第十八話【戦闘曲:Dancing Mad】
巨大都市メダロポリス。
ワンダはその日の昼から、この街を歩き回っていた。
先日のジーヴァスとの戦闘で大きく損傷した聖・ヴァレン教会。その修復に必要な資材を揃えるためだった。
いくつかの用事を済ませた頃には、空は夕暮れの色に染まり始めていた。
そろそろ教会へ戻ろう。そう考えながら広場を横切ろうとしたワンダの目に、一つの大きな影が映った。
ワンダ:「……ヴァレン」
『英雄ジョーカード像』。
噴水の上に立つその姿は、勇ましく堂々としていた。
世界を救った救世主として作られたその銅像は、ワンダが知るヴァレンとはどこか違って見える。
不器用で、何気ない言動の裏にいくつもの想いを抱え、それでも最後まで自分の選んだ道を進んだヴァレン。
そして、その最期にメダルを破壊したのはワンダ自身だった。
ワンダはしばらく、何も言わずに像を見上げていた。
そのせいで、周囲が騒がしくなっていることに気づくのが遅れた。
ワンダ:「……?」
いつの間にか、噴水の周囲には大勢のメダロットが集まっている。
皆が見ているのはジョーカード像ではなく、その足元だった。
そこに二機のメダロットがいる。
マイル:「ふむ……結構、頑丈だなぁ」
ジーヴァス:「こりゃ、一発デカイのいこうゼ!!」
マイルとジーヴァスだった。
ワンダ:「あいつら……!」
二機は、人目も気にせずジョーカード像を壊そうとしていた。
「おい!! お前たち何でこんな事をするんだ!?」
群衆の中から怒鳴り声が上がる。
ジーヴァス:「それはな! ここに神様を隠したってデュオカイザーが言ってたからだゼ!!」
「神様」――白メダリア。
どうやらデュオカイザーから、白メダリアがここにあると聞き出したらしい。
事情を知らない周囲の者たちには、当然ながら意味が分からない。
「ふざけるな!!」
「意味わからねえよ!」
「くだらない事はもうやめろ!!」
次々と罵声が飛ぶ。
マイルは面倒そうに肩をすくめた。
マイル:「Dancing Mad……起動ぅ」
――ジャ、ァァァァァァァンッ!!
ワンダ:「!?」
次の瞬間、重く不気味な旋律がメダロポリスに響き渡った。
荘厳なパイプオルガンの音。
二年前、ワンダも聞いたことのある曲だった。
ワンダ:「まさか……『Dancing Mad』……!?」
そして上空に、無数の黒い影が現れる。
半透明の身体を持つメダロットたちが、次々と街へ降りてきた。
ワンダ:「こ、心ない天使……!?」
『Dancing Mad』が流れている限り、何度破壊しても再生を続ける兵士たち。
二年前、エデン本部を守っていた防衛システムだった。
ジーヴァス:「ハッハッハ!! 二年前、エデンから盗んだデータからシャインが作り直したんだゼ!!」
ワンダ:「心ない天使がいるという事は……三闘神像も……?」
マイル:「……勿論だぁ」
上空から、さらに巨大な影が姿を現した。
全長五メートルほどの巨体。
大きな翼を広げ、その身体には三つの異なる頭部が並んでいる。
鬼神。
魔神。
女神。
二年前に存在した三つの三闘神像を、一つに統合した姿だった。
マイル:「……三闘神像を一つにまとめた『三頭神像』さぁ」
ワンダ:「三頭……って、そのまんまじゃない!」
心ない天使たちが、一斉に周囲のメダロットへ襲いかかった。
「うわぁぁぁ!!」
「逃げろ!!」
広場が一気に混乱に包まれる。
ワンダも一瞬動きを止めたが、すぐに背後から声が飛んできた。
セルヴォ:「さて、ワンダ。お前は一般民衆の避難誘導をしてくれるか?」
ワンダ:「セルヴォ!? ビート!?」
ビート:「ラヴドとエデン双方のメダロポリス支部から軍隊を要請した。協力してやってくれ」
ワンダ:「……わ、分かったわ!!」
ワンダはすぐに頷き、逃げ惑う者たちの方へ駆け出した。
その姿を見送ると、セルヴォとビートはマイルたちへ向き直る。
セルヴォ:「さて、お前ら何やってんだ?」
マイル:「見ての通り、ジョーカード像の解体ぃ」
ビート:「どうしてだ?」
ジーヴァス:「ここに神様を隠したってデュオカイザーが言ってたからだゼ!!」
その言葉を聞き、セルヴォが一瞬だけ表情を変えた。
セルヴォ:「デュオさんが、だぁ……?」
マイルがそれを見逃さなかった。
マイル:「その顔だと、お前達には神様の居場所を伝えていなかったようだなぁ。つまり……ヘボにはそういう重要な情報は与えられないって事だなぁ」
セルヴォ:「あぁ……?」
セルヴォがマイルを睨む。
そして隣のビートを見る。
ビートは無言で視線を逸らした。
セルヴォはもう一度マイルを見る。
再びビートを見る。
ビートはまた視線を逸らした。
セルヴォ:「…………」
ビート:「…………」
セルヴォが三度マイルを見る。
マイル:「ヘボ」
セルヴォ:「……だらぁーーーーー!!」
ビート:「……ぬん!!」
ついにセルヴォがマイルへ飛びかかった。
同時に、ビートもジーヴァスへ向けて銃撃を開始する。
その背後では、三闘神像を統合した巨大な『三頭神像』が、ジョーカード像を破壊し続けていた。
―
一方、メダロポリスに建つビルの屋上。
シャインとデュオカイザーが向かい合っていた。
シャイン:「神様の居場所を吐く代わりに、自分の命の保証を要求……クククク……君は賢いねぇ、デュオカイザー」
シャインの鋭い脚部が、デュオカイザーの首元に突きつけられている。
それでも、デュオに慌てた様子はなかった。
デュオ:(……この大都市でこれだけの事が起これば、軍が動かざるを得ない……。そうすれば何とか、こいつ等を……)
デュオは薄く笑った。
デュオ:「分かってるゎょ♪ ところで町中で暴れまわってぃるァレはDancing Madょねぃ? どぅしてシャインちゃんがァレを持ってるのかしら? ぅぅん……そもそもなんでシャインちゃんがN・G・ライトの復活を望むかすらぁたしは知らないゎねぃ。……ぉ・し・え・て・ほ・し・ぃ・な♪」
シャインは少しだけ黙った。
シャイン:「………たまには……昔話をするのもいいかな……。クククク……じゃあ話してあげようじゃないか」
街に『Dancing Mad』の旋律が響き続ける。
その中で、シャインは自らの過去を語り始めた。
第十八話【戦闘曲:Dancing Mad】終わり