加賀美弥生という名前を授かり16年、彼もとい彼女は孤児院を追い出された。元からあまり居心地がいいわけではなかったが中学を卒業するとほぼ同時に少し離れた春楡市のオンボロアパートに住む事になり荷物を持たされ追い出されたのだ。
トチノキ荘
それが新しい住処となったアパートの名前だ。
しわくちゃの偏屈そうな老女が大家を務めるオンボロアパート。これから自力で生きていかねばならないので家賃の安いこのアパート以外に選択肢はなかった。
夜間学校に通う事になったせいか、生まれ変わってから何か物足りないような、例えるなら飢餓感も満足感もない生活を送っていたからか孤児院時代の規則正しい生活サイクルが崩れつつある。
今日も今日とて面倒な授業が終わり、アパートにたどり着くと、
オンボロアパートに似合わない真っ黒な高級車が止まっていた。
不審に思いつつも部屋に向かうとインターホンを押そうとしている真っ黒な女性がいた。
恐らく先ほどの高級車の持ち主か何かだろう。車と同じ黒いスーツで上下を揃えている。
「加賀美弥生さんですね?」
こちらの存在に気付いた女は、弥生が「あの…」と声を掛けるよりもワンテンポ早く話しかけてきた。
「……そうですが…何か御用ですか?」名前を知られているという事に体の芯がジワジワと冷えていくような恐怖を感じつつも返事をする。
「話は部屋の中でさせて欲しいのですが」
女は少し申し訳ないと遠慮がちな口調で続ける。
明らかに裏社会の人間だと分かる怪しい人物に住所も名前も既に把握されているのだ。それに弥生の人間関係には頼れる大人という存在が無い。
断ろうにも逃げ出そうにも捕らえられ殺される可能性が高いと思われる。
それにしてもなぜ自分なのか見当もつかない。借金を背負った記憶もないし悪い友達もいない。
それこそ目をつけた美少女を騙して攫って売り飛ばすくらいの理由を想像してみたがやはり理由はわからない。
とても怖いが仕方なく部屋に案内する。
ちゃぶ台にお茶を注ぎ差し出す。
女は軽く頭を下げる。
「それで話とは?」
「貴女にはデスゲームに参加する資格があります。」
「……は?」余りに突飛な発言に脳の情報処理が追いつかず上手く話せない。前にも似たような事があった気がするが必死に頭を回す。
「デスゲームって漫画とかに出てくるあの?」
「はい。その認識で構いません。」
どうやら先ほどの推測は半分ほど当たっていたらしい。
「なぜ私がが選ばれたんですか?」
「容姿、性格、あと経済状況ですかね。賞金目的で参加する方は結構いるんですよ」
先ほどからなぜか胸が異様に高鳴る。これほどの高揚感は転生してから16年経った今でも経験した事のない程だった。例えるなら飢餓という言葉が似合うだろう。心に空いた穴を埋めようとする。そんな感じだ。
「では…その…参加するにはどうすればいいんですか?」
「参加する意思を確認できればそれで良いです。また後日連絡しますのでよろしくお願いします。」
こうして加賀美弥生の地獄の生活が幕を開ける。
思いっきりオリ主思考誘導されてますね。上位存在が転生する時に少し手を加えています。