第二十二話【殺してやる】
巨大都市メダロポリスは、今や戦場と化していた。
街中には重厚なパイプオルガンの旋律――『Dancing Mad』が響き渡り、上空からは半透明の黒い影『心ない天使』が次々と降りてくる。
広場の中央。
『英雄ジョーカード像』の足元では、三頭神像を相手に激しい戦闘が続いていた。
ワンダ:「駄目……っ! これじゃ、キリがない……!!」
当初は住民たちの避難誘導を行っていたワンダも、今は三頭神像との戦いに加わっていた。
『Dancing Mad』が流れている限り、心ない天使たちは何度倒しても再生する。
この状況を止めるには、それらを統べる三頭神像をどうにかするしかない。
だが、三つの三闘神像を一つにしたその巨体は強敵だった。
周囲では数十機からなる兵士部隊が次々と攻撃を仕掛けていたが、その多くがすでに大破し、機能を停止している。
まだ動ける者も、あと僅かだった。
それでも、兵士たちは退こうとしない。
「英雄の像を……これ以上、汚させるな!!」
「機能停止しても構わん、一撃でもいいから叩き込め!!」
メダルさえ無事なら、戦いが終わった後にスラフシステムで回復できる。
それを信じて、残った兵士たちは三頭神像へ向かっていった。
三:「グガアアアアアアアアーーーーッ!!!」
三頭神像が咆哮を上げる。
巨体の腕が大きく振り上げられ、兵士たちへ叩きつけられようとした。
その時。
タイン:「うおぉぉーー!! 『さり気なる漢拳』!!」
三頭神像の脇腹へ、タインの拳が叩き込まれた。
巨体が大きく傾く。
リーブ:「ライフル! ガトリング! ついでにミサイルや!!」
続けてリーブが一斉に射撃を浴びせた。
ライフルとガトリングの弾丸が三頭神像へ集中し、そこへミサイルが炸裂する。
レッド:「…………デストロイ…………」
レッドが死角へ回り込み、『デストロイ』を叩き込んだ。
三:「グガァァァァ!!」
ワンダ:「タイン!! リーブさん!! レッドさん!!」
見慣れた三機の姿に、ワンダの表情が明るくなった。
三頭神像は大きく体勢を崩したが、すぐに四本の腕を振るって反撃を始める。
その時、ワンダの背後から声が聞こえた。
竜:「メダロポリスを戦火に包み、シャインたちを誘い込めば、ラヴドもエデンも国家として動かざるを得なくなります。……任務完遂優先のトゥルースの主任であれば、そう考えてもおかしくは無い。……ここまで完璧に推理が当たると自分で怖いです……もはやエスパーですね」
ワンダ:「お竜さん!」
竜:「ワンダさん、お久しぶりですね」
竜はいつも通り淡々と答えた。
その直後。
ナギサ:「僕は教会を離れ、友の命を救うべく、荒野へと旅立った……。そこに君という名の安息を置き去りにしてね。……嗚呼、辛く険しき旅路の途中、僕は何度その安息を恋しく思っただろうか。……だが、その祈りは届いたようだ。このような混沌の只中で、再び君と巡り会うことになるなんて。……フフフ、これこそが運命……デスティニー。そう感じずにはいられないよ」
ワンダ:「ナギサさん! ビッグブロックに行ったんじゃなかったの? ……あと、状況考えて! もっとセリフを簡略化して!」
ナギサ:「あぁ、行ったけれども、そこには求める答えはなかったよ。……ただ、収穫がなかったわけじゃない。僕はそこで、〝彼ら〟と運命的な再会を果たしたのさ」
ワンダ:「〝彼ら〟……?」
ワンダがナギサの背後を見る。
だが、そこには誰もいない。
ワンダ:「どこに――」
その瞬間。
『英雄ジョーカード像』の上から、大声が降ってきた。
メッシュ:「青~い空……白~い雲……こんな良い気分に浸っている私の邪魔をするのは……誰だーーーーーーー!!!」
ワンダ:「!?」
真紅のマントを風になびかせ、メッシュがジョーカード像の頂点に立っていた。
ワンダ:「あ、あ、ああああアンタは!! 2年前ビッグブロックでヴァレンに倒された……名前は確か…………バッツ!!」
メッシュ:「メッシュだ」
ワンダ:「セフィロス!!」
メッシュ:「だからメッシュ」
ワンダ:「ピカチュウ!!」
メッシュ:「メッシュ……」
ワンダ:「デスタムーア第三形態!!!」
メッシュ:「お前わざとやってるだろ」
ワンダは一瞬黙った。
ワンダ:「私だってたまにはボケたいわ」
メッシュ:「真顔で言わないで怖い」
その傍らには、カリパー、キドゥ、ゲンジの姿もあった。
カリパー:(フッ……オイラ達は華麗に無視か)
ゲンジ:(まぁ、慣れてるけどな)
竜:「とにかく……何故あなたが生存しているかは知りませんがメッシュさんと……あとその他のお三方、力を貸していただけますね……」
カリパー&キドゥ&ゲンジ:(〝その他〟扱い!?)
