多分なんだけど、俺が天才パイロットすぎる。   作:泥人形

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ラブコメディは、いつだって突然に。

 アルマ・ステラにおける、瞳の色というのは別に、大した意味はない。

 今時のゲームらしく、多様な髪色や瞳の色のキャラがいる。それだけだ。

 でも、虹色だけは違う──正確に言えば、()()()()()()()()()()()()()()だけは、全く別の意味を持たされてた。

 

 端的に言えば、星骸のコアなのである。

 星骸の心臓であり、脳であり、本体であるそれを、瞳として加工したもの。

 超常現象を引き起こすのは、星骸のコアである──であれば、それを人間に移植すれば、その人間は超常現象を起こせるようになるのではないか? という思想の下、行われた人体実験が過去にあった。

 で、その唯一の生き残りが、主人公であるフィオラ・アルテマリアという訳だ。

 だから彼──彼女は、この世界で唯一、人の身でありながら、星骸のような能力を振るうことができる。

 つまり、裏を返せばそのような人間は、主人公以外に存在しない。

 

 さて、そう考えるとだ。

 俺の部屋で待っていた姫埜ひよりは、まず()()()()()()

 では誰なのか? と問われれば、正直言って、見当もつかないのだが。

 そもそも何でこいつはヘカントクラウケンを知っているんだ?

 疑問は尽きない──けれど、いつまでも悩んでいる訳にもいかないだろう。

 

 虹色の瞳──星骸の能力は多岐にわたる。

 主人公であるフィオラ・アルテマリアは、そのほとんどをアイギス戦における能力に傾倒しているが、当然ながら、それ以外の使い道もあるのだ。

 それは例えば、隠遁であったり、膂力の強化であったり、はたまた──()()であったり。

 

「さてさて、まずはお疲れ様だねー、のどか。疲れたでしょ、お水とか飲む?」

 

 まるでひより本人にしか聞こえない、柔らかなソプラノ。

 それを聞き流しながら、足音を消して歩み寄った。

 

「あ、それとも~、ひよりとか──きゃぁ!?」

 

 手に持ったコップを(はた)き、身体を低く沈めて飛び込んだ。

 彼女をベッドに押し倒すのは実に容易なことで、シームレスに手首を掴み、膝で腰を抑える。

 パイロットに必要なのは、アイギスの操縦だけじゃない。

 白兵戦もある程度は叩き込まれる──俺はかなり不得手な方だけど、流石に女子生徒に負けるほど軟ではない。

 片手にナイフを握り込み、その面部分をひよりの首筋に当てた。

 

「動くな。指の一本でも動かしてみろ、首が飛ぶぞ」

「の、のどか? 痛いよ……?」

「痛くしてんだ──質問に答えろ。お前は誰だ?」

「幼馴染の顔も忘れちゃったの? ひ、ひよりだよ~」

「ひよりの瞳は綺麗な青だ。幾何学模様の回る、虹色じゃない」

 

 至近距離で、彼女の瞳を覗き込む。

 何度瞬いても、そこにあるのは虹色の瞳だ。

 この暗い部屋の中で、しかし明るく輝いている。

 

「──ありゃ、そうだったっけ? 失敗失敗」

 

 俺が少しでもナイフを動かせば、動脈を切断できる。

 そんな状況下にありながら、しかしひよりは、いつも通りののんびりとした声で、そう言った。

 その表情に、緊張はない。

 

「さっきまで使ってたからさ。えへへ、ごめんごめん。これで良い?」

「…………」

 

 ひよりの言葉と共に、虹色の瞳は輝きを収めた。

 その両眼は、見慣れた青色のそれに戻っている──いやごめん、ちょっと待って?

 本当に何が起こってるんですか?

