今は1995年3月。
前世の記憶を思い出してからほぼ1年。そしてDDの襲撃からエドの親父さんを救い出してから、1ヶ月の月日が流れた。
Z-ONEと三皇帝が血眼になって探してはいるが、破滅の光の行方は依然として不明のまま。
必死に逃げ回っているのか、あるいは既にZ-ONEの観測の死角である斎王の体内に潜り込んだか……まあ、そのどちらかだろう。
エドの親父さんがその後、何事もなく平穏に暮らしているのを見る限り、修正力が働いていないのは確かだ。
Z-ONEが言っていた「ソピアのおかげでこの歴史が隔離されている」という話は、どうやら本物らしい。
……と、色々と振り返ってみたが、今日はそんなことより重大なイベントがある。
Z-ONEに頼んでいた「あれ」が、ついに届く日なのだ。
以前、初めて未来へ行った時過去に戻る前、Z-ONEにあるお願いをしておいた。
それは、『ヒエラティックテキスト』を教えてくれる教師役を派遣してほしい、というものだ。
▽
俺たちの計画は、【ラーの翼神竜】をアンティルールで手に入れ、その後も俺が活躍させることだ。
だが、ラーを操るには『千年アイテム』と、召喚したラーを起動させるための呪文『ヒエラティックテキスト』の朗読が必須である。
つまり、たとえラーを手に入れても、今のままでは宝の持ち腐れだ。
千年アイテムは、デュエルで勝って何とか強奪するとしても、ヒエラティックテキストを知らなければラーは動かない。
最初はマリクを脅して無理やり覚えようかとも思ったが、この神楽坂ボディの言語学習能力は未知数。
悩んだ末に、考えついたことが、
(有史以前から活動しているイリアステルなら、ヒエラティックテキストの資料くらい持ってるんじゃね?)
軽い気持ちで聞いてみたところ、案の定、資料は持っているとのこと。
ならついでに、教師役を務めてくれる美少女アンドロイドを下心100%で頼んでみたが、Z-ONEは『美少女、ですか?』と聞き返すばかり。
悩むZ-ONEに、俺は美少女に教わることがどれほど学習能率を跳ね上げるかについて、熱烈にプレゼンしてやった。
話している途中で多少正気を取り戻し、「忙しいなら資料だけでもいい」と付け加えたが、Z-ONEは
『どのみち、連絡員としてアンドロイドを1体派遣する予定でした。この際、多方面で貴方の助けとなる新たな個体を製作することにしましょう』
と いう、最高の答えをしてくれた。
『 5D's WCS2011』のミサキや『タッグフォース』のレイン恵を思い返せば、D・ホイールとの合体を除けばZ-ONEのセンスはかなり良い。
俺の脳内は、これから出会うであろう美少女への期待感でいっぱいになった。
まあ、その直後にソピアに改造されたZ-ONEの姿を見て、全部吹っ飛んだが。
▽
「くるるん~♪ (๑´▽`๑)」
「も~~」
ラドリーとソピアも何だか浮かれている。
一緒に転移してきた精霊は他にもいるが、ソピア曰く「まだこの世界の環境に適応できておらず、カードから出るには時間がかかる」らしい。
そんな状況で新たな仲間が増えるとなれば、期待も高まらざるを得ない。
「そろそろ約束の時間だな」と時計を見た瞬間、虚空にいつものゲートが開き、プラシドが巨大な白い箱を抱えて現れた。
「よおプラシド! サンキューな!」
俺の労いに対し、プラシドは不快そうに顔を歪めながらこう言い放った。
「ふん、せいぜいその狂犬に噛まれないよう気をつけるんだな」
(狂犬?どゆこと?)
