セムリア大陸に転生したら、何をする? もちろん観光だよね!? 作:来月お会いしましょう
「えいっ!」
「はっ!」
「頑張れ! 我が愛しの娘よ! あと一組やれば終わりだ!」
「……えい……」
こんにちは……お久しぶりです。
こちらは四歳のロフリア。ただいま絶賛、剣を振っております……。
「なんで四歳の幼女が剣を振ってるの?」って?
それはもう、この帝国という尚武の国が、私みたいな可愛い幼女すら容赦なく巻き込む場所だからだとしか言いようがない。
いや、自慢するわけじゃないけど、今世の私はかなり可愛い。
淡い銀青色の髪をお団子ツインテールに結い、ぷにっとした頬に、髪と同じ色の瞳。全体的に見ても、なかなかの可愛さだと思う。
ただ、ひとつだけ問題がある。
どうやら私は、いわゆる三無少女らしい。
転生のときに何か問題でも起きたのか、表情を作るのがやたら難しい。口も思った通りに動いてくれないせいで、話すのすら少し大変だ。その結果、感情表現もうまくできず、完全に悪循環に陥っている。
両親はそれをとても心配して、わざわざクロスベルまで連れて行き、精密検査まで受けさせてくれた。
結局、異常は何も見つからなかったけど。
まあ、ミシュラム・ワンダーランドで遊べたのは、いい思い出だったからよしとしよう。
……話を戻そう。
私は今、父上の
「貴族たるもの、自分の身を守る武芸を常に身につけておくべきだ」
という持論のもと、家伝の剣術の基礎練習をさせられている。
そしてその父上は、私のすぐそばで、ちょっと恥ずかしくなるくらいのバカ親全開の応援をしている。
父上――ヴァルク・ライセルト。
青い短髪に、整った顔立ちの中に少しだけ精悍さを感じさせる若い男性だ。どうやら子爵らしく、私たちの住むこの少し古風な田舎町が、その領地だという。
そのちょっとした身分のある貴族様が、今はというと、私とメイドのお姉さんが剣の練習をしているのを見ながら、感極まった顔で応援団をやっている。
……正直、ちょっとアレな光景だ。
そして、私と一緒にこの修行に付き合わされているのが、四歳年上のメイドのお姉さん――ミト・メル。
ミトは、両親が縁あって引き取った孤児で、形式上はメイドとして雇われているけれど、父上も母上も、そして執事のお爺ちゃんも、家族の子供のように大事にしている。
だから私としても、彼女のことはどちらかというと姪を見るような感覚で見ている。
……だって、本当に「お姉ちゃん」って思うのはちょっとね。
だって、私は前世の年齢、今世の両親と同じくらいだったし。
まあ、外から見ればちゃんと妹っぽく振る舞わないといけないんだけど。
そんなことを考えているうちに、私たちはだんだん息が上がってきた。
それを見た父上は、慌てて声を上げた。
「よし! よし! 今日はこのくらいにしておこう! わ、私は……そんなに厳しくなかったよな……?」
「はぁ……はぁ……お、お嬢様。汗を拭きますね」
「ん」
実際のところ、練習時間はせいぜい十分くらいなんだけど。
とはいえ、終わった直後はやっぱり普通に疲れる。
けれど、父上の顔色がどんどん青くなっていくのを見て、私はミトとの「汗を拭く→水を渡す」というやり取りから離れ、今にも灰になりそうな父上のところへ歩いていった。
「父上……だっこ~」
「うおおお……我が愛しの娘よ……!」
本物の幼女らしく甘えてみる。
家族のことはちゃんと大切に思っているけれど……正直に言うと、これはちょっとした罰ゲームみたいなものだ。
感動する父親が可愛い娘を抱き上げる、という微笑ましい光景。
でも私の脳内では、それがどうしても大の男同士が抱き合っている映像に変換されてしまう。
精神衛生的に、あまりよろしくない。
本当に、早く大きくなりたい。
せめて、こんな恥ずかしいことをしなくても済む年齢くらいには。
運動のあと、執事のお爺ちゃんが用意してくれたフレッシュな果菜ジュースと、さっぱりしたコーヒーゼリーを味わいながら。
体を動かした後だからか、どちらも格別に美味しく感じた。
そんなことを、つい考えてしまっていた。
こうして、午後のお茶は静かに、穏やかに終わった。
ご覧いただき、ありがとうございます!
まだ始まったばかりなのに、この作品を気に入ってくださった方がいて、とても驚いています。
これからも頑張って、物語をより良く書けるように努力していきます。
次の章では、執事とロフリアの故郷について紹介する予定です。その後の章で、幼いロフリアと原作キャラクターたちの関わりを描き始めるつもりです。