古代魔法の詠唱がAVタイトルなんだが、犯人出てこい 作:匿名さん
語尾「しゅ」のリリパット族の少女(成人)プリムをパーティーメンバーとして加えての初めての依頼。
それは「穴ウサギ」の肉集めだった。もはやモンスター討伐ですらなかったが、仕方がない。
俺は平和な日本の高校生だし、プリムは低身長合法ロリだ。
人間を見ると憎悪の感情を燃え上がらせて襲い掛かってくるというモンスターを相手するには、心許ない陣容。最初は普通の動物で狩りの感覚を掴むのだ。
「ヒロシはどんな武器を扱えるのでしゅか?」
冒険者ギルドから王都の正門に向かって歩く途中、早足をしてついてくるプリムが俺を見上げて言った。
俺はリュカにもらった革鎧を着ているものの、ちゃんとした武器はもっていない。あるのは腰のナイフだけ。一方のプリムは短弓を背負っている。
パーティーに誘ってみたものの、俺が戦えるのかを不安に思ったのかもしれない。
「俺は素手で戦う」
「なんと、格闘家だったのでしゅね!?」
武術の心得なんて一つもないが、なんとなく「格闘家」と答えてしまった。適当な回答ではあったが、古代魔法の使い手であることをカモフラージュする上では、有効かもしれない。
「あぁそうだ。まだ自分の世界にいた頃、俺はこの拳で百頭以上もの熊を葬ってきた」
俺は拳を握りしめ、存在しない過去を惜しむように遠い目をしてみせた。
「ひゃ、百頭……! 凄いでしゅ、伝説の英雄みたいでしゅ!」
プリムは瞳をキラキラと輝かせた。すまんな。嘘だ。
架空の武勇伝を語っている内に、王都の正門に着き、そのまま城壁の外に出た。
街道を外れれば、そこには風にそよぐ緑の海――果てしない草原が広がっている。
見渡す限り平坦で、終わりがないように思える。
「穴ウサギって、どこにいるんだ?」
「穴でしゅかね?」
当然の答えが返ってきた。しかし、ひざ下ほどの草が生い茂る草原で、地面にあいた穴を見付けるのは難しい。
「どうやって穴を見付けるんだ?」
「わかんないでしゅ」
「そっか~。わかんないか~」
そうだった。プリムは誰にもパーティーを組んでもらえず、落ち人丸出しの俺に声をかけてくるような状況だったのだ。期待するのが間違っている。
ここは古代魔法を使うしかない。
「プリム、離れていろ」
「えっ、どうしたんでしゅか? プリム、臭かったでしゅか?」
自分の着ている服の裾を掴んで、プリムは臭いを確かめる。
「……いや、そうではなくて。武術を使う」
「武術でしゅね! わかりました! 離れましゅ!」
全ての古代魔法を武術ということにしてしまえばいい。きっとプリムが相手なら誤魔化せる。
プリムが俺から十メートルほど離れたことを確認してから、脚を大股に開き、腰を落とす。そして、拳を握って両脇を閉めた。そして、ある古代魔法(AVタイトル)を頭に浮かべ、静かに唱えた。
『ヤガイロシュツ・ニ・ハマッタ・インラン・ジュクジョ』
刹那、大気中のマナが激しく共鳴し、草原のあちこちに淡い光のマーカーが顕現した。その点が示すのは、ある大きさ以上の生物。
『野外露出にハマった淫乱熟女』――リュカの書庫で見つけた、隠蔽された生命反応を強制的に視覚化する、極めて実用的な古代探知魔法である。
「ヒロシ! あの光は何でしゅか!?」
プリムは駆け寄ってきて、草原の上に現れた輝くマーカーを指差す。
「俺の武術によって炙り出された、生体反応だ。あの光の下に、何かがいる筈だ。きっと、穴うさぎも」
「凄いでしゅ! 狩りまくるでしゅ!」
背負っていた短弓に矢をつがえ、プリムは臨戦態勢となった。二人で一番近くの生体反応へと近付く。
「緊張するでしゅ……」
「静かに……」
「……ゅ」
鏃を下に向けながら、プリムはじりじりと生体反応へと迫る。かなり近くまで来ても、反応の主は見えない。もしかすると、巣穴の中にいる穴ウサギに反応したのかもしれない。
「穴でしゅ……」
プリムは小さな声で俺に伝えた。その視線の先には、拳ほどの大きさの穴がある。
「よし。俺が衝撃を与えて穴ウサギを外に出すから、プリムは弓矢で狙ってくれ」
「承知でしゅ」
穴から少し離れたところに立ち、プリムはギュッと弓を張る。緊張しているようで、顔が引きつっている。
俺は巣穴の上に立ち、脚を開いて腰を落とした。そして、ある古代魔法を頭に浮かべ、つぶやいた。
『クイウチ・ピストン』
ドンッ! と地面に強い衝撃が走る。『杭打ちピストン』によって驚いた穴ウサギは巣穴から飛び出し、プリムが弓矢を構える方に向かった。
「えいっ!」
ヒュン! と弓から放たれた矢は、意外なほどに力強く空気を裂き、穴に突き刺さった。弾けるように巣穴から出た灰色のモフモフは、一瞬で射貫かれ、地面へと転がった。
「やったでしゅ!」
プリムは短弓を左手に持ったまま、喜んで飛び跳ねる。本当に嬉しそうだ。
「凄いじゃないか」
「ヒロシのお陰でしゅ! ヒロシの『クイウチ・ピストン』っていう武術、地響きが凄かったでしゅ!」
……マジか……。
「聞こえていたのか?」
「はい! リリパット族はとても耳が良いのでしゅ! さっきの『ヤガイロシュツ・ニ・ハマッタ・インラン・ジュクジョ』も聞こえたでしゅ!」
クソ……! 油断した……!!
「プリム。俺の使った武術のことは秘密にしておいてくれるか? 実は師匠に、人前で使うことを禁じられているんだ……」
なるべく真剣な顔で頼み込む。
「なるほど。だから小さな声で発していたんでしゅね。分かりました! 内緒にしましゅ」
「約束だぞ?」
「約束でしゅ!」
プリムは何故か嬉しそうに「約束~約束~」と言いながら、更に張り切り、穴ウサギ狩りに精を出した。
日が暮れる前に、ズタ袋がいっぱいになるぐらいの穴ウサギを狩ることに成功した。初日にしては充分な成果だ。
「そろそろ戻ろう」
「はい!」
淫語を唱える落ち人と、それを武術の掛け声だと信じるリリパット族の女のパーティー。なんとか無事に初めての依頼をこなすことが出来たようだ。