ラーイエローの神楽坂   作:ラララララクダ

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第26話 機皇帝グランエル∞

「マイサーン! ワタシがいきまーす!」

 

全身が濡れた白いスーツで路地裏を走っていくジョン・クロード・マグナム。

前を見ずに走っていた彼は、目の前の人とぶつかって後ろに倒れてしまった。

 

「クッ……!」

 

抗議をしようと顔を上げた彼の前に立っていたのは、アメリカ人の彼から見ても、圧倒的な巨体の老人。

全身を白いローブで包み、ベールで顔を隠したその姿に、マグナムは口をぽかんと開けたまま言葉を失っている。

すると、その巨体の陰から一人の男が現れた。彼もまた白いローブとベールを纏っていたが、その腰には一振りの剣を着用している。

 

「フン! このような小物を捕まえるために、我々を動員するとは」

 

その言葉に、今度は老人の後ろから白いベールとローブを纏った子供が出てきて答える。

 

「まあ、おかげで太郎のデュエルも見れたし、いいじゃね? シシシッ」

 

最後に老人が付け加える。

 

「これも全ては、あのお方の意志」

 

自分の前で繰り広げられる意味不明な会話に、マグナムは耐え切れず尋ねた。

 

「キミタチは何者ですか!?」

 

「お前が知る必要はない」

 

そう言って、巨体の老人が一歩一歩近づいてくる。

 

「ナ……! オレにナニをするツモリですか!?」

 

その質問に、老人の隣に立つ男が冷ややかに吐き捨てた。

 

「デュエルの結果に従わないゴミめ」

 

子供もその言葉に乗っかる。

 

「ちょっと痛い目見なくちゃな! イヒヒヒッ!」

 

その言葉から、自分の惨めな未来を想像したマグナムは後ずさりしようとするが、倒れた状態では不可能だ。

 

「ヤ、ヤメテクレー!! ノーーーッ!!」

 

そうして、路地裏に哀れな悲鳴が響き渡るのであった。

 

 

 

 

 

 

路地裏の前で待つこと10分、片手でマグナムをズルズルと引きずりながら、ホセが出てきた。

 

「よっ、ホセ! サンキューな」

 

「これも全ては未来のため」

 

ホセはマグナムを地面へ雑に放り投げると、予め回収しておいたのか、奴のパズルカード3枚とデッキをこちらに差し出してきた。

 

(あれ、生きてんだよな?めっちゃボロボロだけど)

 

受け取ったパズルカードをポケットに放り込み、マグナムのデッキを確認する。

 

「やっぱり、これにしておくか」

 

俺は奴のデッキから【くノ一ソルジャー・アヤメ】を抜き取った。直接触れて確信したが、このカードには間違いなく精霊が宿っている。

 

「ほう? それでいいのか?」

 

「まあ、水属性だしレベル2の通常モンスターなら何かしら使い道があるだろ」

 

こうして俺は回収した【くノ一ソルジャー・アヤメ】をデッキに入れた。

 

(これでまた精霊憑きカードが1枚増えたな)

 

「それはそうと、プラシドとルチアーノは?」

 

「奴らはこの街の熱気に毒されたのか、路地裏でデュエル中だ。儂も血が騒ぐ」

 

(まあ、バトルシティと言えばデュエリストには、大きな祭りみたいなもんだからな)

 

「じゃあさ、ついでにこの街にゴロゴロいるグールズの奴らとデュエルしてきたらどうだ? 奴らをいくら狩ろうが文句は言われないしな」

 

俺の提案に、ホセは満足そうに頷く。

 

「ククク……それは良い提案だ。骨のある奴がいるといいがな」

 

「楽しむのは自由だが、Z-ONEのリミットレギュレーションは遵守しろよ?」

 

こうしてバトルシティ2日目、イリアステルの乱入が発生した。

 

グールズ終了のお知らせです。

 

 

 

 

 

 

『デュエルの女神よ! 今だけはカードの引きに幸運をもたらすな!』

 

そう呟いた社長は、デッキの上から凄まじい速度でカードをドローし、そのままグールズ団員に向けて投擲した。

 

『ウワッ!?』

 