 知らないイベントが発生しているどころの騒ぎではない。

 

「……お前は誰だ」

「だからー、ひよりだってば。見てわかんない? 幼馴染のひより! あ、それとも、のどかが大好きな、可愛い可愛いフィアンセのひよりちゃんって言った方が良かったかな?」

「おい、勝手に大好きにすんな。そんな事実はねーよ」

「たはー、嘘ばっかり。今も未来も、ひよりのことが好きなの、バレバレだよ~?」

「未来?」

 

 なんて?

 思わず聞き返すと、ひよりが意地悪そうに笑った。

 

「そう、未来──のどかは、ひよりが未来から来たって言ったら、信じてくれる?」

「冗談に付き合うほど、俺も暇じゃないぞ」

「タイムリープって言うんだって。のどかが言ってたよ」

「だから──」

廿()()()()()()()()()()()()()()

「!!」

 

 思わず、身体が硬直した。

 それは──その事実は、当然だけれども、誰にも話したことはない。

 

「三年後の世界でね、教えてもらったんだ~。過去の俺は絶対に信じないからって──前世では冴えない男子高校生。友達はいないし、彼女だっていない。口下手で結構卑屈……あれ? ごめんね、一応記憶したはずなんだけど、これ普通にのどかのことでしかないね」

「うん、そうだね。そりゃ俺のことだからね、はい……」

「あ、じゃあ、お姉ちゃんの友達に六年片想いして告白した結果、ちゃんと振られて二度と恋愛なんてしないって誓ったのも本当!?」

「本当だけどさぁ! 何で知ってんだよクソー!!」

 

 比喩抜きで、墓まで持ってった秘密だぞそれは……!

 何で今になって墓荒らしにあわなきゃいけないんだよ。

 

「い、いや、でも別に、それはタイムリープの証明にはなってない。俺がうっかり口を滑らせたかもしれないし……いや、絶対にないんだけどね?」

「え~? 往生際が悪いなあ……あっ、それじゃあフィオひよ♡大作戦だっけ? 失敗しちゃうよ~」

「…………マジか」

 

 俺はナイフを床に滑らすようにぶん投げて、ひよりの拘束を解いた。

 下らない話ではある。それは間違いないけれど、しかしそれは、ついさっき俺が思いついたものなのだ。

 それを知っている──となれば、まあ、ある程度は信じても良いんじゃないかな……。

 後なんか、フラれた時のことを思い出して、普通に落ち込んできたし……。

 

「あー、はいはい。ひよりが慰めてあげますからねー。はいはい、よしよ~し」

「うわぁっ、ナチュラルに抱きしめて頭を撫でるな! 好きになっちゃったらどうすんだ……!」

「……? 別に良くない? てゆーか、好きじゃないとダメじゃん。ひよりたち、付き合ってるんだから」

「……??」

 

 シレッと関係性を捏造するひよりだった。

 付き合ってるどころか、告白した過去すらねーよ。当たり前だろ。

 俺はついさっきまで、大真面目にフィオひよ♡ラブラブ大作戦を考えてた男だぞ。

 

「……あー、いや。え? 未来で俺が告白してるってこと……?」

「いやあ、えへへ。楽しみだなー」

「いや、楽しみっつーか……」

 

 それ言っちゃって良かったの? という疑問と、何で俺は告白なんてしてんだよ、という怒りが湧き上がる。

 未来の俺が、確実に一時の感情に流されている……。

 

「まあ、言ってくれたのは本当の本当に、最後のことだけどね」

「え、何その不穏な語り口調……それ俺死んでない? 大丈夫?」

「うん、死んでるよー」

「死んでるかー」

 

 そっかあ、死んでるのかー。

 ……え!? 死んでんの!?

 俺死んでるの!? マジで!?

 

「というかね、ひより以外は、みんな死んじゃった。のどかも……えっと、他のみんなも。学園もコロニーも、全部なくなっちゃった」

「おっと、思ったより重めな話が出てきちゃったな」

 

 ていうか、他の皆って……。

 ざっくり表現すぎる。もうちょい言い方あったろ。

 

 しかもそれって、ラスボスに負けた時に流れるエピローグじゃない?

