第二十四話【限界】
ロケットランチ。
二年前の戦争で、偶然エデンリーダー直下諜報部『トゥルース』のセルヴォとビートに出会ってしまったことから、彼の運命は大きく変わった。
以来、二機に何かと「パシリ」として使われ、旧ラヴド本部の爆破任務では命懸けの脱出支援まで担当することになった。
だが、その経験は無駄ではなかった。
危険な場所への物資輸送や緊急時の対応力を身につけたロケットランチは、本職である運搬業務で高い評価を受け、二年後の現在ではエデン国の「運搬部部長」にまで出世していた。
今では重役会議に顔を出すこともある立場だが、未だにセルヴォとビートの前では頭が上がらないらしい。
『発進準備完了』
『兵士の点呼完了。総員、搭乗完了です』
巨大戦艦『ノアの箱舟』では、メダロポリスへ向けた発進準備が進められていた。
艦橋では、ロケットランチが周囲へ慌ただしく指示を飛ばしている。
ロケットランチ:「そこの操作をお願いしま……あぁ、そこじゃなくて右の! そう、それです。そっちは発進直後まで触らないでください……!」
かつてセルヴォたちに付き合わされる中で、いつの間にか艦艇の扱いまで覚えさせられていた。
その知識が、今まさに役立っている。
そこへブラックメイルが姿を現した。
ブラックメイル:「おぉ~~。操縦席ってのは、こうなってるんだぁ~…なッ」
ブラックメイルは物珍しそうに艦橋を見回す。
ロケットランチ:「ブラックメイル様、お疲れ様です! まもなく発進いたします!」
ロケットランチが姿勢を正す。
ブラックメイル:「ハッハッハッハッ! そう硬くなるなぁ~…てッ! さっさと発進しようぅ~…ぜッ」
ロケットランチは再び前を向いた。
ロケットランチ:「それでは……カウントダウンを開始します。十秒前!……九……八……七……六……五……四……三……二……一……ノアの箱舟、発進!!」
ブラックメイル:「ヒャホーーーーーーーーーーゥ!!!」
轟音と共に、『ノアの箱舟』がエデン軍基地から大空へ舞い上がった。
―
メダロポリス。
ローラ:「なるほど……。ならば三頭神像は竜たち元・十二使徒に任せ、妾たちでF・G・シャインを探すとしようか」
再会したワンダから広場の状況を聞き、ローラたちは方針を決めていた。
シャインを見つけ出さなければ、この騒ぎは終わらない。
移動しようとした、その時。
ローラがベビーへ視線を向けた。
ローラ:「ベビー。F・G・シャインは、妾が予想していた以上に強大な力を持っていた。だからな……」
ベビー:「わかってまちゅよ。僕を危険な目にあわせたくないから、戦線を離脱しろって言うんでしゅね?」
ローラが言い終わるより先に、ベビーが答えた。
ベビー:「ローラが僕を心配してくれてるのは分かったでちゅ。だからシャインの所には行かないでしゅ。でも、戦線は離脱しないでちゅよ? 民間人の避難を手伝ったりと、戦闘以外でも僕は役に立ちましゅからね。……じゃあローラ、頑張ってね!!」
ベビーはそう言うと、近くで避難誘導を行っていたラヴド兵のもとへ向かった。
ローラは、その背中をしばらく見つめていた。
ディスト:「なんだか……ベビーって成長したね」
ローラ:「あぁ……。初めて出会った頃のベビーは、まさしく赤ん坊のようだった。しかし今では、下手をすれば妾よりも高い目線で物事を見られるようになっている。……あいつの成長を見るのが、最近の楽しみでな」
ワンダ:(……オヤジ臭ッ!!)
ワンダは危うく口に出しかけたが、今はそれどころではないと思い直した。
ワンダ、ローラ、ディストの三機は、再びシャインを探して移動を開始した。
―
その頃。
ジーヴァス:「うわあああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!!」
マイル:「マズイなぁ……」
カヲスから逃れたマイルとジーヴァスは、メダロポリス上空から真っ逆さまに落下していた。
地上が凄まじい勢いで迫ってくる。
ジーヴァス:「あああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!!!! 落ちるゼェェェェェェーーーー!!!」
マイル:「うるさいなぁ……。静かにしろよぉ……」
ジーヴァス:「っていうかお前の方がおかしいだろ!! なんでそんなに落ち着いてんだよ!!?」
マイル:「慌てても、助かるわけじゃないだろぉ……」
ジーヴァス:「そりゃそうだけど……ッ! って、地面が近づいてきたゼ!! ヤバイ……ゼェェェェーーーーー!!!」
――ガッシャーーーーーン!!!
二機が落下した先は、偶然にも広場に立つ『英雄ジョーカード像』だった。
激しい衝撃で像が崩れ、大量の瓦礫が周囲へ飛び散る。
結果として、彼らが当初破壊しようとしていた英雄像は、自分たち自身の落下によって壊されることになった。
ジーヴァス:「いつつ……。ん? え? む、無傷だゼ!?」
ジーヴァスは瓦礫の中から起き上がり、自分の身体を確認した。
大きな損傷はない。
だが、隣を見て言葉を失った。
ジーヴァス:「マイル!?」
マイル:「わ、悪いがぁ……。スラフシステムで……か、回復するまでぇ……。た、頼んだぞぉ……」
マイルは頭部パーツを大きく損傷し、その場に倒れていた。
彼の頭部パーツ『ダーリング』が持つ能力は『未満防御』。
味方への攻撃を肩代わりし、その威力が一定以下ならば無効化する能力だ。
落下の直前、マイルは未満防御を使ってジーヴァスを庇っていた。
そのおかげでジーヴァスは無傷だった。
しかし、高高度からの落下による衝撃は、ダーリングで防ぎ切れる限界を超えていた。
ジーヴァス:「チッ……無理しやがって!! とにかく……」
ジーヴァスはマイルを背負い、崩れた英雄ジョーカード像を見る。
デュオカイザーの言葉が本当なら、この像に「神様」――白メダリアが隠されているはずだった。
だが、瓦礫を見回しても、それらしい物は見つからない。
ジーヴァス:「ケッ……やっぱりあのオカマ野郎、ウソついてやがったゼ!」
ジーヴァスは信号弾を取り出し、空へ打ち上げた。
――ヒュルルルルルル……ッ!!
光が上空へ昇り、やがて大きな『×』を描く。
その合図は、高層ビルの屋上からもはっきりと見えていた。
シャイン:「クククク……マイルとジーヴァスからの合図だ。やはり、君の情報はデマだったようだね。悪いけどここで死んでもらうよ? クククク……」
シャインが目の前のデュオカイザーへ視線を向けた。
デュオは動じることなく、静かにシャインを見返す。
デュオ:「思ったよりやるわね。そろそろ……限界かしら」
第二十四話【限界】終わり