ラーイエローの神楽坂   作:ラララララクダ

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第4話 機皇城

「チッ、人間。ついて来い」

 

プラシドは吐き捨てるように言うと、すぐさま白いゲートの中へと帰っていった。

迎えの人選としては最悪だが、一方的に呼び出したのはこっちだ。文句を言える立場じゃない。

 

隣のソピアに「これ、入っても大丈夫か?」と目配せする。

「もぉ~」と単純明快な肯定がきたので、俺はデッキホルダーを握り締め、キャリーケースを引きながら、ゲートを通り抜けた。

 

 

 

 

 

 

ゲートを抜けると、あまりにも非現実的な空間だった。

足元は透明で、眼下には雲海が広がり、天井もまた透明なのか、宇宙空間とそれを飾る無数の直線が見える。

中心の巨大な3本の柱の周りを黄色い球体たちが軌道を描いて……あ、これアニメで見たイリアステルの拠点だ。

柱の上に座っているのは、遠目だがホセとルチアーノだろう。だが、肝心のZ-ONEの姿がない。

 

ビデオ通話で済ます気か? と思っていると、プラシドが3本の柱が並ぶ中心部へと歩いていく。

そこへ到着した瞬間、足元の透明な床から複雑怪奇な機械装置がせり上がってきた。それが眩い光を放ち、中心に渦のような通路が出現する。

プラシドは相変わらず不機嫌そうな顔で、「この先で神が待っている。さっさと入れ」と促した。

これがZ-ONEの拠点、未来の『アーククレイドル』への道か。

 

またしてもソピアに視線で確認。結果、問題なし。

 

そのまま俺は、渦の中へ飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

水の中を流されるような感覚のあと、視界が開けた。

 

そこは、床も天井も白いパネルで埋め尽くされている、どこが終わりか分からない、アニメで見た空間だった。

なら、あいつがいるはず。

 

『私の拠点へようこそ。強大なる神の使いよ』

 

頭上から、機械音が混ざった威厳のある声が響く。

見上げれば、そこには巨大なアンモナイト型の機械と一体化した、あのZ-ONEが鎮座していた。

 

ファーストコンタクトが大事。まずは挨拶から。

 

「俺は神楽坂…いや、元の神楽坂太郎と、異世界から来た魂の融合体ってのが正しいか」

 

『異世界…』

 

Z-ONEが低く呟く。俺は一気に畳み掛けた。

 

「俺の世界では、この世界は創作物として観測されている。

だからイリアステルの目的も、あんたが世界を救うために、不動遊星のすべてをインストールした科学者だってことも知ってるんだ」

 

その瞬間、Z-ONEから動揺が伝わってきた。少しの沈黙の後、彼は静かに言った。

 

『…そこまで知られているのなら、この面を被り続けるのは礼を失しますね』

 

プシュッという音と共に、特徴的なヘルメットが作動して、素顔が露出する。

俺は驚いた。

そこにいたのは、原作最後に見せた骨と皮だけの老人ではなく、まだ精悍さを残した、壮年期のナイスミドルだったからだ。

 

『どうしたのですか?』

 

「いや、思っていたより若くて驚いた」

 

『私は、力を貸してくれる神の助けを借り、肉体の老化を停止に近い状態で維持しています』

 

俺はその話を聞いて、思わず絶句した。

イリアステルの三皇帝が造られているということは、Z-ONEを除いて最後まで生き残っていたアポリアが死んだ後ということだ。

つまり、たった一人になった後も、今のナイスミドルな状態で神特製のアンチエイジングを受けながら、あの骨と皮だけのシワシワおじいちゃんになるまで、推定数十年…いや、数百年かもしれない時間を、世界を救うために諦めずに足掻き続けてきたってこと?

