ラーイエローの神楽坂   作:ラララララクダ

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第20話 伝説の決闘場

「なんです? あの連中?」

 

「みんな腕に変な機械をつけてますね」

 

通勤途中と思われるサラリーマンの二人が、街を闊歩するデュエリストたちを見て、ヒソヒソと 囁き合っている。

それを耳にしたチンピラ風のデュエリスト二人。

一人は黄色いベレー帽に派手なアクセサリーを身につけた男、もう一人は黒髪オールバックに切れ長の目、そして紫のジャケットを着た男。

彼らが人ごみから抜け出し、声をかけた。

 

「あんたら、知らないのか?」

 

「え? 何を?」

 

真面目に答えるサラリーマンに対し、二人組みのデュエリストはニヤリと嘲笑を浮かべて説明し始めた。

 

「今日からこの街はバトルシティ、デュエルモンスターズの戦場と化すのさ」

 

「けがしたくなかったら、通りの隅を歩いたほうがいいぜ」

 

親切な忠告を残し、二人は再び人ごみの中へと歩み去っていった。見た目に反して、意外と根はいい奴らなのかもしれない。

そして、その光景を近くで見守っている人物が一人。

そう、俺である。

 

(原作の名シーンを現実でこの目に焼き付けることができるなんて、マジで始まったんだなって実感が湧いてくるな)

 

見ての通り、今日はバトルシティの開催初日。

感無量に浸っていると、隣に立っていたロゼが話しかけてきた。

 

「お兄様、そろそろ行かないと遅れますよ?」

 

周囲の視線が多いせいか、猫かぶり状態である。見たいものも見られたし、そろそろ目的地へ移動するとしよう。

俺はポケットからパズルカードを取り出した。

 

 

 

 

 

 

パズルカードには、各デュエリストのスタート位置が印されている。

到着した場所は、童実野町のオフィス街。通勤途中の会社員たちが、幼い子供二人がこんな場所に立っているのを珍しそうに振り返りながら通り過ぎていく。

いつ始まるのかと周りの人を観察していると、頭上に巨大な影が差し込んできた。

 

『デュエリスト諸君、バトルシティへようこそ』

 

街中に響き渡る海馬瀬人の声。

見上げると、巨大な飛行船がモニターを吊り下げて旋回しており、画面には椅子に腰掛けた社長の顔がクローズアップされている。

そうして始まったのは、数日前にもテレビで聞いた大会のルールに関する説明だった。

まとめると、

 

 

・バトルシティの舞台は童実野町全域

・デュエルは、レアカードとパズルカードを同時に賭けるアンティルールを採用

・特殊加工されたパズルカード6枚をデュエルディスクにセットすれば、決勝トーナメントの場所が出現。先着8名が決勝トーナメント進出

 

 

――とまあ、 こんな感じだ。

 

『さあ、バトルシティの始まりだ! デュエリストどもよ、この街に潜む敵を探しに行くがいい!』

 

社長の宣言と共に、バトルシティの幕が上がった。

俺も最初の相手を探すか、とロゼと共に歩き出すと、先ほど見かけた二人組のデュエリストがどこかへ向かって歩いているのが見えた。

あの人たちに決めるとするか。俺は素早く駆け寄り、彼らを呼び止めた。

二人も反応して振り返ったが、俺の姿を見るなり「なんだ、ガキか?」と呆れたように再び歩き出そうとする。

俺は腕に装着したデュエルディスクとパズルカードを見せつけ、デュエルを申請した。

男たちはこんなガキまで参加資格があるのかと呆れ顔を浮かべたが、黄色いベレー帽の男がポツリと呟いた。

 

「まあ、こういうガキは早めに振り落としてやるのが、こいつのためかもしれん」

 

「それもそうだな」

 

黒髪オールバックの男も頷き、デュエルディスクを展開した。

俺も同様にデュエルディスクを展開し、互いに内蔵されたソリッドビジョンシステムを射出して両脇に設置する。

 

 

「「デュエル!!」」

 

 

神楽坂 LP 4000   黒髪の男 LP 4000

 

 

開始早々、黒髪の男は「俺の先攻だ!ドロー」と勝手に宣言してカードを引き抜いた。

 

