古代魔法の詠唱がAVタイトルなんだが、犯人出てこい 作:匿名さん
「ほれ、食え」
小動物にエサを与える感覚で、串焼きを渡す。プリムは「ありがとでしゅ」と言いながら受け取り、勢いよく肉にかぶりついた。
余程、腹が空いていたようだ。ガツガツ食べているので、もう食べ終わりそう。串まで齧りそうな雰囲気すらある。
「これも食え。俺は新しいやつ買ってくるから」
「えっ、いいでしゅか!?」
「子供が遠慮するな」
「もう大人でしゅ!」
口の周りに串焼きのタレをいっぱいつけた様子はどこからどう見ても子供だ。プリプリしながらも、プリムは俺の分の串焼きを受け取る。そして変わらぬ食欲で、肉に齧りついた。
俺とプリムは店には入らなかった。プリムが「や、屋台がいいでしゅ……」と、怯えたように懇願したからだ。
店に入ったら冒険者ギルドと同じように周囲から厳しい視線や言葉を投げかけられるのだろう。
そして結局、冒険者ギルドの近くにある広場の屋台で串焼きを買い、ベンチに座っての夕食と相成った。
俺は新たな串焼きを買いに屋台の列に並ぶ。
振り返ると、プリムが子供のように足をぶらぶらさせながら、ご機嫌な様子で肉を頬張っていた。
心が和む光景だ。
これは俺が合法ロリを好むからとかではなく、人類共通の庇護欲というやつだろう。
だが、この王都の住人は違う。プリムをはじめとする「リリパット族」が、明確に忌み嫌われているのは明らかだった。
プリムを連れて歩いているだけで、奇異なものを見るような無遠慮な視線を向けられることが度々。
中には聞こえるように悪態をつく奴までいた。
一体何故、ここまでリリパット族は嫌われているのだろう?
「おまたせ。何本だい?」
串焼き屋の店主が汗を拭きながら尋ねる。屋台の前に立つだけで、熱気でこちらも汗を掻きそうだ。
「さん、いや。四本頼む」
「はいよ~」
店主は紙袋に串焼きを四本入れ、俺は銀貨を渡した。そして、プリムの待つベンチへと戻った。プリムはすっかり食べ終えていて、裸になった串を口にくわえて物欲しそうにしていた。
「ほら、もう一本食え」
「えっ! そんなに食べられないでしゅよ!」といいながら、串焼き受け取るプリム。まだまだ食べられそうだ。
俺もベンチに座り、串焼きを頬張る。少々筋張っていて肉は硬いが、その分強い旨味がある。味の濃いタレが、更に食欲を刺激し、次の一口へと繋がる。
プリムに負けないぐらい、俺も腹が減っていたらしい。あっと言う間に二本食べてしまった。手元の袋には残り一本。
肉とネギのような野菜が交互に刺さった最後の一本を、三本目を食べ終えていたプリムがじっと見ている。
「食べる?」
「さ、さすがにもうお腹いっぱいでしゅよ~」
その目は明らかに「あと少しだけ食べたい」と言っている。
「じゃ、半分食べて。残りは俺が食べるから」
「えっ……!? 嫌じゃないんでしゅか? 私と半分こするの」
プリムは上目遣いになり、不安げに耳を伏せた。
「俺は気にしないから、食べろ」
紙袋から串焼きを手に取り、プリムに肉とネギを齧らせる。そして残った半分をペロリ。
もう腹いっぱいだ。プリムを見ると、満足した表情で口元を手で拭っていた。そろそろ、聞いてもいいかな。
「なぁ。なんでリリパット族は嫌われているんだ?」
「……それは、リリパット族が悪いことをしたからでしゅ……」
プリムは俺の方を見ず、虚空に視線を漂わせながら言った。
「悪いことって?」
「リリパット族の男が……この国の第一王子を……暗殺したんでしゅ……」
──重いな。
少数民族の一人が犯罪を犯すと、その民族全体に悪感情が向けられる。これは地球でもよくあることだ。たとえ全く関係がなくても、犯罪者の一味のような見られ方をする。
「それはいつのことだ?」
「一年ぐらい前のことでしゅ……」
なるほど。王都の人々の記憶が風化するまでには、まだしばらく時間が掛かりそうだ。何かきっかけがないと、リリパット族に対する視線は変わらないだろう。
「なんで、リリパット族の男は王子を殺したの?」
「……分からないでしゅ……。王子が暗殺された数日後、犯人として捕まったのでしゅ……」
プリムは相変わらず視線を虚空に漂わせている。その瞳に涙を溜めて。
「その犯人、知ってる人だったのか?」
「はい……でしゅ……。子供の頃、よく遊んでくれた……近所の、優しいお兄ちゃんでしゅた……」
その瞳から涙が零れ、頬を伝う。一度流れ始めると止まらない。ポロポロと粒になって落ちる。
俺は話を変えようと、話題を探す。
何がいいだろう。二人で共通して話せるネタは何だ?
「ところで、明日はどんな依頼を受ける?」
「……明日も、私とパーティー組んでくれるんでしゅか……?」
「当然だろ?」
「本当でしゅか……!? リリパット族の事情を聞いたのに、それでも組んでくれるんでしゅか……!?」
涙を拭い、プリムは俺を見上げる。
「俺は落ち人だから、この国の事情なんて関係ない。だから、明日も一緒に依頼を受けよう」
「はい……でしゅ……」
一度拭った筈のプリムの瞳が、また涙で潤んでいた。
「じゃ、明日に備えて解散としよう。プリムは一人で帰れるか?」
まだ陽は落ち切っていない。
「大丈夫でしゅ! プリムは大人でしゅから!」
鼻をすすりながらも、プリムはベンチから勢いよく立ち上がった。
「朝一、冒険者ギルドで待ち合わせにしよう」
「はいでしゅ!」
プリムは何度かこちらを振り返り、手を振りながら、去っていく。
俺は、小さくなっていくその背中を最後まで見送ると、居候先であるリュカの家への帰路に就いた。