 

最後には絶望して、一番手っ取り早い手段で世界を救おうとしたが、それすらも心のどこかでは「遊星が止めてくれる」と信じていたんだと言うから、怪物級の精神力としか言いようがない。

そんなZ-ONEに、「世界を救う方法を知っている」なんて啖呵を切っちまったのは、正直、肩の荷が重すぎる。

めちゃくちゃ重いが……ここまで来た以上、やるしかない。

 

俺は覚悟を決め、再びZ-ONEに向き直った。

 

「世界を救う方法を教えると言ったな。俺はその方法が『モーメント』の暴走を止めると確信している。

だが、言葉で長く説明する必要はない」

 

そう言った後デッキホルダーからデッキを取り出した。

 

「デュエルで見せてやる」

 

言い放つと同時に、Z-ONEから距離を取る。

Z-ONEは一瞬、何を言っているのか理解できないという顔をしたが、すぐにその表情を少し怒気を孕んだものへと変えた。

 

『いいでしょう。貴方が望むなら、お相手しましょう』

 

轟音と共に巨大な杖が床を突き破って現れ、分離。二つの巨大な機械腕とデッキホルダーとなり、Z-ONEの両脇に浮かんでいる。

さらに、石版たちが飛来。塵を払うように表面の岩が剥がれ落ちると、巨大なカードとなってホルダーに収まった。

 

「うわ、実物は迫力すげーな」

 

そんな呑気な感想を漏らしながら、俺は床にドカッと座り込んだ。

キャリーケースを横倒しにして開き、中から持ってきた『ラーの翼神竜のプレイマット』を取り出す。

ケースを閉じ、その上にマットを広げる。(ケースがデカいおかげで、はみ出さずにぴったり収まった)

そしてその上に、デッキをシャッフルして乗せた。

 

Z-ONEからは、これまでの威圧感とは打って変わって、明白な困惑が伝わってきた。

 

(わかってるよ! おかしい状況だってことは! でも仕方ないだろ、デュエルディスクがねーんだよ!)

 

 

 

 

 

 

実はここに来る前、家でカードを詰めている最中、ソピアに聞いたんだ。キャリーケースがあんなに簡単に作れるなら、デュエルディスクも作れるのかって。

 

だが答えは「NO」

 

ソピアは分身だから、本体と違って「創造の力」にも制限がある。構造を熟知しているものや、単純な物しか作れないらしい。

それを聞いて仕方ないかと思ったし、何でもかんでもソピアに頼るのは悪い癖になるから自制しよう、と思った。

 

「なら、Z-ONEに借りるしかないか…なんかシュールだな」

 

そう独り言をこぼしていると、ソピアがこう付け加えた。

 

「ももっ?」(カードを召喚して実体化させる程度なら、できるけど必要?)

 

「ソピア様、よろしくお願いします」

 

さっきの「自制しよう」なんて決意は影も形もなく、一瞬で頼んだ。

 

 

 

 

 

 

こうして準備を終えた俺は、Z-ONEの何か可哀想なものを見るような目(被害妄想)を全力でスルーし、決闘者なら、たぶん誰もが一度は大声で叫んでみたいあの口上を、Z-ONEと同時に叫ぶことだった。

 

 

「「デュエル!!」」




オリジナル設定

『神特製のアンチエイジング』
原作では遊星とのデュエルの後に「私はいつも孤独だった」と語っていますが、
あのZ-ONEが仲間たちを失った後、延命装置で 数年耐えた程度でこのような弱音を吐くとはあまり思えなかったため、追加した設定です。
おそらく原作でも、何らかの方法で耐え凌いでいたのではないかと個人的には思っています。
もしくは、延命装置の性能が想像以上に高性能だったのかも……?

『アンモナイト型の装置』
この作品でZ-ONEがアンモナイト型の装置に乗っている理由は、アンチエイジングを行っていたとしても、長年の実験によって酷使された腕や脚、腰などの関節が摩耗しそのため一度は機械による改造を行いましたが、今度はその四肢を動かすために必要な神経までもが故障して装置に頼らざるを得なくなった、という設定になっています。
おそらく、時間が経てば原作のように延命装置の機能も追加されるのではないでしょうか。
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