古代魔法の詠唱がAVタイトルなんだが、犯人出てこい   作:匿名さん

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第5話 朝食と今後の相談

 研究室でリュカとオルケインに対して「聖なる翻訳者」として認められた翌朝。俺とリュカは食堂で朝食をとっていた。

 

 昨晩、リュカは自室で何度も「マルノウチ・オーエル・センモン・マッサージテン」や「デカシリ・ヨガインストラクター・ノ・ガニマタ・ストレッチ」を唱え、身体のメンテナンスを行ったらしい。

 

 非常に晴れやかな表情をしてパンを頬張っている。全ての悩みが解決したように朗らかだ。

 

 一方の俺は、パンを口に運びながらも、思考の泥沼に沈んでいた。

 

 この街の実力者らしいオルケインに認められたのはいいが、今後の生活については全く見通しが立っていない。

 

 元の世界に戻れる見込みはない。かと言って、ずっとリュカの家でヒモをするのは憚られる。

 

 せっかくの異世界なんだから外に出たいし、色んなものを見てみたい。しかしそれにはある程度の力が必要だろう。

 

「ねえ、リュカ。古代魔法って、俺にも使えるのか?」

 

 リュカは驚いて目を丸くし、慌ててパンを飲み下した。

 

「えっ、使えないの? 聖句を解析できるんだから、使えるんじゃないの?」

 

 質問に対して、質問が返ってきた。これがバイトの面接であれば、リュカは不合格であろう。いや、美形エルフだから合格か? まぁ、いい。

 

「いや、正直わからないんだ。聖句は読めるけど、魔法自体は使ったことがない。魔法ってどうやって使うんだ?」

 

 リュカはゆっくり紅茶を飲んでから、静かに答える。

 

「魔法は、魔力を込めながら詠唱することで発動するの。口から発する音に魔力を込めるイメージね。でも、古代魔法は違う。詠唱を通して、自分の外にあるマナに呼び掛ける必要があるの」

 

 いきなり難しい説明をする奴だ。

 

「普通の魔法は自前の魔力で発動。古代魔法は自分の外のマナを使って発動させるってことか?」

「その通りよ」

 

 なるほど。かつて、地球からこの世界に転移したAV大好き野郎は、たぶん普通の日本人だ。魔力なんてものは持っていない。だから、自分の外にあるマナを使って魔法を発動させようとして、古代魔法を生み出したのか。

 

「古代魔法って、誰でも使えるのか?」

 

 リュカは少し呆れたような顔をして、手を横に振る。

 

「古代魔法を使うには才能が必要なの。普通の人は自分の体内の魔力が干渉して、マナに対して詠唱を伝えることができないのよ。私やオルケインが古代魔法を使えるのは、長い長い修練を経て、やっとのことよ。オルケイン、もうおじいちゃんでしょ?」

 

 少し昔を懐かしむリュカ。今も筋骨隆々のジジイだったが、昔のオルケインはもっと凄かったのだろう。

 

「てことは、体内にまったく魔力のない人は、簡単に古代魔法を使うことが出来ると?」

「理屈としてはそうなるけど……まさかヒロシ、魔力ゼロなの!?」

 

 IQゼロなの? ぐらいの驚かれようである。

 

「たぶん魔力ゼロだ。もといた世界にはそもそも、魔力なんて空想上の力だったからな」

 

「ふぅー」と長い息を吐くと、リュカは顔を引き締める。

 

「じゃ、試しにやってみて。空気中のマナにお願いするイメージで、『デカシリ・ヨガインストラクター・ノ・ガニマタ・ストレッチ』を唱えてみて」

 

 絶世の美女ともいえるリュカが真顔で「デカ尻ヨガインストラクターのガニ股ストレッチ」と言っている。なんだか凄い背徳感だ。

 

「はやく!」

「は、はい……! では!」

 

 空気中に漂っているというマナを意識する。昨日、リュカやオルケインが古代魔法を使ったとき、空気にうねりのようなものが生まれた。きっとあれは、マナに働きかけた結果なのだろう。

 

 五感を集中し、自分の外に向ける。小さな小さな光の粒をイメージした。その一粒一粒に呼びかける。

 

「……『デカシリ・ヨガインストラクター・ノ・ガニマタ・ストレッチ』……!」

 

 途端、自分が世界と一体化したような感覚に包まれた。自分の境界が曖昧になり、全てが味方になったような気分になる。

 

 身体が光りの粒子につつまれ、力が湧く。光は腰回りに集約され、強く点滅を始めた。まるで目に見えない巨大な手に、グイグイと骨盤を広げられるような強烈な刺激が走る

 

「……くっ……!? くはぁ……っ」

 

 臀部の筋肉が一本一本、解きほぐされる感覚……。凝り固まっていた股関節が、すっと伸びていく……。

 

「これが、古代魔法……」

「まさか、一発で成功させてしまうとは。流石は『聖なる翻訳者』ね」

 

 リュカは呆れた様子で呟く。

 

 やがて、「デカ尻ヨガインストラクターのガニ股ストレッチ」の効果は途切れた。腰回りが驚くほど軽い。古代魔法、恐るべし。

 

「おれ、古代魔法が使えるなら、外に出ても大丈夫じゃない?」

「確かに、護身用の古代魔法を覚えれば、問題ないかもね」

 

 リュカはいくつかの古代魔法のリストアップを始める。

 

「俺、冒険者っていうのやってみるよ。依頼をこなせば、お金がもらえるんだろ? 流石にずっとリュカの好意に甘えるわけにはいかないから、少しはお金を入れたい」

「私は遺跡や遺物の調査があるから、一緒に冒険者ギルドにいって依頼を受けることは出来ないけど、大丈夫?」

「冒険者ギルドはオルケインの管理下だろ? その辺は大丈夫じゃない?」

 

 口に手を当て、リュカは考え込む。

 

「何か危ないことがあれば、絶対に無理しないって約束する?」

「当然だよ。俺は単にお金を稼ぎたいだけで、功名心に駆られているわけじゃない。地味な依頼をこなして、小銭を稼ぐだけだよ」

「いくつか条件をつけさせてもらうわ。それを守れるなら、冒険者として登録してもいいわよ」

 

 俺は「わかった」と答え、リュカから諸々の条件を聞くことになった。これでやっと、自由に行動できる。

 

 胸を弾ませながら、急いで朝食を平らげた。

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