ラーイエローの神楽坂   作:ラララララクダ

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第2話 創星神 sophia

 

なんとか、カードを全部自分の部屋へ運び込むことに成功した。

幸いだったのはカードたちがこの世界に来た際、材質までこっち仕様に変化しているようで、水に濡れた程度なら乾かせば何の問題もなさそう。

 

「まあ、作中には滝に打たれながらドローの修行をする奴もいたしな」

 

そんなひとりごとをこぼしながら、カードを整理していく。

ある程度片付いたところで、俺が真っ先に手に取ったのは、やはり一番の相棒である【ラーの翼神竜】のデッキホルダーだ。

 

唾を飲み込み、中身を確認する。

……が、予想通りというか、デッキから【ラーの翼神竜】3枚だけがない。

 

前世の感電死直前、俺はプラモデルの前にイラスト違いのラーを3枚並べて撮影しようとしていた。

あいつらは、今も向こうの世界のプラモの前に置かれたままなんだろう。

たとえこっちに来てたとしても、オリジナル以外のラーを使えば『神の怒り』(雷)を喰らう可能性が高いからな。

感電死は二度と御免だ。

 

他のカードを確認すると、ラー以外のカードは全て揃っていた。

チューナー・シンクロ・エクシーズ・ペンデュラム・リンク、欠かさず全部ある。

だが、これらをこの世界(DM時代)で使う気はさらさらない。

突然命懸けの闇のゲームでも仕掛けられない限り……いや、仕掛けられたとしても、こんな未来の召喚法を敵に見せてバタフライエフェクトが起きる方が怖い。

基本的にはこれらを封印し、当時の召喚法だけで勝負するのが精神衛生上よろしいと判断した。

 

俺は横で様子を伺っているラドリーを見る。

 

「ところでラドリー。お前、どうやってこれだけの荷物をこっちに持ち込んだんだ? 異世界移動なんて、実は俺が思ってるよりずっと強い精霊なのか?」

 

「きゅぴっ!?(゜ロ゜;)」

 

ラドリーが慌てて首を振る。

 

「え? こっちに来られたのはお前の力じゃなくて、お前はただついてきただけ? 他の精霊が助けてくれたって……一体誰が」

 

言いかけた瞬間、サブデッキのホルダーが猛烈に発光した。

 

「うおっ! 眩しっ!」

 

思わず目を細める。ホルダーが勝手に開き、一枚のカードが空中に浮き上がった。

光が収まり、ようやく目を開けると、そこには新たな精霊の姿が。

腕に埋め込まれた宝石、燃え盛る炎のような髪、緑の翼、そして胸元には鏡のような装飾をした、白い牛っぽい生き物。

ミニチュアサイズにはなっているが、紛れもなく【創星神Sophia】がそこにいた。

 

 

 

 

 

 

【創星神 sophia】

 

創造と破壊、両方の力を持っているDT世界の神であり、DT2のラスボス。

ちなみにこいつ、過去に【創星神Tierra】を普通にぶっ倒して封印したことがあるという、前作のラスボスのくせに続編のラスボスを倒したわりととんでもない前科持ちだ。

カード効果もまた、その設定に違和感のないぶっ壊れ性能を持っている。

 

『このカードが特殊召喚に成功した時、このカード以外のお互いの手札・フィールド上・墓地のカードを全てゲームから除外する』

 

だが、このカードには致命的な弱点があった。そう、召喚条件だ。

フィールドに表側表示で存在する儀式・融合・シンクロ・エクシーズモンスターを各1体ずつ要求するという、「これ出す気あるのか?」と言いたくなるような重さ。

昔の俺もパックで引いたが、「イラストは最高だけど(ラーの方が上だが)、使い道ねーな」とストレージの底に放り込んでいた。

 

だが復帰後、友人とのデュエルでインフレを目の当たりにし、俺は思った。

 

「今ならこいつ、確定で出せるんじゃね?」

 

俺はシミュレーターを使い、ソピアのワンターン確定召喚に挑戦した。

最新のカードを使っても制約に阻まれ難航したが、復帰直後の熱量に任せて諦めなかった。

何より、ソピアを確定サーチできるシンクロモンスターを見つけてしまったから。

 

数日後、ついに召喚成功。必要な材料は「レベル7モンスター2体」と「手札コスト1枚」のみ。

俺は狂喜乱舞し、ショップへ走って足りないパーツを買い占めた。ストレージの底で眠っていたソピアをサルベージして、ついにデッキが完成。

翌日、意気揚々と友人の家へ殴り込んだ。

 

結果。またしてもボコボコにされた。

 

コンボは成功した。ソピアも何度か降臨させた。

だが、フィールド・手札・墓地を全て更地にする強力な効果も、返しのターンに相手がドローした「たった一枚のカード」から盤面を修復され、逆に返り討ちに遭ったのだ。

俺は改めて、遊戯王のインフレの恐ろしさを痛感した。

 

それでも勝率は3割を維持。友人も「ソピア召喚なんて初めて見た、新鮮だわ」と評価してくれた。

 

「でもこういうルートって、ネット探せば誰かが開発済みなんじゃない?」

 

という友人の一言に、「おい! 俺の数日間の努力が無意味になるようなこと言うな!」とツッコミを入れたのは良い思い出だ。

結局、俺はこの血の滲むような努力で作ったデッキが気に入り、ソピアはラーの次に愛用するデッキになった。

 

 

 

 

 

 

……いや、今回の回想も結局ボコボコにされる話じゃねーか! 俺の友人、どんだけボコボコすれば満足なんだよ!