(やっぱりジャンケンで先攻後攻を決めるルールは偉大だったな……元の世界に戻ることはないだろうが、もし戻れたとしても二度とMDのコイントスを怨んだりしないと誓うぜ)

 

心の中で密かに誓いを立てている間に、男がモンスターを召喚した。

 

「俺は【辺境の大賢者】を召喚!」

 

 

【辺境の大賢者】レベル 3 ATK 1600

 

 

続いて男はニヤリと笑みを浮かべ、

 

「魔法カード発動!【融合】!!」

 

(……って、あのカード、昔に出たイラスト違いの【融合】じゃねえか!?)

 

思いがけないレアカードに心の中で驚いている間も、男は効果処理を続ける。

 

「フィールドの【辺境の大賢者】と手札の【憑依するブラッド・ソウル】を融合! 融合モンスター、【魔人ダーク・バルター】を融合召喚!!」

 

 

【魔人ダーク・バルター】レベル 5 ATK 2000

 

 

金冠とマントを纏った、角と翼を持つ黄金の魔人がフィールドに降臨した。

 

「融合したモンスターは融合召喚したターンに攻撃できないが、それは先攻の俺には何の問題もない」

 

「おいおい、最初のターンでいきなりあのモンスターかよ? このデュエル、もう勝負あったな」

 

横で観戦していたベレー帽の男も、すでに勝利を確信している様子だ。

 

「俺はこれでターンエンドだ!」

 

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 

【ライトニング・ボルテックス】

【ADチェンジャー】

【ドラゴンメイド・ラドリー】

【死者蘇生】

【シャドール・リザード】

【瀑征竜-タイダル】

 

 

【魔人ダーク・バルター】。通常魔法限定とはいえ、この時代には珍しい無効化効果を持つ融合モンスター。

攻撃力も2000で、下級モンスターでは処理が困難だ。

あのベレー帽の反応も理解できる。今の時代に先攻であんなのが出たら、下級は召喚されるそばから倒されて上級のための生け贄を集められないし、魔法が封じられる以上魔法での除去はもちろん、融合で対抗しようにも【融合】カード自体が止められてしまう。

確かにカード1枚でゲームを左右できるほどの性能だ。

 

(まあ、そうだとしても伏せカードもセットせずに、あそこまで自信満々なのはどうかと思うが)

 

「俺は手札のカード1枚をコストに、魔法カード 【ライトニング・ボルテックス】を発動! 相手フィールドの表側表示モンスターを全て破壊する」

 

落雷が走り、ダーク・バルターを 飲み込む。しかしダーク・バルターは微動だにせず、手を一振りして雷を粉砕した。

 

「ハッ! そんなもの無意味だぜ! ダーク・バルターの効果!ライフを1000ポイント支払い、魔法カードの効果を無効にする!」

 

 

黒髪の男

LP 4000→3000

 

 

意気揚々と叫ぶ男。俺はそのままターンを進める。

 

「俺はモンスターを裏側守備表示でセット」

 

「ククク、守備表示など無意味だ! このダーク・バルターは戦闘で破壊したモンスターの効果も無効にするからな!

ガキ、今ならサレンダーを認めてやるぞ?」

 

「え? 何か勘違いしてないか? まだ俺のターンは終了してないぜ」

 

「何っ!?」

 

(やっぱこの世界の住民はリアクションが良いんだな )

 

「俺は【ライトニング・ボルテックス】のコストで捨てた墓地の【ADチェンジャー】の効果発動!

