う。

 

「ほら、あそこ」

 

五条が指差した先には、少女が立っていた。

 

「あ、あの子、さっき倒れてた子です!俺が確認した時は、すでに脈はなかったはずなのに、なぜ…?」

 

「つまり、あの子が生き返って領域を展開したってこと?」

 

「それは摩訶不思議な事件だねぇ。無意識に領域展開なんて、普通はできないよ。そもそも、生き返っていること自体が謎なんだけどね」

 

「せんせー、どうして俺らにあの斬撃の嵐がこないの?」

 

「多分、あの子が敵意を抱いているものを自動で選ぶんじゃないかな」

 

「そんなことが可能なんですか?」

 

「不可能ではない。対象を選ぶ領域なんてなかなかないと思うけどね」

 

「流石にそろそろ呪霊死んだんじゃ…」

 

呪霊は、斬撃の嵐で体を刻み込まれ、塵となって消え去った。同時に斬撃も止んだ。

 

「そのー、つかぬことをお伺いしますが、ここはどこでしょうか…?」

 

少女が4人の近くに歩いてきて、話しかけてきた。呪霊にやられた傷によって血まみれとなった服のせいで、亡霊に見えてくる。

 

「…」

 

五条が返事をせずに、少女の額にデコピンをした。少女は気絶し、領域は解けた。

 

「五条先生、返事、しなくてよかったんですか?」

 

「本人が自分の領域だと認識していないってことは、何かある。そんな面倒そうなことを話すのは疲れるからね。先に領域解こうかなーって」

 

「質問したらデコピンされたって、結構かわいそう…」

 

「その子どうするの?」

 

「うーん、色々聞かないとだから、一度高専連れて帰ろうかな」

 

「それって誘拐では」

 

「それは本人を納得させて、本人が周りの人に弁明すればいいからダイジョーブ!!」

 

「そんなものか…?」

 

「さ、とりあえず高専に戻ろー!」

 


 

石を強く握って、目を開けたら、まだ雲の上だった。

生き返るの失敗したかと思ったら、周りの状況が変わってた。

 

まず、よくわかんないスライムみたいなのが、空から降ってくる刃みたいなのに切り刻まれてる。

 

で、スライムを挟んだ向かい側に人が4人いる。学生っぽい人3人と目隠し不審者1人。みた感じ不審者が教師だと思う。

 

多分、ここは現世だよね。で、私を殺した摩訶不思議現象みたいな色々があって、今ここにいるんだと思う。

 

てことは、何か知ってそうなあの4人に聞けば、この雲の上から脱出できるかも!

 

あ、スライムが塵になって消え去った。空からふる刃も無くなった。

 

よし、思い切って聞いてみよう。4人の元へ早足で歩いていく。

 

「そのー、つかぬことをお伺いしますが、ここはどこでしょうか…?」

 

よし!うまく聞けたぞ!

 

で、次の瞬間私は気絶した。

 

なんで!?ただ質問しただけなのに!




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