ラーイエローの神楽坂   作:ラララララクダ

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プロローグ

外は嵐だ。猛烈な風の音と、時折夜空を切り裂く雷鳴が部屋の中まで響いてくる。

時刻は午前4時。暗闇に包まれた部屋で、デスクライトの灯りだけが俺の机を照らしていた。

 

「できた。ついに完成だ……!」

 

目の前には、黄金色に輝く【ラーの翼神竜】。

ようやく手に入れたこのプラモデルを、俺はついに形にした。

周りを見渡せば、部屋の中は遊戯王に関連するグッズで埋め尽くされている。まさに神の祭壇だ。

 

「よし、この感動を記録に残さないとな」

 

ランナーの残骸を片付け、撮影の準備に入る。最高のショットを撮るために、棚のデッキホルダーからイラスト違いの【ラーの翼神竜】を3枚取り出した。

その時だ。重なっていたカードが1枚、ひらりと床に落ちた。

 

「おっと……ん? 【洗濯機塊・ランドリードラゴン】……じゃなくて、【ドラゴンメイド・ラドリー】か」

 

落ちたラドリーのカードを見た瞬間、俺の脳内に勝手なイメージが再生される。

仕事中に派手に転んで「すみませんー!( ≧ロ≦)」と半泣きになっているドジっ子ラドリーの姿だ。

 

「ダメだ、完徹のせいで頭がバグってるな」

 

自嘲気味に笑う。まあいい。どうせ明日の大学は自主休講(予定)だ。

撮影が終わったら、最近MDばかりで埃を被っていたこのリアルデッキを、久しぶりに一人回しでもしてやろう。

 

「悪いな、ラドリー。また後でな」

 

カードをデッキホルダーに戻し、予定通りプラモデルの前に3枚のラーを配置する。

充電器に繋いだままのスマホを構え、画面越しに最高のアングルを探る。

 

「これだ……この角度こそが神の威厳を——」

 

 

カッ!!!!!

 

 

突如、窓の外で視界が真っ白になるほどの閃光が走り、爆音とともに部屋の電灯が激しく明滅した。

 

「うおっ!? びっくりした……心臓に悪いな、もう」

 

気を取り直してシャッターを切ろうとした、その瞬間。

先ほどよりも遥かに巨大な光が世界を焼き、壁のコンセントからスマホの充電ケーブルを伝って、とんでもない質量の電力が俺の右腕に流れ込んできた。

 

「ぬぉぉぉぉぉああああああああ!?!? なにこれ!? しびびびびび!!!」

 

体がギャグマンガみたいに硬直し、視界が火花でスパークする。

……これが俺の最期だった。

 

死因:漏電遮断機の故障により、直撃した落雷が電線を逆流しての感電死。

 

こうして、俺の「久しぶりにリアルデッキを動かす」というささやかな願いは、守られない約束になる……

はずだった。

 

 

 

 

 

 

「あ…っ、あだだだだ……」

 

全身がしびれるような感覚に襲われ、俺はベッドの上で跳ね起きた。

……あれ? 死んだはずじゃなかったか? 夢オチか?

 

「太郎、朝ごはんの時間よ。そろそろ起きなさい」

 

階下から母さんの声が響く。俺は条件反射で「はーい!」と返事をしてから、自分の声の高さに違和感を覚えた。

自分の体を見下ろす。

 

(なんだこの短すぎる手足は。周りの家具もやけに大きく見える)

 

急いでベッドを飛び出し、部屋の隅にある姿見を覗き込む。

そこに映っていたのは、重力を完全に無視した髪型をした、未就学児くらいのガキだった。

 

「な、なんだこれぇぇぇ!?」

 

驚いた瞬間、脳内で激しい頭痛が渦巻いた。

20年間の俺の記憶と、神楽坂 太郎(この体)で生きてきた5年間の記憶が混ざり合い、脳内にカオスを形成する。

……なるほど。これが噂の異世界転生ってやつか。

だが、『神楽坂』という名字にこの顔……どこかで見覚えがあるような?

 

混乱したままリビングへ降りて朝食を摂る。テレビでは、ちょっと名前や地名が特異なだけの、いつものニュースが流れていた。

 

(異世界じゃなくて、現代に再転生しただけか? まあ、いいか。命の危険もないし)

 

少しだけ拍子抜けしていると、次のニュースが流れた。

 

『ペガサス・J・クロフォード氏が開催したデュエルモンスターズ大会の決勝。

相手のキース・ハワードに対し、観客の子供が代理で勝負し勝利したことが話題になっています』

 

ガラン、とスプーンを落とす。母親に注意されて慌てて謝ったが、頭の中はそれどころじゃない。

ペガサス? キース? アニメじゃなくて朝のニュースだと?

じゃあ、まさかこの世界は……!