刺さるような痛みに、団員は握っていた爆弾の起爆スイッチを落としてしまう。

急いで拾おうと屈み込んだ瞬間、すでに跳躍し肉迫していた社長の膝蹴りが顔面を撃ち抜き、男はそのまま気絶した。

 

同時にヘリに衝突し、海におぼれたコンテナの爆弾が爆発、巨大な水柱が上がった。

拘束されていた杏子を心配し、遊戯の仲間たちが急いで駆け寄る傍らで、社長は自分が投げてグールズの手に刺さっていたカードを抜き取る。

 

『フン! 不運にも引きが良すぎた』

 

そうして回収した【青眼の白龍】を見つめ、社長は呟くのであった。

 

 

…………

 

 

「いや社長……いくらこの世界のカードの材質が頑丈だからって、それを投げて人の手に突き刺し、膝蹴り一発で人を気絶させるなんて……」

 

やはりバケモノじみた身体能力だ。

俺は童実野スタジアムの観客席に座り、いまの映像を端末を通して観賞している。周囲にはこの光景を一緒に見ているソピアとラドリー、エジルが。

もし時限爆弾コンテナが処理されなかった場合はソピアが一瞬で消滅させる予定だったが、社長のファインプレーで解決したため、久しぶりの活躍の機会を逃したソピアは「もぉ…」と遺憾の意を示している。

 

(さて……次はあっちか)

 

端末の画面の片隅では、洗脳された城之内と遊戯のデュエルの結果、洗脳は解けたものの両者とも爆弾によって水葬される危機に直面している。

 

 

武藤遊戯

LP 1000→0

 

 

自分のライフポイントを犠牲にして城之内を救おうとする武藤遊戯。

遊戯のポイントが0になり、城之内の隣にある足かせの鍵が入った箱が自動的に開く。

 

『城之内くん……いま起爆装置が起動した……残り30秒……その間に……その鍵で脱出……するんだ……早く……錨が海に落ちる前に……』

 

ボロボロな状態でも城之内を心配して言葉をかける遊戯。

 

『バカヤロー!!! お前を置いて逃げられるわけがねぇだろうが!!!』

 

城之内の絶叫にも遊戯は淡々と装着していたデュエルディスクを外し、巻き込まれないよう遠くへ投げる。

 

『どうすりゃ!! どうすりゃいいんだ!!!』

 

迫りくる制限時間に、城之内は遊戯の隣に倒れている【真紅眼の黒竜】を見て何かを思いついたように声を張り上げた。

 

『レッドアイズ! 俺を攻撃しろ!『黒炎弾』を放って俺のライフを0にしろ!』

 

自分の主の叫びに、倒れていた【真紅眼の黒竜】の目に光が宿り、一瞬起き上がって城之内へ向けて『黒炎弾』を放つ。

そして、最後の力を使い果たしたように虚空へ溶けて消えていった。

 

(やっぱ、あのカードにも精霊が宿ってんな)

 

 

城之内克也

LP 600→0

 

 

『ありがとな! レッドアイズ! 遊戯、俺がお前を絶対に死なせはしねぇ!!』

 

城之内はそう叫ぶと自分の鍵も拾わずにデュエルディスクを投げ捨て、錨に繋がれている足かせの鎖をよじ登ってジャンプし、遊戯の足かせの箱へ手を伸ばす。

だが無情にも爆弾が起爆して錨が海中へと落下、それに引っ張られて鎖が巻き付いている城之内と遊戯も一緒に海の中へと引きずり込まれた。

端末の中から聞こえる遊戯の仲間たちの悲鳴を聞きながら、俺は既に展開しているデュエルディスクにセットされていたカードを確認した。

 

 

永続罠【ディメンション・ゲート】

 

 

発動しているこのカードにより、いまも俺の目の前には空間に網目状のゲートが形成されている。

 

「頼むぞ」

 

そうして俺はデュエルディスクに攻撃表示で召喚されている【影依の巫女 エリアル】・【氷水のアクティ】・【瀑征竜-タイダル】を見つめるのであった。

 

 

 

 

 

 

(遊戯!)

