色々とデカい魔王様に告白されて夜も眠れない   作:タラコパスタ

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第5話:一狩り行こうぜ!

 授業の開始を告げる鐘が鳴り響き。

 生徒たちは教師がまだ来ていないからこそわいわいと談笑していた。

 魔王様をちらりと見れば、綺麗な姿勢で座っている。

 真っすぐ前を見ながら、優等生よろしく教師が来るのを待っていた……ふっ。

 

「なぁなぁなぁ? センさんよぉぉぉ今日が何の日か知ってっかぁぁ?」

「ふっ愚門ですな。今日は我ら一年にとって……いえ、男子生徒にとって待ちに待った大イベント。そう」

「「郊外学習ッ!!」」

 

 郊外学習とは、学園外へと出て行われる授業。

 別に一年でなくとも、郊外学習は存在するが……1年でなければ味わえない蜜がある。

 

 俺とセンはくつくつと笑う。

 すると、ガラガラと扉が開かれてダズ先が入って来た。

 生徒たちは静かになり、委員長が号令を掛けて……ダズ先がにこりと笑う。

 

「お前たちも知っているだろうが。今日は郊外……まぁ王都の中ではあるが。とある場所にて特別講師の方々と授業を受けて貰う……さて、今日行く場所は覚えているか?」

「「「――冒険者ギルドです!!」」」

「はは、よろしい……そうだ。冒険者ギルドだ! お前たちの中には、騎士ではなく冒険者としての道を歩む者もいるだろう。が、別に騎士としての道を進む者でも、冒険者の方々から学べる事は多い……今日は、精一杯、先達の教えを受けて来い!」

「「「はい!!」」」

「「……ふっ」」

 

 俺はダズ先の言葉を受けて――笑う。

 

 初心なこいつらは知らないだろう。

 が、俺はゲームプレイヤーであり、冒険者ギルドの内情も知っている。

 今から向かう王都の冒険者ギルドには――圧倒的に女性が多い事をなッ!!

 

 それもッ!! 美女ばかりだとッ!!

 

 センも知っていたようであり、流石は無駄なデータ収集が趣味の男だ。

 俺たちはギルドへと向かい、ダメダメな男を演じ。

 ぐんばつのチャンネー冒険者の手解きを受ける。

 あわよくばラッキースケベを狙っていき、今までの鬱憤を晴らすべく。

 今日この日の為に入念な準備をしてきた。

 

 俺とセンは笑って……ダズ先が俺たちの前に立つ。

 

「……何ですか?」

「……荷物検査をする。持っている物を出せ」

「は、はぁ? え、な、何で? え?」

「横暴ですぞ!! 何故、我々だけ!? おかしいじゃないですか!! 差別、差別ですぞ!!」

「うるさい!! 貴様ら問題児の考えている事などお見通しだ!! さぁ出せ!!」

「「……チッ」」

 

 俺たちは舌を鳴らしながら、バックを机の上に置く。

 すると、ダズ先は俺たちのバックをわしづかみにし逆さにする。

 すると、中から色々な道具が出て来た。

 

「……これは何だ?」

「ぬめぬめする液体です」

「……これは?」

「激しく振動する棒です」

「……何使うものだ」

「何ってそりゃ、滑りを良くする為で……あ、これはマッサージっすね! 肩こりますからねぇ!」

「……何故だ」

「え、何故? 何故ってそりゃ……気持ちよくなるから――ぶげぇぇぇ!!」

 

 ダズ先に拳骨をくらわされる。

 俺は出来上がったたんこぶを抑えながらうめき声を上げる。

 

「……お前のこれは何だ」

「サプリメントですな! 騎士見習いたるもの栄養は十分に」

「飲め」

「……い、いやぁ、今は別に必要ないとおごぉぉぉぉぉぉ!!!?」

 

 小瓶の中に入っていた怪しげな錠剤。

 それも一錠だけであり、怪しく思ったダズ先はそれをセンの口へとぶち込み――

 

「ふおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

「「「きゃぁぁぁぁ!!!?」」」

 

 センが叫べば、奴の筋肉が膨れ上がる。

 そうして、制服がビリビリに破けて奴の愚息が天高く伸びていた。

 それは短く太くあまりにも粗末であった……南無。

 

「……全く、お前らはぁ……全部没収する」

「えぇぇぇ!? そ、そんなぁぁ」

「……お前たちだけ残るか?」

「――お納めください」

「ほぉぉぉぉぉぉぉふげぇぇぇ!!!?」

 

 興奮状態のセンの頭にダズ先のチョップが炸裂する。

 強制的に意識が刈り取られて。センは全裸でぴくぴくと痙攣していた。

 

 俺はため息を零し……殺気を感じた。

 

 ハッとして視線を向ければ――睨んでいる。

 

「……っ」

「ひ、ひふ、ひひ、う、うひ」

 

 魔王様がめっちゃ睨んでいた。

 魔力が放出されていて、心なしか頬が赤い。

 膝の上で拳を硬く握っているが、その拳が俺に向けられない事を祈る。

 

 何名かの生徒が彼女の殺気で気絶したが。

 ダズ先はそれを無視して、さっさと移動するように言ってきた……お、鬼かよ。

 

「体調の悪いものは残れ。大丈夫な者は、校門前の馬車に乗り込め。いいか? くれぐれも、冒険者の方々に無礼を働くんじゃないぞ? もしも、何かあれば……これだ」

 

 ダズ先はチョップをしながら不敵に笑う。

 此処が現代日本でなくて良かったなと呪いながら。

 俺はセンの足を掴んで引きずっていく。

 すると、不機嫌そうな魔王様も他の生徒と同様に立ち上がって先に出て行ってしまった。

 

 ……まぁ、うん……何とでもなるさ!

 

 告白はされた。

 が、俺は待って欲しいと伝えたんだ。

 つまり、今の俺はフリーであり、彼女がとやかく言う事は出来ない。

 いや、そもそも、彼女は俺の全てを知らない筈なんだ。

 故にこそ、今のような幻滅するようなポイントを見せれば――自然消滅。

 

「……いや、それは運が良ければ……俺が消滅するリスクもある」

 

 あまりにも、不義理を働けば。

 幻滅されるよりも、殺意を抱かせてしまって破壊される恐れもある。

 そうなれば、俺も世界も一貫の終わりで……見極めが重要だな。

 

 ほどほどの幻滅ポイントだ。

 主人公のように何股するとかではない。

 風呂キャンであったり、足が臭かったり。

 くちゃらーであったり、そういった細かい幻滅ポイントならば……いける。

 

 ……だが、今日のイベントだけは譲れないッ!!

 

 勿論、魔王様の事も忘れてはいない。

 が、今回のイベントはあくまでも初心者に対して熟練者がレクチャーをするものだ。

 つまり、元から熟練者を遥かに超える魔王様は。

 俺たちではなく、もっと上の人間から指導を受ける事になる。

 そう、別のグループであり、場所も違っているんだ!!

 

「ふ、ふふ、ふふふ、ぷ、くふぅ」

 

 だ、ダメだ……ま、まだ、笑うな……魔王様に聞かれる。

 

 夢のラッキースケベまではもう少しだ。

 少しの辛抱であり――教室からダズ先が顔を出す。

 

「あ、因みにだが……“お前とアーティカルト”は別の馬車が来るからな」

「……ふぇぇ?」

 

 俺は目を点にする。

 すると、ちょんちょんと肩を叩かれた。

 振り返れば……微笑む魔王様が立っていた。

 

「……行きましょう」

「あ、あぁ、ぅ、ぅぁ、ふぁ、ふぁ、ぃ」

 

 俺はセンの足から手を離す。

 そうして、魔王様の大きな手を握り引きずられて行く。

 

 くそ、くそ、くそ――ちきしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!

