『イリアステル』
遊戯王5D'sに登場し、歴史を影から操り自分たちの望む形へと修正する、敵組織だ。
『ゼロ・リバース』を引き起こし、都市ひとつを更地に作って住民を虐殺するなど、スケールが大きい悪行を平然とやってのける。
だが、連中は単なる悪役ではなく。
その正体は、滅びゆく未来を救うために過去を改変しようとする未来人だ。
目的は立派だが、やり方は過激そのもの。自分たちの計画の邪魔になれば、歴史ごと存在を消去してくる。
そして俺はソピアのうっかりのせいで、よりにもよってそんな連中に捕捉されてしまった、というわけだ。
さっきまで「バトルシティに出場してマリクからラーを奪う」とか、歴史改変の極みみたいなこと言ってた口で、何をほざくんだって?
うるせえ!それはさっきの話だ!テンション上がって、すっかり忘れてたんだよ!
遺書でも書くか? いや、存在自体消されたら遺書なんて意味ねぇ。
落ち着け……いくらなんでも、デュエルもせずに消滅させるなんて決闘者にあるまじき暴挙は……
いや待て、あいつら無実の市民の頭上に『アーククレイドル』を躊躇なく叩き落とす連中だ。
ちくしょう! こうなったら虚空に向かって土下座して命乞いするしか……!
俺がいきなり絶叫し、膝をついて頭を抱えて独り言を喚き散らすという奇行に、ラドリーは困惑して、「きゅぴっ!?(゜ロ゜;)」とパニック。
ソピアも、「も゛っ!?」と驚き、部屋の中はカオスな状態に陥った。
俺は顔を上げ、ソピアを問い詰める。
「おいソピア! 今、俺たちを監視してる奴がどっちにいるか教えてくれ! そっちを向いて土下座してやるからよ!」
ソピアは俺を見て、「も~お?」と、なぜ土下座? という意思を伝えてきた。
「いいか、今俺たちを見てる奴らは、めちゃくちゃ強くて危険な連中なんだよ! 機嫌を損ねたら一瞬でデリートされるんだ!」
それを聞いたソピアは、自信満々に胸を張った。
「も~~~っ」
要約すると、『あんな連中、私がいれば心配ない』ということらしい。
「いや、お前がいくら別世界の神の精霊だとしても、結局は分身だろ?
イリアステルの首領、Z-ONEは神(時械神)を少なくとも11枚は使役してるんだぞ!?」
俺が反論した瞬間、ソピアが激昂した。
「ぶもぉぉっ! ぶもぉぉぉぉっ!」
要するに、『あんな雑魚神と同列にするな! 神にも格があるんだ。あんなの、まとめて塵にしてやるわ!』とキレている。
「えっ……ソピア、お前そんなに強いの? 分身なのに? そういえば、さっき世界の壁をあっさりブチ抜いたって言ってたっけ」
俺は瞬時に認識を修正した。
そして、膝をついていた姿勢からパッと立ち上がり、ズボンの汚れを払いながら言い放った。
「ちっ、人を驚かせやがって。これだから卑劣なイリアステルの連中は困るぜ」
まさに超速の掌返し。
「来るなら来やがれ! 一瞬で灰にしてやるよ(ソピア様がな)」
これぞまさに虎の威を借る狐…いや、神の威を借るへたれだ!
…………
ソピアのおかげで心の平穏を取り戻した俺だったが、ふと申し訳ない気持ちが芽生えてきた。
さっきも考えたが、俺はこの時代に存在しないカード、チューナー・シンクロ・エクシーズ・ペンデュラム・リンクは封印するつもりだ。
だが、ソピアの召喚条件は『儀式・融合・シンクロ・エクシーズを各1体ずつ』要求する。
シンクロとエクシーズを封印した状態では、彼女を正規召喚する方法がないのだ。
俺のカードをこの世界へ運んでくれたMVP級の活躍をしたっていうのに、当分の間、デュエルで彼女を輝かせてやることは不可能に近い。
「ま、それは後で考えるか。今はイリアステルが先だ」
ソピアのおかげで即座に消される危険は減ったが、安心はできない。
最悪の場合、家族を人質に取られる可能性だってある。そんな状況じゃ夜もぐっすり眠れやしない。
連中の目的が「世界の滅亡を救うこと」である以上、攻撃もされてないのにソピアに頼んで塵にするのは、さすがに良心が痛む。
「ふむふむ~!( ˘ω˘ )」なぜか隣でラドリーも腕組みをして、一緒に悩んでいるフリをしている。
その時、俺の脳裏にある妙案が浮かんだ。
「ん? 待てよ。連中の目的……?」
目の前に広がるカードたちを見つめる……これ、いけるんじゃね?
たとえ上手くいかなくても、協力的な姿勢を見せればいきなり敵対はしてこないはずだ。
「なあソピア、本当に連中がリアルファイトを仕掛けてきても対処できるんだよな?」
「もっ! もっ!」
自信満々の鳴き声。
よし。
俺は一人で納得して頷くと、不意に背を向け、少し俯きながら脚を組み、片手を顔の前に置くという、オサレなポーズを決めた。
そして、虚空に向かってビシッと指を突き出す。
「イリアステル……いや、Z-ONE! 貴様、見ているなッ!俺は『モーメント』の暴走をほぼ確実に防ぎ、世界を救う方法を知っている。
その方法を知りたければ、直接会って話をしよう。30分後に迎えを寄越せ」
バシッと決めてみたが、もし監視してるっていうのがソピアの勘違いで、誰も来なかったら死ぬほど恥ずかしいな。
宣言を終えた俺は、部屋にある一番大きなバッグにカードを詰め込み始めた。
だが、5歳児の幼稚園バッグにこの大量のカードが収まるはずもない。
「全部持っていくのは無理か。かといって選別するには時間が足りねぇ」
困り果てていると、見ていたソピアが左手に白い光球を召喚して振った。
すると、目の前に立派な特大キャリーケースが出現したではないか。
「うわぁ、神様パワーしゅごい……」
「もっ~もっ~♪」と得意げなソピアと、その横で「ドヤドヤ!(`ω´ ) 」みたいなドヤ顔をしているラドリーの助けを借り、なんとか30分以内に全てのカードをキャリーケースに詰め込むことに成功。
そして、一方的に約束した30分が経過したその時。虚空に真っ白なゲートが出現した。
その中から、白いフード付きのベールを纏い、片手に西洋剣を携えた男――
イリアステルの三皇帝の一人、プラシドが姿を現した。