ラーイエローの神楽坂   作:ラララララクダ

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第1話 ドラゴンメイド・ラドリー

目の前には、半透明の【ドラゴンメイド・ラドリー】の精霊が立っている。

その時、突如脳内に溢れ出した過去の記憶。

 

 

 

 

 

 

ある日、友人の家に遊びに行った時のことだ。

そいつはいわゆる遊戯王のガチ勢で、その日もパック開封を見届けるために呼び出された。

俺は横で当たりだのハズレだのと一喜一憂するそいつを冷やかしながら、開封を手伝っていたんだ。

 

事件はその時起きた。

俺が剥いたパックから【ドラゴンメイド・ラドリー】が出たんだ。

友人はドラゴンメイドデッキを組むためにそのパックを剥いていたから、俺は自慢げに見せてやった。

 

「おい見ろよ、なんか引いたぞ!」

 

当時の俺は遊戯王からしばらく離れていて、どのカードが強いのか判別できない状態だった。すると友人は一言、こう吐き捨てた。

 

「ああ、そのカード。『ドラゴンメイド』デッキじゃ使わないから」

 

そして無言で次のパックを剥き始める。

 

俺はラドリーのカードを二度見した。効果を読んでみると、どう見ても強そうだ。

「これ、本当に使わないのか?」と聞き返しても、返答は「マジで使わない」。

 

「いや待てよ、通常召喚・特殊召喚の両方に対応した墓地肥やしカードだぞ? 『ドラゴン』って名の付くデッキで使わないわけねーだろ!」

 

そこから口論が始まり、結局友人は「直接見せてやるよ」とノートPCを2台持ってきた。

シミュレーターを起動し、俺にはラドリー入りの、自分はラドリー抜きの『ドラゴンメイド』を組んで勝負しろと言う。

俺は二つ返事で受けた……が、ブランクがあってカードを一枚ずつ読むのは時間がかかる。

結局、ネットで入賞レシピを検索し、数枚をラドリーに差し替えて挑んだんだ。

 

結果。

俺はボコボコに、それはもう惨めに敗北した。

「こんなはずは……」と効果を熟読し、プレイングを磨いて何度挑んでも結果は変わらない。

10戦10敗。

『ドラゴンメイド』デッキにはラドリーがいない方が強いという現実を、認めざるを得なかった。

 

だが、俺はムキになって、さっき引いたラドリーを指差し、友人に言い放った。

 

「どうせ使わないならこれ俺にくれよ! 次に会うまでにこいつで最高のデッキを組んで、お前をボコボコにしてやる!」

 

友人は「いいよ、持っていけ」と即答。

 

その夜、俺は久しぶりにクローゼットの奥からカードを引っ張り出した。

『シャドール』『ライトロード』『征竜』……墓地肥やしと相性のいいカードを組み合わせ、数日かけて俺の中の最強デッキが完成した。

一人回しでも事故はほぼゼロ。

 

「これだ、いける!」

 

確信した俺は翌日、友人の家へ殴り込んだ。リベンジマッチだ。

 

結果。

30戦2勝28敗。

……なんだよ『発動を無効にして新しいモンスターを出す』って。インチキ効果もいい加減にしろ!

結局またもやボコボコ。

しかも、その『ドラゴンメイド』すら当時の環境トップじゃないと聞いて、カードパワーのインフレに戦慄したよ。

 

ただ、負けはしたものの、久しぶりに本気でデッキを構築したことで、俺は『ワクワクを思い出す』ことができた。

何より、休んでいる間に【ラーの翼神竜】に新規サポートが登場し、『ヲーの翼神竜』という不名誉な名を返上して神の威厳を取り戻したことを知った。

それがきっかけで俺は決闘者に復帰し、前世を終えるまで遊戯王を楽しみ続けることになったんだ。

 

 

 

 

 

 

……って、回想し終わって気づいたけど、これ結局ただ俺がボコボコにされただけの恥ずかしいエピソードじゃねーか!

俺は起き上がり、目の前のラドリーに問いかけた。

 

「お前……まさか、俺が前世で使ってたあのラドリーの精霊なのか?」

 

「くるるんっ♡ (๑>ᴗ<๑) 」

 

肯定の返事。

おお! 俺が使ってたラドリーに精霊が宿ってたなんて!しかも効果音だけなのに、なぜか言いたいことが理解できるぞ。

……というか、なんで俺に精霊が見えるんだ?

 

そういえばアニメで神楽坂が遊戯のデッキを盗んで使う時、クリボーと会話してるシーンがあったな。

あれギャグじゃなくて、実は精霊使いの才能があったのか?

1回きりのキャラなくせに、なんてもったいない性能なんだ!

 

「なあラドリー、お前がいるってことは、俺が使ってた他のカードたちもここにいるのか?」

 

「きゅぴっ!(๑ÒωÓ๑) 」

 

ラドリーは自信満々に答えると、

 

 

トテテテ

 

 

と可愛らしい音を立ててどこかへ走り出した。

後を追って着いた先は、脱衣所の洗濯機。

 

「洗濯機……?」

 

ラドリーは「早く早く!」と催促するように洗濯機を指差す。

首を傾げながら蓋を開けた瞬間、中からカードがドバドバと溢れ出してきた。デッキホルダーもプレイマットも一緒だ。

 

「おおおおっ! これ、俺のデッキじゃねーか!」

 

俺は、興奮のあまり両手いっぱいにカードを抱え、両腕を広げて叫んだ。

 

「勝てる!!!あいてがどんなヤツであろうと負けるはずがない!!! オレはいま究極のパワーを手に入れたのだーーっ!!!」

 

「きゅる! \(๑`ω´๑) ノ」

 

ラドリーも誇らしげにポーズを決める。

……が、ふと手に違和感を覚えた。なんか、しっとりしてる。

嫌な予感がして、ギチギチと首を回してカードを確認すると――全部濡れてやがる。

 

当たり前だ。洗濯機の中から出てきたんだから。

 

「ラドリィィィィィ!!! お前、やらかしたなあああ!!!」

 

「ひゃうっ!! Σ(°Д°;)」

 

俺の絶叫に、ラドリーは派手にひっくり返った。

やっぱり、ラドリーはドジっ子だったらしい。

 

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