 

 ◇

 

「ふん、才能あるクソガキ共が来るっていうからどんなもんかと思えば……紛い物がいるじゃないのさ」

「ア、ウン」

「はっ! テレンスも落ちたもんだねぇ。こんな小便小僧が特待枠だなんてねぇ」

「ア、ウン」

「さっきから何だい? 心此処にあらずってかぁ。しっかりしとくれよぉ、全く」

「ア、ウン」

「……」

 

 俺は目の前で俺を罵る――ババアを見つめる。

 

 魔王様も乗れる特別製の馬車に乗り込まされて。

 向かった先は、冒険者ギルドから離れた建物。

 何処にでもある小さな民家であり、魔王様が扉をノックすればババアが出て来た。

 

 短い白髪であり、ババアでありながらもその体はムキムキだった。

 皺だらけの顔であり、パツパツのズボンに腕まくりをした白いシャツ。

 黒い眼帯をつけていて、海賊船の船長のような風貌だ。

 身長は170ほどであり、俺よりも低いが威圧感と口の悪さはビッグだ。

 

 文句を言われながらも中に通されて。

 かれこれ三十分ほど俺だけ罵倒されている……ナニ、コレ?

 

 ぴちぴちギャルもいなければ、巨乳も存在しない。

 あるのは夢も希望も無い毒舌梅干しババアで――

 

「はは、毒舌梅干しババアか――死にたいらしいねぇ」

「あ、やべ」

 

 俺は咄嗟に口を押える。

 が、次の瞬間には――壁を突き破っていた。

 

 民家の壁を破壊し、更に隣の酒場の壁もぶち抜いて。

 更にその先の倉庫まで吹き飛び、積まれていた酒樽をぶち壊す。

 俺は全身にビールを浴びながら、いかれババアに戦慄した。

 

 ババアは破壊された壁を越えて、コツコツと靴を鳴らしながら歩いてきた。

 そうして、煙から出てきて少し驚いたような顔をする。

 

「ほぉ、今ので無傷とはねぇ……どういう仕掛けだい。えぇ、クソガキ?」

「教えてもいいっすけど……取り敢えず、拳に纏わせた魔力は解除してくれません? 死ぬっすよ」

「死ぬ? はは、よほど自信があるようだねぇ……ま、いいだろう。元より、殺す気なんて無かったしねぇ」

 

 婆さんはそう言いながら、とんでもない魔力を纏わせた拳を解く。

 俺は静かに息を吐き、手の平で樽から噴き出すビールを掬って口につける。

 そうして、立ち上がってから眼を白黒させる倉庫の主を通り過ぎて行く。

 

 この婆さんの事は……実は知っている。

 

 今は冒険者なんかしているが。

 若かりし頃は騎士団長を務めていた大物で。

 ゲームの設定集では、“雷刃のマーサ”と呼ばれ恐れられていたらしい。

 

 今のは拳による攻撃だが。

 もしも、婆さんが剣を抜いていれば……“1つでは済まなかっただろう”。

 

 指につけていた指輪の一つが砂のように消えて行く。

 婆さんはそれに気づいていなかった。

 

 マーサ・フラウロス。

 御年98歳の元騎士団長で現役バリバリの冒険者だ。

 等級は冒険者にとって雲の上である“特級”で……はぁぁぁ。

 

「……何だい。さっきからしょぼくれた辛して……ババアで悪かったねぇ。けっ」

「え、いや、あぁ、うん……正直、ぴちぴちギャルに指導してもらいたかったっす」

「はは、正直なクソガキだ! 気に入ったよ。お前は私がうぅぅんと可愛がってやろうじゃないか。きひひ」

「……不幸だ」

 

 俺たちは言葉を交わしながら、婆さんの家まで戻る。

 すると、魔王様がムッとした顔をして待っていた。

 

