セムリア大陸に転生したら、何をする? もちろん観光だよね!?   作:来月お会いしましょう

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第二章 旅行といえば温泉……え? 家を出て左に曲がればもう着くの!?

 

こんにちは。

こちら、もうすぐ五歳になる フロリア・ライセルト です。

 

我が家にとってとても大事なこの日を祝うため、両親は私を温泉へ連れて行くことにしたらしい。

誕生日のお祝いとして、温泉体験だ。

 

温泉といえば――

帝国を代表する、《閃の軌跡》シリーズでも有名な温泉地と言えば、やはり皇族も訪れるあの場所。

 

それが、ユミル温泉郷だ。

 

ふふふふ~。

そう、五歳の誕生日旅行の行き先はそこなのだ。

羨ましいでしょう?

 

今回は遠出ということで、私たち家族は帝国自慢の鉄道に乗る予定だ。

執事のお爺ちゃんが、まるで塔のように高く積み上げた荷物を片手で軽々と持っているのを眺めながら、私はこれから始まる旅に胸を躍らせていた。

 

その執事のお爺ちゃん――

アルヴィン・クロッケン。

 

片眼鏡をかけ、口元を覆うほどの豊かな髭を丁寧に整え、後ろで髪を束ねた穏やかな老紳士だ。

 

……ただし、少し体格が良くて、少し背が高い。

 

聞いた話では、すでに亡くなった祖父が若い頃に軍隊で一緒に戦った戦友らしい。

しかも シュライデン流槍術 の使い手だとか。

 

以前、町の農家のおじさんたちが魔獣に困っていた時、アルヴィンお爺ちゃんが長槍を振るって追い払うところを見たことがある。

 

その槍さばきは風を切るような勢いで、本当に格好良かった。

 

そんなアルヴィンお爺ちゃんと、手伝おうとしているミトが一緒に旅支度を整えるのを眺めながら、私たちは駅へ向かう準備をしていた。

 

領主の家ということもあり、私たちの屋敷は町の中心にある。

そして駅もまた、先代がかなり力を入れて建てたらしく、同じく町の中心部にある。

 

建設された当初は、朝と夕方に一本ずつしか列車が来ない小さな駅だったらしいけれど、今では通過する便も増えてきている。

 

だからこうして、私たちはのんびり歩いて駅へ向かえばいい。

急いで列車に飛び乗る必要もないのだ。

 

考えてみれば、クロスベルまで検査を受けに行った時を除けば、私は今回が初めての純粋な旅行になる。

 

だから、いろんな意味で今回の旅はとても楽しみだった。

 

もちろん、故郷の町、メルヴィルも悪い場所ではない。

 

例えば、町の南の森には美しい花畑が広がっていて、そこには――

花のハーブティーで人々を癒した魔女がいた、という美しい伝説まで残っている。

 

しかも、もしかしたらその伝説は本当かもしれない。

 

花畑でピクニックをしていると、時々どこか不思議な気配を感じることがあるからだ。

そもそも帝国には、本当に「魔女」という存在がいるのだから。

 

それに、町の北には歴史ある小さな教会もある。

建物はとても綺麗で、歴史の重みも感じられる素敵な場所だ。

 

母様はよく私をそこへ連れて行って礼拝をする。

そして、シスターのお姉さんが淹れてくれる花茶がとても美味しい。

 

さらに母様は、どうやら導力器の製作がかなり得意らしい。

 

結婚する前は ルーレ工科大学 の優秀な学生だったそうで、今では町で医療用導力器を作る会社を経営している。

 

最近その会社が上場したらしく、株価もなかなか好調だとか。

将来性もかなり期待されているらしい。

 

そのおかげもあって、この町はかなり栄えている。

 

普通のレストラン、服屋、雑貨屋はもちろん、

地元文化を感じられる花屋や薬草店などもあり、生活に困ることはまずない。

 

最近では増えてきた人の流れに対応するため、バスの試験運行まで始まった。

 

だから メルヴィル は、ルーレのような大都市には及ばないにしても、文化と便利さを兼ね備えたとても良い場所だ。

 

……とはいえ。

 

同じ場所に四年近くも住んでいると、さすがに少し飽きてくるものだ。

 

だからこそ、たまには旅行をすると、逆に故郷の良さを再確認できるんだよね。

 

「ぶおおおおおおお―――!」

 

そんなことを考えながら、母様の膝の上でハーブティーを飲んでいると――

ついに列車が駅へ入ってきた。

 

こうして、私の鉄道旅行が始まった。

 

……ところで。

 

ここからユミルって、どれくらい遠いんだっけ?

 

そんな疑問がふと頭に浮かんだ。

 

しかしその直後、両親の会話がとんでもない事実を明らかにした。

 

「久しぶりに テオ兄さん に会えるな。今回は一緒にゆっくり酒を飲みたいものだ!」

 

「もう、あなたったら。シュバルツァー家 なんて、ここからなら三十分もあれば着くじゃないですか」

 

「だってなぁ。愛娘の成長の一瞬一瞬を見逃したくないんだよ~」

 

仲の良い夫婦の会話を聞きながら、私の頭の中には一つの疑問しか浮かばなかった。

 

……あれ?

 

三十分?

 

え?

 

三十分で着くの!?

 

私の家、どこにあるの!?

 

そんな衝撃を抱えたまま、私たち一家はあっという間に駅を降り、ユミルへ向かうロープウェイの前へと辿り着いていた。

 

まさか。

 

あの有名な、主人公たちが集まる重要地点が――

 

私の家のすぐ近くだったなんて。

 

遠足のワクワク感が、一瞬で少しだけ薄れてしまった。

 

ゲームではあんなに重要な場所なのに、現実では 家を出て左に曲がれば行ける場所 だったとは。

 

……これは一度、帝国の地図をちゃんと確認しておいた方がいいかもしれない。

 

自分の故郷が帝国のどこにあるのか分からないなんて、さすがにちょっと問題だからね。




ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

今回は少し時間をかけて用語の確認を行いました。
もし専有名詞などで間違いがありましたら、そっと教えていただけると助かります。

ひとまず今回で、主人公の基本的な設定をようやく書くことができました。
ここからは物語も少しずつ動き始めます。

次回からは、彼女の旅の最初の目的地――ユミルです。
温泉と雪景色の町で、フロリアがどんな時間を過ごすのか。
作者としても、彼女が楽しく過ごしてくれたらいいなと思っています。
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