色々とデカい魔王様に告白されて夜も眠れない   作:タラコパスタ

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第7話:朕は沈なり

「お、おい、あれ……例のドラゴン使いの……っ」

「目を合わすな、殺されるぞ……ぅ」

「「「……っ」」」

 

 ドラゴン――紅蓮龍の背に乗り王都へと帰還した。

 

 色々と騒動にはなったが。

 衛兵共に拘束される事も無く、翌日には学園にやって来て……このありさまだ。

 

 噂は既に広まっていて。

 俺は紅蓮龍をテイムした男として学園内外で恐れられていた。

 それもその筈であり、歴史上でドラゴンのテイムに成功した者は片手の指で足りるほどしかいない。

 その中でも、紅蓮龍は歴戦の龍であり。

 後で設定を思い出して分かった事だが、かなり強い存在で。

 それならば、魔王様の攻撃にも何とか耐えていたのも納得だ。

 

 今は、王都の外壁の横で寝ているだろう。

 傷は一晩で完治していて、流石は歴戦の龍だと感心し……目の前から不良共が歩いて来る。

 

 上級生であり、俺が足を止めたら気づいた様子だ。

 俺の眼前で止まりメンチを切って来る……ふっ。

 

「おいおいおいぃ。一年坊主が、三年の俺たちの道を塞ぐたぁ。死にてぇのかぁ? あぁん!?」

「しめっぞ? しめっぞぉ? いいのかぁ? ほら、ほぉらぁ!?」

「ひひひ、俺、今金欠でよぉ。金出せやァ」

 

 不良共は下品な笑い声を出しながら俺を嘲り――俺は薄く笑う。

 

「……良い天気だ」

「「「あぁ?」」」

「死ぬには……良い日だと思いませんか? パイセン」

 

 俺がそう呟けば、パイセン方がゲラゲラと笑う。

 が、金をせびって来た奴だけはジッと俺を見てきて――顔面蒼白となる。

 

「お、おい! だ、ダメだ!」

「あぁ? テッチンどうしたぁ?」

「なにビビってんだよ。腹の調子でも」

「こ、こいつは、あのドラゴン使いだ! 紅蓮龍をテイムした、あの!」

「「……!?」」

 

 不良共は凄まじい勢いで首を動かして俺を見て来る。

 俺は笑みを浮かべながら、静かに頷く。

 すると、不良共は顔面蒼白で足を震わせ始めた。

 

「……俺がその気になればねぇ……学園も、王都も……みんなぁ……これ、ですよ?」

「「「……ぁ、ぁぁ」」」

 

 俺は握りしめた拳を目の前にあげて、パッと開く。

 それだけで、言葉の意味を理解したパイセンたち。

 秒で土下座をかましてきて、俺はそれを身ながら――三日月のような笑みを浮かべる。

 

 朝早くに起きて頑張って整えたであろうリーゼントを踏みつける。

 ぐりぐりと踏んでやりながら、まぁまぁの踏み心地であると評価してやった。

 パイセン共は必死に怒りを抑えている様子で。

 俺は自らの力に酔いしれながら、親切に忠告をしてやる事にした。 

 

「喧嘩を売る相手は考えなぁ? もしも、俺じゃなく魔王様ならお前たちは死んでたんだぜぇ? 俺はァ心が広いからよぉ――これで許してやらァァ!!」

「うげぇぇ!!?」

「「まっつん!!?」」

 

 俺はリーダー格らしい不良の頭を蹴る。

 サッカーボールであり、不良は廊下の上を縦に回転していった。

 まっつんと呼ばれた不良は盛大に転がっていき、ぴくぴくと仰向けに痙攣していた。

 他の不良共はまっつんへと駆け寄り、彼を抱えて逃げ去っていった。

 俺は高笑いをしながら、周りの生徒たちに宣言した。

 

「朕の道を阻む者!! それ即ち、大罪人!! 平伏せよ!! 刮目せよ!! そして、朕に従えッ!! 支配してやろうッ!! 人間共よォォ!!! 朕は一であり、全であるッ!!! フハハハハハ!!!!

「「「……っ」」」

 

 俺は笑う。

 最早、俺の青春ラブストーリー計画は破綻していた。

 ここから目指す先は修羅の道で……いや、待てよ?

