古代魔法の詠唱がAVタイトルなんだが、犯人出てこい   作:匿名さん

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第6話 脱ヒモ

 

 俺が冒険者になるにあたって、リュカから出された条件が幾つかある。

 

 その中で一番厳しいのは「人前で古代魔法をひけらかしてはならない」というものだった。

 

  古代魔法の使い手は貴重だ。このアステンガンド王国の王都でも、古代魔法を使いこなせるのは数人しかいないという。

 

 そのな状況下で新人冒険者が古代魔法を使って目立つのはマズイ、という判断だった。

 

 もちろん、古代魔法を使ってはならない! というわけではない。そんな舐めプをしてモンスターを倒せるほど、異世界は甘くない。

 

 俺の場合、魔力がゼロなおかげで古代魔法との相性は抜群。小声で詠唱するだけでも、充分に古代魔法は発動することが分かっているので、なんとか誤魔化すことが出来るはずだ。

 

 そもそも、古代魔法の詠唱は淫語の組み合わせなので、大声で叫ぶのは倫理観的にやばい。

 

 リュカは何も知らないから「スマタデイク!」なんて叫ぶのだ。俺はムッツリ系のスケベなので、人前ではなるべく淫語は発したくない。

 

「ここが冒険者ギルドだよなぁ……」

 

 リュカに渡されたメモ通りに進んだところ、レンガ造りの三階建て、なんか強そうな建物にたどり着いた。

 

 どう強そうかというと、筋骨隆々な老人オルケインがそのまま建築物になった感じだ。

 

 古びてはいるものの、筋肉と骨格はそのままって感じ。とにかく、頑強。

 

 じっと眺めていても始まらないので、ドアノブ を回し、重厚なドアを開く。

 

 中からは、ムワッとした空気が飛び出してきた。サウナと間違うぐらいの熱気だ。

 

 少しだけ入りたくなくなるが、ここで止まっては意味がない。

 

 俺は異世界の一員になることを選択したのだ。居候をして、タダ飯を食う生活との決別。その為の、第一歩……!

 

 無駄に気合を入れ、力強く足音を鳴らして踏み込む。その刹那、フロアをたむろする男達の視線が一斉に集まった。

 

 あっ、やべ。イキり散らかす新人ムーブになってしまった!

 

 急に跳ね上がる心拍数。顔が紅潮するのを感じながら、俺は受付を目指した。

 

 受付カウンターに座るのはおっさんと、お姉さん。お姉さんは生憎接客中。おれは眼鏡をかけたおっさんの前に立った。

 

「サトウヒロシさんですね。お待ちしておりました」

「えっ……!? なんで分かるんですか……!?」

 

 確かにリュカはオルケインに連絡しておくと言っていたが、俺の人相までは伝わっていない筈だ。

 

「ハハハッ! そりゃ、あんなにビクビクした様子で入ってきたら、落ち人だってわかるよ。黒髪黒目はそんなに珍しくないけど、あの足取りは珍しい」

 

 どうやら俺の挙動が余りにも不審だったために、落ち人とバレたらしい。落ち人ムーブが出ちゃっていたのだ。

 

「なんか恥ずかしいっす」

「ハハハッ! 気にすることないよ! 落ち人は皆最初は、あんなもんだよ! ハハハッ!」

 

 このおっさん、滅茶苦茶声がデカい。落ち人、落ち人って何回も叫びやがる。お陰で背後では「おっ、あいつ落ち人だってよ」「ふーん、落ち人ねぇ」と噂されている。

 

 全然、古代魔法を使っていないのに、目立ってしまった。しかも舐められるタイプの目立ち方だ……。

 

「はい、これが冒険者証だよ! 無くすと再発行の費用が掛かるから、気を付けてね!」

 

 渋い銅色のカードを渡される。なるほど、ランクによってカードの種類が変わるのだろう。

 

「階級が上がると、シルバー、ゴールド、プラチナって感じでカードの素材が変わるんですよね?」

「そんなわけないだろ? なんでそんな面倒臭いことするんだよ? 階級は冒険者ギルドの名簿で管理しているだけだよ?」

 

 顔がカッと紅潮する。クソ! 俺の中にある異世界転生モノの知識が憎い!

 

「はい、これで冒険者登録は完了だよ。依頼を受けるときは、あの依頼掲示板から依頼票をとって受付にきて」

 

 おっさん職員が指さした先には、木製の大きな掲示板があった。沢山の依頼票が所狭しと貼り付けられている。

 

 依頼票の前まで行くと、俺はあることに気が付いた。

 

「読めねえ……」

 

 そう。異世界の文字が読めないのである。古代魔法を記した石板や古文書は日本語で書かれているため問題ないが、依頼票はがっつり異世界語だ。

 

 不思議な力によって会話は出来ているものの、依頼票の内容はさっぱり分からない。まいったなぁ──。

 

「あの……!?」

 

 すごく低い位置から声を掛けられた。

 

 腰より少し高い程度の背丈。見上げているのは、小麦色の肌をした少女だった。

 

「あの……!?」

 

 少女からは「あの」の次が出てこない。栗色の癖毛に、潤んだ大きな茶色の瞳。ぴょこんと尖った耳が、小動物のような愛らしさを強調している。

 

 人間とは別の種族なのだろうか? エルフとも違う感じだが。

 

「何か?」

「えーっと、もしかして文字が読めないんじゃないかなって、思いましゅて……」

 

 少女は尻すぼみになる声で答える。

 

「あっ、よく分かったね。その通り。俺、他の世界からの落ち人だから、文字が読めなくて、困っていたところなんだ」

「や、やっぱり……。あ、あの、依頼票、読んであげましゅか?」

 

 渡りに船である。

 

「え、いいの?」

「ひ、一つ条件がありましゅ! 私とパーティーを組んでくれるなら、依頼票を読みましゅ!」

 

 語尾が「しゅ」になるタイプ。てか、こんな子供が冒険者をしていて大丈夫なのだろうか? パーティーを組んでいたら、強制児童労働でしょっ引かれない?

 

「えっ、いや、でも。君、子供でしょ?」

「もう成人してましゅ! リリパット族は成人してもこれぐらいの身長なのでしゅ」

 

身長120cmぐらいだろうか? どう見ても子供だが、冒険者ギルドからつまみ出されていないところを見ると、本当なのだろう。

 

 依頼を受ける度にリュカを連れてくるわけにも行かないし、かといって、依頼票が読めないのは困る。

 

「とりあえず、一日だけパーティーを組んでみるか?」

「お願いしましゅ!」

 

 リリパット族の少女はキラキラとした瞳で俺を見上げる。とても良いことをした気分になる。

 

「俺はヒロシ。名前は?」

「プリムでしゅ」

「プリム、よろしく」

 

 俺が右手を出すと、小さな手が伸びてきた。人間より体温が高いらしく、とても暖かく感じる。

 

「じゃ、さっそく依頼票を選ぼう」

「了解っしゅ」

 

 全く予期していなかったが、俺はパーティー(仮)を組むことになった。

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