第二十九話【卑怯者に栄光あれ】
F・G・シャインは空中要塞『フユーン』へと帰還していた。
迷うことなく要塞内部を進み、かつて『フユーンストーン』が置かれていた場所へ向かう。
その中心には、強奪したフォーパーツ――『ノルス』が据えられていた。
シャイン:「クククク……。ようやく君の出番だね」
シャインがノルスへ手を触れる。
そして、起動させた。
――ギラリッ!!
ノルスが鋭い光を放つ。
直後。
――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!
フユーン全体が大きく震え始めた。
シャイン:「クククク……。今宵、空中要塞フユーンは再び大空へ舞い戻る」
地上に沈んでいた巨大要塞が、ゆっくりと浮かび上がっていく。
―
ワンダ:「な、なによアレ……!?」
おみくじ町へ向かっていたワンダが、前方を指差す。
その先では、巨大なフユーンが夕日を受けながら空へと上昇していた。
マイル:「フッ……。シャインがフユーンに戻ったんだぁ」
ジーヴァス:「もうじき、神様が復活なさるゼ!!」
背後から追ってくる二機の声が響く。
ローラはフユーンを見上げ、表情を引き締めた。
ローラ:「フム……。見ての通り、妾たちには時間が無い。すまぬが、貴様らの相手はここまでだ」
ジーヴァス:「あん?」
ローラが意識を集中させる。
ローラ:「メダフォース――『 全 体 停 止 』!!」
メダフォースが放たれた。
マイル:「……!?」
ジーヴァス:「ちょ……! ま、待てって……や、やばい……z」
二機の動きが一気に凍りつく。
バイクごとその場へ停止し、マイルとジーヴァスは完全に動きを封じられた。
ローラ:「ふぅ……。なんとかなったな」
ディストはそのまま速度を落とさず、二機を置き去りにして進んでいった。
しばらくして。
ディスト:「ロ、ローラ……。相変わらず強いね」
ローラ:「そうか? ディストやワンダとさして変わらぬぞ」
ディスト:「え、え~っと……。こんな時にアレだけどさ……ローラ。……ラヴドに戻らない?」
ローラ:「……ラヴドに? ……何故だ?」
ディスト:「何故って……なんとなくっていうか、なんというか……」
ローラ:「……?」
ローラが不思議そうに首を傾げる。
その二機の様子を、ワンダがじっと見つめていた。
ワンダ:(あれ? もしかしてディストってば……ローラにムフフみたいな!? 禁断の恋の季節、到来しちゃった感じぃぃ~!?)
ワンダ:「も~~! ディストったら、意外と可愛いとこあるじゃん!!」
――バシッ、バシッ!!
ディスト:「痛ッ……! い、痛いよワンダ!」
ワンダが楽しそうにディストを叩く。
ローラ:「………………」
ディスト:「………………」
二機は揃って、ワンダを見る。
ローラ:(……二年前の黒メダリアによる治療の副作用だろうか?)
ディスト:(……ナギサさんの電波にやられちゃったのかな……?)
そんな穏やかな時間も長くは続かなかった。
ジーヴァス:「うらぁーーー!! テメーら、待ちやがれぇぇぇ!!!」
後方から、ジーヴァスの怒号が響いてくる。
ローラ:「もう『全体停止』を抜けたのか……!? ぬぅ……出口まであと僅かだというのに!」
ディスト:「どうする? また迎撃する?」
その時、ワンダが前方を指差した。
ワンダ:「ん……? あ、アレ見て!!」
―
高速道路の出口。
その先に、セルヴォとビートが立っていた。
セルヴォ:「さて、ビート。この爆弾……どれくらいヤバイ?」
セルヴォが右手の装置を見せる。
ビート:「ラヴド本部爆破時以上だ」
セルヴォ:「うひゃッ♪」
ビート:「派手な方が好きだろう? ……相棒」
セルヴォ:「さっ……てぇ~、じゃあ準備といきましょうかねぇ? ……相棒」
――シュンッ!!
二機の横を、ディストたちが一気に通過した。
ディスト:「よろしく!」
セルヴォ:「ケッ……あのクソガキ、しぶとく生きてやがったか」
セルヴォが小さく笑う。
ビートは何も言わず、軍用ヘリへ向かった。
その間にも、遠くからマイルとジーヴァスが迫ってくる。
セルヴォとビートは準備を終えると、軍用ヘリへ飛び乗った。
ヘリが上昇する。
地上では、何も知らないマイルとジーヴァスがその場所へ近づいていた。
セルヴォは起爆スイッチを握る。
セルヴォ:「さて、削除♪」
マイル&ジーヴァス:「!?」
――バ ー ー ー ー ー ー ン ! ! ! ! !
激しい爆発がハイウェイを包み込んだ。
黒煙が立ち上り、辺りが一瞬で炎と瓦礫に覆われる。
ジーヴァス:「……グ……。なんなんだ……ゼ……」
マイル:「うぅ……」
二機は黒焦げになり、地面へ倒れていた。
そこへ。
セルヴォがヘリから飛び降りる。
着地と同時に、右足でマイルを、左足でジーヴァスを踏みつけた。
二機に一分の隙も与えない。
右腕のソード。
左腕のハンマー。
セルヴォは、そのまま振り下ろした。
――パリンッ……!!
二つのメダルが砕け散る。
マイルとジーヴァスの目から、光が消えた。
上空では、ビートがその様子を確認していた。
ビート:「抹殺完了『ぅ』」
セルヴォは倒れた二機を見下ろし、ニヤリと笑う。
セルヴォ:「さて、戦闘は専門外だが〝抹殺〟に関してはプロフェッショナルなんだ『ゼ』」
マイル。
ジーヴァス。
二機は、完全に死亡した。
第二十九話【卑怯者に栄光あれ】終わり