墓地のこのカードをゲームから除外し、フィールド上のモンスター1体の表示形式を変更する。

変更するのは、俺のフィールドの裏側守備モンスター!」

 

現れたのは、操り人形のように糸で縛られた機械的なトカゲ。

 

 

【シャドール・リザード】レベル 4 ATK 1800

 

 

「【シャドール・リザード】のリバース効果発動! フィールドのモンスター1体を破壊する。当然、破壊するのは【魔人ダーク・バルター】!」

 

リザードの口から放たれた黒い液体が、【魔人ダーク・バルター】をあっという間に溶かしてしまった。

 

「バ、バカな!? 俺の魔人が……」

 

「さらに【死者蘇生】を発動! 今破壊されて墓地へ送られた【魔人ダーク・バルター】を俺のフィールドに特殊召喚!」

 

フィールドに再び姿を現した黄金の魔人。

 

「2体でプレイヤーにダイレクトアタック!」

 

「グワァァァァッ!?」

 

 

黒髪の男

LP 3000→0

 

 

まさに瞬殺。見ていたベレー帽の男も開いた口が塞がらない様子で、言葉を失っていた。

デュエルが終了し、ソリッドビジョンが消える。

 

(初戦は無難に勝利ってところか)

 

そう思っていると、手札にあった 【ドラゴンメイド・ラドリー】のカードからラドリーが飛び出してきた。

 

「きゅる~~っ!!(*`д´)ノ」

 

自分が活躍できなかったことに対して、猛烈に駄々をこねて抗議している。

 

(しゃーないだろ、ワンターンキルルートが見えちゃったんだから)

心の中でそんな言い訳をしながら、パズルカードとレアカードを回収しようと近づくと、残ったベレー帽の男が目の前を塞いだ。

 

「クッ……! おい! 次は俺だ! 俺とデュエルしろ!」

 

このまま連戦かと、デッキをシャッフルするためデュエルディスクから抜こうとしたその瞬間、

 

「おい、やめとけ」

 

どこか落ち着いた声で、黒髪の男が彼を制した。

 

「いいのかよ!? このままじゃ……」

 

「いいも悪いもあるか。負けは負けだ。この上、お前まで巻き込むつもりはねえよ」

 

友達を止めた男は振り返り、淡々と言った。

 

「いいデュエルだったぜ」

 

そう言ってパズルカードと、【魔人ダーク・バルター】をこちらへ差し出してきた。

 

(いや、この人かっこよすぎんだろ)

 

と思いながらも、言うべきことはハッキリ言うために口を開いた。

 

「レアカードだけど、こっちから指定してもいいか?」

 

俺の図々しい問いかけに男の眉がピクリと跳ね上がったが、すぐに答えてくれた。

 

「もちろん構わんが……俺のデッキにダーク・バルター以上のレアカードはないぞ?」

 

「それじゃあ遠慮なく、さっきのデュエルで使った【融合】カードをいただきたい」

 

「「…?」」

 

俺の言葉が奇妙だったのか、二人ともぽかんとした顔になったが、一拍のあと黒髪の男は少し不快そうに目を細め、俺を睨みつけた。

 

「……憐れみのつもりか?」

 

「まさか。ちょうど【融合】カードが必要だったんで。それに、【魔人ダーク・バルター】をもらっても、融合素材がないから使えないし」

 

即答すると男は納得したのか、デッキから【融合】を引き抜いて差し出してきた。

 

「本当にいいのか? 【融合】カードくらい、パックを買えばすぐに手に入るぞ」

 

パズルカードと【融合】カードを一緒に受け取りながら、俺はニヤリと笑った。

 

「もちろん。今から友達に自慢してもいいぞ。『バトルシティ王者の【融合】カードは俺から譲り受けたものだ』ってね」

 

「フッ……ハハ! ガキのくせに言うじゃねえか!だが、お前なら本当にやるかもしれん」

 

粋な言葉を残し、男たちは人ごみの中へと消えていった。

満足げにアンティで手に入れたイラスト違いの【融合】カードを眺めていると、黙って見ていたロゼが近づいてきて囁いた。

 

「本当によかったのですか? 【融合】くらい、お兄様のストレージに腐るほどあるはずでは?」

 

「分かってないなロゼ」

 

俺はドヤ顔を決めながら答えた。

 

「この【融合】はただの【融合】じゃない。なんと、イラスト違いの【融合】だ! 俺が持ってるのは全部普通のイラストだからな」

 

「……はあ。で?」

 

不思議そうに眉をひそめるロゼに、俺は付け加えた。

 

「イラスト違いのカードを集めるのは、常識だろ」

 

俺の堂々とした答えに、ロゼの目付きが冷え込んだ。

 

まあ、いつものことだ。

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