 学園は火の海に沈み、宇宙に浮かぶ全てのコロニーは、星骸にぶっ壊されるってやつ。

 

「てか、えぇ……? じゃあ俺、どっかでミスるのか? 全滅したってことは、ラスボスに負けたってことだよな……」

「ん~、のどかはミスりまくったって言ってたかなあ」

「単発どころじゃないのかよ……!」

 

 というか、俺がちょっとミスを重ねたくらいで、バッドエンドに入るってどういうことだよ……。

 アルテマリアは何をしてる訳??

 

「想定外のことが起きすぎたし、それに何にも対応できなかったって。それで、のどかはタイムリープしようとしたんだー」

「……え? 俺が? ひよりじゃなくて?」

「うん──でも、のどかへの移植は失敗しちゃって。それで、ひよりに移植してもらったんだ」

 

 ひよりが、ふにゃりと笑ってそう言った。

 確かに、その目の力を以って過去に遡ってきた──というのは、理屈上おかしなところはない。

 思い返してみれば、確かにゲーム内スキルにも、五分前の過去に戻れるというものがあったしな。

 

 撃墜された時にだけ使える、いわゆる蘇生技である。

 システム的に使用できるのは一度のみだったが、なるほど確かに、現実であれば話が違う。

 ゲイボルグや、星骸のコアと理屈は一緒だ。現実故に、応用が利く。

 例え、たった五分のタイムリープだとしても、何百回、何千回と繰り返せば、三年前にだって──……

 

「……いや、待て。待て待て待て待て待て! ひより、お前それ何回使った!?」

「わわっ、どうしたの? のどか。そんな大きい声出して──」

「良いから答えろ!」

 

 例えば、一度のタイムリープで五分戻れたとする。

 その場合、三年前の今に戻ってくるまでに必要な回数は、ざっと()()()()()

 ──星骸の力は、使えば使うほど、人の記憶を壊す。

 

『──ありゃ、そうだったっけ? 失敗失敗』

『のどかも……えっと、他のみんなも』

 

 であれば、ひよりは、今。

 辿り着いた思考の果てで、怖気が走る。

 

「んー、えへへ。分かんないや」

「……ひよりママと、ひよりパパの名前は?」

「あー……」

「俺たちの、故郷のコロニーがどこかは?」

「んん……」

「自分の名前……名字は?」

「んー……」

「あーちゃんって言って、分かるか?」

「……ごめんね」

 

 一つも質問に答えられないまま、ひよりはぎこちなく、誤魔化すように笑った。

 それが、何よりもの証明だった。

 ひよりは、ここに戻ってくるまでの過程で、多くの物を落としていた。

 

「あ、でもね。大丈夫だよ。ちゃんと、必要なことは覚えてるから!」

 

 一転して、ひよりが明るく振る舞うように笑った。

 ……いや、いいや。振る舞ってるんじゃない。

 真実その通りなんだ。

 

 人は、無いものを惜しむことはできないから。

 失ってしまったことさえ分からなければ、それは最初からなかったのと、きっと同じだから。

 

「……必要なことって?」

「未来ののどかから、今ののどかへの伝言。未来を変える為のメッセージ」

「未来の俺、ね」

 

 それじゃあ、やっぱり。

 俺は、ひよりに記憶を捨てさせることに同意したんだ。

 それは、何て罪深いことなのだろう。

 どんな事情があったとしても、許されるべきではない。

 

「あ、今自己卑下タイム入ってるでしょ。のどかは本当、すぐ顔に出るんだから~」

「……そういうことは、忘れてないんだな」

「そりゃもー、旦那様のことですから」

「何か勝手に結婚させられてないか? まだそこまではいってないんだよな?」

「それは~……ほら! 誤差みたいなものだから! 良いの!」

 

 それにね、とひよりが言う。

 俺の頬を両手で挟み、もにゅもにゅと遊びながら。

 