 

 このまま覇王ルートを進めば。

 覇王として学園中の……いや、王都中の美女を……ぐふ、ぐふふ!!

 

「女だァァ!! 全ての女を朕に差し出せッ!! さもなくば紅蓮龍の怒りが貴様らを焼きつくすぞッ!! フハハハハ!!!」

「う、ぅぅ」

「な、何て奴だ。あれじゃ、本物の魔王じゃねぇかよ……ひぃ」

「今の発言は……反逆かぁ? 処すかぁ? 首ちょんぱかぁ? 磔刑かぁ?」

「ご、ごめん、なさい。申し訳」

「ふ、ふふふ――ハハハハハ!!! いい気分だァァ!!! これが、力かァァ!!」

 

 俺は両手を広げて笑う。

 そうして、こそこそと逃げようとする女を見つけてぐるりと首を動かす。

 

「そこの女ァァ! 丁度いい!! 今から俺とお茶を飲みに行きませんかァッ!!」

「ひぃ!! ゆ、ゆるしてぇ」

「フハハハハハ!!! 料金は俺が出し!! 好きなだけ食って飲め!! どんな話題でも、朕は許そうぞォォ!!! 無理なら明日でも可能だァァァ!! その後は勿論、連絡先を教えてくださいッ!! それでも行かぬというのなら、朕の紅蓮龍が」

「――私が相手をします」

 

 俺が女生徒の一人を連れ去ろうとすれば――背後から綺麗な女性の声が聞こえて来た。

 

「ほぉ!! 進んでデートを受け入れるとは中々に、殊勝、な……ぅ、ぁ、ぅ、ひ、や、ぁ」

「……」

 

 俺が自信満々に振り返れば――魔王様が立っていた。

 

 眉間に皺が寄っている。

 美しい顔は怒りに染まっていた。

 俺を睨みつけいる。

 赤き紅蓮の炎を幻視するが、その瞳は氷のように冷たい。

 まるで、道端に転がるエロ本を見つめる女の目だ。

 

 俺は全身を震わせる。

 これは恐怖であり、紅蓮龍の力を得ようとも――消えはしない。

 

 

 何故、どうして、そんな馬鹿な――否、馬鹿は俺だ。

 

 

 主人公に調子に乗るなとほざいて、俺が調子に乗っていた。

 相手は不敗である魔王様だ。

 如何に歴戦のドラゴンが仲間にいようとも……か、勝てる訳が無い!

 

「……何処に行きます」

「ふぇ?」

「……デート、行きましょう」

「ふぇ?」

「……怒りますよ?」

「――申し訳ありまでんしたァァァァ!!!!!」

 

 俺は秒で土下座する。

 すると、魔王様は俺の首根っこを掴んで持ち上げる。

 そうして、バックのように持ちながら俺を連れ去っていく。

 

 周りの生徒たちは、紅蓮龍を従えた俺ですらも赤子のように扱う魔王様を――キラキラとした目で見ていた。

 

 まるで英雄。俺はそんな英雄を輝かせる噛ませ犬で……ふざけるな。

 

 ふざけるな、ふざけるな、ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな――クソがァァァ!!!!

 

 憎い、憎い、憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い――憎いィィィ!!!

 

「……おすすめの喫茶店があります」

「あ、はい」

 

 秒で恨みが消える――もう、よそう。

 

 恨んでも何の解決にはならない。

 所詮は偶々手に入れた力だ。

 大いなる力は自らを滅ぼす。

 過ぎたる力であり、紅蓮龍はペットのようなものだ。

 名前もつけてあげよう。そうだな……うん、五郎丸にしよう!

 

 新しい家族だ!

 前世では犬や猫を飼いたいと思っていたが。

 色々な事情で飼う事が出来なかった。

 だからこそ、初めてのペットであり、家族であり……へへ。

 

「へ、へへ、ふへへ……嬉しいなぁ」

「……!!」

 

 魔王様がびくりと揺れる……ん?

 

 チラリと見上げれば顔を背けていた。

 俺は得体の知れない不安を抱えながら。

 魔王様との強制デートに心臓をバクバクとさせた……吐きそう。

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