ラーイエローの神楽坂   作:ラララララクダ

23 / 28
誤字報告ありがとうございます。


第22話 潜海奇襲Ⅱ

神楽坂 LP 4000  梶木漁太 LP 4000

 

 

「俺の先攻じゃ! ドロー!このカードを発動するぜよ!!フィールドカード【海】」

 

ソリッドビジョンによって再現された海水が周辺を覆い尽くす。まるで埠頭の水面がそのまま競り上がってきたかのようだ。

 

「モンスター召喚! フィールドに出すぜよ!」

 

 

【???】

 

 

表示形式すら宣言せずに召喚されたモンスター。

案の定、フィールドにその姿は見えない。おそらく海の中に潜伏しているんだろう。原作でも梶木が愛用していた『シーステルス戦術』だ。

 

「そして伏せカードを3枚セット! ターン終了じゃ!」

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 

【シャドール・ドラゴン】

【マスク・チェンジ・セカンド】

【融合】

【ドラゴンメイド・ラドリー】

【影依の巫女 エリアル】

【再生の海】

 

 

「俺は【ドラゴンメイド・ラドリー】を召喚」

 

「くるんっ …! ง (`ω´)ง」

 

出現したラドリーは前回のデュエルで活躍できなかったのがまだショックなのか、メラメラと闘志を燃やしながらシャドーボクシングをしている。

 

 

【ドラゴンメイド・ラドリー】レベル 2 ATK 500

 

 

「ラドリーの効果発動!このカードが召喚・特殊召喚した場合デッキの上からカードを3枚墓地へ送る」

 

【月鏡の盾】→墓地

【瀑征竜-タイダル】→墓地

【ドラゴンメイド・フルス】→墓地

 

 

「さあバトルだ! 俺はバトルフェイズ開始時、ラドリーの効果発動! このカードを手札に戻し、墓地から【ドラゴンメイド・フルス】を特殊召喚!」

 

ラドリーの体が眩い光に包まれ、ドラゴンの姿へと変貌する。それを見た梶木は、少し驚いた表情を浮かべた。

 

 

【ドラゴンメイド・フルス】レベル 7 ATK 2600

 

 

「墓地から特殊召喚!?そのチビの効果で墓地へ送った3枚か!?」

 

冷静に分析する梶木。しかし、その驚きも束の間、すぐに自信満々な笑みへと変わった。

 

「だがお前に俺のモンスターは見えん! 攻撃はできんぜよ!」

 

その通り。

ソリッドビジョンの処理が優先されるこのバトルシティルール上、攻撃しようとしても相手のモンスターが隠れて見えないと、攻撃対象として指定することができない。

梶木のシーステルス戦術は、このルールを極限まで利用した戦法である。

だが、こちらは画面の向こうで一度見たのだ。大体どこに潜んでいるかの見当はつく。

 

「フルス! 攻撃対象はソリッドビジョンではなく、実際の海の中だ!」

 

俺の宣言に、梶木は目を丸くして狼狽した。

 

「バ、バカな!?ありえんぜよ!俺のシーステルスツーを瞬時に見破っただと!?」

 

フルスが飛び上がり、海に向かってブレスを吐き出そうと口を開ける。それを見た梶木は慌ててリバースカードを使用した。

 

「くっ、トラップカード発動!【激流葬】!! モンスターが召喚された時、相手モンスターを全滅させる!

お前のその竜は墓地から特殊召喚されたんじゃ。つまり【激流葬】が通るぜよ」

 

 

ドバーッ!!

 

 

ソリッドビジョンの海水が巻き起こり、空を飛んでいたフルスをあっという間に飲み込んで流し去ってしまった。

 

(いやいや、どう見てもタイミング逃してるだろ!!)

