第二十三話【まさかの再登場】
メダロポリス全域が混乱に包まれる中、三機のメダロットが街へ入ってきた。
先頭を走るのは、3PMCシステムによって車両形態となったディスト。
その車体には、ローラとベビーが乗っている。
ローラ:「街中に流れるこの曲……そして、空を埋め尽くす心ない天使たち。間違いなく、これはDancing Madだ」
ベビー:「この音……。街の中心部から聞こえてくるでしゅよ」
ローラ:「ディスト、街の中央に向かうぞ! スピードを上げろ!!」
ディスト:「分かった!!」
ディストは速度を上げ、そのまま中央広場へ向かっていく。
進路を塞ぐように心ない天使たちが次々と現れた。
ローラが凍結や炎でそれらを退け、ディストもビームを放ちながら前へ進む。
中央広場まであと少し。
その時だった。
ディスト:「あっ!」
――キキィィィィッ!!
ディストが急減速し、そのまま別の方向へ進路を変えた。
ローラ:「こらディスト! 何をしている?」
ローラが声を上げる。
だが、ディストが向かった先を見て、すぐに理由を理解した。
避難が進み、ほとんど誰もいなくなった大通り。
そこに、一機の青い天使型メダロットが立っていた。
ディスト:「ワンダ!」
呼ばれたワンダが振り返る。
ワンダ:「み、みんな!?」
―
メダロポリス上空。
カヲスはマイルとジーヴァスを両腕で掴んだまま、さらに力を込めていた。
ジーヴァス:「ガ……ァ……。ヤバイゼ……。ここは吐いた方がよくね……?」
マイル:「そ、そうかもなぁ……」
二機は互いに目を合わせた。
そして、ついに口を開く。
マイル:「シャインだぁ」
ジーヴァス:「向こうの方のビルにシャインがいるはずだ……。ハードネステンのメダルはシャインが持ってるゼ!」
その言葉を聞いた瞬間、黒いガラスの奥で激しく光っていたカヲスの赤い眼光が、僅かに弱まった。
カヲス:「そうか……よく言ってくれた。それでは………目を閉じ……全身の力を抜け…………楽に殺してやる……」
ジーヴァス:「……」
マイル:「……」
一瞬だけ、カヲスの手の力が緩む。
その隙だった。
ジーヴァス:「けっ! 誰が死ぬかよ!!」
マイル:「神様に会うんだからなぁ!」
二機は同時に身体を捻り、カヲスの手を振り払った。
そのまま下へ向かって落ちていく。
カヲスは追いかけなかった。
ただ、遠ざかっていく二機を見下ろす。
カヲス:「馬鹿な……。上空100m以上だぞ…………。まぁいいだろう……」
既に、マイルとジーヴァスへの興味は失っていた。
カヲス:「……F・G・シャイン……が……この街に………いる……の……か……」
カヲスは、二機が示した方角へ顔を向けた。
そして、そのままシャインを追って飛び去った。
―
その頃、エデン国。
女王コスモスの執務室では、ブラックメイルが椅子に深く座り込んでいた。
ブラックメイル:「……退屈だぁ~…ぞッ」
コスモスは行方不明。
さらに、トゥルース主任のデュオカイザーも不在。
そのため、エデンと同盟関係にあるラヴドから、急遽ブラックメイルが対応に回っていた。
ブラックメイル:(……偉くなったのはいいけどよぉ~。こういうの、オレにはこれっぽっちも向いてねぇぇ~…よッ)
ブラックメイルは自分の拳を眺めながら、退屈そうに項垂れた。
メダロポリスで大騒ぎが起きていることなど、この時の彼はまだ知らない。
その時。
部屋のモニターが起動した。
――ピー。
画面に映ったのは、ラヴド国王ビーストマスターだった。
ビーストマスター:「メダロポリスにシャイン達が現れました」
ブラックメイル:「何ぃ~…?」
ブラックメイルが勢いよく身を起こした。
ビーストマスター:「今すぐに『ノアの箱舟』へエデン兵を乗船させ、メダロポリスに向かってほしいのです」
『ノアの箱舟』。
かつて、エデン軍最強の戦闘集団『十二使徒』が使用していた巨大戦艦。
二年前の戦争が終わってからは、トゥルースの管理下に置かれていた。
だが、現在エデンにいる者の中で、この艦を扱える者は限られていた。
ブラックメイル:「ノアの箱舟だぁ~? 操縦できるヤツはいるのぉ~…かッ?」
ビーストマスター:「ご心配なく。トゥルースと親密な関係を持つ男がエデンにいるとの調べがつきました。その男のデータを後ほど送ります。そして……」
ビーストマスターが一度言葉を切った。
ビーストマスター:「そして……『アレ』を持った上であなたも箱舟に乗船してください。何かの役に立つかもしれません」
ブラックメイル:「『アレ』を持ち出すのぉ~…かッ?」
何を指しているのか、ブラックメイルにはすぐ分かった。
その顔に笑みが浮かぶ。
ブラックメイル:「楽しい事になってんじゃねえぇ~…のッ」
ビーストマスター:「それでは、操縦士のデータはそちらに送っておくのでよろしくお願いします」
通信が切れた。
その直後、ブラックメイルの端末へ一通のデータが届く。
ブラックメイル:「なになに? 運搬部部長の……ロケットランチ?」
第二十三話【まさかの再登場】終わり