「エレイン。何をふてくされてるんだい? 私に彼氏を取られて不満かぁ?」

「……! ま、まだ、彼氏では……御婆様!」

「御婆様はやめろって言っただろぉ? 私はまだ98だよ!」

「立派なババアじゃねぇか」

「はは、本気で殺してやろうかぁ? あぁん?」

「すみませんでした!!」

 

 俺は秒で頭を下げて詫びる。

 すると、婆さんは舌を鳴らして机に置いていた酒瓶を取る。

 そうして、子供の前で栓を抜いてぐびぐびと飲み始めた……碌な大人じゃねぇな。

 

「……はぁぁ……で? お前らは私に何を学びたいんだい? エレインはともかく、お前さんには何を教えたって無駄だと思うがねぇ? 分かるだろ、自分自身の才ってやつに」

「……御婆様……彼への侮辱は、例え貴方様でも許しません」

「侮辱? いいや違うね。これは真実ってやつだよ。ほら、こいつはよぉく知っているようだよ」

「……そうなの、ですか?」

 

 魔王様が俺に視線を向けて来る。

 俺は無言でゆっくりと首を縦に振る。

 すると、魔王様は少しショックを受けたような顔をした……幻滅ポイントだな。

 

 俺が手応えを感じていれば、ババアは「まぁでも」と言う……ん?

 

「……私の攻撃をどういう訳か無傷で防いで。まるで、動じていないクソ度胸は勇者にも匹敵するだろうさ……私の目には、お前さんは精々が4級程度の冒険者の実力に見えているが……どうも、それが全てじゃないらしい……隠しているか。或いは、見えない何かがあるのか……ま、要するにただの雑魚じゃないってことだよ」

「……やっぱり」

 

 折角の幻滅ポイントが消滅した……やってらんないよ!

 

 俺は真顔でババアを恨む。

 すると、ババアは酒を煽りながら何かを考えているようだった。

 俺と魔王様は無言でババアを見つめて……ババアが絶望を告げる。

 

「よし、今から――ドラゴンぶっ殺しに行くぞ」

「分かりました」

「わか…………え? は、ちょ、どら、え、あ…………ぇ?」

「三十秒で支度しな。遅れたら、撒き餌になってもらうよ」

 

 ババアはそう言いながら、酒瓶だけを持って出て行く。

 魔王様も、武器を持たないまま外へと出て行ってしまった。

 俺だけが冷静に今の発言のやばさを自覚していた……ドラゴンだぞ。

 

 ファンタジー世界ではお馴染みの存在。

 めっちゃ強いと言われたり、ただのかませのような扱いを受けているものもある。

 が、この世界でのドラゴンは――超絶にやべぇ存在だ。

 

 ドラゴンは滅多な事では人前には現れない。

 が、もしも、街などにやってくれば確実にその街は滅ぼされる。

 災害にも匹敵するほどの危険度であり、大抵のドラゴンには並みの魔法も武器も通じない。

 一匹を討伐する為だけに、国家戦力が投じれるほどの危険度だ。

 日本でいうのなら、自衛隊が総出で出て来るようなもので。

 そんな超ド級の化け物をぶっ殺しに行くとババアは言った……い、いかれてやがる。

 

 魔王なんかよりも遥かに強い存在。

 一周目において、レベルも足りず装備も十分でない状況で。

 レベルにして100に相当するであろう化け物が。

 極稀に出現するという事実は、プレイヤー全員にとって恐怖でしかない。

 一周目で倒すなんて天文学的な奇跡であり、意図して倒そうなどという馬鹿はいない。

 チートを使って何とかなるレベルであり、二周目以降から何とか戦えるようになる存在だ。

 

 そんな存在を、初め〇のおつかい感覚で……は、はは。

 

「ほぉら、さっさと行くよぉ? クソでもしてんのかい?」

「……?」

「は、はは、ふ、ふひ、いひ、あ、ふぁ……真面なのは、俺だけか?」

 

 俺は涙と鼻水を流しながら笑う。

 笑うしか出来ない状況で……俺は生きて帰れるのだろうか?

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