獄中戦隊! アルカトランジャー!(※服役中   作:放てリビドー丸

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3回目の内容をかなり修正しています。


4回目:コミュニケーションだよ! アルカトランジャー!

「あの蜂二って奴は全員の弱みを握っているに違いないワン」

 

 翌日のことである。『The・Enjoy!』のメンバーが学校に行っている間、犬飼がこの様に切り出していた。これは昨日の嫌疑と違って、幾つか根拠があった。

 

「単純に芸能関係らしく上下関係をしっかりと教え込まれとるだけかもしれんが」

「だとしても、良い大人がガキを巻き込むだなんてよ」

 

 武藤の物言いに百貫も頷いていた。異能変態に屈しない断固とした姿勢自体は悪い物ではないが、年端も行かない子供まで巻き込むのは納得しがたいものがあった。

 

「意外だワン。女は殴ったり、後輩に手を出す癖に、子供には優しいワンね」

「当たり前だ。大人はガキを守るモンだろ」

「ウム。将来、良い男になるかもしれんからな。若い芽を摘み取っちゃあイカン」

 

 変態にも譲れない一線があるらしい。犯罪者共の欺瞞を鼻で笑うと、犬飼は手元の書類に目を落としていた。

 

「『阿藤 重一(あとう しげかず)』。グループ内では俺様系キャラで売っていて、趣味はトレーニングで好物はコーヒー。その割には、プロデューサー様にヘコヘコしていたワンねぇ」

「おぉ。道理で、アイツは体つきが良いと思っていたら」

 

 百貫も同じ様に書類に目を通す。面会の時は物静かだった少年、柳本のプロフィールが書かれていた。

 

「『柳本 蓮介(やなぎもと れんすけ)』。物静かでミステリアスな雰囲気が年上の女性達を魅了してやまない。動物が好きで、家で多数のペットを飼っているだとさ。犬飼、お前と気が合うんじゃないか?」

「カーッ! 動物好きは好感度稼ぎの定番ワンよ! どうせ、キャラ作りの一環ワン!!」

「一体、何が気に食わないんだ……」

 

 どうしても犬飼は彼らを悪者にしたいらしい。武藤は最後の1人、竜星と呼ばれていた少年のプロフィールを斜め読みしていた。

 

「『藤村 竜星(ふじむら りゅうせい)』。リーダー的存在でメンバーを取りまとめていて、誰よりもエンジョイしている。何も情報が無いな」

「無個性ってことだワン。でも、逆に言えば無個性でもプロデュース次第で人気者になれるってことワンねぇ」

「犬飼よ。お前さん、さっきから随分と悪態を吐いとるじゃないか。何か恨みでもあるのか?」

 

 あまりに突っ掛かるので、気になった百貫が尋ねた所。鼻で笑っていた。

 

「ボクはアイドルって連中が嫌いだワン。皆の好きな様に、皆が好きになる様に媚を売っている様が浅ましすぎるワン」

 

 犬飼の言うことは武藤も百貫も理解できることであった。

 変態アルカトラズは人目も憚らずに自らの性的嗜好を突き詰めた連中である。自らの矜持に並々ならぬ拘りを持つ彼らとしては、最大公約数を目指した『アイドル』は対極にいる存在と言っても良かった。

 

「それが『普通』なんじゃろ。別にどうでも良いじゃないか。ワシらはワシらの道を突き詰めれば良い。アイツらは路傍の石と変わらん」

「そうワンね。ボクもさっさと仕事を終えて、アルカトラズに帰りたいワン」

 

 百貫も直接的な批判こそしていないが、あまり好印象は持っていないようだった。この場に渦巻いているのは普通に媚を売っている彼らに対する憤りか、あるいは普通になれなかった妬みか。きっと、どちらもだろうな。と、武藤はぼんやりと考えていた。

 

――

 

 『The・Enjoy!』のメンバーは学校が終わったら、蜂二が見守る中、そのまま練習へと移行する。

 既に相当な練習を重ねているのだろう。3人の振付けやフォーメーションは完璧と言ってもよく、武藤や百貫も思わず感嘆の声を漏らしてしまった。

 

「彼らは国民的アイドルです。これ位はできて当然です」

「その分、学業とかは?」

「両立させております。今の国民は『バカ』を嫌いますからね。何一つとして瑕疵が存在しないことで、始めて偶像としての姿が保たれるのです」

 

 十代の子供に求めることではない。のだが、恐らく3人は見事に達成しているのだろう。一体、何が彼らを突き動かしているのだろう?

