獄中戦隊! アルカトランジャー!(※服役中   作:放てリビドー丸

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6回目:繋いで来た道だよ! 蜂二さん!

 プロデューサーである蜂二が失踪したが、ライブを中止にする訳にはいかなかった。こんな事態も想定していたのか、蜂二は自分がいなくなった場合の引継書を残していた。

 事務所から代理のプロデューサーも宛がわれ、当日に向けて準備をしつつ。武藤は事件現場に残された『ある物』について尋ねていた。

 

「代理さん。この写真に写っているのは?」

「……若い頃の蜂二さんと。相棒の一八さんです」

 

 蜂二の方は面影が見て取れた。アイドル衣装に身を包んでいる2人は本当に楽しそうだった。だからこそ『The・Enjoy!』のメンバーには気になった。

 

「俺達、一八さんの話なんて聞いたことがありません。それに、プロデューサーがアイドルをしていたことも」

「言わなかったんだろうね。苦い思い出ばかりだったから」

 

 代理は引き出しからスクラップを取り出していた。

 『大人気デュオアイドル、テロにより突然のライブ中止!! 犯人は小児性愛者!?』というセンセーショナルな見出しと共に記事の内容が貼られていた。

 

「『ライブ中に1人の男性がステージに上がり、2人に襲い掛かった。幸い、控えていたスタッフが妨害したおかげで被害は出なかったが、今後のデュオ活動に関しては当面見送るということに……』。これって」

「異能変態による犯罪だ。あの事件が切っ掛けで、一八さんは芸能界を引退して、今はもう連絡も取っていない」

 

 変態。という字面だけを見れば茶化されそうな物だが、被害者にとっては何一つとして笑えない。一生残らない傷が刻まれることだってある。

 

「そうか。だから、蜂二さんはあんなに躍起に」

「自分達の絶たれた未来を今度こそは。ってことだったんじゃろうな」

 

 阿藤はどうして、蜂二が強行しようとしていたのかを理解した。彼は折れてしまった未来を『The・Enjoy!』に託していたのだろう。

 

「ケッ。とんだクソ野郎もいたもんだ」

「おっと。正義感ぶるのは良いけれど、ボク達もクズだってことを忘れちゃいけないワン。――守るべき一線があるだけのクズだワン」

 

 所詮は自分達も同じ穴の狢である。決して、忘れてはならない。竜星が握りこぶしを作った。

 

「でも! 今の俺達には武藤さん達がいます! 例え、異能変態が来たとしても。守ってくれます!」

「……そうだね。その為に、雇ったんだからね」

 

 彼の力強い決意とは裏腹に代理の顔は浮かばない物だった。彼の不安を払拭するべく、百貫が肩を叩いた。

 

「大丈夫じゃ! 向うは単なる変態。ワシらは既に何度も鉄火場を経験しとるからな!」

「頼りにしていますよ」

 

 それでも。やはり、代理の不安は拭いきれていなかった。ライブの日は迫りつつあった。

 

――

 

『武藤。例の事件の犯人と面会する許可が下りた。とは言え、結構な歳だ。あまり長いこと話せないから、手短にな』

 

 翌日の待機時間中のことである。高野に手配して貰い、件の事件を起こした犯人と話ができないかと掛け合ってみた結果。あっさりと許可が下りた。

 護衛が終わるまで変態アルカトラズに戻る訳にはいかないのでテレビ通話越しになるのだが、相手は老齢に差し掛かっており、体調も良く無さそうだった。

 

『あー。あのライブの話か。憶えているよ。あのガキ共が可愛くてサァ。まるで、俺の本能が導いてくれたようだった』

「恨みがあったとか。そう言うのじゃなくて、単純に欲情しただけ。ってことか?」

『そん通りだよ。どうせ、この先に碌な人生なんてねぇんだからよ。それさえも失敗しちまったんだから……いや、ある意味成功していたか』

 

 当時を懐かしむように。犯人は下卑た笑いを浮かべていた。直接的な性加害ができなかったと聞いていたが、満足しているように見えた。

 

「成功ってのはどういうことだ? 例のアイドルデュオが解散になったことが嬉しいって訳じゃないんだろう?」

『そんなんどうでも良い。俺にはな。仲間がいたんだ。それも大量に。独りじゃなかったんだ!』

 

 何がそんなに嬉しかったのか。興奮すると同時に咳き込んでいた。看守が見かねたのか、犯人を退出させていた。

 

「百貫、武藤。今の言葉の意味、ボクらなら分かるワン。よね?」

『どういうことだ?』

 

 高野だけは分かって無さそうだった。犬飼たちは互いに顔を見合わせ、頷いた。

 

「高野さん。当日、ちょっとだけ確認したいことがある。少しの間だけ、別行動をしてもいいか?」

『それは必要なことか?』

 

 高野が一概に否定しなかったのは、武藤が重ねて来た実直さもあってのことだろう。『あぁ』と短く返事をすると、直ぐに許可が下りた。

 

『分かった。犬飼と百貫を護衛に回して、お前も合流しろ』

「助かる。それじゃあ、当日に」

 

 連絡を終えた。ライブは明日にまで迫っていた。『The・Enjoy!』のメンバーはプロデューサーの不在にも関わらず、不安に陥ったりする様子もなかった。

 

「武藤よ。お前さん、なんで態々あんなことを? 社会奉仕の一環か?」

「いや。改めて確認しておきたいんだよ。普通って奴をさ」

「何の役に立つか分からないけれど。ライブが始まったらサッサと合流するワン」

 

 明日。全てが動く。プロデューサーである蜂二に起きた事件は、『The・Enjoy!』のライブは、マッチョイが何者か? 全ては繋がっている様な気がした。性的嗜好に狂わされた者達によるライブが行われる。

 

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