色々とデカい魔王様に告白されて夜も眠れない   作:タラコパスタ

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第9話:主人公ではなく俺にイベント?(side:???→ケント)

 魔王城――玉座の間。

 

 私は膝をつきながら頭を垂れる。

 我ら魔族の王である魔王様の御前であり。

 今、私は新しい命を下されようとしている。

 

 全ての魔族にとって魔王様から直々に命を下されるのは名誉な事だが……私はそうは思わない。

 

 私はこの世で最も戦いが嫌いだ。

 理不尽な虐殺はもっと嫌いであり。

 今まで下された命は、その全てに該当するようなものばかりだった。

 

 人々の集落を襲って人間たちを虐殺し。

 時には、ただ邪魔であるという理由で幼子すらも手にかけた。

 心から嫌な仕事で、やりたい筈がない。

 が、魔王様の命に背けば命はない。

 故に、私は従う他なかった……また、あの方は私に……っ。

 

「面を上げよ」

「ハッ!」

 

 顔を上げれば、黒い靄しか見えない。

 魔王様は不可視のヴェールに包まれている。

 その力の底を計る事は出来ず。

 アレがあるからこそ、誰も魔王様を傷つける事は出来ない。

 唯一、魔王様に傷をつける事が出来るという聖剣も、何十年も前の戦いで力を失っていると聞く。

 もしも、私が聖剣を使えたならば……いや、よそう。

 

 魔王様への反逆は一族郎党斬首に値する。

 私にも家族がいる。彼らを巻き込む訳には行かない。

 私はそう考えたからこそ、心を無にして魔王様の言葉を待ち――

 

「ヒルレーヤ、貴様に命じる――アレカルト王国の王都へと向かい。紅蓮龍をテイムしたという人間を連れて来い」

「……承知しました」

「では――行け」

「ハッ!!」

 

 私は質問する事無く。

 開け放たれた窓から飛び出す。

 そうして、魔族の羽を広げて大空を舞う。

 

 ……紅蓮龍をテイムした人間か……情報としては聞いている。

 

 魔王様の秘書であるイーセルム様が先にお話ししてくれた。

 魔王様は詳細を省き、質問される事を嫌う。

 故にこそ、秘書である彼女が命を与えられる前に我々に詳細を話してくれる。

 優秀な方であり、魔界に必要不可欠な存在だ。

 

 彼女の話では、紅蓮龍をテイムした男の名はケント・モーブレンという。

 聖テレンス学園と呼ばれる王都の騎士養成学校に通う少年で。

 平民でありながら、特別に入学を許可されたほどの才能の持ち主。

 が、所詮は十代の子供である……油断はできないがな。

 

 紅蓮龍のテイムなど、我々魔族でもそう簡単には出来ない。

 出来るとすれば魔王様ほどの実力者だけであり。

 単純にその実力を見積もっても、幹部クラスはあるだろう。

 私は戦闘能力では他の幹部には劣る。

 私の魔法は潜入活動向きであるからだ。

 だからこそ、重要任務であれば内部に潜入して混乱を引き起こすか暗殺で……が、今回は違う。

 

 連れて来いという事は殺しは無しだ。

 恐らく、魔王様も私では奴を殺せないと考えているに違いない。

 恥には思わない。結果は魔族にとって全てだ。

 紅蓮龍をテイムしたという結果から、実力を計算しての……結果さ。

 

「……面白い」

 

 私は謎深き少年の事を想像し……汗が流れていくのを感じた。

 

 〇

 

「へっくしょぉぉぉぉ!!! ……あぁ、何だ? 花粉か?」

「……なるほど」

 

 俺は盛大にくしゃみをする。

 が、隣に座るセンはエロ本の読書中で心配してくれない。

 冷たい奴だと思いながら、俺は次の授業の準備をしようとし――ガラガラと扉が開かれる。

 

「たのもぉぉぉ!!!」

「……げぇ」

 

 俺はすこぶる嫌な顔をする。

 ガラガラと扉を開けて入って来たのは――我らが主人公ナインであった。

 

