色々とデカい魔王様に告白されて夜も眠れない   作:タラコパスタ

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第14話:大いなる目的は無い(side:ケント→ベオウルフ)

 アマツ教団の幹部二名――捕獲完了。

 

 デートに行こうと巧みに誘導し。

 偶然を装って、悪党に襲われた感じを演出した。

 その結果、我らが魔王様はあっという間に奴らを制圧。

 俺は漁夫の利で逃げようとした一人に強力な麻酔針を撃ち込んだだけだった。

 

 魔王様はちゃんとデートスポットへも連れて行ったさ。

 俺のうっかりミスで死の危険も多々あったが……まぁいい。

 

 今、俺は奴らを自らの用意した強固な結界の中に入れておいた。

 そして、その中に俺も入り――対面している。

 

「……へっ」

「……」

 

 奴らの態度は分かりやすい。

 こいつらはアマツ教団の幹部である“獄門兄弟”だ。

 

 殺意と闘争心に満ちた狂犬のような顔をしているのが弟の“モードレス”。

 冷静そうな表情をした眼鏡の男は兄の“ベオウルフ”だ。

 何方も姿や顔はそっくりであるが、頭の出来でいえばまるで違う。

 弟は戦闘狂であり、ゲームでも挑発すればすぐに向かってくる事で有名だった。

 兄であるベオウルフが、そんなアホな弟の事を管理しているらしいが……ふふ。

 

 今、奴らは特殊な拘束服によって自由を奪われている。

 特注品であり、一度着れば100レベルの化け物であろうともレベル1の雑魚と変わりはない。

 それほどまでのものは高いのではないかと思われるが。

 実際には、監獄と呼ばれる場所では在庫が豊富に揃っている。

 着せるまでが大変であるからこそ、特に戦闘では役に立たないが。

 意識を失っている人間相手であれば、こうやって容易に着せる事も出来る。

 

 奴らは俺を殺意に満ちた目で見つめて来る。

 対して、俺は静かに微笑みながら――かつ丼を食う。

 

「はふ、はふ、あぐ」

「……てめぇ、さっきから何食ってやがる? 馬鹿にしてんのかぁ?」

「やめろ。こいつの見え見えの挑発に乗るな……貴様も、さっさと用件を」

「――ごっそうさん」

「「……」」

 

 俺は両手を合わせて空のどんぶりに感謝を述べる。

 そうして、湯飲みの茶を飲んでから奴らに対して質問をした。

 

「触媒は――あと三つだな」

「……! てめぇ!! それをどうやって」

「……何を知っている。まさか、噂になっている王国の秘密部隊とやらは……お前たちか?」

「ふぅ、質問に質問かぁ……まぁいい。答えてやろう……ノーだ」

 

 二つの質問に対してノーと答える。

 どうやってかは教える気はなく、秘密部隊でもないと。

 すると、弟は怒りの形相だったが。

 兄であるベオウルフは何かを考えていた。

 

「……今、俺が何処の所属かを考えたな……言っておくが。俺は何処にも属していない。冒険者でもなければ、騎士団の人間でもねぇ。学園の生徒ってのはそうだが。これといって、大いなる目的なんてもんもねぇよ。俺はただのケント・モーブレンさ……まぁ、一つだけ。目的はあるがなぁ」

「……その目的に、俺たちが関わっていると言いたいのか。暗黒神様の復活が、お前たちにとって」

「――全然ちげぇよ、ボケが」

「「……!」」

 

 俺は真顔で告げる。

 

「暗黒神なんてカスに用はねぇ」

「か、カス、だと……な、何言って」

「気は確かか? 世界を混沌に染めた存在だぞ? 歴代最強の勇者ですらも勝てなかった絶対の」

「――ハッキリ言おう。ドカスだよ」

「「……!?」」

 

 奴らは目を丸くして驚く。

 こいつらは理解していない。

 魔王様の力の一端を見たというのに。

 アレが暗黒なんちゃらに勝てないと本気で思っている。

 が、実際には暗黒なんちゃらの方が弱いのだ。

 これは紛れもない事実であり、絶対的な証明である。

 

 俺は曇り無き眼で奴らを見つめる。

 

「世界は広い。アレを頂点だと思っているのなら……お前らの限界はそこまでだろうさ」

「あぁ!? 限界だと!!? テメェなんかに俺たちの何が」

「――分かるさ。だってそうだろう? お前たちは敗れたんだ。それはつまり――もう死んだも同然ってことさ」

「……!」

「……モードレス。こればかりは……この男が正しい。我々は負けた。生かされているのは、この男の気まぐれに過ぎない」

「くそッ!!」

 

 ベオウルフは冷静に分析し。

 弟は舌を鳴らすが、本心では理解している様子だった。

 俺はそんな二人を見ながら、本題とやらを話してやる事にした。

 

「敗者は勝者に従う。それが世の常であるのなら、俺はお前たちに一つの提案をしよう――俺の仲間になれ」

「……はっ? 仲間だって? 何考えてやがる。俺たちはアマツ教団の幹部だぞ? お尋ね者を囲って何の得が」

「……そもそも、我々がその提案を受け入れるとでも? 解放すれば、貴様は常に我々の影におびえる事になる。底抜けの馬鹿か、よほどの策があるか……貴様はどっちだ?」

 

 奴らは笑う。

 俺を挑発している様子だ。

 解放すればすぐに俺なんざ殺せると思っていやがる――その通りだぜ。

 

 

 俺は徐に手を上げて――指を鳴らす。

 

 

「「……!?」」

 

 瞬間、結界の効力は消え。

 奴らの拘束具の効果も喪失した。

 奴らはすぐに自分たちの魔力が使用できる事に気づく。

 が、すぐには動かず。俺はジッと見つめていた。

 

