あの後、私は急いで死体から離れた。幸いにも目撃者はいないらしい。ただあの後に謎の血濡れの男が船の中を高速で動き回っていたという怪情報が噂された。
そして一連の事件は殺人ではなくその幽霊が動き回わったからという事に噂された。後にこの船は怪殺人の船として保存される。
もしこれがミステリー小説ならば、私が犯人がいる!などと怪事件の謎を解くのがお約束だが、これはタネの無い話だ。
そんなことよりも、私は今、日本に付いた所だ。街並みや雰囲気は清国と似ている。しかし、その東洋の雰囲気よりも私が目を引いたのは妙に西洋化された建物たちだ。
彼らにとって西洋とは近代化の象徴化であり東洋から西洋に変遷する事が旧時代への脱却。まるでフランスが王政を否定したように、
東洋でいて、なおかつ西洋でもある。歴史上このような町は過去、未来含めても恐らく前例に無い。それに元々鎖国していただけあって、この国の世俗は清国と比べても非常に独特だ。西洋と東洋が混じり合いそこでこの東京という街が作られる。
恐らく未来に進むと更に西洋化される街並み。過去に戻っても東洋の一つの独特な文化を持つ国。今は狭間の時期。この独特な街は近い内に消え失せるだろうという直感が私の脳裏に浮かんだ。
私は良い時期に日本、東京に来た。
そして私がこの国に来たのにももう一つの理由がある。それは彼らが一体何者なのかという点だ。
魔法?一体船の中で見たあれはなんだったのか。
私はその答えを探る為に冬木の土地に行かねばならない。その場所はどこかはわからない。
しかし、問題はこの国には英語が通じない。どうやって行くのかが問題だ。
「おや、外国人さん」
聞きなれた英語が聞こえた。ブリッティシュ訛りの英語。私は後ろを見ると日本人の中でも更に目が細い男。和服を着たいかにもな日本人がいた。
ドイル「見た目の割に英語が堪能だな」
「おや、英国人さん、こう見えても博識ですからね」
ドイル「名を聞かせて貰いたい」
私は英国人らしくハットを取ると会釈をする。
「私の名前は御剣白十という名前です。ちなみにこの名前は百姓に苗字が付く前の由緒正しき名です」
なるほど。この男は所謂英国でいうとこのナイト、貴族階級というわけだな。だから英語を話せるだけの学がある。
白十「しかし、まあ、見たらお困りのようで、あなたのように西洋服を身にまとう西洋人など目立つでしょう」
現に日本についてからの私をジロジロと見るものも多い。この国は聞いた所、開国して30年。不必要に刺激してもあまり良いことは無いだろう。
私と白十という青年は東京の街並みを歩く。二人で話ながら歩くがこの街は西洋的ではあるがどこか根の部分に東洋がある。そんな街だった。
ドイル「なるほどこの国はなかなか面白い国だ」
白十「そうですか。貴方はイギリス人だから世界中の国々に行った筈だ」
ドイル「その中でも極めて独特な世俗文化を持つ国だ。ここは」
白十はどこか怪訝そうな顔をしていた。
白十「まあ、この国は西洋化だと言って無作為に日本という文化を作り変えて
西洋化をしようとしている。無為の所存だね全く」
この男は政府のやり方を嫌っているのか、政府のやり方に対して悪辣なように思える。
ドイル「なるほど。君は政府を嫌っているのか」
白十「ええそうですよ。私は元々譜代大名に仕える家でありましたが、維新によって今はただの一端の百姓。多くの者たち武士は商売に失敗する有様」
ドイル「なるほど。この国には侍という騎士階級がいると聞いた。君はその家だったのか」
なるほど。バラ戦争で没落した騎士のようなものか。なんとも時代とは場所は違えど根本は同じなのだな。
ドイル「しかし、まあその一因を作った。我々、西洋人に対して酷く厚情ではないか」
白十「しかし、私の立場上、そういうわけにはいかないんですよ」
ドイル「何故?」
白十「外国人。西洋人に対しては特に気を配れというお達しなのでね」
この国の成長というのは西洋化によってなされたものであるというのが政府の根本的考えなのだな。しかし、果たしてそれでいいのだろうかと英国人ながら思う。
真似をしても東洋は東洋である。唯一性を消すことになる。画一的な世界や歴史というのは非常に興味が注がれない。
ドイル「うむ、親切心に感謝しよう。それで冬木という街を探しているのだ」
白十「おや、冬木ですか、私も同じ場所に行こうとしているのです」
ドイル「なるほど。なかなかの偶然だ。冬木という場所は都会なのか?」
白十「いえ、全く。ド田舎もド田舎です。あなたのような英国人には心底驚くでしょう。まるでそこで殺し合いしても誰も気づかないような場所ですよ」
彼の言い方にはどうも引っかかる言い方なのを感じる。
ドイル「その場所に是非とも私も含めて連れてってくれ」
白十「勿論」
私と白十は一緒に東京の町に向けて歩き出した。
白十「その一つ聞きたいんだが何故あなたが冬木の土地に行きたいんだ?」
ドイル「私はこう見えても小説家なんだ。それで冬木の土地が面白い土地だと聞き行こうしたのだ」
白十「小説....日本でいうとこの黄表紙のようなものと聞き存じている」
ドイル「うむ、私はアーサーコナンドイルという名だ。歴史小説を書いてる。この国がどうしてこういう事になったのかも興味がある」
白十「アーサーコナンドイルさんですか。どこからその冬木という場所を誰に?」
ドイル「知人だよ。日本という国にそういう場所があるという」
私はとっさに嘘を付いた。
白十「ふーん、その知人はなかなかの情報通ですね。日本でも冬木の土地が何かあるというのを知っているのはごくわずかですよ」
ドイル「何故、君は冬木に行きたいんだい?」
白十「あなたが腹の内を明かしたのなら、こちらも明かさねばなりません。私は内務省。政府の人間です」
ドイル「政府?やはりあの土地には何かあるのか?」
白十は手を三角の形にして顎に置くと。
白十「うむ、50年以上前の冬木の神隠し事件。突如として冬木市で民衆が消える事件が発生した。そして何人かは神の存在を見たと言っている魔の事件」
ドイル「!!」
私はその瞬間、確信した。その土地には間違い無く何かがある。やはり、何かがある。
白十「そして今年、それがまた始まると噂でもある」
祭り。あの血濡れの男が言った事は間違いではなかった。何かがいるという事。そしてその神隠しは今年行われる。
ドイル「なるほど。やはり、あの土地には何かがいるのだな」」
白十「あの土地には近寄らない方がいいですよ。神様に西洋人と東洋人の違いなんてわかりませんよ」
ドイル「決めた。私はその土地に行く。場所を教えてくれ」
そこで白十にその場所。冬木をどうやったら行けるか聞いた。半ば嫌がっていたが私が無理矢理にでも聞き、どう行けばいいのか教えて貰った。どうやら船を乗って行った方がいいらしい。
白十と別れた後。私は再度港で船に乗った。
ごめん、行けなかったわ