 

錨に引きずられ、海深くへ沈んでいく絶望的な状況の中でも、城之内は必死に意識を保ちながら遊戯の元へともがくように泳いでいく。

そして直前間一髪で手が届いた鍵を、遊戯の足かせの穴に差し込みその拘束を解除した。

 

(城之内くん……)

 

遊戯は朦朧とする意識の中で自分を救ってくれた城之内の姿を目に焼き付け、自然と水面へ浮上していった。

親友を浮上させた城之内は、その鍵で自分の足かせも解除しようと試みるが、鍵が合わないのか上手く刺さらない。

 

(チッ、やっぱり鍵が合わねぇ)

 

焦る城之内だったが、ある異常な点に気がついた。

 

(海にこんなに潜ってんのに、なんで息が続くんだ?)

 

不思議に思って周囲を見渡す城之内。そのおかげで、彼は信じられない光景を目撃することになる。

自分を引きずり降ろしていた巨大な錨、それを下から怪力で支えて持ち上げている巨大なドラゴンがいた。

驚いて目を擦っても、その光景は消えない。

さらにそのドラゴンの頭の上には、こちらに向けて杖を構えている青い髪の魔女帽子の少女がおり、自分の背後には半透明な少女が口から気泡を自分に向けて噴射している。

 

(俺はどうかしてしまったのか……?)

 

極限状態の幻覚かと困惑している彼の耳に、何かが水に落ちる音とともに誰かが近づいてくる気配がした。

 

(静香……!?)

 

こうして城之内克也は自分の妹、川井静香によって救出され、遊戯たち一行はマリクが仕掛けたデスゲームを無事に脱したのであった。

 

 

 

 

 

 

ゲートを通って戻ってきた3体の精霊。

なんだか眠そうなエリアルはアクティの背中に背負われているし、タイダルはまた省エネモードのストリームになって俺の頭の上に乗っかった。

 

「よっ! みんなありがとな!」

 

俺は無事にミッションを完遂して戻ってきた3体の精霊を労う。精霊たちに頼んで、あっちに派遣した理由は一種の安全装置だ。

 

マリクがこのデスゲームのために用意した錨の重さは10トン、遊戯と城之内がデュエルをしている、大型コンテナ専用埠頭の水深は15メートルほどだ。

物理学に自信があるわけではないが、一般人がそんな状況で錨に引きずられて水中に落ちたらどうなるか想像はつく。

ロゼに頼んで計算してもらった結果、普通のホモ・サピエンス基準なら、足かせの付いた足首は骨折で済めばラッキーな方で、水面衝突のショックで脊椎や内臓に深刻なダメージ、強制ダイブの水圧による鼓膜破壊など……「原作の二人はどうやって生還したんだよ!?」と言いたくなるレベルのエグさだ。

 

これがデュエリストの標準耐久力と言われればそれまでだが、いくらなんでもそんな絶望的な計算結果を見て、それだけを信じて無視するほど人でなしではない。

以前にも思った通り、川井静香の精神力による超回復?のため大きな介入は避けたが、精霊たちに頼んで遊戯と城之内の身体にかかるダメージは念のため減らしてもらった。

 

タイダルが水中で錨を受け止めて落下速度を減速させ、水中の落下と水圧のケアはエリアルに、二人への空気供給はアクティに頼んだ。

その結果、幸いにも二人は生還。

静香も無事に包帯を解き、いま端末上で見る限りでは原作通りピンピンしているようだ。

これで彼らも無事にこの童実野スタジアムへ到着できるだろう。

 

(それはそうと……マリクの奴、正気か?)

 

ファラオへの逆恨みで誘拐と強盗は基本、爆破テロに人質劇、挙句の果てには友情や人の命まで弄ぶ。

 

(闇マリクなんかより、こいつの方がよっぽど邪悪だろ)

 

そう思いながら、俺はそろそろスタジアムの会場内に入るために立ち上がった。精霊たちは俺のカードの中へ戻り、どこかに連絡していたロゼもこちらが動くのを見てついて立ち上がる

 

バトルシティ予選は終わり、これから繰り広げられる戦いは熾烈なものになるという妙な確信がある。

だが、その先にあるのが【ラーの翼神竜】ならば、そのような試練も当然のことかもしれない。

 

「まずは真っ先に到着している姿を社長に見せつけて、心理フェイズ用のオサレポイントでも稼いでみるか」

 




バトルシティ予選編はここまでとなり、またストックを溜めて戻ってきたいと思います。
高評価や感想、ここすきなど、本当にありがとうございます。
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