「これは、ひよりが自分で選んで決めたことだから。勝手に後悔しないでほしいな。ひよりからすれば、ここから逆転劇の始まりだ~! って感じなんだから!」

「……さいですか」

「うん、そうなのです。だから──ね、のどか。落ち込んでる暇なんてないよ」

 

 ひよりがニッコリと笑う。

 切り替えて! と言わんばかりに、俺の頬を軽くたたいて。

 

「これからのどかには、未来を変えてもらうんだよ」

「大役だな、俺に務まるのか?」

「できるできる~。為せば成るよ、何事も!」

「ノリが軽いな、おい……」

 

 ていうか、ならなかったから過去に来たのでは……というツッコミは野暮か。

 ため息を吐き、少しだけ思考を整理する。

 一旦、凹むのは後にするために。

 

 過去は変えられないのだから──いや、正確には未来なんだけど。

 なってしまったものはどうしようもない。

 取り返そうとして、取り返せるものではない。

 

 であれば、今はひよりの期待に応えることを、考えるべきだと思うから。

 

「それで? メッセージってのは?」

「あ、うん──まず一つ目なんだけど」

 

 えっとねぇ、と思い出すようにひよりが言って、再び瞳が虹色に光り始めた。

 幾何学模様がくるくると回りだす──この感じだと、記憶していたというより、記録していたと言った方が近いのかもしれない。

 能力の一つとして、眼に直接メモしておいた……と表現すれば、分かりやすいだろうか。

 

「んーっと……『第二面ボス攻略後、夜月暁音より交際申請あり』……ちょっと待ってこれどういうこと!!?」

「いや知らん知らん知らん知らん! つーか何で今俺が責められるんだよ! 記憶した時に俺を責めろよ!」

「のどかが死に際に残してくれたモノだから、ひよりだって初見なんですぅー! この浮気者ー!」

「別に浮気でも何でもないだろうが……!」

 

 未来の俺の咎を、今の俺に問わないでほしかった。いや別に咎でも何でもないんだけど。

 ただ告白されたってだけじゃねーか。

 

 ……あーちゃんが俺に!!?

 

 遅れてやってきた衝撃に、意識を飛ばしかける。

 幾ら何でも二次創作すぎる。

 

「と、取りあえず、続き良いか……?」

「むぅ……えぇっと、『ひよりがいるから多分二股とか言われるんだけど、許されるから付き合ってOK』──何言ってんの!? のどかサイテー!」

「あああああ! 未来の俺の倫理がぶっ壊れてる!!」

 

 俺の身に一体何があったら、そんなことになるんだよ……。

 つーか、未来で付き合ってたらしい、ひよりに持たせたメッセージにしては角が立ちすぎだろ!!

 死に際に残したにしては内容がライトすぎる。何なんだこれは。

 俺は悪い夢でも見てんのか?

 

「『というか付き合った方が良い。何故なら──』」

「な、何故なら……?」

 

 ゴクリと息を呑む。

 それまで、実に剣呑な表情をしていたひよりが、ふと、困ったように眉尻を下げた。

 

「『あーちゃんは、()()()()()()()()()()()()。俺がもっと傍にいて、あーちゃんのことを分かってあげられたなら、守れたに違いない』……だって。」

「……なるほど」

 

 じゃあ最初からそう言えよって思った。

 何としてでも過去の俺を困らせようという、馬鹿みたいな魂胆が透けて見えている。

 でも、うん。

 それなら俺が取るべき行動は決まったな。

 

「じゃあ、付き合うか。死なせる訳にはいかないしな……」

「う、浮気者……」

「浮気じゃないし、どちらかと言えばおかしなのは、ひよりの方だろ……」

「え? でもひよりは今日から、普通にのどかの彼女として振る舞うつもりだよ?」

「そんな当然でしょ? みたいな面で言うこと?」

 

 しかしまあ、およそ全ての記憶を俺に捨てさせられた未来の彼女を、過去の俺が突き放して蔑ろにするって考えると、薄情どころの話ではない。

 仮に彼女じゃなかったとしても、普通に幼馴染だしな……。

 ここで「いや無理です」とか言えるほど、俺は冷酷人間ではない。

 

 いや、でもなあ……。

 俺は腕を組み、小さく唸った。

 見過ごせない懸念点が、一つある。

 

「俺、普通にひよりが好きだから、この判断に個人的な情欲が絡んでないと言ったら、嘘になるんだよ……」

 

 そういうことだった!

