色々とデカい魔王様に告白されて夜も眠れない   作:タラコパスタ

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第10話:クソは流してクズは来る

 “魔導バイク”に乗り――平原を疾走する。

 

「ケントォォォ!!!!」

「……ふっ」

 

 背後から声が聞こえてチラリと確認し――バイクを右へとずらす。

 

 瞬間、何かが勢いよく真横を通過し、地面が爆ぜた。

 俺は左右にバイクを揺らしながら、敵の――ジョニーの攻撃を回避する。

 

 殺意と共に片手で狙撃銃を構えて魔弾を放って来る白衣のサ〇エさんヘアーの老人。

 その目は血走っており、白衣の下が青い短パン白T一枚のビーチサンダルで良くやるものだと感心はしない。

 

 奴はジョニー・ジョニーといういかれた名前のマッドサイエンティストだ。

 自らをマジックアイテム博士と名乗り、ゲーム内であれば主人公に友好的であった。

 お助けキャラであり、自らの保有するマジックアイテムもくれるし主人公の持ちこんだものを買い取ったり――が、俺に対してはその限りではない。

 

 最初から奴とは馬が合わなかった。

 奴はマジックアイテムを“性的”に愛し、俺はマジックアイテムをただの消耗品であると考えていたからだ。

 道具は道具であり、使えないものはすべからくゴミ。

 そう言ったあの日から、奴は執拗に俺が行く店へと先回りするようになった。

 

「今日もストーカー活動かぁ!? えぇガラクタ愛者の変態ジョニーさんよ!!」

「ケントォォォォ!!! 死ねェェェェ!!!!」

 

 奴は俺の挑発を受けて、更に攻撃を苛烈なものにした。

 爆発音を響かせながら、連続して魔弾が放たれる。

 迫りくる弾丸を紙一重で回避。

 俺も爆裂の魔法式が組み込まれた魔弾が装填されたサブマシンガンを取り出す。

 それを片手で持ちながら、奴へと照準を定めて――引き金を引く。

 

「このぉぉぉぉ!!!」

「はは!! お返しだボケェ!!」

 

 ガラガラと音を立てて弾丸が飛び。

 奴はバイクを揺らして回避していた。

 弾丸が触れた地面は爆発し砂埃が舞う。

 奴の運転テクも相当であり――まだ店には距離がある。

 

 今から向かうマジックアイテム専門店レインズは王都から離れた場所にある。

 ゲームの時もそうであったが、何故、王都ではなく離れた場所に建てるのか。

 理由はまぁ色々と考えられるが、態々、出向くのには骨が折れ――

 

「こっちを見ろォォォ!!! ケントォォォォ!!!」

「……!」

 

 奴の叫び。

 瞬間、奴はバイクの前面の装甲を展開し――ごついミニガンを出現させた。

 

 奴がバイクのボタンを押せば、バレルが回転し弾丸が無数に飛ぶ。

 俺は直線の移動を止めて、左へと曲がる。

 奴も追いかけてきて、俺たちはそのまま平原から森の中へと入る。

 

 バカでかい木々が無数に自生し。

 それらを縫うように回避ししていけば、道とも呼べない獣道に出る。

 ガタガタであり、魔物も動物も平気で飛び出して来る。

 俺はマシンガンを構えて、飛び掛かって来るギョロ目トカゲの魔物どもを撃ち落としていく。

 そうして、そのままボロボロの木の橋を飛び越えて――奴が木の影から飛び出してきた。

 

「ケントォォォォ!!!!」

「……くぅ!!」

 

 奴が俺のバイクに体当たりして来た。

 火花を散らせながら衝撃音がバイク全体を揺らす。

 バイクが空中で激しく揺れた。

 が、俺の運転テクによって何とか着地。

 

「クソッたれェェェ!!!」

「ぬぁぁああ!? クソがァァ!!」

 

 俺は奴へと逆に体当たりをし、奴はライフルを俺へと叩きつけて来た。

 俺はマシンガンでそれを受けた。

 そして、そのまま奴のライフル事、マシンガンを遠くへと投げ飛ばす。

 奴は一瞬の判断で腰のハチェットを出して振りかぶり。

 俺もナイフを出して、奴の攻撃を受け流した。

 

「死ねェェェェェ!!!!」

「テメェがなァァァァァァ!!!!」

 

 互いに武器を振りかぶり――激しくつばぜり合いをする。

 

 俺はチラリと前方を見て――奴のハチェットを弾く。

 

「ぐぁ!?」

 

 俺は体勢を崩した奴を無視し。

 ナイフを奴のバイクへと突き刺す。

 そうして、一気に自分の乗るバイクのブレーキを掛ければ奴のバイクはそのまま森を抜けて行く。

 

「ぐぅ!? ぶ、ブレーキが――おのれケントォォォォ!!!! 覚えていろォォォォ!!!!」

「あぁ! “クソを流すまで”は覚えていてやるよ!! ――Good lack!!」

 

 中指を立てて、“奴の旅”を盛大に祝ってやる。

 すると、奴はそのまま森の先にある崖から川へと落下していき――爆発音が響く。

 

 もくもくと黒煙が上がっている。

 這い上がってくる事はほぼ不可能。

 片道1時間の川下りであり……クソ野郎は流れて行った。

 

 元々、向こうへと渡る桟橋があったが。

 今は魔物によって壊されて使えなくなっている。

 奴はそれを知らなかったようで……阿呆が。

 

「……さて、行くか!」

 