 

というツッコミが喉まで出かかったが、デュエルディスクが正常に処理したということは問題ないということなのだろう。

ちくしょう! それにしても相手モンスターだけ全滅させるとか……アニメ版【激流葬】強すぎる。

そんな理不尽への怒りを顔には出さず、俺はプレイを続けた。

 

「……リバースカードを1枚セット。ターンエンド」

 

 

「俺のターンぜよ!ドローカード!」

 

梶木はドローしたカードを見て、ニヤリと笑みを浮かべた。

 

「場のモンスターを生け贄に捧げ、新たなモンスターを召喚!」

 

梶木の足元の海水が一瞬光ったが、すぐに元に戻った。

 

 

【???】

 

 

水の中から何かがサメのように円を描きながら、俺の周囲を泳ぎ回り始めた。

 

「行け!【伝説のフィッシャーマン】!!」

 

梶木の宣言と共に、水面からジャバッ!と【伝説のフィッシャーマン】が姿を現し、銛をこちらへ構えた。

 

 

【伝説のフィッシャーマン】レベル 5 ATK 1850

 

 

だが、それを黙って受けてやるつもりはない。

 

「リバースカードオープン!」

 

「無駄じゃ!【海】が出ている限り【伝説のフィッシャーマン】はいかなる魔法も通さず、攻撃対象にもできんぜよ!」

 

さすがは全国3位の実力者と言うべきか、俺が伏せたカードが魔法カードであることは読んでいたらしい。

だが、このカードが対象とするのは【伝説のフィッシャーマン】ではない。

 

「魔法カード発動、【融合】! 手札の 【シャドール・ドラゴン】と【影依の巫女 エリアル】の2体を融合!」

 

真空管から「……ついに……ぼくの出番?」と目をこすりながらちょこんと出てきたエリアルと、糸がつながっている黒い人形のドラゴンが未知の空間へと吸い込まれ、新たなモンスターに変化する。

 

「出番だぜ!【エルシャドール・アプカローネ】!」

 

 

【エルシャドール・アプカローネ】レベル 6 ATK 2500

 

 

現れたのは、どこかエリアルが無機質な人形に変化し、下半身が機械仕掛けの魚類と融合したような異形の存在

――【エルシャドール・アプカローネ】。

 

「チェーンの逆順処理により、まず墓地へ送られた【シャドール・ドラゴン】の効果発動!

フィールドの魔法・罠カード1枚を破壊する! 俺が破壊するのは、左の伏せカード!」

 

梶木の左側にセットされていたリバースカードが、黒い炎に包まれて消滅した。

 

 

【死者の生還】→破壊

 

 

「続いて、同じく墓地へ送られた【影依の巫女 エリアル】の効果! 墓地のカードを3枚まで除外する」

 

梶木の墓地から1枚のカードが除外される。

 

 

【デビル・クラーケン】→除外

 

 

「最後に、【エルシャドール・アプカローネ】の効果発動!」

 

アプカローネの掲げた杖から、青く細い糸が何本も伸び【伝説のフィッシャーマン】の手足を瞬く間に拘束した。

 

「なっ!?【伝説のフィッシャーマン】になにをするんだぜよ!?」

 

「アプカローネはこのカードが特殊召喚した場合、フィールドの表側表示カード1枚の効果を無効にする。

これでもう逃げられんぜ! さあ、迎え撃て!【エルシャドール・アプカローネ】!」

 

【伝説のフィッシャーマン】に向かってアプカローネの下半身の機械魚が口を開き、ブレスのチャージを開始した。

 

「そうはさせんぜよ! リバースカードオープン!【闇の呪縛】!このカードの効果で、その魚人間の攻撃力は700ダウンじゃ!」

 

発動された【闇の呪縛】のカードから無数の鎖が飛び出し、今度はアプカローネの上半身と下半身の魚部分がガッチリと拘束された。

 

 

【エルシャドール・アプカローネ】ATK 2500→1800

 

 

「返り討ちじゃ!」

 

【伝説のフィッシャーマン】が放った銛がアプカローネの体に突き刺さる。しかし、アプカローネは破壊されずそのままフィールドに踏みとどまった。

 

「なにっ!?」

 

「アプカローネは戦闘では破壊されない」

 

 

神楽坂

LP 4000→3950

 

 

「しぶとい獲物だぜよ!俺は伏せカードを1枚セット!ターン終了じゃ」

 

俺の口元は、自然とニヤリと上がった。

たった一回の戦闘を巡る、この目まぐるしい攻防戦。これぞこの時代のデュエルの醍醐味だ。

 

(やっぱり、デュエルは面白いんだぜ!)