 

セルフツッコミを入れつつ、目の前のソピアを見る。圧倒的なオーラを放つ神に、どう声をかけるべきか悩んでいると……

 

「もぉ~もぉ~?」

 

あ、こいつの鳴き声、なんか牛っぽいんだな。

そんな身も蓋もない感想が真っ先に浮かんでしまった。

 

 

 

…………

 

 

 

「つまり、お前はソピア本体じゃなくて、その『分身』ってことか?」

 

「も~~」

 

俺の問いに、目の前のミニチュア神様は肯定するように深く頷いた。

対話の結果、驚愕の事実が判明した。

 

本体のソピア様は、今も【霞の谷の祭壇】の下でぐっすりお休み中らしい。

この分身は、本体が寝ている間に世界の情報を収集し、危機に対処するために生み出された存在だ。

本来なら、本体が目覚めた瞬間に収集した全データを引き継いで消滅する運命なのだが……

本体が長寝しすぎてボケたのか、何度目覚めても分身を呼び出すどころか、そのまま世界を滅ぼしてリセットし、また寝るという暴挙を繰り返しているそうだ。

 

(これ、分身作ったことすら忘れてるんじゃ?)

 

星の尺度でさえ無視できないほどの悠久の時を過ごしてきたこのソピア(分身)は、自分の世界には、もはや本体へ報告すべきことなど残されていないと判断。

別の世界を探索し始めた。

 

こうして始まった長い旅の途中、自分が生まれたDT世界が「物語」や「カードゲーム」として消費されている世界を発見。

だが、この世界は法則があまりにも強固で、無理に渡れば壊しかねない。

 

そう思い悩んだ彼女が、『依代』として偶然目をつけたのが、

俺が執念で召喚した――この【創星神 sophia】のカードってわけだ。

 

観測を続けるうち、彼女は衝撃の事実を知る。自分たちの過去も未来も、すでに物語として完結していること。

そして、分身である自分は物語に一切登場せず、本体は被造物たちに敗北して消滅するという結末を。

「報告する相手、もういねーじゃん……」と悟った彼女は、そのままカードに居座り、精霊になったというわけだ。

 

その後、俺がギャグみたいな感電死を遂げた際、ソピアは俺の魂が別の世界(この遊戯王の世界)へ流れるのを確認。

他のカードの精霊たちと相談し、同行を決めた。

幸い、この遊戯王世界は法則がガバガバ(本人談)だったので、ソピアの力で『世界の壁』をブチ抜いて移動することに決めたらしい。

 

……ただ、一番愛用していた【ラーの翼神竜】だけは、精霊も宿っていないし、こっちの世界のオリジナルと喧嘩になるのを避けるために置いてきたそうだ。

「一番の相棒に限って精霊がいねぇのかよ……」と少しショックだったが、むしろ他のカードに宿っていたのが幸運だったと納得することにした。

 

だが、今の話の中で一つ、聞き捨てならない言葉があった。

 

「世界の壁をブチ抜いた?」

 

俺の確認に、ソピアは「ふも~~」と力強く肯定した。

 

その瞬間、俺の脳内でレッドアラートが鳴り響く。

世界の壁を壊したこと自体はいい。この遊戯王世界は物理法則も構造も相当適当だ。

カード一枚から世界が作られたり、裏側にダークネスとかいう迷惑な骸骨が住んでたり、過去にはあそこが大きくて長い邪神が世界滅ぼそうとしてたり、未来には熱力学無視の永久機関があったりするような世界だからな。

 

だが、「世界の壁を突き破る」なんて真似をすれば、気づく奴は気づくはずだ。

例えば、決まった破滅を回避するために、過去の特異点を監視し続けているような勢力とかな……

 

俺は恐る恐るソピアに尋ねた。

 

「なあ、神様パワーで、ここを監視してる奴がいるかどうか確認できたりする?」

 

「もっ」

 

ソピアは即答した。なんならさっきからずっと、誰かに見られてるぞ、と言わんばかりに。

 

「………………」

 

一瞬の静寂。

 

「もうだめだ……おしまいだぁ!!」

 

俺はその場に膝をつき、頭を抱えて絶叫した。

 




ソピア(分身)は、オリジナル設定です。
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