獄中戦隊! アルカトランジャー!(※服役中 作:放てリビドー丸
フェティシマーとの激闘を終えた翌日。アルカトランジャー達は刑務作業に従事していた。緊急時以外は基本的に囚人なのだから仕方がない。
左を見れば下半身丸出しの囚人がいたが、看守は咎めない。何故なら、この囚人もまた異能変態である為、ズボンやパンツを着用出来ないからだ。後、勤務態度が極めて真面目である為だ。
右を見れば、囚人服を突き破って乳首を露出させている奴もいたが、コイツも咎められない。やはり異能変態であるからだ。ついでに言うと、彼の勤務態度も良好である。
「(本当にコイツら真面目だな)」
武藤は変態アルカトラズに来てから日が浅い。
収監される犯罪者共はどいつもコイツも無法者ばかりだと思っていたが、予想に反して彼らは真面目で従順だった。性的嗜好がぶっ飛んでいるだけで。
作業中は私語厳禁である為、彼らの素性を知ることはできなかったが、特に興味は無かった。
「(早く、フェティシマーが現れないかな)」
彼の興味は敵対する組織『フェティシマー』のみに注がれていた。
彼らのことが気になっているだとか、悪の組織に加担したいという訳ではない。武藤は人を殴るのが好きだった。大好きだった。
「(あの、男児ズキーって奴。見た目はトチ狂っていたけれど。しっかりと鍛えていたし、殴り心地が良かった)」
まるで、恋人との逢瀬を思い出す様に。昨日の戦いを思い出していた。
肉を貫き、骨を震わせる感覚。殴打と愛撫は同異議だという持論を持っている彼は、あの時の恍惚を反芻していた。武藤の下半身が盛り上がっているのを見て、下半身丸出し男と乳首男は穏やかな笑みを浮かべていた。
――
「2人はどういう変態罪でぶち込まれたワン? ちなみに、ボクは交尾していた所を見られて、捕まったワン」
18時頃。刑務作業、清掃・内省を終えた武藤達は部屋に戻っていた。
こんなことを言い出す奴に内省を期待するのは徒労としか言いようがない。百貫も鼻息を漏らしながら応えた。
「後輩を指導していたら、セクハラで訴えられた。最近の奴らは繊細過ぎる」
「お前基準で見たら誰でも繊細だワン」
ある意味、期待を裏切らない男だった。
残された武藤は嫌そうな顔をしていたが、犬飼は張り裂けんばかりの笑顔を浮かべ、だらりと舌を出していた。
「武藤は何だワン? 見た目からして強姦辺りでしょっ引かれたと思っているワン!!」
「テメーらみたいな変態共と一緒にすんじゃねぇ! 女をボコボコに殴っただけだよ!」
「うわぁ……」
コレには犬飼と百貫もドン引きしていた。彼は変態罪とか笑えるタイプ(笑えない)ではなく、暴行・傷害でぶち込まれている笑えないタイプの犯罪者だった。
「なんで、また女を殴ったワン? 犬猫をイジメていたとか?」
「いや、浮気してやがったからぶん殴った。ついでに間男もボコボコにしてやったらよ。2人して謝ってんだよな。不思議だよなぁ」
イキっている訳ではなく、マジで興奮している様子は武藤の股間と乳首辺りを見れば、直ぐに分かることだった。
「リョナラーとデブホモが同僚だったワン……」
ケモナー如きが何か言えた義理も無いのだが、犬飼が気落ちしていることも関係なく連絡用のモニタに電源が入った。
『アルカトランジャー。フェティシマーから声明が届いた。再生するぞ』
映像が切り替わる。映し出されたのは、カイゼル髭を蓄えたダンディな男だった。コレには百貫も腰を上げざるを得なかった。
『私はマッチョイ。男児ズキーと言う、男の風上にも置けないクズ野郎を捕まえてくれたことには礼を言いたい。だが、奴がフェティシマーの一員だという間違った考えは改めて貰いたいな』
カメラがフェードアウトしていくと、マッチョイの背後には拘束された青年達の姿が映し出されていた。いずれも美形で何かしらのモデルやタレントであるのだろうが、百貫達は興味が無さそうだった。
「コイツら飯の代わりに女性ホルモン食っているんじゃないか?」
「細いと言えば、ボルゾイを思い出すワン」
「殴ったら、そのままベキっと折れそう」
誰も人質の心配をする気はないらしい。マッチョイはそのまま青年の1人に近付くと、彼の胸板に注射器を突き立てた。