 奴は俺を見つけるなりニッと笑ってヒロインズと共に入って来る……増えてる。

 

 金髪巨乳ちゃんと地味系巨乳ちゃん。

 そして、三年であるおっとり系黒髪長髪爆乳ちゃんが一人……く、クズがぁぁ。

 

「あら、あらあらぁ……ふふ、何だかえっちな視線を感じちゃうなぁ」

「……気を付けて下さいよ。こいつは危険な奴ですから……御下劣な本を隠そうともしてないし」

「が、学校で、そ、そんな本を読んじゃ……す、すごい」

「……お前の趣味には別に何も言わねぇけどよ……て、そうじゃねぇ!! 勝負!! 勝負しろ!! 今度こそ俺が!!」

「待った」

「あぁ? 待ったって……ま、また何か!?」

 

 ナインはガードを固めて警戒する。

 俺はそんな哀れなクズ野郎を冷めた目で見つめながら。

 どかりと机の上に足を置き、指で外を示した。

 

「え、外が何だよ? やっぱりまた不意打ちでも」

「――五郎丸だ」

「……ご、ごろう、まる? え、いや……何?」

「五郎丸って……ふふ、可愛い名前ですねぇ」

 

 おっとりたれ目のお姉さんはくすりと笑う……色気が半端ねぇ!

 

 俺はちらちらと爆乳を見ながら。

 馬鹿なナイン殿にも分かりやすく説明してやる。

 

「俺の家族……紅蓮龍の名前だ」

「お、おぅ! で、それが」

「――戦ってみるか?」

「え、え!? い、いや!! そんなの」

「じゃ、ダメだな。話にならねぇな。失せろ、ボケナス」

「「「……?」」」

 

 ナイン君は何でそうなるのかと聞いて来る。

 ヒロインズも頭の上に疑問符を浮かべていた……はぁ栄養が全て乳にいってらぁ。

 

 俺はこれみよがしに馬鹿にしたような顔を作る。

 

「あのなぁ? 五郎丸は俺がテイムしたドラゴンだよなぁ? てことはさぁ。五郎丸よりも俺はぁつぇぇって事だよなぁ?」

「……そう、なのか?」

「あぁぁん!? テメェ、今までの人生で何を学んできたんだぁ!? テイムってのは、強い奴が弱い奴を従える技術だぜぇ!! 相手を力で屈服させんだよぉ!! 人間社会でも、力のねぇ奴に従う馬鹿はいねぇよなぁ!? つまりよぉ!! 五郎丸を俺がテイム出来たって事は、俺はアイツよりつえぇぇんだよぉ!! テメェは先ず最初に強い奴を倒してから弱い奴を倒しに行くバトルジャンキーのいかれぽんちかぁぁ!!? ちげぇよなぁ!!? 何事にも順序があんだろうがボケがァァ!!」

「……た、確かに、それは、そうだけど……本当に、お前がテイムして――ぶぅぅ!!?」

「「「ナイン(さん)(君)!?」」」

 

 

 俺は足を器用に動かしてナインの横っ面を蹴る。

 すると、ナインは回転しながら席を巻き込んで倒れる。

 奴は何をするんだと理不尽にも怒り――俺は奴へと静かな殺意を向ける。

 

「侮辱ってのは、許されざる行為だぜぇ。唾を吐き捨てても、靴を汚されても、家の壁に立ちしょんされても、それは立派な侮辱行為だ。ナイン、お前は俺を侮辱し――俺の名と誇りを穢したんだぜ?」

「……っ。ご、ごめん」

 

 俺は立ち上がる。

 そうして、ナインの頭を掴んでガンを飛ばす。

 

「ごめんで済むんならァァァ!!!! この世に法はいらねぇんだよダボがァァァ!!!」

「「「……っ」」」

 

 俺は盛大にナインを叱る。

 すると、最初の威勢は無くなり。

 雨に濡れたチワワのような顔をしていた……気分がぁ良いなぁぁ。

 