 得体の知れないものへの恐怖。

 計り知れない何かに怯えている。

 俺はそんな奴らを見ながら、ゆっくりと椅子から立ち上がる。

 

「俺は提案を出した。選択はお前たちの自由だ……俺は誰も縛らない。俺は何者にも縛られない……自由こそが最も人間らしく。選択こそが人生の意味だから……此処で俺を殺す事も選択だ。が、もしも、俺の目指す場所に共に至りたいのであれば――ついて来い」

「「……」」

 

 俺はそれだけ伝えて部屋から出る。

 そうして、奴らを地下室に放置してさっさと寝る事にした。

 

 まぁあんだけ言っといてだ。

 別に仲間にしたからと言って何かすげぇ事をする訳じゃない。

 単に、新しいビジネスをやる上で社員が欲しかったというくらいで。

 中でも、腕に覚えのある奴らがいてくれたらすげぇ助かるという理由しかない。

 

 お尋ね者云々はまぁ確かに問題だな。

 が、そんなのはハッキリ言えば俺には関係ない。

 大量殺人犯でも、テロリストであろうとも。

 俺に縁のある人間が殺された訳じゃない。

 だからこそ、能力があるのであれば俺は喜んで登用する。

 勿論、バレないように色々と偽装はするがなぁ。

 

 そう、一緒に働いてくれる能力だけは優秀な社員をスカウトしただけだ。

 だからこそ、嫌ならそのままアマツ教団に帰ればいい。

 勿論、あそこで殺されていた可能性は大いにあったが。

 一度くらいの死亡であれば、この家の中であればどうとでもなる。

 故にこそ、大見得を切っただけの事であり、さほど命を懸けたつもりはなかった。

 

「……」

 

 階段を上がり、そのまま扉を開ける。

 見慣れた家の中であり、薄暗い部屋の中ではメイドのヒルダが立っていた……こえぇ。

 

「……よろしかったのですか」

「……あぁ? 盗み聞きか……別に問題ねぇよ。アマツ教団が何をしようとも、最終的な結果は変わらねぇ。魔王だってそうさ。俺にとっては全てが道に転がる石ころ程度の問題だ」

「……! そう、ですか……やはり、ご主人様は……いえ、よしましょう。私はもう、貴方の僕ですので」

「……僕にした覚えはねぇんだがなぁ……ま、きびきび働いてくれや。俺はもう寝る。アイツらの事は……お前に任せるよ」

「承知しました」

 

 俺はそれだけ言ってケツを掻きながら自室へと向かう。

 問題だらけの世界ではあるが。

 問題があるこそ、ゲームとして成立しているんだろう。

 が、全てが全て作り物である筈がない。

 登場する全ての人間に意思があり、出て来る敵たちにも心がある。

 

 殺そうとも、殺さずとも……結局、道は続いているんだろうなぁ。

 

 本物であり、紛れもない生きた世界だ。

 俺はそんな事を想いながら、明日から始まる魔王様のご機嫌取りの事で胃をきりきりとさせた。

 

 〇

 

 俺たちは地下室の中で互いに考える。

 さきほどの男の言葉は、我々兄弟にとって……大きな楔を打ち込んだ。

 

 『俺は提案を出した。選択はお前たちの自由だ……俺は誰も縛らない。俺は何者にも縛られない……自由こそが最も人間らしく。選択こそが人生の意味だから……此処で俺を殺す事も選択だ。が、もしも、俺の目指す場所に共に至りたいのであれば――ついて来い』

 

 何者にも縛られない生き方……正に、強者であろう。

 

 が、根本的に違う事がある。

 それは敗者に対しても縛りを与えず。

 選択の自由を重んじるその姿勢だ。

 アマツ教団のボスであれば、敗北という結果はそれだけで全ての権利を奪われる。

 生きる権利も、抗う権利もだ……が、アイツは違う。

 

 敗者である我々の拘束を解き。

 自由に生きる事を――“命じた”。

 

 提案したのは、自らの目的の為。

 が、断ろうともアイツは我々を追っては来ないだろう。

 視線を部屋の片隅へと向ければ……ある。

 

 我々の装備品と遺跡から回収した触媒の一つが。

 まるで、自由に持って帰れといわんばかりだ。

 その事が表す意味は……やはり、そうなのか。

 

「……奴は暗黒神様の事を……本当に取るに足らない存在と認識している……あり得ない事だ。どんな無知な存在であろうとも、その名を聞くだけで計り知れない力がある事は分かる筈だ……が、アイツは……それを理解している節がある」

「……あぁ、確かにな。アイツの目はまるで曇りがねぇ。ハッタリでもなければ虚勢でもねぇ。アイツはまるで、暗黒神様の力を目の当たりにしたうえで、あぁ言っているようにすら俺には聞こえた……面白れぇよなぁ」

 

 弟のベオウルフを見れば――笑っていた。

 

 目はキラキラと輝き。

 頬は薄っすらと赤みが差している。

 まるで、恋する乙女のようであり……俺も人の事は言えんか。

 

 俺も笑っている。

 初めて出会った人間だ。

 その力量はまるで計れなかったが。

 唯一、断言できる事は――どんな存在たちよりも、我々を楽しませてくれるだろうという事だ。

 

「……モードレス。俺は決めた……お前は?」

「ハッ! 愚門だな……同じだろ?」

「「……ふっ」」

 

 俺たちは立ちあがる。

 そうして、互いに拳をぶつけ合う。

 

 面白い。面白いぞ。

 これからどんな事が起きるのか。

 アイツの真の目的は。

 そして、そこに至れば何が見えるのか。

 

 俺たちは新たな指導者に対して――熱い想いを滾らせた。

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