『ぐわぁああ!!』
すると、一体何が起きたというのだろうか。華奢だった手足はパンパンにミチミチに膨れ上がり、減量しまくっていた枯枝の様な細い体は筋肉でムッチムッチに変貌していく。
綺麗な顔達は、大量の男性ホルモンをぶち込まれた影響でモサァっと髭が生い茂り、顔の下半分を覆った。逆に、オシャレに決めていた髪は全部抜け落ちて、ツルピカのスキンヘッドに変わり果てていた
『美しい。見よ。コレが男らしさ(マッチョイズム)だ』
時代に逆行するが如きカビが生え散らかした考えであったが、だからこそ。反発と言わんばかりに強烈な異能変態だった。
もう、ティーンから奥様達にまで幅広く人気を集めていたタレントorアイドルは死んで、ハゲマッチョが誕生していた。
『俺を止めてみせろ! だが、もしもお前達が失われたマッチョイズムを取り戻したいというのなら! 俺を見逃せ! アルカトランジャー! お前達の挑戦はいつでも受けるぞ!!』
と。勇ましい挑戦状が送られ、マッチョイが次なるターゲットに処置を施しに行く段階で映像は終わった。そして、百貫が一言。
「高野さん。止める必要あります?」
『あるに決まってんだろ! あの捕まっていた人質や被害に遭うであろう美青年達は、お前らの何万倍もの価値があるんだよ!』
「すっげー助けたくなくなって来たワン」
助ける対象をえり好みする様はヒーローの風上にも置けないが、コイツらは犯罪者なのでしゃーない。
『言っとくけれど、拒否権は無いぞ。お前達がサボタージュすれば、司法取引の件は無しだ。一生、変態アルカトラズで暮らして貰うからな!』
「美青年達の安全と権利は守られるのに、ボク達の人権が守られる様子が一つも見当たらないワン」
犬飼が同意を求めて武藤の方を見たが、彼は両手を握り締めてワナワナと震えていた。拳には血管が浮かび上がり、鼻血を垂らしている。
「あのマッチョイって奴。殴り甲斐がありそうだよな! しかも、アイツのやっていたことを考えたら、多分。手下には、大量のマッチョがいるんだよな? 行こう!」
「お前だけ、少年誌みたいな世界観ワンね」
『なんで、暴行・傷害罪でぶち込まれた奴が一番勤労なんだよ。……近日、超有名男性アイドルユニットがライブをする予定がある。マッチョイが事に及ぶとしたら、ここだろう』
モニタには件の有名アイドルグループのプロモーションが頻りに流されており、ライブの日も宣伝されていたのだが。
「危険が迫っているなら、中止とかには出来ないのかワン?」
『簡単に言うな。どれだけの人間や資金が動いていると思う? たかが、異能変態の為に中止する訳にはいかないんだよ。何よりも、テロに屈したら終わりだ。奴らの要求を飲み続ける羽目になる』
テロには屈しない。基本原則だ。もしも、屈服してしまえば最後。無限に要求されることは目に見えているからだ。
「そうは言うが。実際に被害が出た場合はどうするんだ? ワシらだけで未然に防げるものでもないだろう?」
百貫の言うことも一理あった。テロに屈するのは悪手ではあるが、実際に事件が起きて、シャレにならない被害が出るという事態も避けねばならない。
『そこでだ。私に良い考えがある。件のアイドルユニットが所属する事務所にも話は付けている』
「残念ながら、ボク達を囮アイドルに使うとかはムリワン。武藤はそこそこのイケメンだけど異形が2人もいるワン」
『やる訳ないだろ! ……先方と話を合わせる為にも。お前達に特別外出許可を出す。出立は明日、迎えを寄こすから彼らに従う様に。以上』
と、一方的に打ち切られてモニタの映像が切れた。再度電源が付かないかと色々と弄ったが、こちらからの操作は受け付けていないらしい。
「アイドル共と会うのか。そんな線の細いガキどもを見たら、ワシは無理矢理食わせてしまうかもしれん」
「ち●んこワン?」
「そうだ。ち●んこを」
「普通にちゃんこって言えよ」
会合するだけで悪影響しか及ばさない気がするのだが、果たして? という是非を問うたところで意味がない。消灯の時間も近付いて来たので、彼らは布団に入ることにした。