 

 

「俺のターン!ドロー」

 

 

【月の書】

 

 

俺がカードを引いた瞬間、梶木は伏せていたカードを即座に発動した。

 

「永続トラップ発動!【竜巻海流壁】!フィールドに【海】が存在する限り、俺への戦闘ダメージは0になるぜよ!」

 

海水が巻き起こした巨大な竜巻の壁が、梶木の周囲を守る。

 

「【海】を利用したシーステルス戦術、そしてそれを補助する多彩なサポートカード。さすが、あの武藤遊戯を追い詰めたデュエリストは伊達じゃないな!」

 

俺の賞賛に、梶木は得意気な顔で鼻の下を擦った。

 

「よせよせ、褒めても手加減はできんぜよ!」

 

(デュエル中に相手の戦術を褒めるのは、そのコンボを破る前の犯行予告みたいなもんだが……なんでこいつこんな嬉しそうなんだ?)

 

「だが、その戦術はあまりにも【海】に依存しすぎているんだぜ!

もし俺が、かつてあんたと戦った武藤遊戯のように、前提条件である【海】を消し去ってしまったらどうなる?」

 

俺の宣言に、梶木は王国での遊戯とのデュエルを思い出したのか、「まさか!?」と叫んで空を見上げた。

 

(いや、いくら何でも満潮を作ってた月を、モンスターで撃ち壊すとかいうトンデモ攻略法を使うつもりはないからな?)

 

「俺は【ドラゴンメイド・ラドリー】を攻撃表示で召喚!」

 

 

【ドラゴンメイド・ラドリー】レベル 2 ATK 500

 

 

フィールドに再び出現するラドリー。今度は腕組みをしてガイナ立ちを決めている。

 

「そして効果により、再びデッキの上からカードを3枚墓地へ送る」

 

 

【超電磁タートル】→墓地

【氷水揺籃】→墓地

【プリベントマト】→墓地

 

 

ラドリーを見て、梶木が呟く。

 

「またあのチビかい」

 

「そうだ、だが今回はこれだけじゃない。見せてやるよ、新たなドラゴンをな!」

 

その宣言と同時に、ソリッドビジョンで構成された海が大きく揺れ動き始めた。

梶木は慌てて「なんだぜよ!? これは……!」と周囲を見回す。

 

「俺は墓地の【瀑征竜-タイダル】の効果発動!

ドラゴン族か水属性のモンスターを自分の手札・墓地から2体除外して、このカードを特殊召喚する!

俺は墓地の【ドラゴンメイド・フルス】と【影依の巫女 エリアル】を除外! 現れろ! タイダル!」

 

俺と梶木の間の海が爆発するように競り上がり、巨大な水柱が形成される。

その中から、全身の鱗が青い水晶のように光を反射する巨大な竜が姿を現した。

 

 

【瀑征竜-タイダル】レベル 7 ATK 2600

 

 

「攻撃力2600!? だが、いくら攻撃力が高かろうと、俺への戦闘ダメージは【竜巻海流壁】が全て跳ね返すぜよ!」

 

「言ったろ、あんたのそのシーステルス戦術には穴があるってな。それを今ここで証明してみせる! いくぞ、ラドリー!」

 

俺の合図と共に、ラドリーが体を少し前傾させ、左手を顔の前に掲げて見えない仮面を掴むような、オサレなポーズを決めた。

 

「手札を1枚捨て、速攻魔法発動!【マスク・チェンジ・セカンド】!」

 

カードの発動と共に、ラドリーの顔面が眩いばかりの青い光に包まれた。梶木はこの訳の分からない光景に目を白黒させる。

 

「なんじゃ!? 何が起きとるんぜよ!?」

 

俺はそのリアクションにテンションが上がりまくり、ナレーションを付け加えた。

 

「ある時はドジっ子メイド、またある時は巨大なドラゴン……しかしてその正体は!!」

 

ナレーションに応えるように、ラドリーを覆っていた光が弾け飛び、その姿が晒された。

 

昆虫の顔を想起させるヘルメット。全身を包む鮮やかなブルーの甲冑。片手に握られたトイガンのようなハンドガン。

そして何より、腰に装着された変身ベルト。そこに立っていたのは、どこからどう見ても立派な『特撮ヒーロー』だった。

……身長と体型が完全にちびっ子のままである点を除けば。

 

「人の自由と平和を守る仮面の戦士!【M・HERO アシッド】参上!」

 

「きゅっ!!∠( ⊕ω⊕ )/」

 

ポーズをバシッと決める【M・HERO アシッド】。

 

 

【M・HERO アシッド】レベル 8 ATK 2600

 

 

「…………」

 

無言。

 

何の反応もない。梶木は引きつった苦笑いを浮かべており、観客であるロゼに至っては、何やら小型端末で俺の姿をバッチリ録画している。

 

「まあ……まだ子供じゃからな!気持ちは分からんでもないぜよ……」

 

そんな梶木の生温かいフォローに、俺の顔面の温度は一瞬で臨界点を突破した。

 

(ちくしょう!! ロゼはともかく、梶木、お前男のロマンを見て胸が熱くならないのかよ!? この海バカ野郎!!)

