獄中戦隊! アルカトランジャー!(※服役中   作:放てリビドー丸

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3回目:衝突!? アイドルグループ『The・Enjoy!』

 翌日、武藤達は秘密裏に目的地へと運搬されていた。

 逃亡の可能性も考えて、目隠しをされた上で高速までされていたが、口は自由に動かせるようになっていた。申し訳程度の配慮だった。

 

「ボク達の護衛するアイドルグループ。『The・Enjoy!』って言うらしいけど。2人は何か知っているワン? ボクはテレビ見ないから知らねぇワン」

「興味がねぇな。そもそも、テレビ見ねぇし」

「元カノが一時期ハマっていたな。テレビ見てないから知らんけど」

 

 もはや、かつての娯楽の王者はインフラにすらなれないでいた。見かねたのか、高野が口を挟んだ。

 

「『The・Enjoy!』は、現在最も売れている男性アイドルグループだ。大企業や政府も積極的に用いる程の影響力を持っているが、メンバーは全員10代の少年達だ。彼らが変態共の餌食になる謂れは無い」

「本当ワン? アイドルだから、ファンの女子をつまみ食いしたり、後ろめたいことがあったからターゲットにされたとかあるんじゃないワン?」

「あるいは。某グループみたいに社長のお手付きの可能性もあるわな」

 

 犬飼と百貫からは侮蔑と嫌疑が向けられていた。

 元より、変態共は世間からは疎まれている存在である。と、同時に彼らもまた世間を疎んでいた。高野もまた軽蔑を隠そうともしなかった。

 

「フン、クズ共が。だが、仕事はして貰う。お前達の職務放棄や利敵行為が認められた瞬間、首輪に埋め込まれた注射器から弛緩薬と鎮静剤が注入され、然るべき場所に送られる。二度と日の目を浴びることのない場所にな」

 

 脅迫めいた忠告だったが、三人とも顔色を変える様子は無かった。

 

――

 

 程なくして、目的地に到着したのか。彼らは車から降ろされ、歩かされ、目隠しと拘束具を外されたのは、狭い個室だった。アクリル板を挟んで部屋は分割されており、有体に言えば刑務所の面会室の様な作りとなっていた。

 武藤達の向かいにいるのは、正に話題にしていたアイドルグループだった。隣では金髪オールバックに眼鏡をかけた神経質そうな男がイラついていた。

 

「高野さん。彼らはちゃんと制御が利くのですか?」

「はい。本当なら通話だけで済ませたかったのですが……」

 

 考えてみれば、奇妙な話である。コミュニケーションを取るだけなら通話だけでも十分に可能であるし、今回の護衛対象がアイドルグループであるなら囚人と面会する。というのは、マイナス要素が大きい。

 

「ダメです。アイドルグループは常に『Enjoy!』をお届けする使命があります。今回の変態共も我々の糧とします」

「蜂二さん。変態共の脅威を甘く見過ぎています。奴らのリビドーは我々の常識を遥かに超えている」

 

 プロデューサーこと関本と高野が難しい顔をして話を進めているが、当事者達の内、先に声を上げたのは少年達の方だった。

 

「蜂二さん! どうして、俺達がこんな犯罪者共に護衛して貰わなければならないんだ!」

 

 『The・Enjoy!』のメンバーは3人。その内の1人、一際大柄な金髪の少年が吠えた。

 

「阿藤君。異能変態の脅威は散々教えたはずです」

「何をバカな。日本には警察も軍隊もあるでしょう!」

 

 彼の意見は正に一般的な感性を代表する物であった。彼の剣幕に対して、百貫と武藤は気にした風もなかったが、犬飼はニタニタとしていた。

 

「そうだワン。警察も軍隊もあるワン。ボクらより、そっちを頼ったらどうだワン? ライブ当日の光景が楽しみだワン」

「嚙ませろ」

 

 高野が命じると、犬飼に猿轡が嚙まされた。阿藤もまた八二に睨みつけられていた。

 

「私に逆らう気ですか?」

「……すいません」

 

 先程までの威勢は何処へやら。阿藤は借りて来た猫の様に大人しくなった。ただ、不満が解消された訳ではなかった。今度は空色の髪をした少年が小さく手を上げていた。

 

「蜂二さん。どうして、こんな面会を?」

「柳本君、良い質問です。単刀直入に言いましょう。私は今回の犯罪予告を演出にしようと思っています」

 

 全員に動揺が走った。武藤が高野を見た。

 

「アンタが言っていた良いアイデアってのは、この事か?」

「そうだ。中止にする訳にもいかないが、当日に起こるであろう騒ぎを利益に替えてしまえ。という、提案があった」

「ちょ。蜂二さん! 何を言っているんですか!?」

 

 どうやら、この提案は寝耳に水だったらしく。『The・Enjoy!』最後のメンバー、赤毛の少年が阿藤と同じ様に声を荒げていた。

 

「竜星君。『The・Enjoy!』の信念を復唱しなさい」

「どんな時でも。エンジョイ! です……」

「その通り。今まで、異能変態共のせいで中止になった催しは数知れません」

 

 コンサートやライブ等は人々のリビドーや情熱を煽ることもあって、特に異能変態が出現し易い。興行関係者も困り果てている。

 

「だからこそ、我々が初の成功者となるのです。異能変態に襲撃されながらもライブをやり遂げたグループとして。そうすれば、更なる躍進が見込めることでしょう! どんな苦境もエンジョイ! して見せたとして! ――何か意見が?」

 

 蜂二が凄むと3人は黙ってしまった。高野と百貫も沈黙を貫き、犬飼だけがニタニタと笑いを浮かべている中、武藤が口を開いた。

 

「……俺達は変態の犯罪者だけれどよ。ガキを危険に晒すってのはちょっと飲み込めねぇな。高野さん、アンタ。それで良いのか?」

 

 珍しく正論を吐かれたので、高野も何も言えないでいる中。蜂二はタブレットを取り出していた。

 

「会場のレンタル費用、機材費、人件費、広告・宣伝費、グッズ物販の製作費、交通費。とまぁ、上げればキリがありませんが。今回のイベントは既にコレだけの費用が掛かっています」

 

 表示された額の膨大さは、そのまま『The・Enjoy!』に寄せられている期待と受け取っても良いだろう。

 

「既に多数のライブが潰され、萌芽すべき才能達も潰されている。このままでは芸能界や文化の衰退にすら関わってきます。我々は、お前達の様な変態に屈するつもりは無い!」

 

 執念すら感じる物言いだった。芸能界や諸々の事情を知らない武藤は、言い返すことができなかった。

 

「……じゃあ、俺達はどうすれば良いんだ?」

「その為に。まずは、我々『The・Enjoy!』のことを知って貰う必要があります。コレから、ライブの日まで付き合って貰います。高野さん、よろしいですね?」

 

 有無を言わせぬ物言いだった。既に、上の方で話は付いているのだろう。

 かくして、アルカトランジャー達は『The・Enjoy!』の生活に付き合うこととなった。

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