我思う、故に我在り ~最強の守護者として転生した俺の楽園防衛記~ 作:ミュウツー
として使っていこうかな
自分一人の手で作った箱庭。潮風に乗って香るオレンの実は、あの無機質な研究所の消毒液の匂いとは対照的で、俺の心をわずかに安らげた。
だが、この楽園を維持するには代償がいる。
俺が放つサイコエネルギーがこの島を覆う霧の動力源だ。俺が島を離れれば、認識阻害の結界は数時間で霧散し、この場所は「地図上の空白」から「強欲な人間たちの標的」へと成り下がる。
『自由を得たはずが、結局は檻(ここ)を守る番人か……皮肉だな』
自嘲気味に呟いたその時、波の音に混じって、聞き捨てならない金属音が響いた。
テレパシーのレーダーを広域に展開する。
島の結界の境界線付近。一隻の小型高速艇。
そして、海に投げ出された「小さな命」の叫び
島から数キロ先。そこには、ポケモンハンターの無骨な船があった。
甲板では防護服を着た男たちが、高電圧のネットを構えて笑っている。
「ちっ、逃げやがった! 希少なエアームドだってのに、海に落ちちゃ売り物にならねえだろ!」
海面では、鋼の羽を持つ鳥ポケモン、エアームドが必死に羽ばたいていた。だが、その翼には深く鋭い切れ込みがあり、自慢の金属光沢はオイルで汚れ、力なく波に揉まれている。
自分の中では希少という意識は無いが、カントーではエアームドは希少なポケモンになるのか。そんなことを思いながら、俺は一瞬でその直上へと転移した。
『……人間、これ以上は我が領域を汚させない』
俺の姿を見たハンターたちが凍り付く。
「な、なんだあのポケモンは……!? 知らねえぞ、あんな……」
『黙れ』
指先を軽く振るだけで、高速艇のエンジンを内部から握りつぶした。爆発はさせない。ただ、二度と動かぬ鉄の塊に変えるだけだ。エスパーエネルギーはとても便利だ。
恐怖に顔を歪める男たちを無視し、俺は海面に沈みかけているエアームドをサイコキネシスでそっと掬い上げた。
島へ戻ると、俺はエアームドを清らかな湧き水のほとりに横たえた。
鋼の体は冷え切り、呼吸は浅い。
『安心しろ。ここにはお前を縛る鎖も、傷つける罠もない』
俺は「自己再生」のエネルギーを応用し、右手に集めた癒やしの波動をその傷口へと流し込んだ。
折れ曲がっていた鋼の羽が、鈍い音を立てて本来の鋭さを取り戻していく。
なぜかできると確信があったが本当にうまくいったようだ。
「……キュ、ア……?」
やがて目を覚ましたエアームドは、目の前に立つ俺の姿を見て、本能的に鋭い嘴を向けようとした。だが、俺が発する圧倒的な、それでいて静かなプレッシャーに毒気を抜かれたのか、首を傾げて力なく鳴いた。
『無償の奉仕ではないぞ。お前がここで生きるなら、この島の空を見張る目となれ。それがこの楽園の掟だ』
一人ではできることが限られる。大抵のことはできるが同時に複数個所での対応など、一人ではできない。少しずつでもできることは任せていかないと。
伝わっているかは分からない。だが、エアームドは俺のテレパシーを聞くと、感謝を示すように一度だけ短く鳴き、まだおぼつかない足取りで近くの木の実をついばみ始めた。
夕暮れ時、俺は島の最高峰から、不器用そうに羽を休めるエアームドを眺めていた。
一匹。今はまだ一匹だが、いずれここは、行き場を失った者たちの終着駅になるだろう。
(霧を維持できる時間は限られている。遠出はできない……。だが、それでいい)
俺はこの「制約」を、かつて人間たちが俺に付けた「拘束具」ではなく、自らが選んだ「誇り」として受け入れることにした。