ラーイエローの神楽坂   作:ラララララクダ

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第11話 輪廻独断

「は?ネオ童実野シティが俺の時代にも存在してるって?そんな馬鹿な!ネオ童実野シティは童実野町が発展してできた街だろ!?」

 

あまりの衝撃事実に、俺の脳内ネットワークが一時停止しかけた。だが、Z-ONEは至って冷静に語り出す。

 

『貴方の時代にもネオ童実野シティは存在します。童実野町は隣接こそしていますが別の行政区、ネオ童実野シティの東側に位置する町ですよ』

 

おいおい、マジかよ。アニメ本編の背景に映ってた似たような景色とか、昔プレイしたゲームで「サテライトは童実野町の成れの果て」なんて設定を見た気がするんだが。

俺の記憶違いか?それともこの世界のバグか?

 

「じゃあ、俺が見たサテライトは何なんだ? アニメのOPじゃ、ゼロリバースが起きた時、海馬コーポレーションのビルを中心に街がぶっ飛んでたはずだぞ」

 

食い下がる俺に、Z-ONEは淡々と補足を加える。

 

『ええ。確かに不動博士は海馬コーポレーション所属でしたし、モーメントの実験も海馬コーポレーションのビルで行われました。

ですが、それは本社ビルではなく、ネオ童実野シティにある支部のビルだったのです』

 

そこから始まったのは、Z-ONEによる「ネオ童実野シティと海馬コーポレーションのドロドロした歴史講座」だった。

かつてネオ童実野シティの南部はいわゆるスラム街、都市の掃き溜めだったらしい。

行政も手を焼いていたその場所に目をつけたのが、あの海馬瀬人率いる海馬コーポレーション。

 

童実野町を完全に掌握した海馬コーポレーションは、隣のネオ童実野シティにも触手を伸ばすべく、『南部スラムの童実野町化計画』をぶち上げた。

最初は反対も多かったらしいが、「地元民を雇って雇用創出!」「デッキさえ登録すれば住民票発行、新築マンション住み放題!」という、決闘者特化型の神条件を提示。

結果、住民は手のひらを返して大賛成。

 

こうして爆誕した『童実野町2号』は本家を模しつつ、モーメントを含む最新技術をブチ込んだ結果、他のネオ童実野シティのエリアを凌駕する勢いで成長。

結局、ネオ童実野シティ全体を海馬コーポレーションが掌握する結果になったらしい。

 

(あの社長……別の世界線でも化け物級の手腕を発揮してやがる)

 

思わず感嘆したが、ここで違和感に気づく。俺の知るアニメのネオ童実野シティは『治安維持局』が管理していたはずだ。

海馬コーポレーションの影は薄かった。建物や所属の科学者が出現した程度。

つまり、Z-ONEのいた歴史と違い、ゼロリバースが起きた世界線では、多分海馬コーポレーションは事故の責任を取って撤退し、影響力を失った。

その空白を突いてゴドウィンやイリアステルが暗躍し始めた、というわけか。

 

もしこれすらも、アニメ本編のZ-ONEが歴史を修正するために仕組んだことだとしたら……

やっぱり5D'sのラスボス、格が違いすぎるだろ。そんな俺の戦慄を余所に、Z-ONEは本題へと切り込む。

 

『神楽坂、貴方の……いえ、我々の目的は、バトルシティでマリク・イシュタールに勝利し、【ラーの翼神竜】をアンティで獲得すること。

そして貴方がラーを使いこなし、この歴史を正史として定着させることです。

 

だが、不動遊星が17歳になる2020年までに、この世界は少なくとも3回、貴方の知る事件を含めればそれ以上のほろびの危機に瀕します。

貴方が使用するカードを制限しても、存在だけで元の歴史とは違いが生じる。その結果、破滅の尖兵にどう影響するかは未知数』

 

「あー、だからやばいことが起きてないか事件の中心から見張って、イレギュラーが起きたら俺が手伝って解決しろって奴だ」

 

『その通りです』

 

「了解。じゃあ、俺の時代で使っても影響が少なそうなカードの選別と、さっき頼んだ『アレ』、ちゃんと頼むぞ」

 

『はい、完成次第そちらへお送りします』

 

さて、話もまとまったし、「そろそろ自分の時代に帰るか」と思った時、横でずっと沈黙を守っていたソピアが、「もっ…も~」と、なんか言い出した。

要約するとだ、Z-ONEに感動したらしい。

ソピアが住んでいたDT世界って、暇さえあれば殴り合ってる頭おかしい連中ばっかりでうんざりすると。

 

(いや、お前の世界にもあるんだろ? クリスタとか。よくわからんけど)

 

あんな奴らとは違って、世界のために頑張っているZ-ONEの姿を見ると「応援したい」って思ったらしい。

で、あろうことか壊れた体を直してあげたい、とか言い出した。

 

いやいやいや。さっきお前、デュエルディスクすら作れないとか言ってなかったか?

内心ツッコミを入れたが、とりあえずそのままZ-ONEに伝えてみることにした。

 

『神が自ら……?しかし、私の体は長年の改造の果てに、製作者である私自身ですらどこが悪いのか把握できないほど複雑化しています。

光栄な話ですが、修理は不可能に近いかと』

 

「だ、そうだぞ?ソピ――」

 

 

ピカァァァァァァッ!!

 

 

言いかけた俺の言葉は、光にかき消された。

いつの間にかZ-ONEの前に移動したソピアが、両手に持った白と黒の宝玉を叩きつけたのだ。

 

「うわっ、まぶしっ!」

 

あまりの光量に目を覆った。

しばらくして恐る恐る目を開けると、さっきまで目の前にあったあの巨大なアンモナイト型の装置が、跡形もなく消えている。

代わりに、そこに立っていたのは一人の人影。いや、人影っていうか。

 

(人、か?)