 というか、そりゃそうだろとしか言いようがない。

 俺が好きだったゲームの、俺が好きだったメインヒロインが、転生したら幼馴染だったんだぞ……。

 好きになっちゃうだろ、当然の成り行きとして。

 同様の理由で、あーちゃんのことも好きだしな、俺。

 

「それの何がダメなの? 好きならそれで良いじゃんって、ひよりは思うけどなあ」

「いや、それはそうだと、俺も思うんだが……」

 

 でも、それって不義理というか……。

 前世の記憶があるからか、ズルをしている気分に、俺はなっていた。

 というか、だからこそ、彼女たちを遠ざけていたと言っても良い。

 理屈や理性を総動員して、敢えて壁を作っていたのだ、俺は。

 

「あー、また難しいこと考えてるでしょ! もう、しょうがないなあ。それじゃあ、特別に聞いてあげる──ね、ひよりのこと、好き?」

「…………」

 

 あまりにも真っ直ぐな視線に、俺は即答出来なかった。

 色んな返答を、何度も口の中で転がして、それからため息を吐いた。

 

「……正直なことを言えば、好きだ。超好き。めちゃくちゃに付き合いたいし、やれることは全部やりたい」

「わ、わーぉ……凄い欲望の塊みたいな答え出てきたね! えっへっへっ、でも良いよ。のどかのしたいこと、ひよりが何でもしてあげる」

「いやでもちょっと待ってくれ!」

 

 わー! と俺の方に飛び込んで来ようとした、ひよりを片手で制止する。

 結論を出すにはまだ早い。

 

「今ここで、ひよりと付き合う決断をしてしまったら、俺は普通に、後日あーちゃんとも付き合うカス野郎になってしまう……!」

「公然と二股する気だ!? 断る選択肢はないの!?」

「ある訳ないだろ」

 

 未来の俺曰く、許されるらしいし。

 付き合った方が良い理由もあるし。

 それだったら付き合っちゃうよな。

 だって男の子なんだもんよ。

 可愛くて好きな幼馴染二人と、同時に付き合うことが許されるなら、どれだけ第三者に非難されようと付き合っちゃうよ。

 

「ただ、流石にそれは拙いか? と考える、理性の化身たる俺もいる訳だ。誠実であれ、という倫理観は俺にもある」

「よ、良かったー……なかったらただのやばい人だからね。好きになる人間違えたかと思ったよ、ひより」

「かといって、ひよりと付き合わないという選択はもう、俺には難しい……」

「欲望の化身に負けてる!!」

 

 そもそも、早々に二人とのラブコメを諦めた理由は、二人は主人公のことを好きになるから、というのが大きかった。

 それが、延いては世界を救うことにも繋がるのだから、むしろ、諦めない理由がないと言っても良かっただろう。

 

 しかし、そんな理論武装は今ではもうガラクタだ。

 

 だってもう、こんなんになってんだもんよ……。

 主人公は女性になっているし、ひよりはタイムリープしてきてる。

 第三面ボスであーちゃんが死ぬってのも、原作的にはあり得ない話だ。

 そして、その有り得ない話が今後、頻発するらしい。

 

 だから、俺が言うべきことは──

 

「俺が他の人と付き合うことは前提に、お付き合いしてくれませんか……?」

「未来の告白とは比べ物にならないくらい、サイテーな告白出てきた……!」

「ダメか?」

「ダメだよ! もっと真摯さ押し出して! ひよりをその気にさせるように!」

「監督の方なん?」

 

 このあと朝五時までリテイク合戦が続いた。

 結果がどうなったのかは……まあ、お察しだろう。




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