 

梶木は気を取り直し、再び真剣な表情でこちらを睨みつけた。

 

「そのモンスターも攻撃力2600!だが、モンスターを何体召喚しようが、俺のシーステルスツーは突破できんぜよ!」

 

俺も赤くなった顔を必死で冷却しながら、効果処理を行った。

 

「……【M・HERO アシッド】の効果発動!

このカードが特殊召喚した場合に、相手フィールドの魔法・罠カードを全て破壊し、相手フィールドの全てのモンスターの攻撃力は300ダウンする!

行け! アシッド・レイン!!」

 

アシッドが構えた銃から放たれた強酸の雨が、梶木のフィールドのカードに降り注ぎ、一瞬でドロドロに溶かして蒸発させていく。

 

 

【海】→破壊

【闇の呪縛】→破壊

【竜巻海流壁】→破壊

【伝説のフィッシャーマン】ATK 1850→1550

【エルシャドール・アプカローネ】ATK 1800→2500

 

 

「お、俺のフィールドがあぁぁ!?」

 

「さあ、邪魔者は消えた! 行け、アプカローネ! タイダル! アシッド! コンボ攻撃!!」

 

3体のモンスターが、それぞれ攻撃 態勢に入る。

アプカローネの掲げた杖と、タイダルの巨大な顎の前に高密度の水流が凝縮されていく。

その中央へとアシッドが颯爽とジャンプを決め、両腕を広げて空中から必殺のキック姿勢をとった。

臨界点に達した2体のブレスが同時に放たれ、その水流の渦の中をアシッドのライダーキックが貫く!

合体攻撃は【伝説のフィッシャーマン】を直撃し、乗っていた巨大なサメは一瞬で粉砕、フィッシャーマン自身も無残に地面へと倒れ伏した。

アシッドはスタイリッシュに着地を決める。

 

 

ドカァァァーーーン

 

 

――と、その背後でなぜかド派手な大爆発が巻き起こり、後ろに立っていた梶木ごと吹き飛ばした。

 

「グワァァァァァッ!?」

 

 

梶木漁太

LP 4000→0

 

 

デュエルが終了し、俺はひっくり返って倒れている梶木のもとへ歩み寄った。

 

(今のうち、【伝説のフィッシャーマン】とか押し付けられる前にサクッとカードを要求しておこう)

 

「アンティルールでいただくカードは、あんたの【激流葬】で頼む」

 

梶木はハッと正気に戻り地面から起きて、信じられないといった顔をした。

 

「【激流葬】!? それで本当にいいんぜよ!?」

 

「他のカードをもらっても、単体じゃ意味ないからな」

 

口ではそう言ったが、召喚・特殊召喚の全てに反応して、相手モンスターを全滅させるアニメ版【激流葬】はどう考えてもチートカードだ。

梶木の持っている中、純粋なカードパワーで見るとこれが間違いなく最強だろう。

 

「ほらよ」

 

梶木はパズルカード1枚と【激流葬】をこちらへ差し出し、俺はそれをありがたく受け取った。

 

「楽しいデュエルだったぜ!」

 

ガッチリと握手を交わし、そのまま立ち去ろうとした時、梶木が思い出したように声をかけてきた。

 

「そういえば、お前の名前はなんだぜよ?」

 

「神楽坂太郎だ」

 

「神楽坂……覚えておく。またデュエルしようぜよ!」

 

爽やかな笑顔で見送られ、俺とロゼは童実野埠頭を後にした。

 




融合モンスターである【M・HERO アシッド】が召喚したターンに攻撃できるのは【マスク・チェンジ・セカンド】による召喚が融合召喚ではなく、特殊召喚扱いだからです。
アニメ第57話でも、遊戯がレアハンターとデュエルした際【有翼幻獣キマイラ】を【死者蘇生】で蘇生させたターンにそのまま攻撃する描写があったため、融合モンスターを出したターンではなく、あくまで融合召喚された場合に限って攻撃できない、と解釈しました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。