 

体の大半は機械でできていて、人間だと判別できるのは顔の半分と、機械の継ぎ目から見えてる肌くらい。

 

「なぁにこれぇ」

 

思わずそう呟いて隣のソピアを見ると、なんかドヤ顔で胸を張ってやがる。

俺はもう一度正面に視線を戻した。

 

「Z-ONE、だよな?」

 

機械部分はまあ置いとくとしてなんか、人間側の顔、妙に若くなってないか?

いや、若くなったとかそういうレベルじゃねえ。

 

(あれ、完全にアニメ本編の遊星の顔じゃねえか!?)

 

と、俺が心の中でツッコミを入れていると、Z-ONEが口を開いた。

 

「ば、馬鹿な……!? 定期的に私を蝕んでいた頭痛が消え、長い間感じることのなかった手足の感覚が、すべて戻っている。

しかも、機械に置換した部分からさえ、感覚がフィードバックされて……これは一体!?」

 

あの冷静沈着なZ-ONEが、目に見えて動揺している。

 

「おいソピア、お前マジで何したんだよ」と問い詰めると、自分の作品を自慢する芸術家のように語り出した。

いわく、「機械を人体に無理やり継ぎ足したアンバランスな状態だったから、一旦バラして、完璧な比率で再構成した」とのこと。

つまり、肉体と機械が完全に融合した新種族、『生体機械人間』へと作り変えてしまったらしい。

 

理屈は分からんが、一つだけ言わせてくれ。

 

「おい! お前さっき『分身だから単純なものしか作れない』っつってデュエルディスク拒否したよな!?」

 

するとソピアは「ぶもぉぉっ!」と憤慨した。

いわく、「あんな得体の知れない機械とこれを一緒にするな!こんなもん他の世界に行けば腐るほどいるけど、デュエルディスクとかいう意味不明なもん、これまで見たこともないわ!」

 

俺は絶句した。

海馬社長、あんたが作ったデュエルディスクは異世界の神から見ても、訳わかんないものらしい。

いつか出会うであろう社長の狂気に思いを馳せていると、目の前の新生Z-ONEが深々と頭を下げた。

 

「これならば、これからも永きに渡り戦い抜くことができそうです。神に感謝を」

 

「もぉ~ん!(励めよ!)」

 

満足げなソピアと、活力を取り戻したZ-ONE。

一件落着みたいな感じでまとまってはいるが、これ、Z-ONEのブラックな労働環境がさらに加速しただけじゃないか?

 

まあ、そんな感じで、

その後、俺は元の時代へと帰るのであった。

 




オリジナル設定

『童実野町2号』
5D's第3期OPでジャックが立っているシーンや、第74話で遊星がアンチノミーとデュエルしに向かう場面に映る「DAILY 2021」という広告から、5D'sのWRGP編の年代は2021年だと思いました。
またWRGP編はダークシグナー編から少なくとも半年後であること(第65話)、第6話で看守が持っている端末に記載されている遊星の年齢が18歳であること、そしてWRGP時点では19歳になっていること、さらに第56話でルドガーがゼロリバースは17年前の出来事だと語っている点などを総合すると、遊星は2002年生まれ、ゼロリバースは2003年に発生したと考えました。
しかし、2004年に入学(GX第156話の鮫島校長が持っている書類)した十代が2年生の時に童実野町へ修学旅行に行っていますが、その時点で童実野町は問題なく存在しています。
劇場版『 超融合!時空を越えた絆』では遊星が時間移動によって十代を連れてきているため、十代のいる世界線がゼロリバースの起きていない別の世界線であるとも考えにくく、そのため、この作品ではこのような形になりました。
このプロジェクトについて、社長は「所詮、俺の果てしなく続く戦いのロード、その足跡を刻むミニチュアに過ぎぬ」と語っていましたが、そのおかげで多くの孤児や貧民が救われた、というオリジナル設定です。

『主人公が介入しなかった場合の、この世界の歴史2』
1981年 武藤遊戯・海馬瀬人・城之内克也誕生
1989年 遊城十代誕生
1994年 キースがペガサスとのデュエルに敗北。デュエルモンスターズが人気競技となる
1995年 DD世界チャンピオンとなる
1996年 武藤遊戯15歳、牛尾哲17歳/王国編・バトルシティ編・ドーマ編
1997年 王の記憶編/牛尾哲 卒業
2002年 不動遊星誕生
2003年 ゼロリバース発生
2004年 遊城十代 入学/セブンスターズ編
2005年 遊城十代 2年生/光の結社編/童実野町へ修学旅行
2006年 遊城十代 3年生/ユベル編・ダークネス編
2020年 不動遊星 17歳・牛尾哲 41歳「おい、デュエルしろよ」/ダークシグナー編
2021年 WRGP編

【創星神 sophia】
ソピアは以前、「見たことのないものや難しいものは作れない」と言っていましたが、実のところ、この難しいという基準はあくまでソピア基準の話です。
人間が想像できる範囲のものであれば、大抵のものは作り出すことが可能です。ただし、分身であるため、新しいものを創造する能力が欠けている設定です。
本来のソピアであれば、「カードを置くことでそのビジョンが実体化する装置がある」という事実さえ把握していれば、その仕組みを自分なりに想像し、アレンジを加えた上で、デュエルディスクと同等の機能を持つ装置を作ることができます。
しかし分身の場合は、たとえそういうものが存在すると知っていても、その過程や構造を理解していなければ、作り出すことはできません。
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