今、ドイルが目撃している光景は如何せん理解しがたい光景であった。
薙刀を持つ鎧の着た大男が、騎馬民族の服を着たらしき大男に突進を仕掛けて来たのである。
ドイル「なんだこれは」
ドイルは呆気に取られている。何が起きているのか理解できなかった。これは何が起きている。やはり、この場所で何かが起きているのは理解していたが、理解はできなかった。
何故あのような古の姿で戦い合うのか、これが戦いという物なのか?あまりにも古い。
騎馬民族の服を着た大男は弓を使っていた。しかも、それはとても大きな弓だった。なんというデカさ。
彼らは真剣に戦っているのか?と疑問に呈したが、間違いなく彼らは本気で戦っている。しかし、それでもおかしな光景だった。
ドイルは日本にはこういう文化があるのではと考えて、しかし、それに舞踊にしてはあまりにも本気過ぎる。あまりにも殺意に溢れている。
本気で殺そうとしているような気がした。
鎧を着た大男は人間とは思えぬ超スピードで騎馬民族の大男を追い詰める。しかし、大男もどこからともなく馬を出した。
一体何が起きているのか。しかし、そんな不安も簡単に消える。矢が眼前に見えたからだ。
時は数刻前に遡る。
ガラスがガラガラに破壊され、そのガラスの上には死体が重なっていた。高そうな服もビリビリに破かれていた。
「ふん、遠坂の家か、ふん啓二はいなかったか。だとしても無駄足だったか。こんな奴らどれだけ殺したって無駄だ」
黒いフードを被った男は破壊されたガラスの破片と血がしたたる床を歩く。
眼前に見えるのは遠坂啓一。啓二の兄である。あまりにも怯えた様子で言葉も出ないようだった。完全に腰から転げ落ち、落ちている状態で逃げようしている。
遠坂啓一「くっそ、魔術が使えたらお前らなんか」
「だが、お前は使えない。何故ならお前は啓二ではないからだ」
魔術師の家系は代々一子相伝である。啓一には魔術は伝えられなかったのだ。
「ランサーやれ!」
鎧を着た大男は薙刀を振り下とそうとした。しかし、
遠坂啓一「くっそ、一つ待ってくれないか。アーチャーの真名とマスターをしっている」
「なに」
鎧を着た大男は薙刀を下した。
遠坂啓一「だから、だから、」
「だから?」
遠坂啓一は震えたシカのように起き上がり立った。見える光景は妻、娘、使用人が無惨にも虐殺された跡であった。
遠坂啓一「下の階にアーチャーとそのマスターがいる」
「ほう、遠坂家は啓二の他にもマスターがいたのか」
遠坂啓一「厳密に言うと内の者ではない」
「なるほど、他に情報を喋れ、もしかしたらお前の知ってる情報ならお前を助けてやってもいい」
遠坂啓一「....」
遠坂啓一は言葉に詰まった。使用人も妻も娘も殺され挙句の果てには自分だけが助かろうという虫のいい話。
元々、弟を売った時点でそのようなプライドは捨て去っていた。
「さあ速く喋れ」
男は大男に命令する。またも大男は薙刀を振り下ろす体制になった。
遠坂啓一「だから、だから」
「だから?」
啓一は見た。例え魔術を継げなくて弟に嫉妬し、そして潰すように仕向け。そして今では散々虐待した下の階にいる子の情報さえ売ろうとしている。
しかし、決して許せ無かったのはそこではなかった。妻と娘を殺され自分の家の名誉すら殺されのは決して我慢できなかったのだ。
遠坂啓一「くくくく」
遠坂啓一は震えるように立ち上がった。
「何が可笑しい」
遠坂啓一「いいよ。教えてやるよ。だがお前らみたいなチンケなカス共じゃ絶対に勝てない。何故ならお前が相手にするアーチャーはあのモンゴル帝国の覇者。チンギスハン。あの男は召喚されて下の階にいる。お前らなんかじゃ絶対に勝てない。せいぜいじご」
遠坂啓一は最後の名誉を賭けて言い切る前にスパンと体全体を薙刀によって両断された。
「くくくく、マスターを聞くのを聞きそびれたが、チンギスハンとはまた大層なもんを用意したな。だがこちらにも圧倒的な者がいる。さてサシでやるにはテムジンですら厳しい男がな。なあ、ランサー、いや覇王、項羽よ」