不穏な言葉を残し、プラシドはさっさとゲートの中へと帰っていった。
床に置かれた巨大な白い箱を見る。
まあ、ここで悩んでいても始まらない。覚悟を決めて箱のボタンを押すと、プシューッという音と共に箱が左右に割れ、白い煙が噴出した。
『起動シーケンスに入ります』
機械音声と共にカウントダウンが始まり、煙が晴れると中身が露わになる。
その姿を見て、俺は思わず声を上げてしまった。
「これ、幼いけどどう見てもロゼじゃねーか!?」
目の前の箱に横たわっていたのは、5歳程度に見える【閃刀姫-ロゼ】。
パニックになっていると、隣にいたラドリーが「きゅ〜 ( ゚∀゚)/ 」と声を上げながら、床に落ちていた紙を拾ってくれた。
どうやら箱が開くと同時に落ちた説明書らしい。
『美少女の基準が分からなかったので、貴方が美少女テーマと説明してくれたカードをベースにしました。
この個体には、神に改造された私の体を分析し得られた技術も惜しみなく投入し、今できる最高の性能だと自負しています。
また、周りに違和感を与えないように、特殊流体金属による成長機能を追加しました』
(お、なんか凄いらしい)
読み進めているうちにカウントダウンが終わり、目の前のロゼがゆっくりと目を開けた。
あまりにも再現度の高い美少女フェイスに、俺は少し気圧されながら「よ、よお…?」と軽く挨拶をしたのだが。
返ってきたのは、想像を絶する言葉だった。
「目覚めて早々、このような汚らわしいものを見るとは…実に不愉快ですね」
「……え?」
「あら、その年でもう耳が遠くなってしまいましたか?まあ、お気の毒に…こんな男にこれからお仕えしなければならないとは、早くも涙が出そうです」
笑っていない目で、加虐的な笑みを浮かべるロゼ。
俺は一瞬で決断した。
「よし! おい、何て呼べばいい? とりあえずロゼな。ロゼ、お前Z-ONEへの通信機能持ってるだろ。早く繋げ」
「起きたばかりの女の子に仕事を押し付けるなんて、デリカシーというものをご存じないようですね」
ロゼは毒を吐きながら、端末を取り出し操作し始めた。
(この女、絶対に返品してやる……!)
Z-ONEの野郎、俺に喧嘩を売ってるのか?
何だ、このパチモンは!?プロモーションアニメで見た、あの冷静沈着・寡黙で神秘的なロゼちゃんはどこへ行ったんだよ!
これじゃあただのクソガキじゃねーか!!
そう内心でブチ切れていると、虚空で生成されたホログラムスクリーンにZ-ONEが映し出された。
『送ったものは、無事にそちらへ届いたようですね』
「おい、Z-ONE! 何だこの女の性格は!」
俺の剣幕に、Z-ONEは不思議そうに問い返してきた。
『性格、ですか? 検証済みの人工知能アルゴリズムの中から良さそうなものを選びましたが、何か問題でも?』
「問題どころじゃねえよ!」と怒鳴り散らそうとした瞬間、俺はある場面を思い出した。
植物族モンスターの蔦に縛られ、悶えながら「だが、感じる……!」と発言していた、あのカニ頭の姿を。
(まさか、Z-ONEの奴……頭の装置で遊星をインストールした時、能力や外見だけでなく、「性癖」まで!?)
Z-ONEが多くの犠牲を払ってきたのは知っている。だが、もしこの推測が正しければ、奴は自分の性癖すらも犠牲にしたというのか……?
それに比べて、俺はどうだ。そんな男にこんな些細なことで文句を言おうとしている。
本当にそれでいいのか?
葛藤の末、俺は引きつった笑みで答えた。
「……いや、最高だぜZ-ONE! こんな最高の美少女を送ってくれるなんて。おかげで学習のやる気も満々だ」
(「あんたの性癖、改造のせいで壊れちゃったんじゃない?」て、口が裂けても言えるわけねーだろ!)
『そうですか、良かったです。完成前に三皇帝にもテストを頼んでおきましたから、問題ないとは予想していましたが』
……プラシドの野郎、あの言葉はこういう意味だったのか!こういうのはテスト段階で抗議しておけよ!
その後、Z-ONEは今回使用した新技術について熱く語り始め、結局返品するタイミングを完全に見失ったまま通信は終了した。
画面が消えるやいなや、再び毒矢が飛んでくる。
「目の前で女の子の性格について勝手に語り合うとは。ご主人様の知性は人間どころか哺乳類失格、節足動物のウジ虫級だと推察されますね」
「お願いだからもうやめて! とっくに俺のライフはゼロよ!」
俺は心の平穏を取り戻すためラドリーとソピアの懐に抱きついて、涙を流しながら眠りにつくのだった。
オリジナル設定
Z-ONE
美少女カードの中からロゼを選んだ理由は、「ゼロ」の逆である「ロゼ」という名前に、惹かれた感じです。
性癖については、主人公の推測です。
ちなみに、主人公が美少女という追加注文をしなければ、すでに制作中だったレイン恵ちゃんが送られる予定でした。
つまり、自らクーデレ美少女との同居生活のチャンスを手放したことになります。
なお、この世界にコナミ君は存在しません。
ロゼ(パチモン)
Z-ONEはロゼの性格を知らなかったため、このような性格設定になっています。
ロゼのファンの皆様にはお詫び申し上げます。
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