 俺はにんまりと笑う。

 そうして、奴の頭から手を離し椅子に座り直した。

 

「授業料は出世払いにしてやんよ。分かったら、俺じゃなく五郎丸と戦う準備をするこった……まぁ墓石くらいは用意してやっからよぉ。かはははは!」

「「「……っ!!」」」

 

 ヒロインズが俺を睨みつけて来る。

 愛しの王子様を傷つけられてご立腹の様子だ。

 が、最初に唾を吐いたのはそっちであり――俺は悪くない。

 

「……分かった……また、来る……絶対にな!!」

「おぅおぅ。駄菓子の当たり程度には期待しといてやるよぉぉ……はぁ、しんど」

 

 ヒロインズと共に出て行ったナイン。

 俺はため息を吐き、周りの生徒たちに手を振って散るように伝える。

 彼らはさっと視線を外し……魔王様の視線を感じた。

 

「ん?」

「……!?」

 

 俺が視線を向ければ、魔王様は一瞬で顔を背ける……な、何だ?

 

 この前の命を懸けたデートから様子がおかしい。

 朝の迎えも無く、挨拶もしなくなった。

 避けられているようであり……いいじゃねぇか!!

 

 何かは知らないが、向こうから離れて行くのならそれでいい。

 このまま自然消滅すれば、俺も世界も安全で……く、くぅ!!

 

 何故だ、何故……もったいねぇという気持ちがあるんだ!?

 

 そりゃ、彼女は美人だ。

 あのヒロインズよりも、魔王様の方が美人だと思うくらいにはな!

 身長も高くて、細すぎず太すぎず。

 筋肉質であっても、健康的でそこが魅力的で――ほぉぉぉぉぉぉお!!!!

 

「鎮まれ!! 鎮まれ!!! 鎮まれェェェェ!!!!」

「「「ひ、ひぃぃ!!」」」

 

 俺は机を掴んで全力で頭を叩きつける。

 血迷った煩悩を消し去る為。

 痛みによって己の迷いを祓おうとした。

 

 何度も、何度も、何度も何度も何度も何度も何度も…………ふぅぅ。

 

「すぅぅぅっとしたぜぇ」

「「「う、うぅ」」」

 

 痛みによって煩悩は消えた。

 代わりに、頭から盛大に血が噴き出しているが……まぁいいだろう。

 

 鐘が鳴り響き、ガラガラと扉を開けてダズ先が入って来た。

 ダズ先はちらりと俺を見てからため息を零す……え?

 

「……保健室に行ってこい」

「え?」

「……早く、行け……は・や・く!!!」

「あ、はい」

 

 ダズ先は心底疲れていそうだった……更年期かぁ?

 

 俺はぼりぼりと血に染まった髪を掻きながら教室を出る。

 そうして、廊下を歩きながら教室を目指し……んあ?

 

 窓の方に目を向ける。

 すると、一羽のカラスが窓を叩いていた。

 こいつは何だと興味を引かれて、窓を開けてみれば……あぁ?

 

「何だこれ……手紙かぁ?」

 

 カラスは口に手紙を咥えていた。

 俺にそれを渡せば、カラスはそのまま何処かに飛び去っていく。

 俺は手紙を開いて内容を読み…………あぁぁぁ。

 

《マジックアイテム専門店レインズ! 本日開店! 場所は――》

「イベントたぁ、またまた……にしても、俺がぁ?」

 

 このイベントは知っている。

 ストーリーを進める上では必ず通る道だからだ。

 ただ少し内容が変わっており、本来はマジックアイテムではなく武器屋だが……行って見っかぁ。

 

 放置してもいいが。

 放置して良い事は一つもない。

 俺じゃなくても、後に俺にも関係するデカいイベントが発生しちまう。

 それを防ぐ方法は、このイベントに隠されている……ま、ゲームでは出来なかったけどなぁ。

 

 やるかやらないじゃない。

 出来るか出来ないかで……ま、見てから決めよ。

 

 俺はそんな事を考える。

 そうして、手紙ならチラシを綺麗に折りたたみポケットに入れた。

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