 休憩に入り、各々が教科書を開いたり、バッグから何かを取り出したり、読書している中。武藤は竜星へと近付いた。

 

「なんで、スマホを弄らないんだ?」

「蜂二さんから余計な情報を入れない様にって」

 

 傲慢な男であるが『The・Enjoy!』のメンバーを気に掛けていることも事実だった。実際、スマホなどから得られる誹謗中傷などでメンタルを病んだ者も多いとは聞くが……。

 

「どうして、お前はアイドルを?」

「……探しているんだ。俺自身を」

 

 急にポエミーなことを言い出したので何事かと問いただそうとした所。犬飼が柳本の前でワンと吠えていた。

 

「そのトリーツポーチ……」

「分かるんですか? 帰ったら、そのまま散歩に行こうと思っていたので」

 

 彼はバッグを覗き込んだ犬飼と極自然に視線を合わせる様に膝を着いた。

 

「要ります?」

「……ワン」

 

 ポーチを開け、おやつを取り出す仕草はあまりに自然な物だった。一瞬で計算したのか、犬飼の体格でも満足するだけの量を取り出していた。

 受け取り、ポリポリと食べた後。両手を合わせていた。普通の犬には決してできない、ごちそうさまのポーズだった。

 

「えらい、えらい」

 

 犬飼の容姿に怯えることもなく。彼の頭頂部に生えた耳の後ろを軽く搔いていた。アレだけ嫌っていたハズなのに、快く受け入れている。

 一方、百貫はと言えば阿藤に施術をしていた。一見するとお触りの類やセクハラの様に思えるが、蜂二がマッサージを止めないでいる所を見るに話しは付けているのだろう。

 

「お前さん。随分、筋肉の密度が高いな。体幹も出来とる。一番ダンスにキレがあると思ってはおったが」

「そこまで分かるのか」

「筋肉は言葉以上に物語ってくれる。どうして、お前さんはアイドルをしとる。もっと別の世界があるじゃろう」

「必要なんだ。アイドルで得られる物が」

 

 出会った当初は生意気な奴だと思っていたが、世話になっているプロデューサーから注意されてまで、アイドルと言う世界に真剣なのだろう。ならば、これ以上は言葉を重ねまいと、百貫は施術を続けた。

 

「俺は阿藤みたいに目指す何かがある訳じゃない。柳本みたいに拠り所になる何かも持っていない。……親や周りの期待に応えている間に、何か見つかるかもしれないと思っていたけど」

 

 そう言った物が無い人間も珍しくない。むしろ、何となくで生きている人間の方が多数だろう。だから、むしろ感心していた。

 

「だったら、お前はすごいよ。目的や目標が無くても頑張るなんて、普通じゃできない。それだけ、このグループでやりたいことがあるんじゃないのか?」

「俺の、やりたいこと……」

 

 暫し、考え込む様子を見せたが蜂二が首を横に振っていた。余計なことを考えさせるなと言うことだろう。直ぐに、話題を逸らすべきだと判断した。

 

「もしも、思いついたなら。気兼ねなくやってみれば良い。変態的だった場合は、もれなく俺達のアルカトラズに招待して、可愛がってやるよ」

「それは遠慮しときたいっすね」

 

 2人して笑っていた。出会った当初は険悪な雰囲気が漂っていたが、ほんのわずかな隙間に見えた共通点のおかげか互いの距離は縮まりつつあった。

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