第三十話【時を越えた仲人】
メダロポリスの空で次元の狭間へ消えたメッシュ。
その先では、まだ六本腕の男との戦いが続いていた。
メッシュ:「ファッファッファッファ! なかなかやるな!」
???:「ヒャホーゥ!!! お前こそなかなか強いぞ!」
メッシュが斬鉄剣を振り下ろす。
六本腕の男は、六本の腕を交差させて刀身を受け止めた。
――ギチギチギチッ!!
しばらく力比べが続く。
やがて六本腕の男が突然手を離し、距離を取った。
???:「あ! そうだメッシュ、これを見ろ」
メッシュ:「あん?」
六本腕の男は、大きな袋をガサゴソと漁り始めた。
そして、中から金色の右腕パーツを取り出す。
???:「これぞ! 開発時威力調整前、非売品版! 伝説の右腕〝リボルバー〟だ!!」
メッシュ:「何ぃーーーーーーー!!?」
元トレジャーハンターであるメッシュが、勢いよく食いつく。
???:「今なら……何と八万円で譲っちゃうぞ」
メッシュ:「何ぃーーーーーーー!!?」
メッシュがさらに身を乗り出した。
だが。
カリパー&キドゥ&ゲンジ:「……つかそれ、リボル『パ』ーじゃね?」
メッシュ:「……………………」
???:「……………………」
沈黙。
よく見れば、刻印されている文字が微妙に書き換えられていた。
メッシュ:「何ぃーーーーーーー!!?」
???:「バレたぁーーーーーー!!」
六本腕の男が悔しそうに地団駄を踏む。
メッシュ:「貴様!! よくも騙してくれたな!!」
???:「うるせー! 俺ッ様だって、このパーツに関してはあの女に騙されたんじゃーー!!」
再び二機が身構える。
メッシュ:「喰らえ!! 次元剣技……」
???:「阿修羅六式道技……」
一瞬の静寂。
メッシュ:「〝
???:「〝炎 柱〟!!」
メッシュは斬鉄剣からカリパーへ持ち替えた。
そして、盾へ変形したゲンジを蹴り、六本腕の男へ一気に迫る。
対する六本腕の男は、足元から巨大な炎の柱を噴き上げた。
――ズドォォォォォォォォォォォンッ!!
激突。
二機が大きく吹き飛ばされる。
その時。
――シュゴゴゴゴゴゴ……。
偶然にも、メッシュの真後ろへ次元の出口が開いた。
メッシュ:「あーれー!!」
そのまま出口へ吸い込まれていく。
次元の狭間には、六本の腕を広げた男だけが取り残された。
―
「はぁ……」
一人の少女が、公園のベンチに座っていた。
周囲に人影はない。
少女は俯きながら、重いため息を吐く。
その時。
――シュゴゴゴゴゴ……。
「……ん?」
奇妙な音が聞こえた。
少女が周囲を見渡す。
だが、何もない。
そして。
ふと、頭上を見上げた。
メッシュ:「うわあぁぁぁぁぁ!!!」
――ゴッチーーンッ!!
「痛っつつつつつ……!」
上から落ちてきたメッシュと、少女の頭がぶつかった。
少女が頭を押さえる。
メッシュも同じように頭をさすりながら立ち上がった。
メッシュ:「ファファファ……悪かったなお嬢さん。次元の狭間ってヤツは、出口がいつどこに出るか分からんもんでな」
「……次元の狭間ぁ?」
少女が首を傾げる。
カリパー:「いや……もっと詳しく説明したほうがいいと思うよ」
「お、剣が喋った」
少女がカリパーをじっと見る。
カリパー、キドゥ、ゲンジはメダチェンジを解除した。
どうやら、この世界ではメッシュたちを見ても宇宙人扱いはされないらしい。
メッシュたちは、自分たちが別の世界から来たことを簡単に説明した。
少女もまた、この世界について話してくれた。
人間とメダロットが共に暮らしている世界。
だが最近では、メダロットをただの道具のように扱う人間もいるらしい。
メッシュ:「ふむふむ……ところでお嬢さん。こんな所で何してたんだ?」
少女は少し気まずそうに視線を落とした。
「パートナーと……ケンカしちゃって……」
メッシュ:「……ケンカ?」
少女が話し始める。
近々、大きなロボトル大会が開催される。
少女は一機のパートナーと出場するつもりだったが、戦力不足を心配したパートナーから、新しい仲間を加えることを勧められた。
それが原因で口論になり、家を飛び出してきたらしい。
「向こうの言うことが正しいのは分かってるんだけどね……」
メッシュ:「で……何でアンタ、新しい仲間を加えたくないんだ?」
少女の表情が曇る。
「あたしの両親、メダロットに殺されたの」
メッシュ:「!?」
「交通事故だけどね。運転してたメダロットが整備不良だったんだって。……昔はね、メダロットなら何でも好きだった。勉強して、自分でもメダロットのレプリカパーツを作ったりしてさ……。でも今はね、パートナー以外のメダロットは昔ほど好きじゃない。信用……できないかも……」
少女が俯く。
メッシュが固まった。
メッシュ:(やばい! 多分俺、何気に聞いちゃいけないこと聞いちまった!!)