 死んではいないさ。

 死んでくれたら良かったが、アレで死なないのが奴の恐ろしい所だ。

 まるで、ゾンビであり、ゴキブリ並みの生命力だ。

 

 ジョニー・ジョニー……恐ろしい狂人だ。

 

 ◇

 

 バイクを店前に停める。

 王都からかなり離れた村の中に建てられたそこそこの大きさの木造の店。

 扉を押して入れば、カラカラとカウベルが鳴る。

 すると、陳列をしていたであろう店の女主人――“カメリア”が笑顔で近寄って来る。

 

「いらっしゃいませ!! 私、レインズの店長をしていますカメリアと申します! 以後、お見知りおきを!」

「ケントだ。よろしく……それでぇ、マジックアイテム専門店らしいがぁ……中々の品揃えだな」

「はい!! 当店、この業界では新参者ではありますが。品数も質も、大手にも負けていないという自信がございます!! ささ、どうぞご覧になってください!」

 

 丸眼鏡にそばかすが特徴の赤毛おさげの青い瞳をしたカメリア。

 田舎娘のような純朴な雰囲気で、よれよれの青いエプロンも良い味を出している。

 警戒心はまるでなく、“敵意も完璧に消していた”。

 

 彼女はゲーム内では武器屋の店長だったが。

 何故か、この世界ではマジックアイテム専門店の店長をしている。

 そもそも、あのチラシを受け取るのは俺ではなく主人公で。

 何故に、俺の元に届いたのかは……まぁ何となく分かる。

 

 十中八九が、紅蓮龍絡みだろう。

 こいつの正体にも俺は気づいている。

 が、入って来た瞬間に襲ってこない事から魔王から与えられた命は暗殺とかではないんだろう。

 連れ去る事か。もしくは、情報収集か……連れ去りだな。

 

 パッと見ただけでも、店の中やマジックアイテムそのものに仕掛けがある。

 これでも、商人のようなもので。

 相手の嘘や仕掛けを見抜く目には自信がある。

 だからこそ、指輪などもそれに合わせて装備してきている。

 

 俺は気づかないフリをしながら。

 陳列されている商品を眺めて行く。

 すると、聞いてもいないのにカメリアはべらべらと喋って来て――

 

「どうですか? 物は試しに、使ってみては?」

「えぇぇ? いいのかよぉ? マジックアイテムをただで使わせるなんてよぉ。大手でも上客にしか」

「いいえ!! 当店では、全てのお客様が神様のようなもの!! 存分に試して欲しいんです!! はい!!」

 

 カメリアは鼻息荒くそう説明する。

 キラキラとした目を向けられれば大抵の奴は騙される。

 俺も知らなければ騙されていた事だろう。

 が、俺は全てを知っていて――店の扉が開かれる。

 

「……あれ? もう来てたのかよ! はえぇぇ」

「表のバイクって……アンタのだったの?」

「ふぁぁ凄い数のマジックアイテムです!」

「ふふふ、これだけあったらお土産には困らないわねぇ」

「……は? 何で……! あ、い、いらっしゃいませ!!」

 

 一瞬、驚いてボロが出かけていたが。

 すぐに店主の顔に戻り接客を始めた。

 新たな客として入店して来たのは――主人公一行だ。

 

 予め、俺が奴らにこの店の情報を渡しておいた。

 まぁ来るかどうかは賭けで。

 念の為にと、勇者に纏わるマジックアイテムが売られているなんていう嘘とも本当とも言えない情報を伝えてやった。

 結果は見事にやってきたようであり。

 恐らくは、バイク並みの速度が出ると有名な“ガーヴァ”と呼ばれる鳥型魔物に乗って来たんだろう。

 見た目はダチョウのようであるが。

 人間も乗せれれるし、速いし力もあり。

 機械のようなものを信じない人間にとってはあれが移動手段となる……て、どうでもいい。

 

「あのさ! アイツから勇者が使っていたものが売られてるって聞いたけど……マジ?」

「え、勇者の……あ、いえ! はい! あります! ありますが……その、何処でそれを?」

 

 カメリアが笑みを消して俺に聞いて来る。

 俺はこれみよがしに驚いたような顔をしてやった。

 

「…………え、あるの?」

「「「……え?」」」

「お、お前……まさか、嘘だったのか!?」

「い、いやぁ、そうでも言わなきゃ来ないだろうって思って……ま、まぁ、良かったじゃねぇか! はは!」

「はぁぁぁぁたくよぉぉ」

 

 ナインはため息を零す。

 カメリアを見れば何かを考えている様子だった。

 少なくとも、今の俺の間抜け面で偶々だとは思ってくれただろう。

 今は計画の修正を計っている頃で――ナインがカメリアの手を握る。

 

「……!」

「お願いします!! 俺に売ってください!! 金は……そんなにねぇけど!! 俺には必要なんだ!!」

「ど、どうして、ですか?」

「――勇者になるからだ!!」

「あ、貴方が……ふ、ふふ」

「わ、笑うって……い、今に見てろよぉ!!」

 

 カメリアは笑う。

 純真な少年な真っすぐな目。

 やさぐれていてアイツにはよほど眩しくて馬鹿らしく映っただろう。

 内心では馬鹿にしていても、その横顔から憧れのようなものを感じる。

 

 早速、フラグを立ててくれましたよ。

 俺はよくやったと思いながら。

 カメリアが案内するままに、勇者一行と共に店の奥へとついて行った。

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