 

「なあ、母さん……童実野町ってどこか知ってる?」

 

「何言ってるのよ。ここがその童実野町じゃない」

 

確信した。

ここ、遊戯王の世界だ。

 

 

 

 

 

 

食事を終え、2階の自室に戻る。母さんが「今日は妙におとなしいわね」と怪訝な顔をしていたが、今はそれどころじゃない。

遊戯王の世界、そして『神楽坂』という名字……思い出した。GXに出てくる、一度きりの敵キャラだ。

相手のデッキをコピーして戦術を再現する、一見強そうな設定を持つが、所詮は劣化コピー止まりの噛ませ犬。

 

てか、こいつ名前、太郎だったのか?なんて平凡な名前なんだ。ここ遊戯王だぞ?

個性ゼロにもほどがあるだろ。

いや、そういえば5D'sに出てきたチーム太陽のリーダーも、名前は太郎だったな。

 

「とにかく、あの神楽坂に転生…いや、憑依したのか?俺」

 

前世に未練はない。あんなギャグみたいな最期だったが、自分なりに楽しく生きた。

両親には申し訳ないが、友人連中は今頃俺の死因を聞いて爆笑しているはず。

こうなったら第二の人生、思いきり楽しんでやろう。

 

「この世界に来たからには、やりたいこともあるしな」

 

俺は、前世から遊戯王が好きだ。もちろんアニメも好きだし、特にDMとGXは大好きだった。

だが、一つだけ、どうしても納得いかないことがある。

それは、俺の愛してやまない『ラーの翼神竜』への待遇だ。

 

マリクが使っていた時の圧倒的な威厳。だが、彼が遊戯に敗れてからのラーはどうだ?

ドーマ編では奪われて出番なし。KCグランプリでもスルー。

王の記憶編ではゾークにボコられて石像になり、最終決戦では召雷弾のコンボで自滅。

さらにはGXでコピーカードが登場し、『神縛りの塚』に縛られるという屈辱。

 

「ファンとして、こんな暴挙が許せるか! ラーを歴史に残る最強のカードとして輝かせてやる!」

 

決めた。後に開催される『バトルシティ』に出場し、マリクからラーをアンティで奪う。そして遊戯にも勝ち、そのままラーを使い続けてやる。

アテムの記憶? 知るか。そんなに気になるなら一時的に貸してやるが、絶対返してもらうからな!

 

……と、意気揚々と宣言してみたものの、これには致命的な問題がある。

そう、カードがねぇんだ。

 

パックを剥けばいいって? 冗談じゃない。ガキがもらえる小遣いなんて、たかが知れてる。それで何パック買えると思ってんだよ。

 

遊戯は、じいちゃんがカードショップの店主だし、海馬にいたっては、圧倒的な資金力でレアカードを根こそぎ確保。

孔雀舞やマリク、リシドといった本戦進出メンバーだって、みんな似たようなもんだ。

環境に問題があるのは城之内くらいだが、あいつだって当時のカードプールを考えれば【天使のサイコロ】(アニメ版)【悪魔のサイコロ】(アニメ版)、おまけに【墓荒らし】(アニメ版)なんていうイカサマ級のカードを持ってる。

 

たとえどうにか金をかき集めてパックを引きデッキを作っても、あいつらを相手にするにはカードパワーが到底足りない。

「役に立たないカードなど一枚もない」なんて、誰かが言ってた。確かに、【シーホース】で遊星を倒した猛者もいたさ。

 

だがな! だからといってデッキ40枚全部を【シーホース】にしてデュエルに勝てるわけねーだろ!

「役に立たないカードなど一枚もない」っていうのは、単体ではゴミでも、シナジー次第で化けるって意味であって、すべてのカードがぶっ壊れ性能ってわけじゃない。

 

天下の武藤遊戯だって、バニラだけのデッキで……

あ、待てよ。あの人、原作でそんなデッキ使って高性能AIに勝ってたな……とにかく。

 

「きゅぴっ!(っ´ω`c)」

 

この際、攻撃力至上主義の時代を逆手に取って、低評価カードで出し抜くしかない。

そうだな、『マスドライバーカエル』とかで焼いてやれば……

 

あ、『バトルシティ』はバーンカード禁止だった。ちくしょう!

 

「くぅん……(;ω;)」

 

「おい『ラドリー』、俺は今真面目に考えてるんだから、そんな気の抜ける効果音は……」

 

……え?

 

隣を見ると、そこには半透明の【ドラゴンメイド・ラドリー】の精霊が、にこにこと立っていた。

 

「アイエエエエエエ!? ラドリー!? ラドリーナンデ!?」

 

俺は驚きのあまり、派手にひっくり返った。

 




オリジナル設定

主人公が介入しなかった場合の、この世界の歴史です。
原作を見ても正確な年代がよく分からなかったため、このような形にしています。

1989年 遊城十代、誕生
1994年 キースがペガサスとのデュエルに敗北。デュエルモンスターズが人気競技となる
1995年 DD、世界チャンピオンになる
1996年 王国編/バトルシティ編
1997年 王の記憶編
2004年 遊城十代、デュエルアカデミアに入学
2005年 DD、世界チャンピオン10年目

神楽坂の名前は見つけられなかったため、本作では「太郎」としています。
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