カリパー:(メッシュ! なんか笑わせなきゃ!)
キドゥ:(明るい話題! 明るい話題!)
メッシュ:(よ、よし! 任せろ……!)
メッシュが少女の前へ立つ。
メッシュ:「メッシュの爆笑ショートコントォ!!」
「……?」
メッシュ:「タイトル……〝交通事故〟」
キドゥ:「 い や 、 そ の タ イ ト ル 駄 目 だ ろ ! ! 」
メッシュ:「あ、そうか。じゃあ……タイトル〝お葬式〟」
カリパー:「 だ か ら 、 全 然 笑 え ね ー よ ! ! 」
一同が慌てて少女を見る。
だが。
「アハハハハハハハ! ヒ、ヒィ……お……おなか痛い……死ぬ……笑いすぎて死んじゃう。ハハハハハ……!」
カリパー:「爆笑じゃん……」
キドゥ:「このお姉さん、結構変な人かもしんない……」
少女はしばらく笑い続けた。
やがて落ち着くと、穏やかな表情でメッシュたちを見る。
ゲンジ:「お嬢さん、我輩たちもメダロットなのだが……どうしてそんな大事な話をしてくれた?」
「何でだろ……? あたしにもわかんないや。ハハハ……」
メッシュ:「ファッファッファッファ……。それは、オレたちがトランプメダだからだ!」
「え?」
メッシュ:「何故なら、トランプメダは皆良いヤツなのだー!」
根拠など何もない。
それでも、その言葉を聞いた少女は少しだけ笑った。
その時。
――シュゴゴゴゴ……!!
再び次元の狭間が開いた。
キドゥ:「早ッ!」
ゲンジ:「まだこの世界に来て三十分くらいしか経ってないぞ!」
メッシュたちの身体が次元の狭間へ引き寄せられていく。
メッシュ:「しまった……! オレとしたことが、まだ名乗ってなかったな! オレの名前はメッシュ! こっちはカリパー、キドゥ、ゲンジだ! ……アンタの名前は?」
少女が立ち上がり、大きな声で答えた。
「ルク! 宝条ルク!!」
メッシュが大きく頷く。
宝条ルク。
その名前を、メッシュは記憶に刻んだ。
メッシュ:「ルク! パートナーと仲直りしろよ! あと、新しい仲間探しも頑張れよ! ……それでは皆さん、ご一緒に!!」
メッシュ&カリパー&キドゥ&ゲンジ:「あーーーれーーー!!」
四機はそのまま次元の狭間へ吸い込まれていった。
再び静かになった公園で、ルクはしばらく空を見つめていた。
ワンダ:「おーい、ルクちゃーん!」
少し離れた場所から、声が聞こえる。
青い天使型メダロット――ワンダエンジェル。名前をワンダという。
ルク:「ワンダ!」
ワンダ:「ごめん……。さっきは、私が言い過ぎたわ。だから……」
ワンダが申し訳なさそうにルクを見る。
ルク:「ワンダ! 新しい仲間は、トランプメダにしよう!!」
ワンダ:「……え? あ、うん」
突然の心変わりに、ワンダが戸惑う。
ワンダ:「でも、なんでトランプメダなの?」
ルクは笑いながら、先ほどのメッシュを真似した。
ルク:「何故なら、トランプメダは皆良いヤツなのだー! ファッファッファ!」
ワンダ:「……?」
ワンダには意味が分からない。
だが、ルクが自分の提案を受け入れてくれたことは分かった。
そして、ふと思い出したように口を開く。
ワンダ:「あ、そういえば……。隣町に〝不幸のメダロット〟って呼ばれてる、トランプのジョーカー型メダロットがいるって聞いたけど――」
――もしかすると、運命の歯車はこの時、回り始めたのかもしれない。
第三十話【時を越えた仲人】終わり