メッシュ:「ファッファッファ!! 望むところだ!!」
竜:「ナギサさんも……」
ナギサ:「勿論、協力させてもらうよ」
ナギサとメッシュたちは、三頭神像の方へ向かっていった。
竜はその姿を見送り、ワンダへ向き直る。
竜:「ワンダさん……おそらくこの街のどこかにF・G・シャインがいるはずです……。三頭神像は私達にまかせて、ワンダさんはF・G・シャインの捜索をお願いしたいのですが……」
ワンダ:「私、1人で?」
ワンダが僅かにためらう。
竜:「私の考えが正しければ、F・G・シャインと共にデュオカイザーがいるはずです……戦闘になったとて決して不利ではないと思いますよ…」
ワンダは少し考え、頷いた。
ワンダ:「分かったわ。頑張ってみる」
そのまま広場を離れ、シャインの捜索へ向かった。
―
三頭神像が四本の腕を振り回し、周囲へ攻撃を続けている。
メッシュ:「ファーーーーーファッファッファッファ!!! 俺も助太刀するぞ!!」
ナギサ:「再び君達と共に戦うことになるなんて、運命…デスティニーを感じるね」
ナギサとメッシュたちが、戦っていたタインたちの横へ加わった。
タイン:「おぉ! ナギサと……メッシュ!? さり気に生きてたのか!?」
ゲンジ:(やはり我輩達は無視か……)
リーブ:「久しぶりですなぁナギサさん。それに、生きたはったんですね! メッシュさん! カリパーさん! キドゥさん! ゲンジさん!」
カリパー:(ほーら、やっぱりまた無s………え?)
キドゥ:(い、今…名前呼ばれた…。)
カリパー&キドゥ&ゲンジ:( リ ー ブ は 良 い ヤ ツ ! ! ! )
少し遅れて竜も合流する。
リーブ。
レッド。
タイン。
竜。
ナギサ。
そしてメッシュ、カリパー、キドゥ、ゲンジ。
かつて十二使徒に所属していた九機が、一つの戦場へ集まった。
竜:「3名ほど欠けていますが、かつて十二使徒に所属していた者達がここに集結したわけですね……。みなさん……勝ちましょう」
タイン:「三頭神像、相手にさり気に不足無し!!!」
レッド:「………………破壊……………………」
リーブ:「皆さん、力合わして頑張りましょー!!」
メッシュ:「行くぞ! わが友カリパー、キドゥ、ゲンジ!! 勝ったら高級オイルをおごるぞ!」
ナギサ:「三頭神像……僕の愛して止まぬ平和を崩壊させるためだけに生み出されし者……。悲しみの連鎖に組み込まれ、決してそこからは逃れる事が出来ないように作られてしまった者…。人もメダロットもどうして他者を傷つける事をやめないのだろう……それが自らを破滅へと導く悪魔だと気付かずに…。フフフ…体を1つにした三頭神像と心を1つにした僕ら、どちらが強いかは一目瞭然。僕はこの悲しみで繋がった鎖を断ち切る」
カリパー:(ナギサだけ長すぎだろ!)
キドゥ:(空気読みなよ!)
ゲンジ:(相変わらずだな……)
三頭神像が咆哮を上げる。
三頭神像VS元・十二使徒。
九機による総力戦が始まった。
―
遥か上空。
カヲスはマイルとジーヴァスを両腕で掴んだまま、空中に留まっていた。
ジーヴァス:「くそ! 放せよ!」
マイル:「お前ぇ、よく見たら2年前死んだはずのカヲスじゃないかぁ」
カヲスは二機の言葉に答えない。
その手にさらに力を込める。
マイル:「ぐっ……!」
ジーヴァス:「痛ぇってんだゼ!!」
カヲス:「……コスモスは……どこだ………?」
再び、同じ問いを投げかける。
ジーヴァス:「お……お前……だからオレらの話聞けって!!」
だが、カヲスは聞こうとしなかった。
黒いガラスに覆われた眼部。
その奥では、赤い光が激しく明滅していた。
普段は黒い瞳の奥へ隠れている光が、今ははっきりと外から見えるほど強く輝いている。
カヲスは二機を睨んだまま、低い声で告げた。
カヲス:「吐くなら……楽に…殺してやる………」
マイル:「……!」
ジーヴァス:「な……!」
黒いガラスの奥で、赤い光がさらに強く瞬いた。
カヲス:「吐かないのなら……地獄の痛みの中で殺してやる……」
第二十二話【殺してやる】終わり